はがき通信ホームページへもどる No.145 2014.2.25.
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 人生最後の東北の旅/紅葉と被災地巡り(1) 

手動車イス、車運転可

 全行程:2013年10月17日・福岡県〜滋賀県〜福島県〜青森県〜岩手県〜宮城県〜福島県〜山形県〜福島県〜滋賀県〜10月26日・福岡県

 ◇10月17日(木)晴れ 福岡県〜滋賀県
 朝7時20分に自宅を出発、途中、今回の旅の相棒を拾い、高速に乗り本日の宿、彦根キャッスルホテルに向かって走り出しました。今日はただ走るだけで、観光も見学もなく、ただ東北への距離を縮めるための走りでした。
 途中、広島県福山PAでトイレ休憩と昼食を取ることにし、昼食は尾道ラーメンを食べました。車イス運転者にとって高速のPAやSAは、車イス駐車場と、車イス用トイレが完備されており、とても助かる休憩所となっています。
 宿には夕方4時半頃着きました。宿の前はお城の掘割があり、正面に彦根城が見え城好きの私にはたまらない光景でした。部屋はバリアフリールームでベッドルームは少し狭く、2人宿泊する場合はソファーベッドを使うことになります。バスルームにトイレがあり、広さも充分で使い勝手は良さそうでした。ただ、ご多分に漏れずお風呂に入る際、シャワーチェアや車イスから乗り移れるような台もなく、浴槽端に座ることのできる僅かなスペースがあるだけで、お風呂に入るのはこの上なく困難でした。
 昨今、バリアフリールームが多くのホテル等で設置されるようになりました。しかし、トイレは何とか使えても、車イス使用者が一人で使えるようなお風呂は皆無に近いと改めて感じました。後に訪れる宿はもっと悪条件でした。私はアクロバットのようにして何とかお風呂に入りましたが、汗は流せても、疲れは増したような気がしました(笑)。

 ◇18日(金)晴れ 滋賀県〜福島県
 今日も福島までの距離を縮めるため、ひたすら走るだけです。福井県までは両親を連れて旅をしたことがあり、石川県から先は初めて訪れる県ばかりです。
 福島の会津若松には、夕方3時頃着きました。ここで驚いたのは、街中にある電光掲示板で今日の放射線の数値を広報していることでした。原発事故が、福島県民に大きな問題としてのしかかっていることを感じずにはいられませんでした。
 ここからいよいよ今回の旅の始まりです。最初の観光地として、NHK大河ドラマ綾瀬はるか主演の「八重の桜」に何度も登場した鶴ヶ城(会津若松城)を見学することにしました。ドラマはすでに舞台を京都に移していますが、その人気はまだまだ健在で、平日というのに、多くの観光客が訪れていました。美しく優雅な鶴ヶ城に圧倒されました。



 4時頃に今日の宿、ホテルニューパレスに到着しました。到着後すぐに予(かね)てより欲しかったお土産の、八重の桜バージョンの「八重べこ」を買いに街中へ走り出しました。初めての地なので道に迷いネットで調べた閉店時間を20分ほど過ぎて、もうダメかもしれないという思いで、目的の店「笑美(わらび)」に着きました。店の入り口は段差(下に)があり、店内に入ることができないので、入り口で大声を出すと、女将さんが出てきました。「八重べこ」を欲しいというと、「今日はいろいろやっていたらいつもより遅く店を閉めることになったねー」と言われました。本当にラッキーでした。いつものように閉店していたら、2度と買うことはできなかったのです。この幸運ラッキーが、この後の旅でも何度も訪れるのです。
 夕方、食べログ(口コミグルメサイト)で調べておいた福島名物ソースカツ丼を街のひなびた食堂で食べました。今回の外食については、ほとんど食べログで下調べしたものでした。卵とじカツ丼になれている私には初めて食する味で、不思議な感じのカツ丼でした。
 宿のバリアフリールームはとても広く、高級感あふれた部屋でした。ただ残念なのは、トイレとバスがユニット式で、お風呂は狭く使い勝手が悪く、手助けを受けて何とかシャワーだけ浴びることができました。

