はがき通信ホームページへもどる No.113 2008.9.25.
Page. 1 . 2 . 3 . 4 .

前ページへ戻る

 腰折れ俳句(5)


赤とんぼ河童に道を尋ね来し

しるべなき道こそ歩め秋の蟻

暗闇に身をなじませて見る銀河

校長の肩は退屈秋の蝶

やはらかく煮えて南瓜の離乳食



        <絵:おもちゃかぼちゃ>


 絵のある本が好きで、だからここにも絵を添えている訳です。
 伊丹十三、赤瀬川原平、ミヒャエル・エンデなどなど絵のある本にはこと欠かないけれど、ロシアの作家アクサーコフの『釣魚雑筆』(岩波文庫)はロシアの川魚が美しく、魚釣りとぼくらにとって自然の中で暮らす楽しさが詰め込んであります。いい本だなぁ。

熊本県:K.S.



 『立てない・座れない・歩けなくなって                   
……《生きる力とはなにか》』を読んで


 数学の先生はついに自分の障害と社会の関係を分析し、自分の障害を克服したばかりか、利他ボランティア精神の実践、世界は友達を実践。重度になるほどエネルギーが湧き出す。多くの障害者の生活指針になる。自己分析と新たな発展の自己分析は、多くの障害者に役立つ。例えば、「人に会う恐ろしさ」は「人に会う喜び」に、「もうだめだ」は「まだ、大丈夫」に、「たかが」は「されど」に変わっていく。自力にこだわらない、心の柔らかさで、工夫しながら、時には発明にも取り組み、バリアフリーマップを行く先々で作り、HPで情報提供をする。ボランティア精神はとどまるところを知らない。英語も不自由な重度障害者(笑)なのに、世界中をとびまわり、出会いの喜びを味わい、「1日1日を迎えるのが楽しくて楽しくてしかたない」人生。生きるヒントを行間から得られた。
 障害者になること、障害者として永らえることは、自己分析を深め、社会との関係を極め、ある意味で幸福とは何か、生きるとは何かを極められる哲学人生を得られる。世界中、どこにも障害を通して、宇宙の不可思議を見る人がいる。動けないほど、想像力がはたらき、不自由なほど、出会いがあるから、「障害」は「幸福」に至る道である。
 「自立」を目標に地域に出て、その後の目標を失うことがある。「自立」したら、社会還元の意味で、「利他ボランティア精神の実践」を目標にすると、ずっと人生が広がるのではないか?
 滝口仲秋 著 本の泉社 本体1,600円+税



東京都:M.K.



 読書メモ(11) 


 オランダは不思議な国だ。安楽死も売春も、そして麻薬までもが合法化されている。なぜそうなったのか知りたくて、紀伊國屋のブック・ウェブで検索して入手したのが『物語オランダ人』(倉部誠著、文春新書)。拾いものだった。おもしろい。
 著者はオランダで会社を経営する日本人。それだけにオランダ人がいかに自分勝手な怠け者かということを実体験をあげて執拗なほど書いている。けちなのはDUTCH ACCOUNTという英語があるくらい。上司の命令に従わないのは、そもそも家庭でも学校でも叱られるということがないから。先生が生徒の答えを直すこともない。先生はこう思うと言うにとどまる。労働者保護は行き過ぎているほど徹底している。軍隊も戦闘意欲なし。第2次大戦中インドネシアで日本人から受けた仕打ちを忘れず、いまだに謝罪を要求。反日感情強し。
 アムステルダムは別名ホモの都市と呼ばれるくらい同性愛者が多く、結婚も2001年4月から合法化されている。スケベニンゲン海岸には特に多い。
 裸が好きで、女性も家のなかでは裸でいるのを好む。
 16歳から契約書を交わした上で同棲し、そういうカップルには国から手当が出る。結婚までに相手を何度も変える。早くから親元を離れるので、親子の情愛はうすい。老いた親もプライバシー優先で、老後を子供に頼ろうという気はない。家族が寄り添って生きるのは貧しさ故で、豊かになれば夫婦単位になると著者はいう。
 国土は平坦で九州ほどの面積しかなく、干拓で拡大してきた。自然に対する畏怖の念というものがない。人知を越えたものに対するおそれの念がないと、宗教心も弱くなる。旧教でもなければ新教でもなく、拝金教。徳川幕府がオランダにだけ国交を許したのは、そこを見破ったからだろう。
 安楽死については1973年から議論を続け、2000年には安楽死法案を可決。
 売春・安楽死については、個人の自由を最大限重んじるという精神の現れと見て納得がいったが、麻薬は行き過ぎ。他人の自由を侵している。 

 講談社文芸文庫はどうしてこんなに高いんだろう。『やわらかい話 吉行淳之介対談集』は1400円もする。年譜や著作目録までつけて。全集じゃあるまいし。
 若いころはあんなに夢中になって読んだ吉行の対談だが、あまりおもしろく感じられない。金子光晴、淀川長治の回はおもしろい。田村隆一は酔っぱらっているのか、だらしない対談で、要するに自分は繊細な人間だからまともな話なんか恥ずかしくてできないと言いたいようだ。

