はがき通信ホームページへもどる No.165 2017.6.25.
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 梅雨のさなかに思うこと 

 60年前に、『学力の経済学』という本に出合っていたら、人生は別の軌跡をたどり始めたかもしれない。
 最近、教育経済学という年寄りには不可解な分野があることを知った。教育を客観的に科学的に測ることができるという。それによれば、「どういう教育が成功する子供を育てるか」という問いには、「子供を"ご褒美"で釣りなさい」が意味のある回答のひとつになるそうだ。
 ただし、良い点を取ったら褒美をあげるというのでは効果がなく、1冊本を読んだら褒美を上げる(もちろん感想文等で、読んだかどうかは確認するのであるが)、宿題をしたら褒美をあげる、とかには著しい学力向上の効果があるという。どうしてこんなことになるのかというと、もちろん裏がある。単純に人間の性(さが)が濃厚に影響しており、そこらを知っているか、いないかで将来が大きく変わる。
 人は何というのだろう、まあー、未来のための努力を積み重ねて大きな果実を取るか、目の前の小さな果実を取るかと選択を迫られると、大概、目の前のものを取るのだそうだ。これは、人間に限らず生き物の本能なのだろう。本能から言えば、未来のあやふやなものか、目の前の確実なものか、と問うこと事態が無意味で、目の前の物に飛びつくのが自然の理(ことわり)には違いない。
 教育経済学などと大層なものを持ち出さなくても、僕はこの人間の性から子供の学力向上のために、「"褒美"で釣りなさい」の言葉はすんなり腹落ちして、”そうだよね”と納得してしまった。もっとも、褒美の与え方でガラリとその後の道程は変わるのだから、どうぞ慎重に行動してくださいとは思う。
 少し詳しく述べれば、子供を褒めるときには「あなたはやればできるのよ」とか「ほんとに頭がいいのね」ではなく、「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」とか「xxをよく頑張ったね」と、具体的に子供が達成した内容に言及するのが大切だという。努力を褒められると子供はさらに努力をし、才能で褒められるとなされたことを才能に帰して、努力をしなくなるという。
 わかりやすい例えだ。良くないのは「成績が良くなったらご褒美をあげる」で、この場合、子供たちは良い点をとるためのテクニックを磨く方へ行く。この場合の褒美は悪い投資になる。
 教育経済学では、教育の収益率がひとつのキーワードだ。何せ経済学だから。教育に投資したものが、将来どれだけ戻ってくるかという視点から考えると、「子供の教育に時間やお金をかけるとしたらいつの世代がいいのか」ということが大事になる。小学校、中学校、高校、大学、大学院、いつでしょうか。
 驚くことに、就学前教育が一番収益率が良いのだという。それは、人生の初めの段階で正しく学ぶと、その後の教育に複利で良い効果が出てくるということか。
 ところで、正しくというのが肝心なのであって、「やり抜く力がある」「忍耐力がある」「自制心がある」「社会性がある」「意欲的である」「好奇心がある」「創造性がある」のような、心理学における非認知能力を培うことを基礎においた学びの鍛錬が、正しく学ぶことにあたる。
 有体に言えば、どんなに勉強ができても、自己管理もできず、やる気がなくて意欲がない、途中で投げてしまう、コミュニケーション能力が低い人が社会で活躍できるはずもないということだ。
 で、僕の話に戻る。思い起こせば、小学校の入学式の当日、教室の机の上で遊んでいたのを先生から咎(とが)められたことが不満で、そのまま窓から外に飛び降りて家に帰った、そのような子供だった。小学校6年の2学期にもなって、九九ができない僕を焦って先生が放課後補習を特別に課した、そのような子供だった。白状するが、本当に僕はおっちょこちょいで、身勝手で、思慮のない子供だった。目立つのは、笑い顔がかわいいというだけでした。
 長い年月を生き、今でこそ生きることに折り合いがついてきたけれど、考えてみればずいぶん寄り道をしてきたように思う。幼年期から10代にかけて、何か自分で決めたことを努力してやり抜くという儀式を通過しなかったものだから、安易に20代で厄災も招いてしまったと思っている。
 僕の前半生は、頸損になってからの波乱の人生とはまったく別物で、いつも目の前にあるものを追いかけ、つかんではポイッと手放した記憶しかない。だから、後半生は生きることを探して苦労しっぱなしだ。
 そこで、苦笑気味に本文の出だしの、”60年前に『学力の経済学』という本に……”と戻るのである。
 とは言え、なんで今、『学力の経済学』などという書籍を購入し、読み、感想を残す気持ちとなったのかは自分自身でも解せない。まあー、好奇心いまだ衰えず、としておこう。言葉を変えれば、いまだ学びが足らずということか。

神奈川県:M.K.



