○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書/U.傍聴団メンバーからの感想

「国連・障害者権利条約特別委員会」
傍聴団(B班)に参加して

日本障害者協議会 副代表 吉本 哲夫

 「国連・障害者権利条約特別委員会を傍聴し、国際的な動きと状況を把握するとともに、IDAをはじめ各国の障害関係NGOとの交流を深める」という目的で出発した傍聴団が、緊急な企画であったにも関わらず、「権利条約制定のための特別委員会」設置という予想を超える大きな成果を上げることができたのは、主唱団体はもとより一人で通訳を引き受けていただいたRI副会長の松井亮輔さんをはじめ、長瀬修さん、川島聡さん、谷口奈保子さん他、現地在住のみなさんによる支援があったからこそであり感謝したい。

 傍聴して最も印象深かったのはNGOの活動であった。各国代表の発言が優先されるなかにあっても、発言の機会を捉えて障害者問題の現状や権利条約の必要性を訴え、休憩時間には各国のNGOが集まって討論するなど、権利条約制定という共通の目的達成にむけて、国を越え障害の種別を越えたねばり強い取り組みには学ぶことが多かった。日本でも障害者団体が一致する問題を大切にして要求実現の取り組みを強めるなら、予想を超える成果を上げるだろうと確信をもった。国内での第三種・第四種郵便料金問題で取り組んだような共同行動の広がりを期待したい。

 障害者が各国代表の一員となり、NGOと密接な連絡を取りながら政府代表として行動している国もあった。また、EUやメキシコなど条約制定にむけての積極的な発言が印象的だったが、この特別委員会に代表を送らなかった日本政府は、2003年に予定されている権利条約検討の特別委員会には、私たちの要求にこたえて障害者の代表を加えた政府の代表を派遣し、条約制定にむけて国内の取り組みが前進するよう障害者運動を支援するなど、積極的な役割を果たしてほしいものである。

 国連本部へは毎日バスで通い、セントラルパーク、ブロードウェイを通ったことは観光の機会のない中で貴重な体験であった。バスは、「障害者のあるアメリカ人法」の制定以来、すべてにリフトが設置されているのにまず驚いたが、乗車は車いすが優先され待っている乗客からの不満の声は一度も聞かなかった。シルバーシートも設置されていて若い人が利用していることもあったが、お年寄りが乗車してくると必ず席を譲っていることを見て、障害者やお年寄りがともに生きていくことは当然のことであるという「共生」の思想が定着していることを痛感した。

 いま、「障害者権利条約」制定にむけての取り組みを国内的に組織することは障害者団体の重要な役割といえる。同時に長期の障害者基本計画策定とESCAPの政策課題の実現、支援費制度に始まる障害者施策の見直しに対する不安解消など、障害者の人権、自立と社会参加をめざす取り組みを成功させるためには、共同の運動が切実に求められている。こうしたときに日身連、日盲連、DPI、RIのみなさんと長期間行動を共にし、さまざまな問題で意見交換できたことは得がたい経験であった。


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