○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書/V.関係資料

特別委員会の報告書案(A/AC.265/2)邦訳

 以下は、第1回特別委員会の報告書案(A/AC.265/2)の仮訳です。2002年8月9日の本会合では、報告書案の修正文書が配布され、それに口頭修正がなされた上で、報告書案が採択されました。この仮訳は、修正文書を踏まえて(口頭修正箇所は一部踏まえて)作成したものです。
 なお、後日、国連から報告書の正式版「(A/57/357)Report of the Ad Hoc Committee on a Comprehensive and Integral International Convention on Protection and Promotion of the Rights and Dignity of Persons with Disabilities(英語)」が公表されました。


「障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会の報告書案」(A/AC.265/2)


I. 序

1.国連総会は、その決議56/168(2002年12月19日)において、国連人権委員会及び社会開発委員会の勧告を考慮して、社会開発、人権及び非差別分野における全体的アプローチに基づき、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約の提案を検討するための、すべての国連加盟国及びオブザーバーに参加の途が開かれた特別委員会を設置することを決定した。また、この決議は、第57回国連総会が開催される前に、特別委員会が10日間の作業を行う会期を少なくとも1回開催することを決定した。

II. 組織事項

 A. 第1会期の開催と期間

2.特別委員会は、2002年7月29日から8月9日まで国連本部において、その第1会期を開催した。この会期中に、特別委員会は19の本会合と、パネルディスカッションのために1つの会合を開催した。

3.実質的な事務局として、経済社会問題局・社会政策開発部が活動することになった。一方、特別委員会の技術面に関する事務局は、国連総会に係る問題及び会議サービス局・軍縮及び非植民地化機関担当係(Disarmament and Decolonization Organs Servicing Branch of the Department of General Assembly Affairs and Conference Services)が受け持った。

4.特別委員会の第1回会合は国連総会の副議長エラディオ・ロイザガ(パラグアイ)の開会宣言をもって開催された。ニティン・デサイ経済社会問題局事務次長は、国連事務総長の代理として発言した。

 B. 役員

5.第1, 5, 7回会合(7月29日、7月31日、8月1日)において、特別委員会は、口頭表決により、以下の役員を選出した。
議長:ルイス・ガレゴス(エクアドル)
副議長:エリク・マナロ(フィリピン)
    :ジャネット・ヌドロフ(南アフリカ)
    :カリーナ・マーテンソン(スウェーデン) 

 C. 議題

6.第1回会合(2002年7月29日)において、特別委員会は、以下のような議題案(国連文書A/AC.265/L.1)を採択した。

  1. 会合の開催
  2. 議題の採択
  3. 作業の構成
  4. 障害に関する新たな国際文書(障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約を含む。)に関する一般的討論
  5. 特別委員会の勧告
  6. 第57回国連総会に提出される特別委員会の報告書の採択
  7. その他
7.特別委員会は以下の文書を討議資料とした。
(a) 国連事務総長ノート(A/AC.265/1)
(b) 議題案(A/AC.265/L.1)
(c) 参加者名簿(A/AC.265/INF/1)
(d) 障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約(メキシコのワーキング・ペーパー)(A/AC.265/WP.1)
(e) 障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約(EUのポジション・ペーパー)(A/AC.265/WP.2)
(f) 障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約(中国のポジション・ペーパー)(A/AC.265/WP.3)
(g) 障害に関する国際規範と国際基準に関する報告書(A/AC.265/CRP.1)
(h) 障害のある人の人権(A/AC.265/CRP.2)
(i) 障害に関する国際規範と国際基準に関する国際セミナーとシンポジウム(A/AC.265/CRP.3)
(j) 障害に関する国際規範と国際基準に関する国連諮問専門家会合の報告書(A/AC.265/CRP.4)
(k) 作業の予定表(A/AC.265/CRP.5)
(l) 障害と人権に関する重要論点と傾向:現れつつある論点と概念(A/AC.265/CRP.6)

III. 作業の構成

8.第8回会合(2002年8月1日)において、特別委員会は、テーマ別のアプローチ(包括的な原則及び権利、市民的及び政治的権利の平等、経済的、社会的及び文化的権利の平等、パネルディスカッション、監視メカニズム、その他の項目)に基づいて、その作業を行うことを決定した。