 私に限って 


 表題通り、私に限って褥瘡とは縁がないものだと思っていました。受傷して最初に運ばれた病院は、大手総合病院。看護ケアも行き届いていた。そのおかげだろうか? 皮膚に傷もなく、35年間褥瘡とは無縁の生活だった。ある日突然、災難に見舞われた。もちろん予兆はあった。小さな傷があり軟膏(なんこう)で治していた。毎週いつものようにデイサービスに通っていたら、職員から「足に熱感があり、すぐに病院に行くように」と言われた。ただ、本人は面倒くさいのと、次の週が外来日だったのでそれまでは良いだろうと考えていた。
 周りの強い勧めもあり、翌日は土曜日で予約外だったが行くことにした。褥瘡という診断だった。そのまま処置室で切除。ドクター2人がかりだった。日をまたいで3日間の通院で切除。その後も通院。場所は膝の裏あたり。できた大きさは3.5cm ×3.5cmくらいで、深さは白い骨が見えるかな程度。泣いた。
 病院の受診は整形外科であったが、足全体に赤い発疹(ほっしん)が出てきて、皮膚科に転科させられた。整形は外科なので感じとしては、切った張ったがお好きなようです。どちらかといえば私の好みのタイプ。皮膚科は薬の使い方が上手なようで、出された塗り薬は松竹梅だと。松コース:「ゲーベン」と「ヒブラストスプレー」。このスプレーが、皮膚(肉)の再生を助けるそうだ(全然信じられなかったが、最近は認めるようになった)。薬品も進化してきたということだろう。
 原因としては、加齢による姿勢の変化。足が斜めになり、車椅子の鉄パイプに気づかないうちに当たっていたようです。昨年の暮れのことであった。それからが大変で、各方面に連絡をしたりした。また、悪いときには悪いことも重なり、なぜかトドメの一撃は、車椅子のタイヤが画鋲(がびょう)に刺さりパンクした。だが、ようやく下げ止まったのか、訪看さんも緊急ということもあり、対応してくれることになった。まさに「捨てる神あれば拾う神あり」。
 それにしても、医療衛生材料も費用もかなり負担となる。「ガーゼ」とか「テープ」は消耗品。「弾性ストッキング」の着用も指示された。どうやら血液の循環が悪く、足を締めつけた方がいいということであった。このストッキングが意外に高かった。とはいえ、治療が優先。テープなどもなくしやすいので多めに買った。あとはひたすら「洗浄」、「薬の塗布」、「ガーゼ」といった処置の毎日。切除した先生が「治るかなぁ」と言っていましたが、「冬来たりなば春遠からじ」と思っていました。
 この原稿を書いている5月末現在、いまだに治療中です。「桃栗三年柿八年」の心境でしょうか。この調子で問題がなければ秋頃には、良い結果が出せるのではないでしょうか。
 今回は、また一つの経験をしました。次は、体のどこが変化するのか。眼は少し白内障気味、血管年齢も要注意と言われました。将来のことはわかりませんが、苦い経験をしたので少しは注意深くなるかもしれません。皆さんもお気をつけください。また良くなりましたら、お便りさせていただきたいと思います。
 では、お元気で。

神奈川県:F.H.



 重度障害者の生活と可能性
          機器を取り入れる理由
 

 私は頸髄(C4)を損傷し、11年目になります。完全四肢麻痺で、首から下の感覚はなく自らの意志で動かせなくなった。
 平成28年2月から自立生活を始めました。それまで日常生活の中で、ベッドテーブルにセッティングをして環境制御装置(以下ECS)を使っていました。
 私が自立生活を始めて機器を探そうと思ったのが、長時間、電動車椅子に乗っての機器操作のしにくさがありました。電動車椅子上でも、ECSを使いたかったのですが、次の2つの課題がありました。1つ目はセッティングした場所まで移動が必要、2つ目は機器が有線であることから、使いやすい機器があればと考えていました。
 2つの課題を改善できる機器を、ネット通販で見つけました。「eRemote」という、一般に売られている機器です。



 現在では、携帯(無料アプリ)と機器をつなぐことにより、電動車椅子に固定することで、自分のタイミングで操作することができるようになりました。例えば、エアコン、照明、テレビ、扇風機をオンとオフを自分で行っています。私がこの機器をお勧めしたい理由は、 WiFiとつなぐことにより外出先から部屋の照明をつけることができたり、季節によって帰宅前に冷暖房を事前につけておくことも可能になりました。福祉機器として知られているECSと比べてみると、操作できる機器の種類等に大きな差はないように感じています。唯一違いとして挙げるのであれば、介護用ベッドを操作することはできません。



 次にECSとeRemote比較(Sの場合)

 [ECSの場合]
 ・購入金額が高価
 ・使用したい機器の登録(慣れている方なら早く登録できる)
 ・機器が大きく場所を取る

 [eRemoteの場合]
 ・購入金額が1万円以内
 ・使用したい機器の登録(機器に向かってリモコンで登録:10秒)
 ・機器がコンビニのおにぎりぐらい

 福祉機器以外の選択肢があることを知っていただきたいです。自分自身が使いやすい機器を、これからも探し続けていきたいと思っています。

兵庫県:T.S.







【編集後記】

 今年は、春も気温や気候の変動が激しく、体調管理が大変でした。
 今年は、懇親会を開催できず残念ですが、また皆様にお目にかかれる日を楽しみにしております。
 ヒョンなことから我が家に子ネコ(♀)がやって来まして、その超お転婆ぶりに、振り回されっぱなしです。朝早くから部屋中を“大運動会”。いたずらのし放題で、やたら、噛む、爪出しネコパンチ(本気の戦闘モード?)。私の足には、100ヶ所以上の爪痕が……(泣)。そして、どこででもパタンキューとスヤスヤ。快食・快眠・快便……あ〜〜、ネコになりたい!!(苦笑)
 梅雨入りの季節の変わり目、皆様、くれぐれも体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ。
 次号の編集担当は、戸羽吉則さんです。


編集担当:瀬出井 弘美




………………《編集担当》………………

◇ 瀬出井 弘美 神奈川県 E-mail:
◇ 藤田 忠   福岡県  E-mail:
◇ 戸羽 吉則  北海道  E-mail:
  

………………《広報担当》………………

◇ 土田 浩敬  兵庫県  E-mail:

メールアドレスが適切に表示されない場合は、こちらへ

(2017年2月時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒810-0001 福岡市中央区天神1-16-1毎日福岡会館7F
電話:092-753-9722 FAX:092-753-9723
E-mail:qsk@plum.ocn.ne.jp

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