日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.209

肢体不自由教育に求められる他職種との協働

 
  子供の教育に係わる人は教員だけではありません。栄養士、主事など、特別支援学校(肢体不自由)であれば看護師も関わっています。
  特に、最近では外部専門家の活用が進み、学校との連携の必要性が高まっています。今回は外部専門家との連携を中心に、特集を組みました。
  今回の特殊のタイトルには「他職種」と表しました。これは、教員からみて「教員以外の職種」という意味になります。子供から見れば、教員も含めて「多職種」が関わっています。その点は徳永氏の論説で整理していただきました。
  私が新任の頃、「主治医よりも、子供のそばにいて、よく分かっているのは保護者と担任の先生でしょう。その子をよく見ることをまず大切にしなさい」ということを、巻頭言をいただいた北住先生に教えていただきました。多職種との連携にあたっても、子供を一番よく分かっている担任としての役割を果たせればと思います。

(武井 純子)

 

・巻頭言
教育と医療の協働
―関係性と主体性を大事にしながら専門性の広がりを―
北住 映二
心身障害児総合医療療育センター
むらさき愛育園長

・論説
他職種との連携と肢体不自由教育の専門性
徳永 亜希雄
国立特別支援教育総合研究所主任研究員

学校での教員と他職種との連携のあり方
―外部専門家との連携を中心に―
古川 勝也
長崎県立諫早特別支援学校長

・実践報告
自立活動の充実を目指した関係機関との連携 
―自立活動コーディネーターの役割―
末石 奈美
茨城県立つくば特別支援学校教諭

持続可能な支援を目指した他職種との協働
―AT相談を通した支援の連携事例―
松本 伸浩
愛知県立ひいらぎ養護学校教諭

摂食指導における他職種との協働
―歯科医師の評価・指導に基づいた摂食指導―
保坂 みさ
山梨県立あけぼの支援学校教諭

・投稿
作業療法士と協働した自立活動の指導改善
―外部専門家からの助言を生かすためのツールを用いた実践を通して―
渡辺 大倫
愛知県立豊橋養護学校教諭

・キーワード
ファシリテーション
尾普@至
千葉県立八千代特別支援学校教諭
 
・連載講座
授業に生かす教材・教具(2)
 教材研究をどのように進めるか
渡邉 章
植草学園大学発達教育学部教授

・講座Q&A
鏡文字の指導

 
・活動紹介
電子情報技術を活用し、誰もがより豊かで自立した生活が営める社会づくりをめざして
田代 洋章
特定非営利活動法人 e−AT利用促進協会 企画部長
・キャリア教育の基礎知識5
キャリア教育の課題
朝日 雅也
埼玉県立大学教授
・ちょっといい話 私の工夫
算数指導における教材・教具
―自分で操作できることをめざして―
松井 雄一
東京都立城南特別支援学校教諭
・学校保健と医療的ケアの今
東日本大震災被災地の重い障害のある子供への支援(2)
―震災対策の今後の課題―
田中 総一郎
東北大学病院小児科 准教授
元宮城県拓桃医療療育センター地域家庭支援部 小児科医療部長
・特別支援教育の動向
「第58回全国肢体不自由教育研究協議会(沖縄大会)」を終えて
仲尾 武
第58回全国肢体不自由教育研究協議会沖縄大会 実行委員長・沖縄県立鏡が丘特別支援学校長
 
・読者の声
 
「知肢併置校」になって
品川 浩也
兵庫県立和田山特別支援学校教諭

 特別支援学校(肢体不自由)だった本校は、平成22年度より知的障害教育部門も併置する学校となり、「知肢」合同での教育活動も設けています。
  活動を合同にしてから肢体不自由のある子供たちに変化が見られるようになりました。本校の教員が口をそろえて指摘するのは、「肢体不自由の子供たちにとって知的障害教育部門の子供たちがいることで、とてもいい刺激が生まれている」ということです。友達同士の会話に慣れておらず、休み時間に初めはどう話していいかわからなかった子供も、知的障害教育部門の子供から話しかけられれば返事をせざるを得ず、徐々に自分からも話しかけることができるようになりました。
  高等部では、知的障害教育部門の生徒の影響を受けて、歌の好みが変わった肢体不自由教育部門の生徒もいたようです。また、授業の始まり・終わりのあいさつのときに「おじぎができていない」とか、ラジオ体操のときに「手が挙がっていない」などと知的障害教育部門の生徒からストレートに指摘され、いい意味で発奮し、必死に頑張ろうとする姿が見られたという例もありました。
  知肢併置校になったことによる課題もありますが、興味深いのは、子供たち当人は知肢の区別をあまり意識していない、ということです。子供たちにとって、肢体不自由や知的障害は個性の一つという感覚でしかないようです。
  子供たちの柔軟でたくましい姿に学ぶことが多い毎日です。


すべては子供たちのために

小田 亨
北海道旭川養護学校教諭

 本校は北海道の中央に位置する特別支援学校(肢体不自由)です。全国的な傾向と同じく、本校も幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化が進んでおり、一人一人のニーズに応じた的確な実態把握、目標設定、指導内容、評価が求められています。
  現在私は研究部に所属しています。平成24年度は全校規模の学習会を3回実施し、私が1回目を担当しました。学習会では「障害の重い子供の授業づくり」のタイトルのもと、授業づくりで大事なコミュニケーションの考え方や教材・教具の意義について説明しました。
  その中では、子供の表出を、受け手の教師が自分に向けた表現であるように思って受け止める対応や、子供を一人の人間として尊重するために、言葉がけや態度、丁寧な説明が大切であることを伝えました。また、障害の重い子供にとって視覚的な支援が重要であり、教室や廊下等の環境整備、光や色彩に配慮した教材提示の方法についても伝えました。
  学習会の最後には、授業づくりの視点として、子供が達成感を感じるようにICFの視点から、子供の願いや希望の実現を目指したキャリア教育を意識した授業を考えることが大切であることを説明し、共通理解することができました。
  こうした学習会での情報提供や他の教職員と授業づくりについて考える際に、本誌の論説、実践報告、連載講座の内容は大変参考となり、また私自身の新たな学びの糧となるものです。今後も目の前の子供たちに学びながら、他の教職員とともに学校の力となる専門性を高めていきたいと考えています。

 
・図書紹介
「てんかん」入門シリーズ4 最新版 よくわかるてんかんのくすり
知的障害教育の授業展開 「まとめ」をきちんとすれば授業の効果が上がる
  ―学習活動「見直し・振り返り」と評価―
 
 
・トピックス
東京都立光明特別支援学校創立80周年を迎えて
 
■平成24年度総目次
■次号予告
■編集後記