日本DAISYコンソーシアムは、DAISYコンソーシアムの正会員として国内外におけるDAISYの普及・推進活動を行っています。

サブメニューはここから

Home | サイトマップ | English

DAISY consortium

日本DAISYコンソーシアム

メニューはここから
  日本DAISYコンソーシアム トップ > 技術委員会 > 2021年7月30日JDC/JEPA共催『デジタル社会に必要な情報 アクセシビリティ』講演会記録 > 当事者の立場からディスレクシアとは
本文はここから

当事者の立場からディスレクシアとは

講演者

小澤彩果(支援技術開発機構研究員、ディスレクシア当事者)

講演内容

スライド1
当事者の立場からディスレクシアとは

	2021年7月30日

	小澤 彩果

	支援技術開発機構研究員

ここからは小澤が発表します。

スライド2
今日の話題

	1.ディスレクシアについて

	2.読みやすい 見せ方・見え方

	3.DAISY教科書を利用して良かった点

	4.最後に:私からのメッセージ

今日は、以下の4点について説明します。

スライド3
自己紹介

	私は、DAISY教科書第1期生

	DAISYとの出会いは、2007年11月ごろ、小学校5年生の冬

	「DAISY教科書の有効性に関する実証研究」(ATDO)のモニターとして活動

	その後、中学生までモニターを継続

	高校は、DAISY製作ソフトのモニター

私はDAISY教科書、第1期生ユーザーです。

DAISYは、2007年11月頃、小学校5年生の冬に出会いました。

中学までは河村先生の依頼でDAISYプロジェクトのモニターをしていました。

高校では、シナノケンシのPLEXTALK ProducerというDAISY製作ソフトのモニターをしていました。

スライド4
1)ディスレクシアについて

私自身のディスレクシアの体験を説明する前に、まず、疑似体験をしてください。

スライド5
(*校正者注:ディスレクシアの疑似体験用に文章が書いてあります。文章内の文字は、いくつかの文字が、左右上下反転していたり、右や左に45度回転していたり、文字の位置が上下したりしています。)

よければ、皆さんこのスライドを声に出して読んでみてください。

スライド6
(*校正者注:スライド5の文章が通常の表記で表示されています。)

このスライドは、1つ前のスライドと同じ文章です。

このスライドのほうが、はるかに分かりやすいと思いませんか?

ディスレクシアの疑似体験ができたのではないでしょうか。

しかし、すべてのしかし、すべてのディスレクシアの人がこのように見えているわけではありません。

ディスレクシアといっても人それぞれ見え方は異なります。

スライド7
(*校正者注:私の場合の読み困難
	上部にきょうの平仮名、下部にきのうの平仮名があります。「の」と、「よ」の一部分を同時になぞるアニメーションが付いています。
	「の」の形は、中央上から始まる開始点からそのまま下におろして、左側に大きく円を描くように開始点を通り、そのまま円を描きながら、右下まで続いてます。)

私の場合は、ひらがなを読むのが難しいです。

このスライドの今日と昨日の「よ」と「の」のくるっと回る部分が似ているため、区別が難しいです。

そのため、私は時々この2つの言葉を読み間違えます。

このような読み間違えは日常生活で深刻な影響を及ぼしかねません。

スライド8
(*校正者注:「お」と「む」が書かれております。2文字の共通点は、最初の十字に交わっている箇所、丸を書く箇所、そのあとの上下に曲がっている部分また、右上に点を打つところです。)

それ以外にも似た形に見えるものがあります。

このスライドの文字は、私にとって区別が難しい事例の1つです。

スライド9
(*校正者注:左に「さ」、右に「ち」が書かれています。)

また、教科書のような活字では、「さ」と「ち」は鏡文字のように似ているため、区別が難しいです。

スライド10
(*校正者注:左に「く」と、中央に左右反転した「く」と、右に「つ」が書いてあります。)

私の場合は、左側の文字「く」が、鏡文字になると中央のように見えるので、右側の文字の「つ」との区別が難しいです。

文字は時々回転したり向きがひっくり返ったりするので、皆さんの予想もつかない文字と似たような形に見えてしまいます。一般の方にはなかなか理解できないことだと思います。

スライド11
文字を長い間見ているとピントが合わなくなる

	(*校正者注:文字が2重になっている文章が表示されています。)

短時間なら正しく読めるのですが、長時間読むには集中力が必要となるため、本当に大変です。

長い間読むと疲れて、この画面のように焦点がずれてしまいます。

スライド12
絵本の頁を読むのに、小学校2年生の夏、10分かかった!←両親が私の読み困難に気づく!

