<スライド1> 国連障害者権利委員会の動きと 市民社会の役割について 2018年1月20日 2017年 JDF全国フォーラム 静岡県立大学 国際関係学部 教授 東京大学先端科学技術研究センター 特任教授 内閣府障害者政策委員会委員長 国連障害者権利委員会委員 石川 准 <スライド2> ジュネーブにて 国連パレデナシオン前に立つ石川氏の写真 会議場内の様子 <スライド3> 権利委員会第17回期報告 ・第17会期会議は3月20日から4月12日まで ジュネーブの国連欧州本部パレデナシオンで開催 ・会議は ・1日6時間ないし7時間(英語、スペイン語、ロシア語の同時通訳がつく) ・土日を除く連日の会議、計18日間 ・英語の長時間シャワーで頭がシャットダウンする <スライド4> 時間配分 ・一カ国の審査には、建設的対話に6時間、その前に市民社会からのブリーフィングに1時間、 総括所見の採択に3時間:合計10時間 ・国連総会決議で各条約体における審査は1週間に2.5カ国を達成することを求められている ・第17回期が終わった段階で44のバックログ。 ・日本は41番目 ・来年(2018年)から春・夏ともに1週間ずつ、会期が増える可能性がある <スライド5> カントリーラポルタール(審査責任者)の役割 ・事前質問事項の原案作成と審査後に採択される総括所見の原案作成を担当 ・立候補制 ・その国の審査に関心の高い委員が手を挙げる ・委員は自国の審査には関与できない <スライド6> 公開会議 ・建設的対話  ・公開会議はUN Web TVで視聴できる  ・自国の建設的対話には市民社会からの傍聴が可能  ・8カ国 モルドバ、イラン、キプロス、ボスニアヘルツェゴビナ、  ヨルダン、アルメニア、ホンジュラス、カナダとの建設的対話 <スライド7> 非公開会議 ・市民社会からのブリーフィングを聞く ・総括所見の採択 ・事前質問事項の採択 ・簡略化された審査のための事前質問事項の採択 ・選択議定書に基づく個人通報についての審議 ・ジェンダーバランス、地域的バランスについての委員会コメント <スライド8> 権利委員会第18回期報告 ・国連障害者権利委員会第18回期は8月14日から8月31日まで14日間国連欧州本部で開催 ・そのうち10日間はパナマ、モンテネグロ、モロッコ、ラトビア、 ルクセンブルク、イギリスの6ヶ国の審査 ・障害者団体の代表等によるブリーフィング、事前質問事項の採択 ・第19条の一般的意見の採択 ・第5条の一般的意見のドラフトについての質疑 ・個人通報の審議 <スライド9> ペーパースマートモデル 採択のための作業 ・会議資料はすべて電子データ。印刷資料は一切使わない ・総括所見や事前質問事項を採択する際は、一段落ずつ読み上げていって、 異議があれば修正意見を出し、異議がなくなったことを確認して採択する <スライド10> 障害者権利委員会における合理的配慮 ・手話通訳 ・要約筆記 ・資料はすべて電子データというペーパースマートモデルの採用 ・視覚障害等印刷物が読めない委員への合理的配慮となる ・PA: Personal Assistantの滞在費を国連が負担 <スライド11> 直接の訴えかけ ・ブリーフィング以外に、直接訴えかけられることがある ・アルメニア、ハンガリー、ペルーから来た人々と話をした ・直接の訴えかけは響く。建設的対話や総括所見にもそれなりに反映される ・直接ジュネーブに行くことは重要 <スライド12> 委員のやりがいと負担 ・やりがいはあるが、とにかくハードワーク ・これ以上会期が長期化すると委員とPAの負担は限界を超える ・本業、本務との両立はますます困難となる <スライド13> 日本の審査 ・権利委員会による日本の第1回審査は 2020年春の障害者権利委員会第23会期に行われる公算が大きい ・事前質問事項は2019年夏の第22会期で作成 ・日本のカントリーラポルタールは2019年春の第21会期で決まる <スライド14> 重点的な審査項目(1) ・権利委員会は締約国審査に当たってすべての条文の実施状況に関心を持って審査する ・まず注目するのは条約の根幹部分の実施 ・権利条約に則した差別禁止法が整備され機能しているか(第四条 一般的義務) ・政策決定と政策実施の監視に障害当事者が十分参加できているか 第四条 一般的義務、第三十三条 国内における実施及び監視) <スライド15> 重点的な審査項目(2) ・物理的障壁、情報的障壁を解消するためのアクセシビリティ法の整備と アクセシビリティ政策の推進を行っているか (第九条 施設及びサービス等の利用の容易さ) ・自分が望む暮らし方を選べるための制度と実際の支援が提供されているか (第十九条 自立した生活及び地域社会への包容) <スライド16> 質問が集中する条文 ・インクルーシブ教育を積極的に推進しているか(第二十四条 教育) ・障害者の働く権利を保障しているか(第二十七条 労働及び雇用) ・女性の複合的差別を解消するための施策を促進しているか (第六条 障害のある女子) ・代行決定から支援付き自己決定へと政策を転換しつつあるか (第十二条 法律の前にひとしく認められる権利) ・司法手続きにおいて合理的配慮が提供されているか (第十三条 司法手続の利用の機会) <スライド17> 良い総括所見には良いパラレルレポートが必要(1) ・政府報告と事前質問事項への回答を読んで、政府との建設的対話を行うだけでは、 どのような改善を求める必要があるのかを、判断するのは容易でない ・どの国の制度も複雑であり、運用と制度には乖離がある ・権利委員会は条項ごとに、権利条約の国内実施における課題を端的に示し、 具体的な改善方法を提案するパラレルレポートを望んでいる <スライド18> 良い総括所見には良いパラレルレポートが必要(2) ・権利委員会からの総括所見の政策への効果は、 市民社会からのパラレルレポートとブリーフィングにかかっている ・パラレルレポートは、多様な障害者団体が一堂に会して、 合意しまとめたものほど信頼性が高い ・パラレルレポートのなかで、フォローアップへの指定を求める課題を いくつかしぼりこむことができれば、 また審査対象国との質疑応答(建設的対話)の前の市民社会からの説明 (ブリーフィング)で念を押せば、総括所見に反映される可能性は有望である