日本DAISYコンソーシアムは、DAISYコンソーシアムの正会員として国内外におけるDAISYの普及・推進活動を行っています。

サブメニューはここから

Home | サイトマップ | English

DAISY consortium

日本DAISYコンソーシアム

メニューはここから
  日本DAISYコンソーシアム トップ > 技術委員会 > 2022年11月26日JDC/JEPA共催『普通の書籍が読めない人に読書機会を提供する: EPUB電子書籍のアクセシビリティ』講演会記録 > 質疑応答
本文はここから

質疑応答

司会/質疑応答を始めます。

Q1.

司会/最初に、EPUBアクセシビリティとウェブコンテンツ・アクセシビリティガイドライン2を満たした図書ととDAISY図書との違いは、どうなるのでしょうか。

村田/WCAG2はEPUBのことを全部カバーしているわけではありません。EPUBのうち、XHTMLやCSSしかかばーしていません。EPUB固有の機構に関してのリクワイアメントは定義されていないと理解しています。WCAG2を満たしていても、目次はぐちゃぐちゃ、ナビゲーションが機能していなくとも、チェッカーには通ってしまいます。人手でチェックして、WCAGの原則にあってないと言えば、確かにそうです。木達様からあったようにWCAGは抽象的なガイドラインです。一般的にはEPUBのことをWCAGがカバーしてないとみられます。
DAISY図書は、DAISYの2までは、EPUBとDAISYは違うフォーマット、別のフォーマットです。1つの出版物がDAISYとEPUBに適合することはありません。だから、フォーマットが違うと言うことになります。
DAISYの機能のうちEPUBにないものがあるかというと、全部入っていると、私は理解しています。ひょっとしたらマルチメディアオーバーレイのテキストと音声の同期の部分で入っていないものはあるかもしれません。
日本で販売されているEPUB出版物で、音声とテキストと同期しているものはないと思います。DAISY図書にはいくらでもあります。その辺りも、ユーザーから見ると大きな違いです。
以上が私の答えです。漏らしている点があるかもしれません。ほかの方、もし何が気がついたら、ご指摘ください。

Q2.

司会/次の質問として、有斐閣のノブクニさんとお読みするのでしょうか。木達さんの話で、EPUBアクセシビリティ適合にはWebアクセシビリティ要件を満たす必要がある。満たすかどうかは、ツールでチェックできる部分もあるが、ツールだけでは不可能ということも分かりました。
そうなると、JIS規格の認証の手続きは、どのように行われているのでしょう。手続きの準備は進められているのでしょうか。
普段業務で関わることがないので、全く土地勘がなく、JIS規格化されたって、いつから何が始まるの?という状態です。

木達/質問ありがとうございます。 「認証」という言葉に、幅があります。どこからどこまでのことを言っているのかにも関わってくるのですけれども、私はWebアクセシビリティの専門家なので、WebコンテンツのJIS規格について答えます。そもそもJISマークの表示制度の対象ではないです。例えば、あるWebページがJISに適合したからといって、JISマークを貼っていいとはならないです。
JIS規格に適合していることを、どのように表現すればよいのかという話ですが、その場合、供給者適合宣言があります。それはまた別のJIS規格が定めるところに要求事項があります。JIS Q 17050、それを使って供給者適合をしてくださいということになります。ただ、これにもハードルがあって、大変です。そこを多少緩和すると言いますか。そのようなことをしなくても、JIS規格への対応状況を利用者が示せるように、ウェブアクセシビリティ基盤委員会という組織が対応度の表現の仕方に独自にガイドラインを発行している状況です。
電子書籍、EPUB出版物は、JIS規格とどう向き合うか、どのようにJIS規格を利用していくのかというところに関しては、あいにく私はそこまで深く関わっていません。できれば村田様から回答いただきたいと思います。

司会/ありがとうございました。村田さん、お願いします。

村田/JISマークは私も検討しました。対象物の仕様品質をカバーしなければいければならないです。例えば、面白くない小説にマークが貼ってあって、面白いのには貼ってないのは好ましくないです。小説の面白い、面白くないはJIS規格では無理だと思いますので、電子書籍にJISマークを貼れるのは無理だと思います。認証の手続きまで、JIS規格に厳密に書いてないと、無理です。
世の中の大抵の認証は、勝手認証です。JISやISOを基に認証手続きをどこかの団体が決めて、それに従い、運用するというのは、JISマークではなく、勝手認証です。EPUB Accessibility、JISに基づく認証をどのように行うかに関しては、認証機関を立ち上げ、その中で、人手によるチェックをどうするかの合意を取り、さらに、仕様には書いてないけど、日本では大事なこと、例えば、文字のどの範囲まで許すのかなども含めて決めないと、運用には差し支えが出てくると思います。 その意味で、詳細は認証機関待ちにならざるを得ないです。

Q3.

