山手線駅ガイド

  駅ホームの歩行は、視覚障害者とりわけ全盲者にとっては「綱渡り」と同じ、常に命の危険と背中合わせです。
  1994年に実施した私たちの調査では、視覚障害者の半数、全盲者の3人に2人が駅ホームからの転落経験があるとこたえています。日常的に単独歩行する全盲者では、ほとんどの者が転落経験をもっています。調査の後でも5年間に全国で11件の死亡が起きており、昨年1年間に都内で5件の転落事故が起こっています。
  このような状況を改善するには、地下鉄南北線などのようなホームドア・可動柵が必要です。しかしその対策は、遅々として進みません。
  視覚障害者の駅ホームからの転落事故は、ホーム上の移動に必要な情報不足が 原因であり、切符の購入、構内の移動のためのさまざまな情報不足もその要因です。
  そこで私たちは、このような状況のもとで転落事故を少しでも防ぐために、全盲者に情報を提供するパンフレットを作ろうと考え、その第一歩として、もっとも利用の多い山手線で実施することにして、昨年6月から作成に取りかかりました。
  「乗り入れ・乗り替え路線」「改札口の位置」「ホームの階段の位置(車両番号とドア番号で表現)」「トイレの場所」「案内放送の声の性別」などの情報を視覚障害者と晴眼者で全29駅を点検し、それをまとめました。
  このガイドは、転落防止を念頭に置きながら、全盲者の立場にたって情報を精査してまとめたというのが特徴です。多くの視覚障害者に利用していただきたいと考えています。
  また、鉄道事業者においては、視覚障害者の転落事故防止対策に正面から取り組んでいただくとともに、当面このガイドを参考に視覚障害者への安全な駅利用のための情報提供に積極的に取り組んでいただくことを強く願うものです。

                1999年12月8日
                点字版・山手線乗換ガイド作成委員会
                東京視力障害者の生活と権利を守る会
                〒116−0011 荒川区西尾久1−3−8
                電話03(3915)0792


街づくり委員会レポート……野島 潔
 当委員会では現在山の手線の安全な利用のためのガイドブック作りを進めていますが、それ以外の活動について2件のレポートをさせていただきます。

1。横断歩道用誘導ブロックについて
 5月13日にJR大塚駅南口の五叉路に試験的に敷設された、横断歩道用誘導ブロックを歩いてきました。
 横断歩道のほぼ中央に敷かれたブロックは、誘導ベルトといった感じで、幅45aほどで、表面が少しザラザラしたラバーになっていました。歩いた感覚は、もう少し厚ければ路面との区別がつきやすいと感じました。
 杖の音では路面に比べて音が少ないので、ブロックからはずれれば、修正しやすいのですが、音がしない分、視覚障害者同士の衝突の危険が考えられることや、音による他の歩行者への注意喚起に欠けるように感じました。
 私の率直な感想としては、ないよりはいいが、厚さや幅など改善が必要に思いました。さらには磨滅時の問題など多くの事が考えられますので、多数の視障者の横断体験の意見を集約することが大切だと思いました。
 時間がありましたら、ぜひ歩いてみてください。

2。ホームゲートについて
 都営三田線が2000年秋から目黒駅まで延長されるのに伴い、可動柵を三田線全駅に設置する予定になっています。
 この可動柵がホームゲートの名で、試作機が高島平駅に試験設置され、設明体験会が5月17日午後2時より行われました。
 当日は東視協の9人をはじめ、肢体障害者を含め東京近郊から数十人が參加し、当局の設明を聞き、電車への乗降体験をしました。
 ホームゲートはステンレス製で、高さ約130aで、白線の外側ホームノ縁カラ約30aに敷設されており、ホームゲートのドアは、電車の停車位置がずれることを考慮し、電車のドアより70aほど広く、電車ドアの開閉と連動して、チャイム音とともに中心から左右に開閉するようになっていました。
 感想としては、電車に対してほぼまっすぐ乗降できるため、電車とホームとの間に足がはまる危検は、従来よりさらに少なくなりそうですし、ホームゲートでホームがすべて囲まれるため、転落することはまず考えられないと感じました。
 しかし、白杖によってはセンサーに感知されにくい物もあるため、杖が挟まれることもあり、「センサーの調整を営業開始までに確実に行う」との当局の回答に期待したいと思います。
 また、従来の警告ブロックカラ電車のドアまで誘導ブロックが、敷設されているところを歩いた感じとしては、突起が多すぎて杖の先がひっかかり、ホームの縁ヤ電車が確認しずらく、かえって恐怖感があったことを思うと、誘導ブロックの敷設方法については充分検討する必要があると思いました。
 さらにホームゲートの戸袋の上面に、ドア番号や階段の方向などの情報を、点字プレートで表示して欲しいことや、ホームゲートの色は電車と同型色のシルバーなので、例えばドアの部分だけでも赤などで識別しやすくしたら良いと思いました。
 なお、停電になるとゲートは開放されたままになるとのことですので、この点についての対策も要求したいと思いました。

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