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すべての人のためのアクセシブルな電子書籍とは

基調講演者

石川 准(静岡県立大学 国際関係学部教授)

講演内容

スライド1
情報アクセシビリティに関わる法制度の現状と課題
静岡県立大学 国際関係学部 教授

	内閣府 障害者政策委員会 委員長

	国連 障害者権利委員会 前副委員長
全国高等教育障害学生支援協議会 代表理事

	石川 准

こんにちは。

ご紹介ありがとうございます。

私からは「情報アクセシビリティに関わる法制度の現状と課題」というテーマで、30分ほど話します。

スライド2
情報アクセシビリティとは
アクセシビリティとは、障害者が他の人と同じように、建物、部屋、トイレなどの物理的施設・設備、交通機関、情報通信機器・サービスを利用できること
	
情報アクセシビリティとは、障害者が他の人と同じように情報通信機器・サービスを利用できること 障害者権利条約第九条 施設及びサービス等の利用の容易さ(Article 9: Accessibility)が効果的なアクセシビリティ施策をとるよう締約国に義務づけている
	
・デジタル・ディバイドの解消のことではない
	
・ウェブサイトの音声読み上げ対応のことだけをいうのではない

障害者権利条約という、国連の人権条約があり、その第9条で、条約の批准国・締約国に対し、効果的なアクセシビリティ施策をとるよう義務づけられています。

そこでのアクセシビリティは、障害者がほかの人と同じように建物、部屋、あるいは、トイレなどの物理的な施設設備、さらには交通機関、そして情報通信機器、情報通信サービスを利用できることという意味で用いられています。

また、情報アクセシビリティといった場合、その中の、情報通信機器及び情報通信サービスに障害のある人が、障害のない人と同様に利用できるようになること、という意味で使われます。

したがって、情報アクセシビリティとは、デジタル・ディバイドの解消ではない。 また、Webサイトの音声読み上げ対応のことだけを言うのでもありません。

スライド3
国連の主要人権条約半世紀をかけて9つの主要人権条約を制定
・人種差別撤廃条約		(1965年採択)(1995年日本加入)

	・自由権規約			(1966年採択)(1979年日本批准)

	・社会権規約			(1966年採択)(1979年日本批准)

	・女性差別撤廃条約		(1979年採択)(1985年日本批准)

	・拷問等禁止条約		(1984年採択)(1999年日本加入)

	・子どもの権利条約		(1989年採択)(1994年日本批准)

	・移住労働者権利条約	(1990年採択)

	・障害者権利条約		(2006年採択)(2014年日本批准)

	・強制失踪者保護条約	(2006年採択)(2009年日本批准)

国連は半世紀をかけて、9つの主要人権条約を作ってきました。

その中でも障害者権利条約は、最も新しい人権条約の1つです。

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障害者権利条約

	・障害者の人権に関する初めての国際条約

	・障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的

	・障害者の権利を実現するための締約国の実施義務について規定

	・遅れてできた人権条約だからこそ新しい考え方(障害の社会モデル)を導入できた

障害者権利条約は、障害者の人権に関する初めての国際条約にあたります。

しかもほかの人権条約に比べて、だいぶ遅れたという条約でもあります。

ですが、遅れたことによって、今日的な新しい考え方を導入することができたと言えることもできます。

新しい考え方は、社会モデルという考え方です。

社会モデルについて少し話します。

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障害はどこにあるか?

	足?

	階段?

障害はどこにあるかという問いを、皆さんに考えていただきます。

階段と足のイラストを、パワーポイントで示しています。

車いすの人が階段の前で立ち往生しているイメージです。

さて、この場合、障害はどこにあるでしょう。

スライド6
障害はどこにあるか?