	(*校正者注:「わかったさんのクレープ」、作者:寺村輝夫、絵:永井郁子、発行所:あかね書房という絵本で左下に絵が描かれた見開きのページの画像があります。)

このような症状に最初に気づいたのは両親です。

それは私が小学校2年生のときでした。

実を言うと、私は本も、図書館の雰囲気も好きでした。

小学校2年生の夏休みの初日に両親の前で音読をしました。

このスライドのページを読むのに10分もかかりました。

両親は私のとても遅い読みに、とてもショックを受けました。

スライド13
2)読みやすい 伝わりやすい 表示例

	サブタイトルが「~情報アクセシビリティについて~」

次に、私が読みやすい、伝わりやすい表示例です。

スライド14
ナビゲーション 

	マニュアル(説明文章)

	論文

	会議資料

	  など

	(利点)

	自分の必要な箇所のみ見たい場合は、ナビゲーションが役に立ちます。

	横巻の図形の中に「必要な情報にアクセスしやすく」書いてあります。

ナビゲーションが役に立つコンテンツとしては、参考書、教科書、マニュアルなどがあります。

学生時代を思い出してみてください。

ゼミの勉強会で担当する本や参考書を読むとき、目次にある見出しやページを見て、読みたい箇所を探しませんでしたか?

電子書籍でも紙の本と同じように、見出しやページを使って、読みたい箇所に飛ぶことが大切です。

スライド15
ナビゲーションなし

	(*校正者注:ナビゲーションなしの場合の動画があります。動画は、Wordで作られたコンテンツで作成されています。見出しがないので、読みたい箇所に飛べず最初から読み始めています。途中が倍速でながれており、読みたい箇所に差し掛かったところで、通常の速度に戻っています。また、他に読みたい箇所を探しており、上の方に戻りながら、探しています。)

今から動画でデモをします。

見出しやページがないときは、内容を確認するため、最初から読む必要があり、読みたい箇所を探すのが大変です。

千倍速で再生しています。

読みたい箇所が見つけられています。

ほかに読みたい箇所を探すとき、上にスクロールで戻って、読みながら探しています。

10倍で再生しています。

見たい箇所が見つけられています。

スライド16
ナビゲーションあり

	(*校正者注:ナビゲーションありの場合の動画があります。動画は、Wordで作られたコンテンツで作成されています。見出しがあるので、見出しを見て、読みたい箇所を探しています。途中がところどころ倍速でながれております。また、他の読みたい箇所に見出しから飛ぶことができます。)

見出しがある場合には、見出しの中から読みたい箇所を探し、飛ぶことができます。

50倍で再生しています。

読みたい箇所が見つけられます。

見出しがあることで、現在読んでいるところから別の箇所に飛ぶことが簡単にできます。

スライド17
ルビ

	(*校正者注:スライド上部
	スピーカー画像の横に「私は後悔しました」と書いてあり、後悔にルビがあります。複数の丸を線で結んだ折れ線グラフのようなものが、「私は」と「後悔のルビ」と「しました。」の箇所に丸があり、線で結ばれています。

	スライド下部
	私は後悔しました。と書いてあり、アニメーションで後悔の漢字が消えて、こうかいのルビだけが大きくなる文章があります。
	困った顔の上で、吹き出しが3つあり、船での航海、公衆に開放する公開、過去を反省する後悔のどれかで悩んでいます。
	横巻の図形の中に「ルビなし!音あり!!」書いてあります。)

