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ディスレクシアに関する研究報告、映画『Dワード』の紹介

出典: DAISY Consortium http://www.daisy.org/
The DAISY Consortium's Monthly Newsletter - January 2012
"The D Word" - Dyslexia
http://www.daisy.org/planet-2012-01#a4

研究報告、資料及び映画『Dワード』

ディスレクシアを扱った研究報告が最近発表されました。ここでは、その概要を説明し、情報と資料へのリンクを張るとともに、映画『Dワード:ディスレクシアを知る(The D Word: Understanding Dyslexia)』を紹介します。

研究報告

脳画像研究から明かされるディスレクシアの生理学的根拠

「スタンフォード大学医学部の研究者らは、画像技術を利用し、読解スキルが乏しくIQが低い子供の脳の活性パターンが、IQは正常だが読みが苦手な子供が示すパターンと似ていることを明らかにした。研究では、一般認知能力とは関係なく、同様な困難を抱えている読みが苦手な読者について、さらに決定的な証拠も示されている。

学校と心理学者は、これまで子供のIQに基づきディスレクシアを定義し、診断してきた。子供の読解力がIQに基づく期待値よりも低い場合、その子供はディスレクシアと見なされるが、IQが低く読みが苦手な子供には別の診断が下される。しかし今回の新たな発見は、「IQは読解力の診断で重視されるべきではないという生物学的証拠」を提供するものであると、研究報告書首席著者で、スタンフォード大学学際的脳科学研究センター(Stanford’s Center for Interdisciplinary Brain Sciences Research)講師のフミコ・ヘフト(Fumiko Hoeft)医学博士は語った。報告書は『サイコロジカル・サイエンス(Psychological Science)』誌の次号に掲載される。

「さらに、ヘフト博士と同僚研究者らは、今回の発見も含め研究結果は『一般認知能力のレベル(IQ)に関係なく、読みの困難を抱えているすべての子供に、読解力をつけるための介入を要求するように働きかけていかなければならない』ことを示すものであると指摘している」(出典: 『メディカルニューストゥデイ(Medical News Today)』(英語))

マクガヴァン脳研究所(McGovern Institute for Brain Research)のウェブサイトに掲載されている 『IQとは無関係のディスレクシア(Dyslexia independent of IQ)』(英語)も参照。

「脳画像研究の結果は、読みの困難は、全体的な知能とは関係なく同じであること、そして、さらに多くの子供が学校での支援から利益を得られることを示唆している。

アメリカの子供のおよそ5%から10%がディスレクシアと診断されている。これまで、聡明で、話し言葉も明確だが、読みと格闘している子供、つまり、高いIQが読解力テストの低い点数と合致していない子供に、このようなレッテルが貼られてきた。その一方で、IQが低い子供の読みの問題は、一般認知能力の限界から生まれた副産物であり、特に読みの障害ではないと、従来考えられてきた。

現在、新たな脳画像研究の結果、このようなディスレクシアの理解に異議が唱えられている。『読みが苦手な子供は、IQの高低にかかわらず、言語音声処理に関して、同じ脳の問題を抱えていることがわかった』(中略)『読みの困難は、他の認知能力とは無関係である』」(フミコ・ヘフト及び同僚研究者らとともに研究を行った、ジョン・D・E・ガブリエリ(John D. E. Gabrieli)MITグローヴァー・ハーマン健康科学技術認知神経科学教授(MIT’s Grover Hermann Professor of Health Sciences and Technology and Cognitive Neuroscience))

『神経系から見るディスレクシアの長期転帰予測(Neural systems predicting long-term outcome in dyslexia)』(英語)という記事が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版に発表された。アメリカ合衆国、フィンランド及びイギリスの研究者による共同研究で、フミコ・ヘフト医学博士が主導し、ヴァンダービルト大学(Vanderbilt University)のブルース・マッカンドリス(Bruce McCandliss)心理学教授と共同で報告書を執筆した。米国科学アカデミー紀要(PNAS)(英語)は、世界で最も引用されている学際的な科学関係の定期刊行物の一つである。PNASオンライン版には、一カ月で2100万件を超えるアクセスがある。

「発達性ディスレクシアの人は、読解スキル向上能力に差が見られるが、能力向上にかかわる脳の重要な部分については、いまだにほとんど知られていない。我々は、ディスレクシアの人の最初の行動評価又は脳の活動の測定から、その後の長期的な読解力の取得が予測可能か否かを調べるために、長期予測研究を実施した。広く使用されている、読解力と言語能力に関する標準化された検査を含む行動評価で、ディスレクシアの人の将来的な読解力の取得を確実に予測できるものはなかった。」

「この(神経系から見る)アプローチは、ディスレクシアの子供がお互いにどれだけ異なっているか、そしてそれが2、3年後にどのように有意な違いとなって現れてくるか、という問いへの新たな視点を開拓するものである。(中略)このような洞察は、読みに苦労している人々の個別のニーズに対応する最善の方法に関する新たな教育研究に不可欠と言えよう。」(ブルース・マッカンドリス『ディスレクシア:脳スキャンによる読解スキルの予測(Dyslexia: Brain scans predict reading skill)』出典:フューチャリティー(Futurity)リサーチニュースウェブサイト)

資料

イェール大学「ディスレクシアと創造性」センター(Yale Center for Dyslexia & Creativity)