	医学モデルと社会モデルの答え

	医学モデルの答え

	「足に障害」

	社会モデルの答え

	「階段が障壁」

	「障壁こそが障害」

2つの答えが可能です。

まず、医学モデルの答え、それは足に決まっているというものです。

一方、社会モデルの答えは、そうではなくて、むしろ階段のほうだと主張します。

階段が障壁であり、それが障害となっているということです。

スライド7
障害はどこにあるか? 別の例

	目が見えない

	本

	医学モデルの答え

	「目」

	社会モデルの答え

	「本」

	耳がきこえない

	電話

	医学モデルの答え

	「耳」

	社会モデルの答え

	「電話」

次の場合はどうでしょうか。

目が見えない人と本の組合せ。

それから、耳が聞こえない人と電話の組合せ。

障害はどこにあるでしょうか。

医学モデルの答えは目と耳。

社会モデルは紙の本と電話になります。

障害者の権利条約は、社会モデルの考え方に立って作られています。

これが今日的な新しい考えだと申し上げている所以です。

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医学モデルと社会モデルの考え方の違い

	以下表形式です。

	医学モデル 健常者 配慮の要らない人

	医学モデル 障害者 配慮の要る人

	社会モデル 健常者 (既に)配慮されている人

	社会モデル 障害者 (未だ)配慮されていない人

医学モデルと社会モデルの考えの違いは、次のようにさらに述べることも可能です。

医学モデルでいう健常者は、配慮の要らない人。

障害者は配慮を必要としてる人、配慮の要る人。

社会モデル的な考え方だと、健常者は既に配慮されている人、必要な環境が提供されている人。

障害者は、いまだ必要な環境が提供されていない、配慮されてない人、そのように考えられます。

スライド9
社会的障壁の解消は社会の責務

	障害者の人権を守るためには、社会は、

	障害者が直面している社会的障壁を取り除かなければならない

したがって、社会モデルの考え方に立てば、社会的障壁の解消が社会の責務です。

つまり、障害者の人権を守るためには、社会は障害者が直面している社会的障壁を取り除くように努めねばならない、という考え方に帰着すると言えます。

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情報アクセシビリティ 代表的なもの

	ウェブサイト

	ウェブアプリ

	PCアプリ

	モバイルアプリ

	電子書籍

	電子教科書

	電子文書

	テレビ

	映画

情報アクセシビリティの代表的テーマを次に示します。

まず、WebサイトとWebアプリケーション、次がPCアプリとモバイルアプリ、次に電子書籍、電子教科書、電子文書、4つめがテレビ、映画。まだ、他にもたくさんありますが、代表的なものとして示しました。

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法制度 ウェブサイト・ウェブアプリ(日本)

	-ウェブサイトとウェブアプリケーションのアクセシビリティを進める法制度は未整備

	-指針は部分的にある

	みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年)

	-地方自治体ウェブサイトのアクセシビリティ対応に関する総務省の指針

	-中央省庁のウェブサイトのアクセシビリティは各省庁がウェブアクセシビリティ方針を示して取り組むことになっている

	-民間のウェブサイトのアクセシビリティを進める法制度はない

WebサイトとWebアプリに関する日本の法制度を見てみます。

日本では、このアクセシビリティを進めるための法制度は未整備な状態です。

ただし、指針は部分的にあります。

「みんなの公共サイト運用ガイドライン」という2016年に改訂された指針があり、地方自治体のWebサイトのアクセシビリティ対応に関する総務省の指針として、地方公共団体はこの指針を受け止め、それぞれ自治体のホームページ、Webサイトのアクセシビリティ対応を段階的に進めています。

また、中央省庁のWebサイトのアクセシビリティについては、各省庁がWebアクセシビリティ方針を示して取り組むことになっている。

これについては障害者基本計画で各中央省庁は取り組むことになっています。

民間のWebサイトのアクセシビリティを進める法制度は、指針も含めて、ないという現状です。

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法制度 ウェブサイト・ウェブアプリ(アメリカ)

	・障害を持つアメリカ人法(ADA)(1990年)

	・リハビリテーション法508条(1998年)

	・航空アクセス法(2013年改正)

次は、アメリカの場合はどうか。

障害を持つアメリカ人法、ADAという法律があり、リハビリテーション法508条があり、航空アクセス法という、航空会社のWebサイトのアクセシビリティに関わるものがあります。

