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EPUBアクセシビリティのJIS規格化について

講演者

村田 真(慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授)

講演内容

スライド1
EPUBアクセシビリティのJIS規格化について

	慶應義塾大学政策メディア研究科 特任教授

	日本DAISYコンソーシアム 技術委員会委員長

	W3C EPUB WGメンバー

	EPUBアクセシビリティ	JIS原案作成委員会委員長

	ISO/IEC JTC1/SC34/WG4(OOXML)委員長
	
	情報処理学会規格調査会 SC34専門委員会委員長

	村田真

では、EPUBアクセシビリティのJIS規格化について、発表します。

私は、慶應義塾大学の村田です。

日本DAISYコンソーシアムの技術委員会の委員長でもあります。

EPUBアクセシビリティJIS原案作成委員会の委員長です。

スライド2
下記に筆記した内容の通り

先ほど、石川先生が情報アクセシビリティについてお話しされました。

今日は、電子書籍のアクセシビリティの話をします。

比較のため、Webアクセシビリティの話をします。

まず、Webアクセシビリティに関しては、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」が総務省から出ています。

これは、一から作ったものではなく、JIS X 8341-3のWebのアクセシビリティ関するJIS規格があって、それに基づいています。

では、このJISが一からできたかというと、そうではなくて、ISO/IECのWebコンテンツアクセシビリティガイドラインから来ています。

それを翻訳したものです。

このISO/IEC規格はW3CのWebコンテンツアクセシビリティガイドラインズをISOに持っていって標準化したものです。

EPUBアクセシビリティは、JIS X 23761として、来年7月に主務大臣に申し出し、そして、ただちに官報公示されます。

来年の8月か9月か分かりませんが、来年の後半にはJIS規格になります。

JISに従って政府のガイドラインができるといいと思っています。

このJISは、ISO/IECのEPUBアクセシビリティを翻訳して作るJISです。

このEPUBアクセシビリティの最新版は、W3Cでメンテナンスしています。

Webの場合と、電子書籍の場合は、結構、構図が似ています。

スライド3
下記に筆記した内容の通り

EPUBアクセシビリティのスペックで何をやりたいのか。

防ぎたいことは、買った後で音声読み上げができない、縦書きにできない、分かち書きできない、ルビを消せない、総ルビにできない、ということが分かって、結局、自分には読めない。これが防ぎたいことです。

スライド4
下記に筆記した内容の通り

これが、実現したいことです。

まず、音声読み上げできるように作り、音声読み上げできるという認証を受け、メタデータを使って、音声読み上げができますと明示する。

今、音声読み上げの例を挙げましたが、分かち書きや縦書・横書変換や、総ルビ・パラルビ切り替え、ルビなし表示など、みんな同じです。

こういう仕組みがあると、買う前に何ができるかが分かる。

今だと、買った後にできないと分かる。それを変えたい。

それが、EPUBアクセシビリティの仕様が目指すことです。

スライド5
下記に筆記した内容の通り

このEPUBアクセシビリティは国際規格だといいましたが、正式にはISO/IEC 23761 Digital Publishing -- EPUB Accessibility -- Conformance and Discovery Requirements for EPUB Publications)という国際規格で、今年の1月にできたばかりです。

内容は、先ほど説明しましたが、あるEPUB書籍がどこまでアクセシブルか、読み上げができるのか、総ルビ表示ができるのか、縦横変換できるのか、そういうことをちゃんと指定、明示するための仕様です。