 ◇19日(土)曇り 福島県〜青森県
 朝食のバイキングに、八重も食べていた会津若松名物「ごづゆ」あり感激でした。少し時間があったので散歩をしていると、宿の前に野口英世の銅像がありました。そこに「忍耐」と書いてあり、福島の県民性を表していると感じました。
 福島から一気に本州の最北端青森を目指しました。十和田ICを降りて、憧れの地十和田湖と奥入瀬(おいらせ)渓流と車を走らせました。
 高速を降り、一般道を走っていると、初めて見る光景が目に飛び込んできました。それは、民家の屋根ほとんどがトタン屋根になっていることでした。お分かりとは思いますが、雪深い地方の対策で、トタン屋根にすることによって、雪を滑りやすくしているのです。後に訪れる岩手県内陸・宮城県内陸・山形県内陸もトタン屋根が多く見られました。所変われば品変わるとはこのことだと思いました。暖かい九州では、トタン屋根はほとんど見ることができません。
 3時頃、十和田湖畔の遊覧船発着場休屋港に着きました。いよいよ楽しみにしていた十和田湖遊覧です。車イス用駐車場も完備されており、そこに止めようとしたら、近くにいた係員の人が寄ってきて「この後奥入瀬渓流に行くなら、遊覧船が到着する奥入瀬渓流近くの子ノ口港まで車を移動してあげますよ」と言われました。さらに「明日は90%の確率で雨が降りますよ、今日のうちに奥入瀬渓流に行った方がいいですよ」と言われました。ここに来るまで奥入瀬渓流は翌日行こうか、今日行こうか迷っていましたが、係員さんの言葉が今日行くことを決断させてくれました。ただし、車の移動賃3000円はかなり痛かったです。結果から言うと、翌日本当に雨が降り、観光どころではなく、結果オーライで本当に良かったと思いました。
 十和田湖遊覧船は係員の人たちが、車イスを押して船まで乗せてくれました。約50分の船旅の出発です。ちょうど紅葉が始まっており、雄大な湖と紅葉が鮮やかでとても印象的でした。私は、夢中でビデオと写真撮影を行いました。烏帽子(えぼし)岩や、五色岩など珍しい景色ばかりで、あっという間に船旅は終わり、到着地点の子ノ口港に到着しました。
 予定通り車は到着しており、そこから奥入瀬渓流唯一の休息所(石ヶ戸休息所)に行くことにしました。この時期奥入瀬渓流は多くの観光客でごったがえしており、駐車場に止めることは困難であることが予測されました。ところが、休息所に着くと車イス用駐車場は一般の駐車場とは別に確保されており、なおかつ、係員がいて誘導してくれました。なんと優しい奥入瀬渓流、青森県の障がい者たちが頑張ったのか、青森県が理解あるのか、どちらにしろ「ありがたい」感謝の気持ちでいっぱいでした。
 そこから車イスを転がし、どうしても写真とビデオ撮影をしたかった「阿修羅の流れ」を目指しました。カメラは三脚で固定し、シャッター開放で水の流れを白糸のように美しく撮ることが最大の目的でした。撮影したデジカメを確認したところ、思い通りの画像が取れていて安心しました。
「阿修羅の流れ」はとても有名で、多くの観光客が足を止め、写真撮影をしていました。しばらく奥入瀬渓流の自然を満喫し休息所へ帰ることにしました。



 夕方4時半頃、今日の宿の民宿和みに到着しました。玄関から中へ入ろうとすると、一段上がった板張りのフロアーだったので、車イスのタイヤを雑巾で綺麗にしてから上がってくださいと言われました。やはり個人の民宿となると、結構こちらが気を使わなければならないのかなと思いました。ただ、タイヤを雑巾で拭くといっても、儀礼的にサササッと拭いただけでOKでした(笑)。
 民宿なので部屋はベッドだけがあり、トイレ(車イス用)とお風呂(家族風呂)は別になっていました。トイレは、広くて使い勝手も良かったです。お風呂は、利用しなかったので状況は分かりません。
 今回この民宿を選んだのは、ヒメマスの料理が食べられるからです。小学生のときに国語の教科書に出てきた和井内貞行(わいないさだゆき)の伝記がなぜか心にずーっと残っており、いつかは十和田湖でヒメマスを食べてみたいと思っていました。当時十和田湖は魚の住む環境ではなく、貧困にあえぐ村人たちを自分自身貧困の身でありながら、漁業によって村人を救おうとする物語、何度も失敗をし借金を重ね周りの人からは奇異な目で見られながらも、ヒメマスを十和田湖に生息させることに生涯を捧げた実話です。詳しくは、和井内貞行の伝記をご一読ください。