アメリカの法律に基づいて、Webのアクセシビリティに関する訴訟もいくつかあります。

スライド13
アメリカの訴訟事例 

	Netflix

	2010年、Netflixはストリーミングビデオに字幕が付いていないものがあるとして全米ろう者協会(NAD)から提訴された。

	ADAが、オンラインでのみ事業展開しているビデオコンテンツに適用されると解釈された初めての事例。

	2012年に法的拘束力のある同意判決を受けいれ、過去の動画にも遡及して100%字幕を付与することになった。

	ウォルトディズニー

	ディズニーリゾートのWebサイトがADAに反しているという理由で民事訴訟を提起された。2012年に和解が成立。

有名なものとして、Netflixやウォルト・ディズニーに対して訴訟が起こされています。その結果として、各社がWebサイトのアクセシビリティ向上に努力しています。

スライド14
法制度 PCアプリ・モバイルアプリ(日本)

	PCアプリやモバイルアプリのアクセシビリティを進める法制度は未整備

	PCアプリの例

	オフィスアプリ、ウェブブラウザ、会議アプリ、コラボレーションアプリ、グループウェア、業務システム

	モバイルアプリの例

	電子マネー決済、ネットバンキング、チケット購入、タクシー配車、ショッピングアプリ

次に、PCアプリとモバイルアプリのアクセシビリティについて、これを進める法制度が日本にあるか。

これも日本ではありません。

PCアプリ、モバイルアプリとは、どういうものかというと、オフィスアプリとかWebブラウザ、今日使ってる会議アプリ、コラボレーションアプリ、グループウェア、業務システムなど。

モバイルアプリとしては、例えば電子マネー決済、ネットバンキング、チケット購入、タクシー配車、ショッピングアプリなど、いろいろあります。

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法制度 PCアプリ・モバイルアプリ(アメリカ)

	・障害を持つアメリカ人法ADA(1990年)

	・リハビリテーション法508条(1998年)

	・21 世紀の通信と映像アクセシビリティ法(2010年)

アメリカの法制度は、障害を持つアメリカ人法やリハビリテーション法508条、21世紀の通信と映像アクセシビリティ法などがあります。

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アメリカの訴訟事例

	マクドナルド

	2017年4月、視覚障害者の個人が、スマートフォンのアプリやホームページのWebアクセシビリティが不十分であり、ADAに反しているとして、マクドナルドを訴えた。

アメリカの訴訟事例ですが、マクドナルドの事例がよく知られています。

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	法制度 電子書籍、電子教科書、電子文書(日本)

	・マラケシュ条約(2018年批准)

	・教科書バリアフリー法(2008年)

	・読書バリアフリー法(2019年)
 

	-教科書バリアフリー法に基づき、マルチメディアデイジー教科書がディスレクシアの児童、生徒に提供されている

	-読書バリアフリー法は、国は、アクセシブルな電子書籍の販売が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格の普及の促進等の施策をとるものとすると規定している

次に、電子書籍、電子教科書、電子文書で、日本ではそのアクセシビリティを進めるための法制度の課題があるか。

マラケシュ条約を日本は批准しているし、教科書バリアフリー法や、読書バリアフリー法が、最近成立しています。

教科書バリアフリー法に基づいて、マルチメディアDAISY教科書がディスクレシアの児童、生徒に提供されている。

読書バリアフリー法は、国はアクセシブルな電子書籍の販売が促進されるように

技術の進歩を適切に反映した規格の普及の促進等を施策するものとすると規定しています。

これから、というところだと思います。

スライド18
法制度 電子書籍、電子教科書、電子文書(アメリカ)

	障害を持つアメリカ人法ADA(1990年)

	リハビリテーション法508条(1998年)

	障害のある個人のための教育法(2004年改正)

アメリカの法制度は、ADAのほかに、リハビリテーション法508条があり、障害のある個人のための教育法などが、電子教科書のアクセシビリティに関する法制度と言っていいと思います。

スライド19

	アメリカの訴訟事例

	アリゾナ州立大学

	2009年に、NFBとACBが、アリゾナ州立大学が、電子教科書リーダーとして、アクセシブルでないKindle 
DXを導入するのは視覚障害学生への差別となると訴訟を起こした。
	2010年に和解。

	これを発端として、2010年に司法省と教育省が連名で米国の全大学の学長宛に通知を出した。

	最新のICT機器やICT技術を導入する際は、障害学生の授業を受ける権利を侵害しないように留意しなければ、ADAやリハビリテーション法508条に違反することになると大学に伝える内容。

