こだま 2005年 3月号 (第322号)


   視 点
 3月といえば、卒業式のシーズンである。若者たちは大きく胸を膨らませながら、新たな旅立ちを迎えていることだろう。しかし最近のフリーターの急増、さらには「ニート」と呼ばれるような仕事にまったく就かない若者たちの出現は大きな社会問題といわざるを得ない。若者たちに夢を与えていない政治の状況、利潤追求のみを旗印に突っ走る企業の責任が問われなければならない。
 私たち視覚障害者の場合はもっと深刻である。盲学校卒業生の理療関係の就職は、地域差はあるようだが、非常に厳しくなっていると聞く。また、昨年10月に厚生労働省から大変ショッキングな発表があった。平成15年11月現在の5人以上の民間企業で働く身体障害者の数(推計値)である。それによると、雇用されている身体障害者36万9千人のうち、肢体障害者18万1千人、内部障害者7万4千人、聴覚言語障害者5万9千人に対し、視覚障害者は1万7千人とだんとつに低い値を示している。私たちは厚労省に対し、本格的な視覚障害者の雇用対策の実施を強く要望したい。
 ところで、東視協ではこの4月から「雑司が谷・鈴木治療院」を開設させる予定である。これは「按摩マッサージ等の仕事で働きたい」という願いを持った視覚障害者を会として支援する一つの試みといえよう。現在働く人の確保、備品の設置など、急ピッチで開設準備に取り組んでいるところである。
 将来的には視覚障害者の自立と社会参加の一層の推進のため、様々な事業に取り組んでいきたいと考えている。組織的には、NPO法人の取得ということも具体的日程にのぼってくるだろう。今回の治療院を成功させることは今後に向けての重要な一歩となるに違いない。会員の皆さんの理解と協力を御願いしたい。
           (編集委員会)

 障害者福祉への「応益負担」導入反対等アピール賛同の呼かけ
                           会長 鈴木 彰
 福祉制度を利用する障害者から原則1割の利用料を徴収する内容を含む「障害者自立支援法案」が国会に提出されています。法案では、ガイドヘルプ、盲導犬貸与、日常生活用具などの実施を市町村に委ねようともしています。法案が通れば、大幅な負担増は間違いないばかりか、制度を実施する自治体としない自治体が出てくることも予想されます。
 制度は、障害者が利用することで少しでも障害の無い人に近い生活を送るためにあり、制度利用は「益」ではありません。
 今年1月、このような立場で、社会保障の研究者4氏がアピールを発表し、東視協が加盟している障都連や全視協はこの賛同者・賛同金を募って、新聞に意見広告を掲載する運動を進めています。
 東視協でもこれに積極的に参加することを2月の役員会で確認しました。会員と『こだま』読者の皆さんのご協力を御願い申し上げます.
☆ アピール文は『点字民報』2月号に掲載されています。
 全体の目標は賛同者1万人、賛同金1千万円です。ご賛同頂ける方は、事務所
(電話3207−6014)に3月中に連絡を下さい。詳しく案内します。一口1千円の賛同金のご協力も御願いします。
☆この問題では、4月11日を皮切りに国会要請行動も行われますので、積極的な参加を御願いします。