イェール大学「ディスレクシアと創造性」センター(英語)は、ディスレクシアの人々と親及び教育関係者のための大規模なリソースセンターである。センターには、ディスレクシアに関する「神話と真実(Myths & Truths)」のセクション、 「ディスレクシアの成功者(Successful Dyslexics)」特集セクション(英語)をはじめ、数多くのセクションが設けられている。その目的は、センターの 「行動指針(Mission Statement)」(英語)に的確にまとめられている。

「我々の使命は、ディスレクシアの人々の強みを明らかにし、科学的研究から得られた最新の革新的な考えと実践的な助言を広め、ディスレクシアの子供と大人への対処方法を変革することである。」

ディスレクシア/重度の読みの困難を抱えている子供と若者のための補助的支援と学習へのアクセス

デンマークの印刷物を読むことに障害のある人々のための国立図書館である Notaは、長年にわたりDAISYコンソーシアムの正会員である。昨年Notaは『ディスレクシア/重度の読みの困難を抱えている子供と若者のための補助的支援と学習ヘのアクセス(Auxilary aids and access to learning for children and young people with dyslexia/severe reading difficulties)』という報告書を発表した。これは現在、Notaの オンライン図書館「E17」で、MP3、DAISY及びiTunes Podcastフォーマットでダウンロードし、利用することができる。また、ストリーミングも可能である。MP3とDAISYフォーマットのファイルは圧縮されており、それぞれの圧縮ファイルは非常に大きく(およそ3ギガバイト)、安定した高速接続を使用してもダウンロードに約45分間かかることに注意してほしい。DAISYフォーマット版はフルテキストで、表や数字の記述も含まれている。

報告書はダウンロードボタンのすぐ右にある「Afspil(再生)」ボタンを選択し、オンラインで聞くこともできる(AfspilとはNotaのストリーミングソリューションである)。MP3フォーマットをオンラインで聞く場合、表題に続く最初の2、3個の非常に短い導入セクションはデンマーク語なので注意してほしい。しかし、その後の報告書本体は英語である。ストリーミングツールのコントロールボタンの表示もデンマーク語だが、機能性/位置は標準仕様となっている。再生/停止ボタンは左下にある。現在のセクションの再生が終了したら、下向きの矢印のボタンで次のセクションに進むことができる。

さらに、EPUB、TEXT、HTML、RTFなどのフォーマットも利用可能である。これらはNotaの ウェブサイト(英語)の別のページからダウンロードできる(ダウンロードページへのリンクは「概要と結論(Resume and Conclusions)」の下、ページの最後にある)。

国際ディスレクシア協会(International Dyslexia Association)

国際ディスレクシア協会(IDA)は、ディスレクシアの人々とその家族、そして彼らを支えるコミュニティの支援を専門とする非営利団体である。 アメリカ合衆国とカナダの各支部に加え、IDAには、 ブラジルディスレクシア協会(Brazilian Dyslexia Association) オーストラリアディスレクシア協会(Australian Dyslexia Association)(英語)及び 日本発達性ディスレクシア研究会(Japan Dyslexia Research Association)(英語)などの グローバルパートナー(英語)が存在する。

『Dワード:ディスレクシアを知る』サンダンス映画祭で好評

映画について

「控えめに推定しても、5人に1人がディスレクシアである。非常に聡明で、多くの場合、高い創造性を備えているにもかかわらず、ディスレクシアの人々は、文字で書かれた言葉の意味を理解するのに苦労している。私はこれについて少しばかり知っている。私の息子、ディラン(Dylan)はディスレクシアなのだ」

多くのディスレクシアの人々と同様、ディランは聡明で思慮深く、知的好奇心にあふれており、『大局的に』物事を考える人間である。しかし10歳になっても、ほとんど読み書きができなかった…。

この映画は、ディスレクシアが性格上の欠陥ではなく、神経系の問題であることを明らかにする。そして、文字で書かれた言葉との苦闘は、思考力や創造力、あるいは問題解決能力という、教室の外の世界で役立つ能力に問題があることを示すものではないと説明する。さらにこの映画では、ビジネス、法律、政治及び医学の世界の最も偉大な指導者の中に、学習に課題があるにもかかわらず成功を収めたディスレクシアの人々がいることも明かされる。

また、映画では、日々ディスレクシアと付き合うためのより実践的な(ときにはユーモラスな)アドバイスもいくつか紹介される。願わくは、この映画を通じて、幼い頃の教育の課題はいつの日か過去のものとなり、ディスレクシアの人々に今より明るい未来が開かれる(開かれなければならない)ことを、当事者と家族に理解してもらいたい」(出典: 『D映画』紹介ページ、『Dワード:ディスレクシアを知る』(英語)監督ジェームズ・レッドフォード(James Redford))

映画の 予告編(英語)と「ディスレクシアに関する神話(と真実) (Myths (and Truths) About Dyslexia)」(英語)のページも、『Dワード』のウェブサイトで視聴可能。ジェームズ・レッドフォード監督へのインタビュー「サンダンスへの道:『Dワード』(The Road to Sundance: The D Word)」は、 「自主制作映画のすべて(All About Indie Filmmaking)」 (英語)のウェブサイトで閲覧可能で、映画と監督についてさらに深く踏み込んだ内容となっている。

『Dワード:ディスレクシアを知る』は、今年のサンダンス映画祭でプレミア上映される予定である。