はがき通信ホームページへもどる No.148 2014.8.25.
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 ハウステンボスを大満喫 

受傷歴11年

 常日頃から妻には何かと多大なるご迷惑をかけております、頭の中ではいつもありがとう、ありがとうと思ってはいるのですがついつい我がままを言ってしまうのが現状です。我が家では、NHKの朝の連続ドラマ「花子とアン」に出ている、妻は「蓮子」、僕は九州のワンマンな石炭王「伝助」と呼び合っています。
 何か女房孝行はないかと常々考えておりました。実は僕の妻はバラが大好きです。そこで時期が来たら長崎県佐世保市にあるハウステンボスのバラ祭りに行こうと思っておりました。
 山梨県でもハウステンボスの宣伝はテレビでよくやっておりました。5月10日から6月9日まで「バラ祭り」ということなので、さっそく5月20日から23日までの3泊4日、ハウステンボスの「ホテルヨーロッパ」に宿泊を旅行会社にお願いしました。
 甲府市から羽田空港までだいたい2時間30分かかります。皆さんも経験があると思いますが、電車の予約は、出発の大分前に障害者席を予約しなければなりません。乗り継ぎの駅に連絡しなければなりませから1時間ぐらいはかかります。今回は帰りの時間もわかっていましたから「新宿から甲府」までの帰りのチケットも一緒に買いました。海外に行ったときとか、帰りの時間が決まってないときなどはチケットを買うとき本当に大変です。
 今回は羽田空港から長崎空港まで行き、健常者は長崎空港からハウステンボスまで無料でバスと船があるそうです。しかし、残念ながら障害者は手帳を提示し片道8千円ちょっとだったと思いますが介護タクシーを予約しなければなりません。やっぱり差別ですかね。
 妻は大分昔、研修でハウステンボスのホテルヨーロッパに泊まったことがあるそうです。そのときの印象が大変良かったようなのでそこにしました。やはりホテルヨーロッパにして正解でした。園内に5個ぐらいのバラ園があるのですがほとんど入るときに有料です。そのバラ園の一つがホテルヨーロッパの中にありました。それはそれは見事です。ですから観光客、他のホテルの宿泊客がそのバラを見るためホテルに入るのには1200円の入場料が必要となります。



 とりあえずホテル内にあります和食の「吉翠亭」に、朝食付きでしたが夕食は付いていませんでしたので入りました。やはり高級料亭だったので素晴らしい料理がたくさん出てきました。妻が自宅で33年間、美容と健康の「シャルマン」という店をやっておりましたが、これからは2人でのんびり生きようと閉店していただきました。その長きにわたりがんばっていただいた感謝の気持ちもあったので、今回はちょっとプチ贅沢の旅行にしうようと決めていましたのでそこに入って正解でした。大変おいしかったてす。



 次の日いよいよ待ちに待ったバラ園見学の日でした。やはり入場料がかかります。我々は「障害者手帳」を提示したら確か(2人で)2000円だったと思います。地図を見ながら「バラ園」を目指したところ、園内が結構広いのですが意外とすんなりバラ園に到着しました。その中身の濃さ、演出の素晴らしさに感動しました。
 僕たちもバラが大好きなので「世界一」と言われている岐阜のバラ園にも行きましたが全然中身が違いました。確かに大きさでは岐阜の方がはるかに大きいのですが、ハウステンボスの1000品種、100万本のバラ祭の構成、内容、品種に妻と大感動しました。写真も思いっ切り撮ってきました。本当にどこを見てもウキウキするようなバラ園でした。
 その後、僕たちがもう一つ見たかった「宝塚歌劇団」のショウをしている場所に行きました。前から一度行きたかった「宝塚」のショウが身近で見られたのは本当に素晴らしい体験でした。本来絶対撮れない写真をバチバチ撮ってきました。妻が早めに行ってチケットを取ってくれたので、前のとてもいい席で見ることができました。本当にきれいでした。終わって出るとき、後ろを振り返ったら立ち見までぎっしりの超満員でした。



