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段落がbrタグで表現されたEPUBのアクセシビリティ面の問題

2023年9月22日

日本デイジーコンソーシアム

技術委員会

段落がbrタグで表現されたEPUBタイトルが存在します。本文書はこのようなEPUBタイトルがアクセシビリティの面でどのような問題があるか等について説明するものです。

brタグを使った段落表現

EPUBの本文はXHTMLで表現されます。XHTMLでは段落はpタグを使って表現することとされています。以下は、pタグを使って正しく表現された段落の例です。

  • pタグを使って正しく表現された段落例
  • <p>列車で持って来るほど使っているので、現今の小田原のかまぼこは色がついていて、味がくどく、昔の面目を失っている。</p>
    <p>本来高級魚である甘だいが、遠隔のため時間が経ち、その美味をまっとうしないのである。産地で食うと、もちろん美味なものである。</p>
    <p>この魚は、イタリアのナポリで食ったことがあるが、うまい魚のなかった外国で、とても美味に感じた魚である。</p>
    

brは意味的な都合やレイアウト的な都合などにより強制改行を行わなければならない状況のときに用います。brタグの前後は同一の段落という扱いとなります。

ところが、既に世の中に流通しているEPUBの中にはpタグの代わりにbrタグを使って表現されているものが一定数存在し、アクセシビリティの面で問題を引き起こしています。

以下は、pタグの代わりにbrタグを使って段落が表現されている例です。

  • 令和元年度 国土交通白書
    https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h30/index.html
  • <div class="maintxt">令和元年版 国土交通白書 はじめに<br />
    <br />
     「平成」から「令和」へ。新しい時代を迎え、夢や希望に満ちた21世紀の新しい社会を切り拓き、次世代に引き継いでいくことは、この時代に生きる我々に課された責務である。そして、そのためには、現時点において、過去を振り返りつつ、これからの方向性について、整理して考えることが必要である。<br />
    
    <br />
     我が国は、長い歴史を持ち、様々な時代を経験してきた。戦後の高度経済成長期などを経て、特に、平成に入ってからは、バブル経済の終焉を迎え、低成長時代となり、少子・高齢化の進展、人口減少社会の到来など、大きな転換期を迎えている。こうした中、情報通信技術(ICT)や省エネ技術等が大きく進展し、携帯電話やパソコン、LED等の普及により、我々のビジネスやライフスタイルも大きく変化しつつある。<br />
    

brタグをpタグの代わりに利用するのは明らかな誤用ですが、brタグを使って段落が表現されても表示上は大きな違いが無いため、段落表現としてbrタグが使われていても問題があるとは気がつきません。

brタグを使った段落表現のアクセシビリティ面の問題

段落表現としてbrタグが使われるとアクセシビリティの面でどのような問題が生じるかについて説明します。

ナビゲーション

アクセシブルなEPUBのリーディングシステムでは、読み上げや表示箇所を段落単位で移動する機能が必須です。段落表現としてbrタグが使われると、brタグの前後は一つの段落として扱われるため、brタグで区切られたブロックには移動できなくなります。

したがって、このようなタイトルでは、前の段落への移動、次の段落への移動といったアクセシビリティにおいて重要なナビゲーション機能が操作が適切に行えません。

特定の段落に対してしおりを設定しておき、後から設定されたしおりに移動できる機能を提供するリーディングシステムがあります。このようなリーディングシステムでは、brタグで区切られたブロックにはしおりが設定できないことになります。

音声読み上げ

読み上げを使って読書を行っている場合には、一度読み上げた箇所を再度聞き直すという操作を頻繁に行います。この際、段落の先頭から再読み上げを行います。

リーディングシステムの使用者は直前の段落を聞き直したいにも関わらず、段落表現としてbrタグが使われていた場合にはbrタグで区切られた束のテキストの先頭位置が再読み上げの開始位置となり、意図した再読み上げの開始位置にはならなくなります。

読み上げ箇所のハイライト

発達障害・ディスレクシアなどの障害に対応するため、音声読み上げと同時に、読み上げ箇所をハイライト表示するリーディングシステムがあります。メディアオーバーレイのSMILで読み上げ単位が示されていない場合には、このようなリーディングシステムでは、ハイライト表示する単位として段落がハイライトの単位となるのが一般的です。

brタグで段落が表現されていると、brタグで区切られた複数の段落分のテキストの先頭から最後までが一度にハイライトされてしまい、何処が現在読み上げ対象の段落かが適切に表示されなくなってしまいます。

音声合成システム

リーディングシステムの実装にもよりますが、多くの場合、音声合成システムに対して一度に送るテキストの単位は段落単位です。

brで段落が表現されていると、brタグで区切られた束のテキストの先頭から最後までが一度に音声合成システムに送られてしまいます。音声合成システムによっては、巨大なテキストデータが送られてくると、読み上げを開始するまでに時間がかかったり、全部を読み上げないといった問題が生じてしまいます。

EPUB以外のHTMLのホームページ

EPUBで段落表現としてbrタグが使われた場合のアクセシビリティ面の問題は前述の通りです。ホームページを構成するHTMLファイルの内部がbrで段落が表現されていた場合には、スクリーンリーダーを用いてホームページを閲覧した場合にもナビゲーション、音声読み上げ等について同様の問題が発生します。

brタグを使った段落表現が用いられる主な原因

EPUBの製作時には、本文データをマークダウン形式で作成して、その後EPUBに変換するワークフローが良く使われます。このようなワークフローで用いられる以下のコンバーターのシステムでは、「テキストの1改行はbrタグに変換し、2改行をpタグに変換するルール」となっています。

EPUBの製作者は、このルールを把握せずにEPUBを製作することが多いため、出来上がったEPUBは多くの段落がbrタグで表現されてしまう状況となっていると考えられます。

他のEPUBオーサリングのシステムを使った場合でも、段落表現としてbrタグを用いるものがあるかもしれません。

お問い合わせ先

jdc@atdo.jp