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ABSC準備会の役割と施策について

基調講演者

相賀昌宏(一般社団法人日本出版インフラセンター ABSC準備会座長)

講演内容

 こんにちは。日本出版インフラセンター代表理事の相賀です。当センターで運営しているアクセシブル・ブックス・サポート・センター準備会の座長という立場から、当会の役割と施策について説明します。

 2021年6月、日本出版インフラセンター(以下JPOと略します)総会においてアクセシブル・ブックス・サポート・センター、似下ABSCと略します)の設立準備が承認され、9月22日にJPOのABSC準備会の第1回会合が開催されました。

 JPOのABSC準備会の役割は、読書困難者あるいは情報接触困難者における「困難さ」を減少させるため出版界が出来ることを明らかにするとともに、そのための各出版者の取り組みを応援し続けることにあります。具体的には次の施策に取り組んでいます。

1. ABSC準備会レポートの制作と配布。

 出版界と困難当事者の相互理解を深めるために、ABSC準備会レポートの作成と配布を始め、本年6月に第1号を刊行しました。これが第1号です。

 このレポートの目的は、出版者、著作者、印刷業界の方々にアクセシビリティヘの理解・知識を深めていただくと同時に、困難当事者、ボランティア、支援団体の方々にも出版業界の取り組みに対する理解を深めていただくことにあります。

 例えば、レポートの1号では、テキストデータの提供によって点字作成がより早くできるようになり、作成者の負担も軽減することなどを出版者に伝える記事を載せました。次号では、テキストデータを提供したくてもできない出版者の事情や苦渋などを取り上げるとともに、できないと思っている出版者に、こうやれば出来るのではないかという事例やヒントを提供する記事を載せようとしています。また、出版者が正確なテキストデータの提供に時間がかかる現状であっても、機械音声による自動読み上げ方式(TTS)の対応や改良によって、ある程度のアクセシビリティの確保が果たされることにも取り組もうと、TTSワーキンググループを立ち上げ、その報告も載せていきます。

2. JPOのJPROの改良。

 どんな本が出ているのか、あるいはこういった本を探したいという要望への対応は、ウェブサイトでの書誌データの表示によって以前よりも容易になりました。

 現在、約2500社を超える利用出版者から送信された書誌・書影・販促情報・流通情報が、JPOの出版情報登録センター(Japan Publication Registry Office、以下JPROと略します)。ここで統合処理されて、毎日9時と15時に受信社へ公開されています。登録点数は310万点を超え、毎日数百点の近刊情報が積み重ねられています。この情報は取次販売会社、書店、ネット書店、図書館、本の情報サイトで、予約販売・仕入れ検討・選書などに利用されています。2021年1月以降は雑誌情報も入るようになり、出版物の輸送効率化の事前情報への活用も進んでいます。

 このJPRO情報はウェブサイトでも閲覧できます。書店や図書館向けには、これから出る予定の本の書誌情報や販促情報まで見られる「Books PRO」があります。また一般読者向けには、基本的な書誌情報が見られる「Books」があります。

 この登録情報にアクセシビリティ情報を付け加えることによって、出版者に問い合わせることなく、ウェブサイト上のデータを調べるだけで、ある本がどういう状態で読めるのか、あるいは読めないのかが一覧できるようにしたいと、改良中です。来年の3月までにはかなり進む予定です。ただし、このデータ自体の読み上げ対応といったアクセシビリティについては、まだできていません。日本点字図書館や当事者の方々に実際に使っていただきながら改善し続ける予定です。いましばらくお時間を頂戴することになります。

3.従来の出版概念を拡張するための施策を検討すべきではないか。

 出版という仕事にアクセシビリティの配慮は当然のことだという意識を持つようにするために、どうしたらいいか、それを考えていきたいと思っています。

 まずできることは、これから出版という仕事に取り組む新人への研修に使うテキストに、アクセシビリティに関する知識を加えることです。

 また、日本出版学会など、出版に関する研究者にも、出版文献におけるアクセシビリティの取り扱いを見直してもらえたらと思います。従来の出版概念の定義なども検討すべき時だと思います。

 私からのABSC準備会の役割と施策についての説明は以上です。

 年末年始にかけてABSC準備会レポートの第2号を出すべく編集中です。すでに刊行した1号と続けて読むと分かりやすいので、ぜひお読みください。

 なお今回の説明内容については、日本書籍出版協会のアクセシブルブックス委員会(AB委員会)委員長でもある、小野寺優書協理事長とJPO・ABSC準備会レポートの落合早苗編集長にも目を通していただき、修正追加などを経て、同意を得たものであることを申し添えます。ただし言葉遣いについては私の責任です。
 そして今日の説明に関して疑問やご意見をいただければ、それを参考に修正させていただき、これからのABSCの運営方針として準備会に諮り承認を得たいと考えています。考えの足りない点は多々あると思いますが、今後も謙虚に皆さまからの意見を聞いて、出版業界のアクセシビリティヘの取り組みに寄与してゆく所存ですので、どうかよろしくお願いします。

 本日はこういう機会を頂戴したことを心より感謝して、私の説明を終わります。ありがとうございます。