 次の日の朝食に行こうと思って起きようとしましたが残念ながら体が動きません。僕はいつも低血圧なので血圧の上が60台ぐらいだと思います。「今日は俺は朝食はいらないからお前だけ行ってきなさい」と妻に行ったところ、妻が果物だけでもいただいてくると言って部屋を出ていきました。ところが30分ぐらいしたら、和服を着た若い女性が2人で大きなお盆に2人分の、食べたかったおかゆとおかずをたくさん乗せてきてくれました。これには驚きと感謝でしたね。さすが「吉翠亭」だと思いました。それから毎日2人で吉翠亭に足を運んでしまったことは言うまでもありません。
 確かハウステンボスは一時期、経営が苦しく、大きな負債を抱えていたときに、旅行会社の「HIS」の社長が経営を引き継いだと聞いておりました。テレビでも何度か社長の立て直し経営の素晴らしさを放映していましたが、僕たちが行ったときの地元の新聞に下半期で35億ぐらいの黒字になったと載っていました。さすがですね。
 とにかくホテルの担当者はもとより、園内のどの担当者も「おもてなし」の素晴らしさに感動しました。とても気分よく3泊4日を過ごすことができました。ありがとうございました。これならば多少高くてもまた来ようという気持ちにもなりました。お年寄りから子供までそれぞれ楽しめるものがたくさんあるので、リピートが多いのもうなずけます。また冬の時期にでも来てイルミネーションをメインに来ても面白いかもしれませんね。
 3泊してもまだ見てないところもたくさんあります。次回にとっておきます。妻も好きなバラも思う存分堪能できたので満足して帰路に就きました。
 

山梨県:H.N.



 おっさんのアンチエイジング 

受傷歴35年
 私が交通事故で受傷して35年目に突入しました。受傷当時はまだ高校生で心身共に若く、傷の治りもほったらかしといても2、3日もすれば治っていましたが、35年の月日は残酷です。
 50歳に手が届く年齢になりますと虫刺され程度の傷でも治りが悪く、ちょっとしたことでも皮膚が赤くなって危険信号を発するようになりましてね……。
 そんなとき、知人のDr.からアンチエイジングとスキンケアを勧められました。アンチエイジングとは、加齢に伴う症状の予防と治癒、老化防止、抗加齢、抗老化です。スキンケアとは、皮膚のケアです。老化は歯と食物から進みやすいそうで、噛むことの重要性、安心安全な食物を食べることは老化の進行を抑え、健康で張りのある皮膚を保つことができます。


●佐世保米海軍オープンベース2014にて

 私の場合、まず禁煙。禁煙して6年、未成年のときからの習慣で、何度も挫折を繰り返しましたが、足の動脈硬化のことから案外簡単に止めることができました。次に食物。肉中心の食生活を野菜中心に変えて、野菜も有機栽培で無農薬野菜を近所の知人などから購入しています。
 アンチエイジングの基本は体内の浄化からです。肥料を多く与えられた農作物は硝酸窒素が多く、この硝酸窒素の多い野菜は活性酸素が多いのです。だから酸化しやすく、腐敗しやすいというわけで、硝酸窒素の少ない野菜は、腐らず枯れることが多いんです。お米であれば腐らず、発酵という過程を経て最後は水になります。
 昨今、ビタミン不足を錠剤で補給される方がおられますが、腸内が健全なら腸内で合成されサプリなど必要ないのです(特にビタミンB群など)。腸がきれいになれば、肌も見違えるほどきれいになり、傷の治りも早く、快便になり腸が若返れば、体ごと若返ったも同然です。栄養を考えてサプリメントを摂るより、無農薬有機栽培の野菜で行きましょう。虫が食べる野菜は安心なのです。そのほうがアンチエイジングの近道です。
 体内を浄化して自己免疫を上げると傷の治りが早くなりました。スキンケアは石鹸に拘り、限りなく無添加の石鹸を使い、入浴後は皮膚の保湿と傷の有無をチェックしています。
 1日でも長く健康で傷のない身体で過ごせるように心がけましょう!
 
福岡県:K.H.


 本の紹介 


 『疵(きず)』
 出口臥龍 著 出版:(株)ブックコム サイズ:四六判 定価:本体2,000円+税

 「はがき通信」の『臥龍窟日乗』でお馴染みの出口臥龍さんが146号で書かれていたように、初の小説にチャレンジされました。
 タイトルが“傷(きず)”ではなく、なぜ「やまいだれ」のほうの“疵(きず)”なのかなと、まず思いました。辞書で調べてみると、“疵”には欠点・あやまちという意味もあることがわかりました。“疵”のほうが何か内面を抉(えぐ)るような、生々しい印象を受けます。
 主人公・上条沙羅(かみじょうさら)と、その母・明子母子を中心に物語は進んでゆく。父親はいない。一家は富士山を見に車でドライブ中に交通事故に遭い、父親は首の骨を折って即死、沙羅自身も6歳という年齢で右半身の胸から太ももにかけて大火傷を負い、右胸の乳房を失ってしまう。



