日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.211

授業力向上につなげる基礎・基本

 
 「授業力」、「教師力」、「実践力」などの言葉は、教育雑誌等でよく見かけるキーワードです。しかし、その言葉の意味や定義などを曖昧なまま使っていることはないでしょうか。
  巻頭言では、村田茂氏から「授業力とは何か」ということを明確に提言していただき、子供理解の重要性と授業力向上のポイントなどを具体的にご助言いただきました。
  本特集号では、特に、初任者や肢体不自由教育の経験の浅い教員が抱く課題や悩みなどを解決するために、肢体不自由教育の授業づくりに必要不可欠な「個別の指導計画」、「自立活動」、「教科指導」、「健康面に配慮した授業」、「チーム・ティーチング」の五つの内容について、具体的なポイントと実践例等を示しながら、分かりやすく論じていただきました。
  よりよい授業を行うためには、「適切な実態把握」、「障害特性の考慮」、「目標設定」、「共通理解」などが重要であることを改めて感じました。
  日々の授業でアイデアが浮かばなかったり、授業づくりに悩んだりした時に、本特集号を一読して、明日からの授業に生かしていただければ幸いです。

(古山  勝)

 

・写真
学校大好き


・巻頭言
授業力の向上を図るために
村田  茂
国立特別支援教育総合研究所名誉所員

・解説
肢体不自由教育における授業の現状と課題の解決に向けて
編集委員会

個別の指導計画を生かす授業
保坂美智子
山梨県立甲府支援学校教諭


自立活動の授業
吉川 知夫
十文字学園女子大学特別支援教育センター准教授

教科指導の授業
−小学部の国語と算数を中心に−
尾﨑 美惠子
千葉県立袖ケ浦特別支援学校教諭

健康面に配慮した授業
―医療的ケアの必要な児童生徒を中心に―
松浦 雅子
千葉県立野田特別支援学校教諭

チーム・ティーチングを生かす授業
内田 俊行
広島県教育委員会教育部特別支援教育課指導主事
元広島県立広島特別支援学校教諭

・図書紹介
特別支援教育におけるICFの活用 Part3

・キーワード
目標に準拠した評価
一木  薫
福岡教育大学

・連載講座
見ることへの配慮が必要な子供の指導(2)
 見えにくさをもった障害の重い
 子供の視機能の特性と実態把握
齊藤由美子
国立特別支援教育総合研究所主任研究員

・講座Q&A
摂食指導・過敏への対応

 
・人物紹介
教職という仕事
重光  豊
京都市教育委員会指導部総合育成支援課参与
(元京都市立呉竹総合支援学校長)
・スヌーズレンの基礎知識 2
スヌーズレンの定義と概念
姉崎  弘
三重大学教育学部教授
・ちょっといい話 私の工夫
五感で感じた食育月間
―食を身近に感じた一か月―
井上 優子・佐藤 大和
神奈川県立三ツ境養護学校教諭
・学校保健と医療的ケアの今
感染症の子供への集団学習の取組
―院内学級の実践を通して―
斉藤 淑子
金沢大学非常勤講師
(元特別支援学校院内学級担当教諭)
・特別支援教育の動向
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の平成25年度に実施する研究の紹介
長沼 俊夫
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
 
・読者の声
 
VOCAを活用したひらがな学習
中村 範子
熊本県立松橋支援学校教諭

 24年度の2学期から熊本大学の支援を受け、ひらがなの学習に「トーキングエイド for iPad(VOCA)」を使ってきました。私が担当していた小学部6年生の子供は、これまで文字カードと絵カードのマッチングやパソコン学習(手紙、作文等の作成)に取り組んできました。よく使うひらがなの文字(自分、家族、先生の名前など5文字程度の単語)を覚え始めていましたが、パソコンキーボードのひらがなJIS配列は目的のキーが探しにくく、また手指の力が弱くて押しにくいため、将来につなげていく指導に悩んでいました。
  iPadは、彼の弱く小さい指の動きに合った操作のしやすいものでした。50音表からの入力は文字が探しやすく、音声での確認もできます。身近なものや人、好きなものの言葉と文字を繰り返し結びつけながら日々学習した結果、50音のうち30音程度は援助なしで入力できるようになりました。
  初めて会う人とのやりとりの場面では「○○です、よろしく」「なまえ?」「おうち どこ?」と自分から入力して質問できます。これまでは、コミュニケーションブックから単語(絵・写真)の指さしで伝えていましたが、文でも伝えられるようになってきました。
  人との関わりが大好きな彼には、自分の思いが相手に伝わり、やりとりできることが、とてもうれしいようです。
  今後はひらがなをマスターし、気持をより豊かに伝えられるようになることを目指して、学習に取り組んでいきたいです。


熱い体育の授業を目指して

宜野座 雄
沖縄県立泡瀬特別支援学校教諭

 金曜日の午前9時前、体育館の隅で、朝の会が始まります。その後、誰に言われるともなく、生徒たちがランニング用のコーンを設置し、ランニングが始まります。9時になると、体育委員の「しゅうごーう!」の声で、互いに声掛けし合いながら整列します。
  これは、本校中学部の体育の授業で見られる、いつもの光景です。今日の授業は、車椅子サッカー。来週から始まるリーグ戦に向け、作戦会議が始まります。「僕がDFで敵の動きを止めるから、君はシュートを打った方がいい。」「A君は後半に出場するだろうから、後半はこのメンバーで行こう。」キャプテンを中心に話し合いが進められ、ゲームに入ると、熱い戦いが展開されていきます。ゲームでは、私たちの予想を超えたスーパープレーや創意工夫が生まれることもしばしばあり、生徒たちの力に驚かされます。体育の授業があった日の給食時間は、いつの間にかプチ反省会の様相です。
  本校中学部体育科では、このような生徒の主体性を引き出すため、5人の職員で様々なアイディアを出し合っています。教科や自立活動の視点に加え、時には遊び心を織り交ぜ、それぞれのユニークな発想を積極的に取り入れています。採用2年目の私は、先輩方の面白いアイディアに「アッ」と驚くことの連続です。また、体育の授業における、キャリア教育の要素を整理・導入したり、視聴覚機器を活用したりすることで、指導の効果の高まりを実感できるようになってきました。
  今後も、本誌の内容を参考にしながら、生徒が思わず熱くなるような体育の授業作りに努めていきたいと思います。

 
・トピックス
平成25年度 金賞・奨励賞決定
 
 
・お知らせ
平成24年度事業報告
 
■次号予告
■編集後記