アメリカの訴訟事例として、有名ですが、アリゾナ州立大学がKindle DXという当時のKindle端末を導入しようとしたとき、ADA違反だといって、司法の場で司法判断が求められたケースが有名です。

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法制度 テレビ・映画(日本)

	・放送法(1997年改正)

	・文化芸術基本法(2017年改正)

	-NHKと民法キー局の地上波では、字幕付与可能番組にはほぼ100%字幕が付与されている

	-映画の主要作品には字幕が付けられている

	-音声解説も増えている

テレビや映画の字幕等は、放送法および、文化芸術基本法といった法律が関わります。

NHKと民法キー局の地上波では、字幕付与可能番組には、ほぼ100%字幕が付与されています。

映画の主要作品にも、字幕が付けられていることが、かなり多くなっています。

また音声解説も、しだいに増えてきています。

一見、成果が上がっている分野だと思います。

スライド21
法制度 テレビ・映画(アメリカ)

	・障害を持つアメリカ人法ADA(1990年)

	・テレビデコーダー法(1990年)

	・電気通信法(1996年)

	・21 世紀の通信と映像アクセシビリティ法(2010年)

アメリカの場合は、ADAとか、テレビレコーダー法、電気通信法、21世紀の通信と映像アクセシビリティ法などがあります。

こちらも、テレビ番組や映画の字幕付与率が非常に高い。

日本よりもずっと高くなっています。

スライド22
アメリカの訴訟事例

	Amazon

	2015年10月、Amazon は190,000を超えるテレビ番組や映画に字幕を付けることをNADと約束した。

	Amazonプライムビデオはすでに完全字幕化されていたが、新たにAmazonのインスタントビデオのアーカイブにも対応することになった。

次。

ざっと見てきた話を踏まえて、電子書籍について、少しお話しします。

スライド23
Amazon Kindle

	リフロー型Amazon Kindle電子書籍はアクセシブル

	Kindle FireにはVoice 
Viewなどのアクセシビリティ機能が組み込まれている 

	iOSやAndroidではモバイル機器に組み込まれたVoice OverやTalk Backなどのアクセシビリティ機能とKindleアプリの連携によりアクセシビリティ機能を提供している

まず、Amazon Kindleです。

リフロー型のAmazon Kindle電子書籍は、それなりにアクセシブルであると言っていいと思います。

Kindle Fireには、Voice Viewなどのアクセシビリティ機能が組み込まれています。

モバイル環境では、ファームウェアに組み込まれたアクセシビリティ機能とKindleアプリの連携で、音声読み上げをはじめとしたアクセシビリティ機能が実装されて、提供されています。

スライド24

	Amazon社のアクセシビリティ諮問会議 

	シアトルのAmazonの本社 「Day 1」 ビルと球体温室型ワークスペース「The Spheres」 

	Day 1 ビル内の壁面に、木の下にしゃがんでKindleを読む少年のオブジェと、歴代のKindle端末が展示されている

Amazon社が実際にやっているもので、Amazonアクセシビリティアドバイザリーカウンシルがあり、ユーザーや専門家の意見を学びつつ、アクセシビリティ機能の改善を図るPDCAサイクルを自分で回している。