 『英語襲来と日本人』(斎藤兆史著、講談社選書メチエ)は、日本の英語教育がうすっぺらなコミュニケーション主義に行こうとしている現状を嘆く著者が、ウィリアム・アダムズ(三浦按針)以来の英語と日本人の関わり、苦心惨憺(さんたん)をつづったもの。
 黒船来航のさい、日米交渉はオランダ語で行われた。日本側が英語ができなかったせいだが、できたとしても「母語話者」にはかなうわけがないから、これは賢明だったと著者は言う。《最近では、英米の言語戦略の下、あたかも英語が世界共通言語であるかのような幻想が蔓延(まんえん)しており、国際協定の多くが英語で取り交わされているが、これは非母語話者にとって危険の多いことである。》
 明治時代、英語は花柳界にもはいりこみ都々逸(どどいつ)にもなった。ろくなものはないが、ひとつ面白いのがあった。
  うつくしスピーキ(speak)もうやめさんせ恋にハイロウ(high low)あるじやなし
 与謝野晶子の「やは肌のあつき血潮に触れも見でさびしからずや道を説く君」に似ている。晶子のほうが優れているのは言をまたないが、内容はおなじ。これが当時の男女の関係だったのだろうか。晶子の歌は女性の近代的自我の目覚めの現れのように言われるが、案外江戸情緒を下敷きにしているのではあるまいか。

 

編集部員:藤川 景




※「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功—再生医療前進へ(その5)<最終稿>」は、諸事情により次号に掲載させていただきます。





 ひとくちインフォメーション 

★ ノートパソコン用スタンド

 ノートパソコンを使う時に、ノートパソコン用スタンド“これはいるか”5,980円((有)ガジェット広島 TEL:082-876-1227 http://www.crushegg.com/)を使っています。


 

 

神奈川県:M.I.



★ 360度歯ブラシ『デントレディアス』

 この歯ブラシをインターネットで見つけたとき、自分が受傷した当時を思い出した。今は電動歯ブラシを使用しているが、入院中は歯を磨くのにカフ(自助具)に歯ブラシを差し込んで使っていた。しかし、上下の奥歯を磨くために歯ブラシを差し込み直すことが自力では困難だった。それで考えついたのが、普通の歯ブラシを背中合わせにしてそれを結束バンドで留めるという方法だった。そうすると、上下の奥歯を一度に何とか磨ける。
 同じようなものがほしいと考え、作ろうと思う人がいるものだ。平成元年当時、この360度歯ブラシはなかったはずだ。
 この歯ブラシを使ったことはないが、毛先が360度になっているのでカフ等を利用して歯を磨いている人でも歯ブラシを回転させる必要がなく、今まで磨きにくかったところも磨きやすく、縦磨きだけでなく横磨きもできるだろう。方向性がないので、手の不自由な方のご使用や介護用にも最適と書いてある。
 価格は約500円。他にもこのような歯ブラシはあるが、『デントレディアス』が価格的には一番安いような気がする。


  


 (株)STBヒグチ
TEL: 06-6730-1712(東大阪市)
http://www.toothbrush.co.jp/index.html

編集委員:瀬出井 弘美




      <S.T.さん(千葉県)の作品>



    <M.S.さん(香川県)の絵手紙作品>










【編集後記】


 この夏もメチャクチャ暑い。地球温暖化の影響もあるのか、年々、夏が暑くなってゆくような気がする。今まで田舎という環境もあり、「室温28度」で暑さ対策をしながら何とかやってこられた。しかし、今年は、暑くてグロッキー気味になってきたなと思って温度計を見ると26度だ。湿度の高さも関係しているだろう。
 加齢も原因しているのかもしれない。歳を重ねるごとに、暑さにも寒さにも弱くなってきているのは確かだ。ある頸損の先輩が、「頸損は健常者より10歳くらい実年齢より上」とおっしゃっていた。頸損も医学・医療が進み、長生きのできる時代になってきている。頸損者の高齢化問題が出てきても当然だろう。
 私の場合は婦人科の持病の手術後、もともと自律神経がオシャカになってきているところに更年期が入ってきている。それから、排便に関しては下剤量が2倍に増え、その他に整腸作用のあるオリゴ糖を飲んで調整し、排便日には心がけて水分を多く取らないと便が出にくくなってきている。そして、排便日は特に身体が痛い! 
 まっ、先のことをあまり深刻に考えてもドヨドヨ〜ンと気が滅入る(暑いだけでも気が滅入っているのに)だけなので、超短期目標としてはとにかく今は9月号の編集を無事に仕上げ、この「はがき通信」が発行されるころには終わっている京都懇親会に向けて、このクソ暑い夏を一日一日乗り切ってゆきたい。少しでも元気に秋に突入するゾ〜!
 次号の編集担当は、藤田忠さんです。


編集委員:瀬出井 弘美







………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 和歌山県立医科大学
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2008.4.1.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

このページの先頭へもどる


HOME ホームページ MAIL ご意見ご要望