司会/申し込みの時の質問です。山口さんからです。textarea要素は、Javaスクリプトを使って、EPUBをインタラクティブにできるでしょうか。文書が持つのか、リーダー側が持つのか、という区別も含めて教えてください。

村田/簡単に言うと、しばらくできそうもないです。

Q4.

司会/YouTubeからの質問です。
出版社、特に中小零細の出版社に対して、何らかのインセンティブが働かないと、アクセシビリティの確保が難しい。何か解決策はあるのでしょうか。
こちらは村田さんお願いします。

村田/ヨーロッパでは、インセンティブの意味では、やらないと罰則がある。そういう負のインセンティブはあります。アクセシビリティの確保は重荷です。
やらないといけないけど、どうやるか困っているようです。例えば、フランスではHachetteが独走していて、自社内の基準で認証するのではと予想されています。ただし、フランス政府では認証機関は立ち上げないと言ったようです。Hachetteに中小出版社が認証してもらうこともあり得ないと思います。自分のところの本を売る前にHachetteに出すのはあり得ないと思います。どうするかについては彼らも困っておりました。やらないといけないことははっきりしていますが、どうすれば基準をクリアできるか、分からないようです。
日本でアクセシビリティ勧告が重荷になることは言えると思います。たとえ法律が整備され、いずれ罰則が加わっています。さらに重荷です。解決策は、信頼できる認証機関が立ち上がり、そこが安価な検証サービスを提供することに結局なると思います。イタリアだと、毎日2人が,アクセシビリティをチェックする係で、1つの本を2時間くらいチェックして、どこを直すかの支持を出版社側に返しています。その方法で、簡単なものは対応できるようになっています。もちろんできないものもあると思います。日本のリフロー型のEPUBに関する限り、認証機関が立ち上がったあかつきには、返ってくる指示どおりに直せばいいいう風になるのではないかと思っています。

Q5.

司会/次の質問にいきます。 YouTubeからです。トクエさんからです。アクセシビリティ対応が必要事項になったとき、すでに流通しているEPUB書籍のリメイク(バージョンアップ)も必要になりますか?

村田 /ランダムハウスはすべてやると言っています。EPUB2から3への変換もするし、アクセシビリティ対応に向けて、いろんな修正もすると言っています。
そんな大変なことはしたくないという出版社もあります。国としては、今まであるものに関しては勘弁してくれ、となっているところもあります。これは、今後の綱引きで落としどころが決まると思います。
ただ、私の感触だと、欧米ではEPUB2があるだけ、日本よりも大変です。欧米では、2から3への変換をした上で、アクセシビリティに対応するのため、日本よりも大変です。日本の方は、EPUB3しかないので、特にリフローだけのものに関しては、まだマシです。 それでも、どこまで対応するかに関しては、今後、関係者と協議して落としどころが決まるのではないかと期待しています。以上です。

Q6.

司会/もう1つ、同じ方から。 フィックスタイプのEPUB書籍などアクセシビリティ対応に、一括変換できるツールはありますか?

村田/ないです。

司会/これから可能性は?

村田/この間イタリアで聞いてきたところによると、InDesignからのEPUBへの自動変換が不十分であり、そして、完全ボタン一括自動変換ではなく、InDesignをこういう風に使い、こういうEPUBに変換するというルールを整備するから、それまで対応するInDesignで自動変換する環境を作ってくれという要望をLIAなどが持っています。その要望に対し、現時点ではInDesignはそこまで対応していません。Adobeに対して、いろいろ要望をすると、前回も話を聞きました。予断を許さないが、将来的にいい方向に進めばと期待しています。 今のところ、これくらいしか言えないです。

司会/期待したいと思います。

Q7.

司会/最後に山口さんから、もう1つ。 今日は、EPUB書籍の話が多かったが、リーダーの基準や実装はどのような状況になっていいますでしょうか。こちらも村田さんに回答いただきたい。

村田/少しずつ対応しているが、それほど大きく進んでいないと思います。彼らは出版社側がまとまってこうします、のような声を望んでいるようです。それがあれば、それに対応すると言われたこともあります。
欧州アクセシビリティ指令で、第一義的に責任を負っているのは出版社です。でも、リーダー側もやらないといけないことがあります リーダーは、少しずつ対応が進みつつあるようです。まだ、不十分だと思います。これも、認証機関ができれば、リーダーを作成する会社と認証機関との話し合いが重要になると思います。以上です。

まとめ

司会/ありがとうございます。 出版社側がたくさんやることがあると分かりました。今回、いろいろな資料を出していると思います。そちらを見てわからないことがあれば、私共の方にお寄せいただいて回答していくことで、皆さんと一緒にJIS規格を普通の教科書、それから、図書を読めない人たちを応援していきたいと思います。
今、共生社会とかインクルージョンとか言われてます。そういった意味でぜひ"No one left behind."で誰も取り残さないように、ぜひぜひ、支援をしていっていただきたいと思っております。