この仕様は、いろんな人が関わりましたが、主に文章を書いたのはDAISYコンソーシアムの人です。

先ほど登場された河村さんが、このコンソーシアムを実質的に設立した人で、ジョージ・カーシャーをDAISYコンソーシアムに勧誘したのも河村さんです。

EPUBアクセシビリティは、提案国は日本です。

日本が国際規格にしようという提案して、何回かの投票を経て、今年1月に国際規格になりました。そういう状況です。

スライド6
下記に筆記した内容の通り

では、このEPUBアクセシビリティが今どんなふうに使われているか、2つ例を説明します。

1つは、イタリアのLIA財団による利用。

これは、イタリアの出版社、障害者、図書館といった団体が集まってできた団体です。

ここは、ヨーロッパの中では非常に早く取り組んでいて、進んでいます。

ドイツは、イタリアの取り組みをお手本にしています。

ここ(LIA財団)は、WIPO(世界知的所有権機関)の下にあるアクセシブル・ブック・コンソーシアムの、2020年の優秀賞をもらっています。

たった2つしかないうちの1つに選ばれました。

LIAは、75以上の出版社の2万点以上の電子書籍について、それがどこまでアクセシビリティなのかを明示しています。

LIAの取り組みについては、慶應義塾大学のアドバンスド・パブリッシング・ラボのサイトに、詳しい説明、日本語のスライドもあり、ホワイトペーパーもあります。

日本語に翻訳された動画のプレゼンテーションもあります。

ぜひご覧ください。

それを見ると、何をやってるかよく分かります。

スライド7
ワークフロー
	出典: 「すべての人のための電子書籍
	 -- アクセシブルなデジタル出版
	のエコシステムを目指して –」

これはどのようなワークフローで、出版社がアクセシブルな電子書籍を作っているかです。

まず作って、EPUBチェックをかけ、その次にAceというツールを使い、そのEPUBがどこまでアクセシブルかをチェックします。

ここまでは自動処理で、そのあとLIAのオペレーターが、人間(オペレーター)がアクセシブルなのかそうじゃないのか、判断をします。

不十分で改善の余地があれば、出版社にコンタクトして直してもらいます。

十分アクセシブルになれば、メタデータでどこまでアクセシブルかを明示し、LIAの認証ラベルを付けます。

これが流通に回ります。

電子書籍カタログに入り、LIAのデータベースに入り、最終的にはLIAの電子書店、そこにこのワークフローで作られた本が全部入ります。

このLIAの電子書店だと、分かち書きのできる本を探せる。当然、イタリアなのでやってませんが、そのようなアクセシビリティ機能をもとに本を選ぶことができます。

読み上げできる本を探すとか、点字ディスプレイで表示できるものを探すとか、いろんなものがあります。

スライド8
下記に筆記した内容の通り

先ほどのはイタリアの例ですが、アメリカの例を説明します。

VitalSourceは、世界最大の電子教科書会社です。

200以上の出版社の6万5000点を超える電子教科書について、どこまでアクセシブルなのかをメタデータで明示しています。

これも、アクセシビリティの透明性における次のステップという日本語訳されたものがあるので、このパワーポイントからリンクをたどってご確認ください。

スライド9
下記に筆記した内容の通り

ここまで、EPUBアクセシビリティという技術が何をしてるかという話をしました。

ここからは法律の話です。

ヨーロッパでは、欧州アクセシビリティ指令というものができています。

これは、EUが各国に出した指令で、ヨーロッパ各国はこの法令に基づいて国内法を整備する義務があります。

これはアクセシビリティに関する具体的な要件を定めています。

当然情報アクセシビリティも含まれます。

その中に電子書籍のアクセシビリティも含まれます。

非常に具体的なことが、たくさん書かれています。

本当に信じられないほど具体的なことがいっぱい書いてあります。

これは、政府だけでなく、民間事業者にも、義務と罰則を設けています。

これは指令なので、これ自体は罰則を課すことはできませんが、各国はこれに従って、罰則のある国内法を作る義務があります。

詳細は、国会図書館から出ている「EUのアクセシビリティ指令」という資料をご覧ください。

スライド10
達成手段としてEPUBアクセシビリティが認知?
	・EPUB Accessibility - EU Accessibility Act Mapping (W3Cノート)
	 ・EAAの条文ごとに、EPUBアクセシビリティ仕様のどの部分を用いれば達成できるかを示したもの
	・ヨーロッパ出版者連盟から欧州委員会への公開書簡
	 ・EAAの要件を満たすための仕様として承認することを要請

欧州アクセシビリティ仕様に従うには、どうすればいいのか。

今、世の中のトレンドは、EPUBアクセシビリティを使ってちゃんとやれば、欧州アクセシビリティ指令を満たす、そういうふうに認めてくれと、ヨーロッパ出版社連盟が、欧州委員会に要請しています。公開書簡を出しています。

その公開書簡は、W3Cのノートを参照していて、そのノートは、EPUBアクセシビリティの技術仕様と、EUアクセシビリティアクトの欧州アクセシビリティ指令との対応関係を示したものです。

このノートを公開書簡から参照しています。

これは今進行中のことで、いつになったら完全に決着するのか私では分かりませんが、もう少しかかると思います。

一番難しいのは、さっき言った認証を誰がやるかです。

当然、お手盛りだと意味がないので、認証を誰がやるかが問題になります。

スライド11
JIS規格化
	規格番号 	JIS X 23761
	名称	EPUBアクセシビリティ - EPUB出版物の適合性と発見性の要件
	発行時期 	2022年7月に申出
	追加内容 	日本語固有のアクセシビリティ要件について、参考情報を追加する。
	原案作成委員会: 	2021年7月1日に発足し、委員長は村田が務めている。
		参加希望は歓迎する。

ここからJIS規格について説明します。

当然、日本が提案国なので、JIS規格にします。

JISの番号は取られていて、来年7月に申し出、そしてその後、審議なしでJIS規格になるはずです。

単にISO/IECの国際規格を翻訳するだけでなく、日本固有の要件、例えば分かち書きや縦横切り替えなど、参考情報を追加する予定です。

この原案作成委員会は今月の1日に発足したばかりです。委員長は私です。

ミーティングはまだやっていません。これからです。

これからでも参加希望は歓迎します。

全員を入れるわけにはいかないのですが、今の時点のメンバーはまだ少し偏りがあるので、いろんな方に入っていただきたいです。

スライド12
下記に筆記した内容の通り

最後にお願いしたいのは、車輪を再発明しないことです。

先ほど説明した、LIAの日本でやったときの最後のスライドにも、このことが書いてあります。

つまり、EPUBアクセシビリティという国際規格、JIS、W3C仕様があるので、それを使ってやりましょう、と。

それを知らないで、もしくは意図的に無視して、再び一から作ってはいけません。

石川先生の委員会で作った障害者基本計画も、そういう規格に基づく情報アクセシビリティを求めています。

それ以外でも、独自仕様を使うと、非関税障壁になると思うので、ぜひこれはEPUBアクセシビリティを使って、それでどうするか、お考えください。

今日は、本当にEPUBアクセシビリティのさわりというか、とっかかりというか、非常にハイレベルなオーバービューしかできませんでした。

この後の発表で、工藤さんから、もう少し詳しい話があると思います。

ただ、それほどめちゃくちゃ詳しいわけではないです。

今から数か月後に、情報処理学会規格調査会のセミナーとして、EPUBアクセシビリティを取り上げます。

そのときに、もっと詳しい説明ができると思います。

それ以前に詳しいことが知りたければ、私の発表の中のリンクや、日本DAISYコンソーシアムの技術委員会のいろんな資料を見ていただくと、かなりのことが分かると思います。

でも、その先、日本の製作フローをどう変えるとか、実際にご相談いただければと思います。

JDCのサイトで質問を受けるようになっているので、そちらにどうぞ。