○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書

W.傍聴を終えて

 「国連・障害者権利条約特別委員会」の傍聴団団長として一言ご挨拶申しあげます。
 アメリカ・二ューヨーク国連本部において各国代表の熱心な発言を目前に見たり聞いたりして今回ほど傍聴団の役目の重さを感じたことはありません。

 障害別団体から選出された総数18名は7月29日から8月3日までのA班、8月3日から8月9日までのB班に別れて参加しました。私はB班として参加しました。

 ニューヨークの天候は、到着当日は32度位でしたが8月5日から27度位になり過ごしやすくなりました。A班は暑くて大変だったと聞いております。

 宿舎はチェスターフィールドという6階建のマンションホテルで二ューヨーク市186W・80Stに面していて、近所にイタリア料理店、日本料理店、コンビニエンスストアなどが点在しており、食料の買い出しや食事には便利でした。

 国連本部まで毎朝9時に連日通勤するのですが、交通手段はバスでした。ニューヨークのバスに初めて乗りました。真ん中にリフトが各バスとも付いていて障害者の車いすが乗り場にいると、第一に運転手は混み合うバスの中を後部まで行き、リフトのスイッチを操作して障害者の車いすを車内に入れてから、乗り口のドアを開けるのです。一般の乗客は文句も言わず静かに乗ってきます。そして乗客の中に体の不自由な人や、老人がくれば直ぐに席を立って譲ります。白人も黒人も当たり前のように譲ります。日本に比べて米国民のモラルのレベルの高さを感じました。バス通勤で毎朝、感心しながら席を譲られ感謝して国連本部の委員会に通っておりました。

 私たちは市バスに乗って国連委員会の傍聴団の一員として出かけます。国連本部の入口で検問があります。広い本部の中を幾つも曲がって会議場にたどり着きます。議場の委員はアルファベット順に国々の表示札を席の前にしてイヤホンを耳にかけて聞いております。私ども傍聴団もイヤホンをかけてB班の松井先生の滑らかな日本語訳と会場で発言している各国委員の表情を目で追います。会場の気温は25度〜26度位で涼しさ通り越して背広を着ていても寒い位です。本村国連日本政府代表部大使、山本公使等、私たちの傍聴団の労に感謝の意を述べられ、日本政府として皆さんの要望に全力でお応えできるよう頑張ますと決意を述べられました。

 また、中国残疾人連合会国際部処長の張先生にも松井先生のご紹介で会い、記念写真を一緒に撮ることができました。また、権利条約提案国のメキシコ代表とも一緒にタ食会で同席をし、障害者の権利条約の原動力になったメキシコ代表に日本酒をコップ一杯に注いで何回も乾杯をしましたが、テキーラで鍛えた喉はいささかも動じませんでした。

 7月29日から10日以上にわたる審議を経た8月9日、障害者権利条約特別委員会(ルイス・ガレゴス議長/エクアドル)において、「障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の報告書案」が全会一致で承認されました。A班、B班とも今回の特別委員会への傍聴団派遣の意義は国連と日本政府との関わり、われわれ障害者団体(NGO)のこれからを考える歴史的な第一歩だと強く感じました。関係者ならびに傍聴団に心から敬意を表します。

2002(平成14)年9月30日

傍聴団団長/社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長 兒玉 明


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