 事故が起きるまでは、大学の研究所に勤務していた父親と母親と3人で大学の職員寮でつつましく暮らしていた。だが、この事故をきっかけに事態は一変、沙羅母子は、引っ越しを余儀なくされる。出口さん自身が「気心が知れてくると男の猥談以上にエゲツない主婦の会話」をヒントに閃(ひらめ)いた小説と言っておられるので、要所要所にこのキーワードが登場する。「サスペンスを絡めるときっと面白くなるはずだ」。読み始めると、一瞬ミステリー?とも思える展開だ。きっと登場する特に女性ひとりひとりの個性がよく表れ、しっかり人物設定されているからだろう。
 しかし、引っ越した先の新興都市での生活でも、いつの時代も変わらない女の嫉妬と余計な一言。主婦どうし、子供の親どうしの水面下で渦巻く日常の裏側のドラマが繰り広げられる。父親がいて幸せそうな隣家がうらやましかった沙羅は、同い年の女の子が可愛がっていた白いポメラニアンを川の濁流に落として死なせてしまう。それを見ていたのが、同級生の女子とその母親だった。その女子は沙羅のライヴァルで、母親は隣家の夫人にそのことを電話する。結果、上城家と隣家の間に亀裂が入ることとなる。
 明子は駅前スーパーの店員で、そのスーパーに入ってきたのが大阪からの転勤組の女性。ママさんバレーのメンバーでもある。その女性の息子のランドセルが持ち去られる事件が起こる。関西女性は沙羅を疑い、「せやかて沙羅ちゃんの火傷のこと知っとんの、翔太(息子の名)だけやんか」あまりにもえげつない無神経な言葉が、沙羅の“疵”を深くしてゆく。
 ひょんなことから、明子はスーパーの店長と抱き合っている現場を関西女性に目撃されてしまう。「ぶっ魂消(たまげ)たわ、ホンマ。あの二人が出来てるとは。けど、おもろいネタ拾うたわ」その女性から上記の沙羅のライヴァルの母親へ伝わった噂は、たちまちひろまった。
 沙羅が私立の中等部に入学が決まったのを機に、東京郊外のマンションに沙羅母子はまた転居することになる。その大家が、ホステスの平均年齢63歳、陰で『妖怪バー』呼ばれている“しゃんぐぁん”のママだった。
 その後、高校生になった沙羅にも、恋心を寄せる同じ学校の仲のよいボーイフレンドができる。
 〈現実の世の中が、どんなに醜いものであっても、自分の理想を貫いていける〉
 と信じていた沙羅だったが、結局、この恋愛は成就しない。ちなみに、このボーイフレンドの兄が人工呼吸器を装着した頸損で、後に呼吸器事故で亡くなってしまうのだが……。
 自分が重篤な障害者だと思っていた沙羅が頸髄損傷者を見てショックを受け、〈身体が動かないって、どういうことなんだろう。〉のくだりは、同じ頸損者として身に沁みる。
 〈誉(兄の名)の命が、クモの糸にかろうじてぶら下がっているように思われた。人間の命ってなんて儚(はかな)く、虚しいものなんだろう。
 考えは同じ所をぐるぐる回る。ふと気が付くと振り出しに戻っている。そんな感じだった。〉
 出口さん自身の受傷後の心の内とも思える。
 『妖怪バー』の人生の修羅場をくぐり抜けてきたママやホステスたち、沙羅に甚大な影響を与える台湾女性の人物像は特に魅力的だ。
 「人はね、上辺(うわべ)がどんなに幸せそうに見えても、一つや二つ、大きな心の疵を抱えているものよ」
 私の心に一番残ったのは、次の一文だ。
 〈人というのは、なぜ持って生まれた運命があるのだろうか。
 そんな理不尽を、なぜ世間の人々はごく自然に受け入れてしまうのか。〔中略〕
 社会的な地位は高いと言い難い人々が時に情に厚く、〔中略〕陽のあたる場所にいる人間が、頑なに自分を守ろうとするのはなぜだろうか。〉
 〈人が生きていく「よすが」って何だろう。〉
 一時は、文学の世界にそれを求めた沙羅だった。家族や子供だろうか。と、自問する沙羅。とすれば結婚に見切りをつけた沙羅には、「よすが」は存在しないことになる。
 T大に合格した沙羅は、諸井という社会学の教授と出会う。諸井教授の社会学研究室に出入りするが、諸井は6年前に妻を失っていた。大学教授とも思えない破天荒な諸井に、沙羅は父親のイメージを重ね、次第に惹かれてゆく。
 それがある〈行き違い〉から、裁判へと発展してゆくことになる。
 「私、世の中のオモテとウラ、いやと言うほど見てきた……もう、疲れた」
 衝撃的な結末が待っている。
 もうひとつのキーワードは、『白いポメラニアン』かもしれない。
 ついに頸髄損傷者のなかから、芥川賞作家が生まれるかもしれません。
 小説の紹介文など書いたことがありませんので、下手くそで申し訳ございません。
 小説の世界に引き込まれて、何かドキドキしながら一気に読めると思います。購読者の皆さま、機会がありましたら、どうぞご一読を。
 

編集担当:瀬出井 弘美

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