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Amazon Kindleのアクセシビリティ機能の課題 

	・ナビゲーション機能が弱い 

	・ルビ非対応 

	・固定レイアウトの書籍はアクセシブルでない

Amazon Kindleのアクセシビリティ機能にも課題があります。

3つ課題を掲載しました。

1つめは、ナビゲーション機能が弱い。

次の章、前の節に、簡単にホットキーで移動することができない。

目次から選ぶことは、一応できる。

いわゆる、構造的な読書の点への対応が弱い。

2つめに、ルビに非対応であること。

これも問題としてあります。

3つめが、固定レイアウトの書籍はアクセシブルでない。

まったくアクセシビリティ対応ができていない現状があります。

そこには述べていませんけども、これはモバイルのプラットフォーム側の問題でもあります。

iOSをはじめとして、日本語TTSの読み上げが、今日の最先端のものに比べるとだいぶ見劣りする問題があります。

スライド26

	障害者差別解消法 

	平成25年(2013年)制定 

	差別とは 

	・不当な差別的取り扱いをすること 

	・合理的配慮を提供しないこと

次に、障害者差別解消法について、少し話します。

平成25年に制定されました。

差別とは、不当な差別的取り扱いをすること、合理的配慮を提供しないこと、この2つが差別として、差別行為を禁止しています。

スライド27
障害者差別解消法の改正

	令和3年(2021年)改正 

	・民間事業者も合理的配慮を提供することが義務となった

障害者差別解消法は今年の5月に改正され、民間事業者に対しても、合理的配慮の提供を義務づける。

今までは努力義務だったものを義務化する改正が行われました。

スライド28
「不当な差別的取扱い」の禁止

	この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別的取り扱いをすることを禁止している

	差別的取り扱いとは、契約、販売、入店、乗車、参加、利用などを拒む、時間帯や場所を制限する、障害者にだけ追加条件を付すことなど

不当な差別的取扱いの禁止について。

この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別的取り扱いをすることを禁止しています。

差別的取り扱いとは、契約、販売、入店、乗車、参加、利用などを拒む、あるいは、時間帯や場所を制限する、障害者にだけ追加条件を付すことなどを差別的取り扱いと見なしています。

スライド29
「不当な差別的取扱い」の具体例

	・障害を理由に、学校の受験や、入学を拒否する

	・仲介業者が、アパートのオーナーに確認せずに、紹介できる賃貸物件はないと言って断る

	・介助者がいなければ安全に責任を持てないとして参加を断る

次が、不当な差別的取扱いの具体例について。

今、3つ挙げました。

障害を理由に、学校の受験や入学を拒否、拒むこと。

2つめは、仲介業者が、アパートのオーナに確認せずに紹介できる賃貸物件はないと断るケースであったりだとか

3つめ、介助者がいなければ安全に責任を持ていないとして単独では参加を断るというのが、比較的分かりやすい不当な差別的取り扱いとなります。

スライド30
「合理的配慮」の不提供の禁止

	合理的配慮とは、役所や事業者が、社会的障壁を取り除くために、申し出に応じて、過重な負担とならない範囲で提供しなければならない必要かつ合理的な配慮のこと

次が、合理的配慮の不提供の禁止についてです。

合理的配慮とは、役所や事業者が社会的障壁を取り除くために、申し出に応じて、過重な負担とならない範囲で提供しなけいればならない必要かつ合理的な配慮のこと

スライド31
「合理的配慮」の具体例

	ろう者の参加者の求めに応じて、講演に手話通訳を用意する

	視覚障害者の客の求めに応じて、店員が店内の移動と買い物をサポートする

	車椅子利用の障害者の求めに応じて、エレベータのない駅に社員を配置して車椅子を運ぶ

分かりにくいので、合理的配慮の具体例を3つ、示します。

1つは、ろう者の参加者の求めに応じて講演者に手話通訳を用意する。あるいは、パソコンで字幕を付けるサービスを提供する。

2つめが、視覚障害者の客の求めてに応じて、店員が店内の移動の介助等を行う

3つめは、車いす利用の障害者の求めに応じて、エレベータのない駅に社員を配置して車椅子を運ぶといったことがその例という風に考えていいと思います。

スライド32
合理的配慮の意味

	Reasonable accommodationの日本語訳が合理的配慮

	合理的配慮の英語訳?がReasonable consideration

	「配慮」とは「気遣い」や「心配り」のこと?