私の場合、読めない漢字に音が付いていれば、ルビは必要ないです。

ルビがあると、そこに目がいってしまい、学習には不向きです。

また、ひらがなのほうが時間がかかるので、読みも遅くなります。

このスライドのように認識してしまうため、周りの文脈で分かることもありますが、意味を捉えるのは難しいです。

スライド18
文字列の方向

	縦書き

	(*校正者注:左側に、目があり、黒目が上下に動くアニメーションが付いています。
	中央に、横顔があり、視野の幅を台形で表現しています。
	右側に、あ行からは行までが縦書きで書いており、あいうかきさしたちなにはまが濃い色で表記されており、それ以外は薄い色になっています。)
	横書き

	(*校正者注:左側に、目があり、黒目が左右に動くアニメーションが付いています。
	中央に、上から見た顔があり、視野の幅を台形で表現しています。
	右側に、あ行からは行までが横書きで書いており、あいうえおが濃い色で表記されており、は行までが徐々に薄い文字になっています。
	横巻の図形の中に「縦書きより、横書き」書いてあります。)

縦書きの場合、目がこのように縦に動きます。

視野の範囲は上の図のようになります。

横書きでは、目はこのように横に動きます。

視野は下の図のようになります。

視野は横に広く見えているため、縦書きのほうが情報量が多くなります。

そのため、どこが意味の固まりなのか、文の固まりかを認識するのが難しい。

スライド19
行間

	(*校正者注:縦書きのあ行からは行が漢字で表記したものが左右に2つ並んでいます。
	右側には、複数の丸を線で結んだ折れ線グラフのようなもの、他の行の文字に遷移しながら、上から下に、1文字の上にある丸が線でつながるアニメーションがあります。
	左側には、複数の丸を線で結んだ折れ線グラフのようなもの、他の行の文字に遷移しながら、左から右に、1文字の上にある丸が線でつながるアニメーションがあります。
	下矢印で2.0行、あいうえおが赤い枠で囲っています。
	横巻の図形の中に「行間は広く」書いてあります。)

行が狭いと、縦書きか横書きか分からないことがあります。

また、縦書きだと分かって読んでいたとしても、ほかの行が視界に入り、ほかの行と混同して読んでしまいます。

行間が開いていると、1行が分かりやすいです。

スライド20
強調線

	(*校正者注:あいうえおを漢字表記で書いております。
	左側に、行間が1.0で、縦書きのさしすの右に強調線がある文書と、横書きのさしすの下に強調線がある文章があります。
	中央に、行間が1.5で、縦書きのさしすの右に強調線がある文書と、横書きのさしすの下に強調線がある文章があります。
	右側に、行間が1.5で、横書きのさしすが赤文字になった文章があります。)

	横巻の図形の中に「強調線は、文字の色を変えて」書いてあります。

強調線は縦書きが行間が狭く、1行が分かりにくくなります。

行間が開いていても、強調線は文字の一部として認識しやすく、強調線より文字に色があるほうが分かりやすいです。

スライド21
ハイライトと音

	(*校正者注:ごんぎつねのDAISYの画面が見えています。)

	横巻の図形の中に「文字と音声が連動して!!」書いてあります。

神山先生からの説明にあったように、DAISYには様々な機能があります。

文字のハイライトと音声が連動していることで、義務教育課程の子どもの学習にも役立ちます。

DAISYの画面があり再生しています。

音で意味がわかっていても、実際にどのように書くのか、文字の形などを知ることができます。

どの文字が読まれているかを確認できます。

そして、アクセシブルなEPUB3であれば、DAISYのアクセシビリティを継承しています。

スライド22
3)DAISY教科書を利用してよかった点

DAISY教科書がどのように役だったか、説明したいと思います。

スライド23
DAISY教科書の使用方法

	小学校(5, 6年生)

	 国語でのみ利用

	中学校 (1〜3年生)