9.2002年7月29-31日の本会合において、以下の国家代表は一般的な声明を行った。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、クロアチア、デンマーク(EU代表)、ドミニカ共和国、インド、インドネシア、日本、ヨルダン、ノルウェー、フィリピン、韓国、シエラレオネ、南アフリカ、ウガンダ、米国及びウルグアイ。また、以下の国連専門機関及び組織が一般的な声明を行った。国際労働機関(ILO)及び国連人権高等弁務官事務所。さらに、以下の非政府組織(NGOs)の代表も発言した。障害者インターナショナル、インク ルージョン・インターナショナル、マドレInc.(Madre Inc.)、支援連合インターナショナル(Support Coalition International)、世界盲人連合及び世界ろう連盟。

10.第14回会合(2002年8月6日)において、特別委員会の要請により、経済社会問題局・社会政策開発部は、この問題について国連機関及び計画の代表と意見を交換することを目的としたパネルを、政府代表とNGO代表のために設けた。このパネルは、オディル・フランク(経済社会問題局・社会政策開発部)の宣言をもって開催され、ベンクト・リンクビスト(社会開発委員会の障害に関する特別報告者)が司会をした。申し合わせた事項について、以下の専門家が簡潔に状況を説明した。アキコ・イトウ(経済社会問題局・社会政策開発部)、ジェーン・コナーズ(経済社会問題局・女性の地位向上部)、メアリー・ベス・ヴァインヴェルガー(経済社会問題局・人口部)、マリー・シャミ(経済社会問題局・統計部)、ブライアン・バーデキン(国連人権高等弁務官事務所・国連人権高等弁務官特別顧問)、ジェラルド・クイン(国連人権高等弁務官事務所の下で行なわれた研究報告書の執筆者)、グルバダン・ハビビ(国連児童基金)、スティーブ・ミラー(ILO)、ジャヴィア・ヴァスクエツ(世界保健機関を代表した汎米保健機関)。

IV. 決定

11.第8回会合(2002年8月1日)において、特別委員会は、議長が提案した次の決定を採択した。

「障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会における、認証を得た非政府組織の参加形態に関する決定」

特別委員会は以下のことを決定する。

  1. 特別委員会の認証を得た非政府組織の代表は、以下の形態により、特別委員会の作業に参加することができる。

     a.特別委員会のあらゆる公式会合に出席する。

     b.現在の国連慣行に従って、時間が許す場合に発言を行う。

     c.時間の制約がある場合には、衡平な地理的代表性及び非政府組織の多様性を考慮に入れて、均衡がとれかつ透明性をもったかたちで、代弁者(スポークスパーソン)を選出する。

     d.公式文書を受け取る。また、書面その他の発言を行う。書面での発言は、経済社会理事会決議1996/31に基づく場合を除き、公式文書として記録されない。さらに、非政府組織は、国連事務局が指定したアクセスの容易な場所において、当該組織の文書を諸代表に提供することができる。

  2. 上記の参加形態は、国連総会の他の特別委員会の前例とならない。

  3. 第2回目以降の特別委員会への参加要請を、地域委員会、国連機関及びメカニズム、専門家、国内人権機関並びに国内障害者団体にまで拡大した特別委員会の決定を想起する。

V. 勧告案

12.(削除)

13.また、特別委員会は、国連総会が第2回特別委員会の開催地を検討し、それを第57回国連総会で採択される関連決議に含めるよう勧告する。

14.(記載なし)

15.特別委員会は、国連事務局が、必要な場合には、地域技術会合及び専門家会合を開催するよう要請する。これらの会合の資金供給は、障害に関する国連任意基金、開発口座その他の任意的貢献を通じて行うものとする。

16.(削除)

17.特別委員会は、その議長団が、第2回特別委員会の準備及び構成(第2回特別委員会が開催される少なくとも6週間前に、とりわけ、テーマ別討議のための枠組みを示した議題案を準備することを含む。)に関する会期間会合を開催するよう勧誘する。

18.さらに、特別委員会は、その議長団が、第2回特別委員会において、主要なテーマ別の問題に関して、専門家及び国連諸機関が参加するパネルディスカッションを開催するよう勧誘する。

19.特別委員会は、国連総会が、障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約について、以下の決議案を採択するよう勧告する。

国連総会は、

特別委員会を設置した国連総会決議56/168、国連人権委員会決議2002/61、及び社会開発委員会第40会期の報告書(E/2002/26)に含まれている社会開発委員会決議を想起し、

