○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書

はじめに

 「歴史的な局面に立ち会うことができた」、まずはこのことが国連本部での傍聴活動を終えての感想である。言語の障壁もあり、舞台裏でのやり取りを含め特別委員会の全貌を熟知するなどは、到底成し得るものではなかった。しかし、障害者権利条約のみを議題として各国代表が国連本部に集ったことは紛れもない事実であり、まだまだ不透明ではあるが採択にむけた歴史の歯車の始動を目の当たりにできたことは貴重な体験であった。

 特別委員会の傍聴団派遣を構想したのは「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム実行委員会で、最終的に派遣を確定したのが6月に入ってからのことである。しかしながら、特別委員会の日程や内容の詳細がなかなか判然とせず、結局詳細については現地に到着するまで分からずじまいであった(開催期間が7月29日から8月9日までの2週間であるという大枠については確認できていたが)。また最も懸念されていたことの一つに傍聴がどの程度可能となるのかということであったが、これについては離日の5日前に急遽国連での総会決議がなされ、前例にしないという条件と国連が承認するNGOメンバーに限って傍聴できるとの報が入ったのである(傍聴団は、全員RIを通して登録した)。

 このような経緯のかたわらメンバーの確定を急ぎ、7月17日の結団式を経て、7月29日のニューヨークへむけての出発を迎えたのである。傍聴団の団長は、日本身体障害者団体連合会の兒玉明会長が務めた。また会期が2週間と長丁場であるために、18人の傍聴団を2班に分け、前半をA班(10人)、後半をB班(8人)とした。

 今回の傍聴団派遣の目的は、大きく分けて3点あった。その第一は、障害者権利条約に関する第1回目の特別委員会という歴史的な国際会議に立ち会うこと、第二は関係NGO(IDAを中心に)との交流を含め、今後の国際的な提携活動の足がかりをつくること、第三は傍聴団の存在そのものが外務省を中心にわが国政府の積極性を引き出す上で効果的な作用をもたらしたい、というものであった。

 さて国連本部を舞台とした極めて稀で濃厚な体験を通して傍聴団の面々は多くのことを感じたようである。本報告書は、特別委員会の詳報というものではなく、傍聴団個々人の率直な感想、印象記を主体にまとめたものである。とはいっても、単なる感想文集ではなく、障害者権利条約の採択にむけての今後の取り組みの基本視点などが随所に散りばめられている。傍聴団のコーディネーターを担った丸山一郎、松井亮輔両氏による会議の概要報告とあわせ本書全体から今回の特別委員会の意義を読み取っていただければ幸いである。

 最後に、傍聴団派遣にあたって支援いただいた多くの内外の団体と個人に心より謝意を表したい。資金面で助成をいただいた財団法人ヤマト福祉財団、毎日新聞社会事業団、株式会社廣済堂、また全体の調整を担っていただいたRI本部事務総長のトーマス・ラガウォル氏、ニューヨーク在住でソーシャルワーカーのシャーマン・ゲスベン氏とその友人、さらには傍聴を共にしながら日本語での会議録の提供をいただいた長瀬修氏と川島聡氏、重ねてお礼を申しあげたい。

2002(平成14)年9月30日

「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム
実行委員会総務・企画委員長 藤井 克徳


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