はがき通信ホームページへもどる No.103 2007.1.25.
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 ひとくちインフォメーション 

 ★ 本の紹介

 『痛みと麻痺を生きる−脊髄損傷と痛み』
  脊損痛研究会 著 日本評論社 出版 1,680円(税込み)
 2004年におこなわれた「日本せきずい基金」の調査プロジェクト「脊髄損傷に伴う異常疼痛に関する実態調査」の延長上で、第三者にはなかなか理解されない脊損痛について広く知ってもらうことを目的に編まれた。
 概要を紹介すると−
 第Ⅰ章 脊髄損傷と痛み:痛みを抱える脊損者の立場から、脊髄損傷とそれに由来する疼痛の病態と生理を大まかに解説。
 第Ⅱ章 痛みと麻痺を生きる:損傷部位、損傷のタイプ、痛みのタイプ、疼痛緩和治療(とうつうかんわちりょう)の経験、医療との距離の取り方、などさまざまなタイプをカバーするよう考慮しながら12例の脊損者の闘痛体験を紹介。
 第Ⅲ章 慢性痛への取り組み:難治の慢性痛や脊損痛に関する研究の歴史を振り返り、現行の疼痛緩和法の背景を探る。
 寄稿:脊髄損傷者の異常疼痛に寄せて 松井和子
 第Ⅳ章 痛みとどう向きあうか:当事者サイドと医療サイドへの問題提起
 当初、「疼痛緩和法の現在」という章も予定されていたが、脊損痛への適応として確立したものは極めて限られており、情報提供の仕方には限界があるため、断念した。そのかわり関連情報を「用語解説」に盛り込んだ。
 痛みは個々人の主観的体験からしか出発できない。本書のメインは第Ⅱ章である。ここには、「はがき通信」の常連投稿者も登場している。
 「こうすれば痛みは治る!」というわけにはいかないが、知覚に関わる問題に焦点をあてて脊髄損傷を捉え返す作業としてご一読いただきたいと思う。                        
 (『痛みと麻痺を生きる』編集責任者:Y.A.)
                     

 ★ 脊髄損傷の治療に道 神経再生促す化合物を発見

 損傷した脊髄(せきずい)の神経機能を再生させる化合物を、慶応義塾大の岡野栄之教授(生理学)らの研究チームがラットの実験で突き止めた。交通事故やスポーツ外傷による脊髄損傷の根本的な治療はまだ難しいが、将来の治療薬開発に道を開く成果だ。12日付の米医学誌ネイチャー・メディシン電子版で発表した。
 チームの中村雅也・同大講師によると、脊髄損傷患者は年間4000〜5000人発生している。脊髄内の神経は一度切れると再生しないため、再生を促す手法の開発が課題になっていた。
 動物の体には神経の再生を阻害するたんぱく質(セマフォリン3A)がある。胎児期に神経が不必要な部分に伸びないよう制御するためだ。このたんぱく質を抑制する化合物(SM216289)は03年、大日本住友製薬が土壌の真菌から見つけていた。
 脊髄損傷でもセマフォリン3Aが出て、神経再生を妨げると考えられている。そこで脊髄神経を切断したラット20匹にセマフォリン3Aの働きを抑える目的で、SM216289を投与したところ、いずれも足が動くようになり、部分的だが神経もつながった。
 中村講師は「この化合物だけで完全に運動機能を回復させるには至らないかもしれないが、将来ほかの治療法を併用すれば、飛躍的な効果が期待できるのではないか」としている。
 [理化学研究所の近藤亨・分化転換研究チームリーダーの話]
 今回の結果は、SM216289による損傷部位の機能回復が有効であることを示唆している。残る問題は副作用で、まだ必要な研究は残されているが、脊髄損傷に対する治療薬になる可能性を秘めている。
 (情報提供:平成18年11月13日 asahi.com)







【編集後記】


 今年もどうぞよろしくお願いいたします。今年も皆様からのご投稿を心よりお待ち申し上げております。
 向坊さんが昨年お亡くなりになり、「新年明けましておめでとうございます」という気分には、100パーセント正直なところなれない。
 昨年の広島懇親会後、実行委員の方々が体調不良に見舞われた。○○さんのメールに「あくまでジョークですよ」ということでこんな川柳(?)が……『総倒れ 命を削る 懇親会』。「新年早々、こんなところで何暴露してるねん!(なぜか関西弁)」とお叱りを受けそうだが、この笑うに笑えない、でも実行委員経験者は思わず「ハハハ」と苦笑してしまうこの川柳(?)をボツにするには惜しい! と、瀬出井が考えただけの理由です。ゴメンナサイ! 懇親会の実行委員は確かに大変だが、決してそれだけではない。終わった後の充実感と達成感……(打ち上げのビールのうまいこと!)その経験は、その後の大きな自信につながる。
 松井先生のごあいさつにもあるように「今できることは先延ばしにせずしておこう、また会えるからと思わず、会えるときに直接会って交流しよう」。一年に一度、命を削ってでも仲間たちの笑顔に会いたいと思う。体調が本当によいというときがなくなってから、その気持ちはさらに強くなった。
 「はがき通信」はただの情報交換誌の購読者ではなく、本当に“仲間”だ。年に一度しか会わなくてもすぐに打ち解けられる、旧友のような存在。私は「はがき通信」のおかげで、全国にたくさんの素晴らしい仲間を得ることができた。「はがき通信」を創設された故向坊さん、松井先生、向坊さんを長年支えてこられた太田さんに年頭に当たり改めて心から感謝申し上げたい。
 次号の編集担当は、藤田忠さんです。

編集委員:瀬出井 弘美

………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 東京都清瀬市国立看護大学校
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2006.11.25.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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