○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書/U.傍聴団メンバーからの感想

「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団参加報告

財団法人全日本聾唖連盟副理事長 黒崎 信幸

 「『障害者の権利に関する』国際条約への提案を検討するための特別委員会」の傍聴団は7月17日に結団式を行い、A班(7月29日〜8月5日)と、B班(8月3日〜11日)の2班に分かれて出発しました。私はA班に入り河端静子氏、松友了氏、藤井克徳氏、丸山一郎氏、江上義盛氏他サポートの人をいれて計10人で行動しました。したがってここで報告する内容は、7月29日から8月2日までのものです。

 「『障害者の権利に関する国際条約』の取り組みは、1987年にイタリアから、1989年にはスウェーデンから、それぞれ提出されているが、財政的な問題やほかの人権条約や規約にも障害者が含まれていることが理由で進展しなかったと伺っています。しかし、それらの条約や規約は各国政府への拘束力が弱いことから、RIの総会や、世界障害NGOサミット等で「障害者の権利条約制定」の掛け声が高まり、2001年12月19日の国連総会で、メキシコを代表とする28カ国から共同提案され、採択されたことによってスタートしました。

 7月29日から始まった一般討論は、議長にエクアドルのルイス・ガレゴス氏を迎え、副議長席にはスウェーデンのカリーナ・マーテンソン氏がいました。審議は提案国のメキシコから始まり、デンマークがEUを代表して、現実的で実施可能な条約を望む発言がありました。ほかの国の発言も概ね条約の実現を支持するものが多かったが、既存の条約・規則の実施を優先すべきという慎重論も少なからずありました。

 本村国連日本政府代表部大使の発言は、「アジア太平洋障害者の十年」の取り組みや、最終念記念フォーラム事業、障害者プランの紹介が中心で、肝心の障害者の権利条約については「幅広い議論をするべきである」という消極的なものでしたが、NGOの参加については歓迎すると賛意を示しました。

 しかし、国連ではNGOの審議への参加は前例がないことから、障害者NGOの参加についてかなりの時間を割いて議論され、結論として特別委員会に限ってNGOは、(1)すべての公開の会合への参加を認める、(2)時間の許す範囲で発言を認める、(3)時間・人に制約がある場合、代表が意見を述べること、(4)公式文書の配布を受けられ、書面で発言を行うことができる、等の確認がありました。
 一番肝心の「『障害者の権利に関する』国際条約への提案を検討するための特別委員会の設置」議題をどうする?ということについても(1)障害の原則と権利、(2)公民権、(3)経済的・文化的権利、(4)第三世代、と議長がまとめていたが、このまとめ方で今後の審議がどのような方向に話が進むのか、心残りをB班に託し帰国しました。

 国連という地球上で生活する60億すべての人の命運を握る議場に足を踏み入れ、その内6億人いるといわれる障害者の権利の行方が、目の前で議論されている、まさしく歴史的な現場に立ち会っていると思うと、身震いするほど厳粛な気持ちになりました。このような機会を与えてくださったことに感謝いたします。


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