皆さんのご意見をお聞かせ下さい!(東視協の名称について)
規約検討委員会
昨年の総会で、会の名称問題について論議がなされました。発端は、東京視力障害者の生活と権利を守る会という名称と、東視協という通称が一致しないということで、規約を改正してはとの発言からでした。総会で一定論議しましたが、結論を得ず、この問題については次期総会までに結論を出すということで今日に至っていました。
総会後役員会を開き、規約検討委員会を設置することを決め、選出された委員によりこの間2回の会議を行いました。規約検討委員会でこれまで確認したことは以下の2点です。
(1) 会の名称については、今年1年をかけ皆で討議し、変える方向で進める。
(2) その他の部分についても文言や組織のあり方などを規約を作った当時とは少し違っていることがあるので、検討する。   の2点です。
会の名称変更については、名前が長すぎて会員が覚えられない、各種手続きの際、正式名称を書くのが面倒、「生活と権利を守る会」という名前は色眼鏡で見られ、活動に支障をきたすなどです。一方会の名称はその会の活動を表すものでなければならない、自分たちの活動を誇りに思えるような名前にしてほしいなど、委員から意見が出されています。
ここには紙面の都合で書けませんが、委員の中でも会の名称についてはあれこれと意見が出されました。そこで皆さんにお願いですが、会の名称についてご意見をお聞かせ下さい。5月29日の総会でこの問題について論議したいと思っています。また、この1年をかけてブロック会や役員会でも論議しますので、皆さんの生の声をお聞きしたいと思っています。ご意見は、会報掲載やそれぞれの会での話し合いの意見として反映させて頂きます。もちろん、会の名称はそのままが良いというご意見でも結構です。今年1年をかけて会員全員で討議し、新しい東視協の会にふさわしい名称を決めたいと考えています。
ご意見ご希望のある方は、事務局までお寄せ下さい。

「貴方のまわりの身近な差別」
西部 加藤弘之
 「差別」と聞いて私がどうもおめでたい性格のせいかあまりピントきません。「めくら」というのが差別語としたら、私は子供以外には面と向かってあざけられたようなことはありません。大分以前ですが、田町駅で電車に乗ろうとした時、酩酊しているような男に因縁を吹っかけられそうになりましたが、近くにいた人がそいつをたしなめてくれたというようなことがありました。
 自分と他人を比較して向上心や競争心を持つことはある種の発達をもたらすと思います。しかし、その優劣へのこだわりが行き過ぎると差別的な考えのもとになると思います。
また、狭い地域で負け犬になっているともっと弱いものをあざけってしまいます。目くそ鼻くそを笑うというやつです。
それにしても私が若いうちに知り合った仲間が特別良かったのか、私が見えないということを配慮してくれる以外は対等に付き合ってくれる友達ばかりです。仕事も然り、患者さんは治療の結果と私の人間性を認めてやってきてくれます。個人対個人はお互いを尊重する気持ちがあることで比較的差別を産み出すようなことは起こらないのではないでしょうか。わが身を省みると頑張ってき過ぎたことで他人への思いやりに欠けているなあと思うところがあります。みんな人それぞれなんだ。それを認め合えばつまらない差別は少なくなるでしょう。そうそう、オンリーワンていうやつです。

第38回都民集会記念講演を聞いて
北部 杉田直枝
 障害者の生活と権利とは、障害があっても人間として人間らしく生きる権利です。
 講師の早乙女勝元さんは、作家でもあり、東京大空襲資料館館長です。講演のタイトルは、「憲法と平和をも守ろう」でした。
 1番目の話は、私と憲法第9条です。戦時中障害者はどんな迫害と差別を受けたのか。人権と人命はどれだけ軽視されたのかということ。国の役に立たない、米食い虫とののしられ、配給される物資などもまともに配られなくて涙も出ない程口惜しい思いをした人がどれだけいたか計り知れない。
 このみじめな戦争体験者は、現在5人に一人しかいなくて5人に4人は、無残な戦争を知らない人たちだ。ですから、8月15日の敗戦記念日と答える人は残念ながら殆どいなくなってしまっている。
 早乙女さんの9歳年上のお兄さんは、憲法を全文時間をかけて読んだそうです。そしてこの憲法の中で感じたことは三つあるけど、一番心に響いたのは第9条、9条の中の一つ
戦争放棄「もう戦争はしないこと」、二つ目は戦力不保持「陸・海・空軍、その他の戦力は持たない」、三つ目は国の交戦権は認めないこと。そして憲法9条と共に大事なこと、政府の行為によって、再び戦争の惨禍は起こらないようにすることを決議する。ここに主権が国民に存することを宣言する。本当に素晴らしい憲法である。
 福祉、人権、民主主義を守っていくには、対立物は戦争です。3月10日の東京大空襲のお話もどれだけ、かけがえの無い命が犠牲になったのか。この過ちを二度と繰り返してはならないと思います。
 二つ目は、なれていいこと、わるいこととして朝鮮戦争と特需景気についてです。日本は、何処から逆コースに向かったのか。
 軍隊の代わりに自衛隊を作り、原爆を落としたアメリカいいなりで海外派兵でざくざく税金を使っている。
 三つ目は、今日から明日へです。組織に属する一人一人がよく学び、人が感動するような説得力をもって。明日へ繋げていこう。
私も憲法のことはあまり勉強していませんので、参加した意義が大きかったと思いました.
 早乙女さんは、私の父とはお付き合いのあった方なのでお話もできるかなと出かけました。
 私もお話を聞いて、どんな形でもいい、戦争の悲惨さを伝えていきたいと思いました。