 ◇20日(日)小雨 青森県〜岩手県
 宿を出て、八甲田山の麓にある酸ヶ湯(すかゆ)温泉を目指すことにしました。1時間ちかく狭い林道のような道を走り最標高地点に来たとき、10月の中旬というのに道路の脇に雪が積もっており、ビックリしました。酸ヶ湯温泉は毎年5mの雪が積もっており、日本一の積雪地点となっていたことを思い出しました。そこからほどなく酸ヶ湯温泉駐車場に着きました。ここは、八甲田山撮影のベストポイントで多くの観光客が写真を撮っていました。小雨は相変わらず降っており、私は車から降りることなく八甲田山と紅葉を撮影し、その場を後にしました。
 山麓を降りていくと、リンゴ園が多く見られるようになりました。さすが青森リンゴ王国。
 昼食は黒石市名物の「つゆ焼きそば」を食べようと、食べログでも有名なお店に行ったのですが、お休みでした。事前にチェックしておけばよかったと猛反省しました。しかし、「つゆ焼きそば」で地域興しをしているのに、観光客が最も多く訪れるであろう日曜日に店を閉めるとは合点がいきませんでした。
 仕方なく、トイレも兼ねて近くの「道の駅いなかだて」で食事をすることにしました。昼食の後、雨も強くなってきたので、予定を取り止め宿に直接向かうことにしました。
 岩手県遠野市にある「農家民宿みずき」に着く頃には、土砂降りとなっていました。着いてすぐ宿のご主人に傘を差してもらい、スロープ(手作り)も押してもらい恐縮の一言でした。宿は、ログハウス風の手作り感いっぱいの宿でした。普通のトイレが車イスでも利用できるように広めとなっていて、お風呂は入りませんでしたが、少し狭く段差もあり車イスで入るのは困難かもしれません。
 料理は女将さん手作りで、その中で聞き覚えのある料理が出されていました。偶然とは言え驚きを隠せませんでした。それは、いつも楽しみに見ている、椎名桔平主演のドラマ「刑事のまなざし」に事件のキーワードとしてでてきた「ひっつみ汁」でした。こんな偶然があって良いのだろうか、月曜日(14日)にそれを見たばかりなのに、それが目の前にあるではないか、我が目を疑いました。そして、それはとても美味しかったです。ドラマに出た料理が食べられるなんて、しばらく興奮が冷めませんでした。
 ここの宿から遠くに線路が見え、それが夜になると地元の偉人、宮沢賢治の銀河鉄道の夜さながらの光景となり、しばらく列車の明かりを眺めながらロマンに浸っていました。

福岡県:匿名希望



 ひとくちインフォメーション 


 ★ 脊髄損傷、患者から採取の幹細胞で治療…国内初

札幌医科大学は10日、脊髄を損傷した患者に、患者本人から採った幹細胞を静脈に入れ、運動機能を回復させる臨床試験(治験)を始めると発表した。
 安全性と有効性を確認し、幹細胞自体が薬事法に基づく医薬品として承認されることを目指す。脊髄損傷はリハビリ以外の治療法がほとんどない。脊髄損傷を対象にした再生医療の治験は、国内で初めて。
 治験を実施するのは、札幌医大の山下敏彦教授(整形外科学)らのグループ。患者から骨髄を採取し、幹細胞を分離して約2週間培養した後、静脈へ点滴で投与する。骨髄に含まれる「間葉系(かんようけい)幹細胞」と呼ばれる特殊な幹細胞が損傷した神経に集まり、炎症を抑えて神経の再生を促すと同時に、幹細胞自体が神経に変化することが期待されており、治験で効果を確認する。
 対象になるのは、脊髄を損傷してから2週間以内で、脊髄が完全に断裂していない患者。治験を受ける患者の登録をこの日から始め、まず3年以内に30人に実施する。有効性が確認できれば承認に向けた最終段階の治験に移る方針だ。
 (情報提供:2014年1月10日 読売新聞)







【編集後記】



 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。皆様からのご投稿をお待ち申し上げております。
 今年の冬は、寒さが厳しいですね。と、昨年の2月号の編集後記でも言っていたような気がします。それでも、横須賀はめったに雪が降らないので、雪の降るところにお住まいの方たちからは、「雪も降らないのに何言っているの!」とお叱りを受けそうです。
 寒くなると、足元の冷え対策が重要になります。家では、綿の靴下の上に“ポカポカソックス”という厚手の靴下を2枚重ね履きし、レッグウォーマーをしています。外出用には、昨年の秋、ちょっと高かったのですが、通販で裏地が羊毛になっているマジックテープで着脱できるレッグウォーマーを購入しました。これが効果てきめん! 外出後も、足先の冷えがほぼなくなりました。過去に凍傷になったことがあるので、冬場の外出の強いみかたになりそうです。貼るカイロは、あまり使用しません。
 自宅のトイレでは、登山用のウール100%のソックスと、裏地がボアの福祉用のフェルト靴を活用。トイレに移乗して排便するのですが、タイルは思った以上にシンシンと冷え、ときには足先が紫色になることも……。今年は、桐灰(きりばい)の“足が冷えない不思議な靴下”の厚手のハイソックスを追加しました。
 その他登山用品は値段は高めですが、防寒用品は優れものが多いように思います。ちなみに私のひざ掛けは、超軽くてコンパクトに仕舞えるトラベル用で携帯にも便利です。
 次号の編集担当は、藤田忠さんです。



編集担当:瀬出井 弘美





………………《編集担当》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:stonesandeggs99@yahoo.co.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報担当》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2012年4月時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0054 福岡市東区馬出2丁目2-18
TEL:092-292-4311 fax:092-292-4312
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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