特別委員会の作業に非政府組織が積極的に参加する重要性、並びに、障害のある人の人権及び基本的自由を促進する際の非政府組織の重要な貢献を強調し、

条約提案の検討が、障害のある人の機会均等化に関する国連基準規則の実施を強化しつつ、国際的義務の実施及び6大人権条約の監視機構の主流に障害の観点を一層取り入れるための具体的な努力を補足するものであることを強調し、
特別委員会の作業に貢献する、政府、専門家及び非政府組織による国内的、地域的及び国際的会合における作業を歓迎し、

障害のある人がすべての人権及び基本的自由を平等かつ効果的に享有することを促進し及び保護する必要性を再確認し、この点に関して条約が果たす貢献を認め、従って、条約提案の審議を継続する必要があることを確信して、

  1. 第1回特別委員会の報告書に感謝をもって留意する。

  2. 社会開発委員会第41会期及び国連人権委員会第59会期に特別委員会の報告書を提出するよう、国連事務総長に対して要請する。

  3. 第58回国連総会が開催される前に、10日の作業日をもつ会合を2003年に少なくとも一回開催することを決定する。

  4. 政府が、特別委員会の作業に貢献するための会合又はセミナーを、適当なものとして、社会政策開発部、国連人権高等弁務官事務所、社会開発委員会の障害に関する特別報告者及び非政府組織と協力して開催するよう奨励する。

  5. 条約提案(とりわけ、その性質及び構造、社会開発、人権及び非差別の分野の作業を含む検討すべき要素、新文書と既存文書との相互補足、フォーローアップ及び監視に関する問題を含む。)について、国連加盟国、オブザーバー、国連システムの関連機関及び組織(関連人権条約機関、及び社会開発委員会の障害に関する特別報告者を含む。)の見解を求めるよう、国連事務総長に対して要請する。

  6. この点について、さらに、提出される諸見解を含む包括的な報告書を第2回特別委員会に提出するよう(この報告書は第2回特別委員会が開催される遅くとも6週間前に公表されるものとする。)、国連事務総長に対して要請する。

  7. 条約提案に関して検討されるべき提案及び可能な要素を特別委員会が利用できるよう、地域委員会及び政府間組織(それぞれの任務の範囲内で)並びに非政府組織(国内障害者機関、国内人権機関及び本事案に関心を持つ独立専門家を含む。)に対して勧誘する。

  8. 社会開発委員会の障害に関する特別報告者及び国連人権高等弁務官事務所による特別委員会の作業への貢献を歓迎し、この分野における相互協力並びに特別委員会との協力を継続するよう、同報告者及び同事務所に対して要請する。

  9. (削除)

  10. 特別委員会の作業における非政府組織の参加様式に関する国連総会決議56/510及び特別委員会の決定に従って、特別委員会への非政府組織の積極的な参加及び関与を確保するための努力が一層行われるよう勧奨する。

  11. さらに、国連総会の決定56/473に従って、施設及び文書のアクセシビリティが障害のあるすべての人のために改善されることを確保するための努力が行われるよう勧奨する。

  12. 特別委員会の作業の遂行に必要な設備を同委員会に継続して提供するよう、国連事務総長に対して要請する。また、この文脈において、国連障害計画が特別委員会に必要な支援を提供できるように資源を再配分するよう、国連事務総長に対して要請する。

  13. 特別委員会の作業に貢献する準備過程に障害のある人、障害者団体の代表及び専門家が参加するよう、国連加盟国に対して奨励する。

    13bis. 特別委員会の会合に参加する国連加盟国代表の中に、障害のある人及び/又はこの分野の専門家を含めるよう、国連加盟国に対して奨励する。

  14. 非政府組織及び途上国(とりわけ、後発開発途上国)の専門家の参加を支援する任意基金を設けることを決定し、この任意基金に貢献するよう、政府、市民社会及び民間部門に対して要請する。

  15. 特別委員会に関する包括的な報告書を第58回国連総会に提出するよう、国連事務総長に対して要請する。

VI. 特別委員会の報告書の採択

20.第19回会合(2002年8月9日)において、ジャネット・ヌドロフ(南アフリカ)副議長は、特別委員会の報告書案(A/AC.265/2)の内容を説明した。

21.同会合において、特別委員会は、第57回国連総会に提出される、口頭修正された報告書案(A/AC.265/2)を採択した。

(訳:川島 聡)


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