	 国語、社会、理科、英語で利用

	小学校時代は、毎日、読みの宿題でDAISY教科書を活用

	中学生になると、上記の各科目でDAISY教科書は期末試験の準備に不可欠となる

私は小学校時代、5年生、6年生で、国語のDAISY教科書を使用していました。

自宅でのみ、DAISY教科書で読みのトレーニングをしていました。

毎日、担任から、国語の音読の宿題が出ました。

私は両親と、DAISY教科書を3回聞けば、1回音読したことになると約束しました。

こうした幼少期の日々のトレーニングは、読みの向上になりました。

子どもだったので、私はできるだけ宿題を早く終わらせたいと思い、そのため、DAISYテキストを2倍の速さで聞いていました。

その速聴が私の能力アップに非常に役立ちました。

中学では、国語、社会、理科、英語でDAISY教科書を使いました。

DAISY教科書がなければ、期末試験を乗り越えるのは難しかったと思います。

当時の学校の先生たちは、このようなICT機器の状況に慣れていなかったので、私は学校では、これらのICTツールを使っていませんでした。

スライド24
DAISY教科書によって漢字の読み方が理解できた

	←日本語で漢字はたくさんの読み方がある

	例えば

	   今日は= こんにちは,きょうは   

	教科書の各単元の内容理解が早く簡単にできた

	DAISY教科書は、語彙力アップにも貢献した

	DAISYでは、文字と音とが対応しているため、

	 その利用のたびに、脳を刺激し、読み能力がある程度改善されてきた

DAISY教科書を使うことで、DAISYツールの有用性を実感しました。

DAISY教科書で、漢字の読みを自力で学べました。

例えば、この文字「今日は」は、「きょうは」と「こんにちは」の2種類の読み方があり、文脈によって切り替える必要があります。

DAISY教科書を使うことで、テキストの内容を簡単かつ正確に理解できました。

DAISYは、語彙力を向上させました。

DAISYは音と文字が対応しているので、それが脳を刺激して、私の読み能力もある程度、改善されたように感じています。

スライド25
DAISY教科書に接することで、もっと本を読みたいと思うようになった

	少しずつ自力で勉強できるようにもなった

	今までできなかったことにもチャレンジする積極性が育った

	次第に定期試験の結果も、良くなっていった

	⇒こうしたことが、自尊心の涵養に繋がった!

DAISY教科書に接することで、もっと本が読みたいと思うようになり、徐々に一人で勉強できるようになりました。

また、今までできなかったことにも挑戦するように なり、積極的にもなりました。

次第に、試験の結果もよくなりました。

こうした良い効果が自尊心の涵養にもつながりました。

スライド26
5)最後に:私からのメッセージ

まとめです。

スライド27
眼鏡をかければ、見れる、読める、学べる!

	(*校正者注:左に資料、真ん中にレンズ、右に目があります。)

	その下にレンズを上矢印で指し、「DAISY  +  ICTインフラ  + 環境 (両親の姿勢, 先生の姿勢と技術、支援者) + 社会政策」

近眼や遠視の場合は、眼鏡をかけます。

ディスレクシアの人にとって眼鏡は、DAISY、ICTインフラ、教育環境(親の姿勢、教師の姿勢とスキル、支援者)と社会政策を組み合わせた生活環境です。

ディスクレシアの人にこのような条件が改善されれば、視覚障碍者、高齢者、上肢障害などのあらゆる障害者が必要な情報にアクセスできるようになります。

読書のバリアフリーを実現し、インクルーシブな社会を実現する重要なイノベーションなると思います。

スライド28
私の場合、幸運なことにDAISYや他の要素の絶妙な組み合わせに支えられ、大学院を修了できた

	実感的にDAISYの有効性を理解できた最初のDAISY世代といえるかもしれない

	DAISYを使うことで、「勉強が楽しい、もっと学びたい。」と思ってくれる人が増えることを望む

	障害が障害と感じない世の中になるように貢献したい

私はこのような組み合せで支えられ、大学院まで修了できました。

DAISYの有用性を確認できた最初のDAISY世代と言えるかもしれません。

DAISYを使うことで、勉強が楽しい、もっと学びたいと思う人が増えればと思います。

視力が障害と捉えられないように障害と呼ばれていることが障害と感じなくなり、自信のある分野でそれぞれが活躍できる世界になるといいと思います。

そのためには、出版社やボランティア、政府、学校など様々な人の協力が必要だと思います。

私も、このような社会に貢献したいです。

以上で終わります。