	いいえ、違います。

	「合理的配慮」は「合理的調整」と読みかえてください。

合理的配慮の意味です。

配慮というと、気遣いや心配りという意味合いが強く感じられると思いますが、そういう意味ではありません。

合理的配慮とは、合理的調整や合理的変更と読み替えて理解していただきたいと思います。

スライド33
合理的配慮の提供は建設的対話を通じて

	行政・事業者と合理的配慮を求める障害者が、建設的対話によって、よい方法を一緒に考えることが重要

	行政機関による相談と調整の仕組みを機能させて、紛争を未然に防いだり、速やかに解決することが重要

合理的配慮の提供は、建設的対話を通じて行うのが望ましいと、差別解消法の基本方針で、考え方を述べています。

行政・事業者と合理的配慮を求める障害者が、建設的対話によって、よい方法を一緒に考えることが重要としています。

行政機関による相談と調整の仕組みを機能させて、紛争を未然に防いだり、速やかに解決することが重要としています。

スライド34
将来志向非金銭的救済(FNR)

	将来指向非金銭的救済とは、個別的な対応として行われる合理的配慮の提供をきっかけとして、申し出た人以外にも利益が及ぶように、環境整備を行うこと

	社会的障壁が未然に取り除かれるようになれば、人権侵害や紛争事案の予防という観点でも有意義

次のスライドは飛ばして、その次です。

スライド35
ウェブサイトとモバイルアプリも店舗 

	ウェブサイトとモバイルアプリも事業者と客の間のインターフェースでありオンラインの店舗 

	差別解消法の対象となる 

	アメリカでは、ウェブサイトもADAの対象となるという司法省の解釈が1990年代後半から今日まで度々示されてきた
	画像PDFやキャプションのない動画が情報へのアクセスの妨げとなっている場合は、障害者差別解消法に基づき、合理的配慮としてWordファイルやExcelファイル、キャプションの付いた動画の提供を求めることができる

Webサイトとモバイルアプリも、また店舗だという点を強調しておきます。

Webサイトとモバイルアプリも、事業者と客との間のインターフェースであり、オンラインの店舗にあたると考えられます。

したがって、差別解消法の対象となる。

アメリカでは、WebサイトもADAの対象というような司法省の解釈が1990年代後半から今日まで、たびたび示されています。

画像PDFやキャプションのない動画が情報へのアクセスの妨げとなっている場合は、障害者差別解消法に基づき、合理的配慮としてWordファイルやExcelファイル、あるいは、キャプションの付いた動画の提供を求められた場合、これを提供するのも合理的配慮というように言えると思います。

スライド36
情報アクセシビリティ法が必要 

	環境整備と合理的配慮は車の両輪 

	差別解消法の対象となる 

	以下表形式です。
	交通・建物 環境整備 移動円滑化法 

	交通・建物 合理的配慮 差別解消法 

	交通・建物 環境整備 情報アクセシビリティ法 

	交通・建物 合理的配慮 差別解消法

出版社に求められる合理的配慮について。

電子書籍ではなく、紙の本の場合です。

印刷物の読みに障害のある人が、Kindle版などのアクセシブルな電子書籍として出版されていない紙版の本を購入し、出版社に電子データの提供を求めるのは合理的配慮を求めることに当たるというように考えています。

ファイル形式はいろいろありますが、より望ましいのは、構造的情報を持つ形式になります。

そして、情報アクセシビリティ法がやはり必要だと考えます。

環境整備と合理的配慮は車の両輪として重要で、これが交通や建物のアクセシビリティの分野だと、移動円滑化法、つまり新バリアフリー法、差別解消法という2つの法律が両輪となって、環境整備と合理的配慮の提供として2つの機能をそれぞれが担って、進んできていると思います。

情報アクセシビリティについては、環境整備を進めていく法、根拠法が未整備なので、差別解消法1本になります。それは差別解消法だけで考えていくというのは荷が重いと思います。

スライド37
デジタル教科書はアクセシブルでなければならない 

	GIGAスクール構想とは 

	多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想 

	アメリカでは、ウェブサイトもADAの対象となるという司法省の解釈が1990年代後半から今日まで度々示されてきた
	それなら、電子教科書と端末の公共調達では、アクセシビリティ機能が基準に達していることを選定の要件に加えるべき

そして最後のスライドです。

デジタル教科書はアクセシブルでなければならないと考えます。

GIGAスクール構想は、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想とされています。

そうであるならば、電子教科書と端末の公共調達では、アクセシビリティ機能が基準に達していることを選定の要件に加えるべきと考えています。

このあとのご報告者の議論と合わせて、質疑応答の時間がありましたら、また発言させていただきます。

私からの発言は以上です。

ありがとうございました。