教養講座に参加して
                           北部 山城完治
 「ガーン、ガーン」、地震波を音に換え、録音したものだというその音の紹介から講座は始まりました。
 2月の教養講座は、「地震のメカニズムと備え」のテーマで、23日午後多摩障害者スポーツセンターで行われました。西部ブロック企画のこの講座は、新潟中越地震、インド洋を襲った巨大津波をうけて東京大学地震研究所アウトリーチ推進室の土井恵治氏を講師に迎え、28人が参加しました。
 地震とは:5?700キロの地下で岩盤に強い力がかかり、この力に耐え切れなくなって岩盤が破壊。この衝撃が揺れとなって伝わり、地表に届く。私たちは、それを地震と感じるのだという。新潟中越地震で破壊された岩盤の大きさは、どれ位だったのでしょうか? 鯰の暴れではやはりちょっと無理のようです。
 日本は地震大国:身体に感じないものを含めると日本では、昨年12万回も地震が起こっており、これは世界で起こる地震の1乃至2割にも当たるとのこと。日本で地震の心配のない所はないそうです。
 予知と備え:進んではいるものの地震の予知は、まだまだ。揺れを始め地震について知ること、個人やコミュニティ、公的な備えが大切だと土井先生は話されました。 
 講座から帰宅した私の部屋は、相変わらずダンボールや本棚、・・・ 落ちてこないことを願わずにはいられません。

[連載18]「高速点字読み取り装置と高速ラインプリンターの開発」(1)         
―「こだま」2005年3月号で紹介するにあたって。―
                             北部 長谷川貞夫 
29年前には点字プリンタさえもが発売されていなかった。
 そこで、日本点字図書館の実験において、個人の持っていた点字プリンタに頼らざるを得なかったことに注目していただきたい。
 2001年10月から、自費で離れた位置から視覚障害者を支援するテレサポートの実験を行なっている。
 それが、2005年になって、群馬工業専門学校の先生と体表で東西南北の方位を知ったり、体表で点字さえ読む実験が行なえるようになった。
まだ世間でよく理解されていないが、何年か後には必ず視覚障害者と盲ろう者にとって身近なサポートになるものであると信じている。
 前に述べたが昭和48年に、日本点字図書館(日点)が三菱財団から財団の発足事業の第1号の援助として、「点字カセットシステムの開発」で助成金を受けた。
 具体的な開発は、芝浦工業大学(以下、芝工大)の入江正俊(いりえ まさとし)先生と東京工業大学(以下、東工大)の長谷川健介(はせがわ けんすけ)先生による指導で両大学の学生が別々に工作しながら開発が進められていた。
 昭和51年の春に、その研究成果の発表が、まず芝工大に三菱財団の理事を招いて行なわれた。
 紙に書かれた点字の凸点をデータとして読み取り、それを点字印刷コードにして再び同じ点字に印刷するところをお見せするのである。
 点訳奉仕者などにより作られた、その1冊だけきりない点字本を、複製するのが目的であった。
 今日のようなパソコン点訳がまだない時代に、点字本の製作を大きく点訳奉仕者に頼る日点としては、点字の凸点を読み取り、それで複製本を作ることは重要な開発テーマであった。
 当時はまだパソコンがなかったのだから、コンピュータと離れた所で使える、紙テープを介して動く点字データタイプライターが是非とも必要だった。
 芝工大で読み取った点字データを、再び点字コードにして、紙テープまでへの出力をすることはできるようになったが、肝心のその紙テープデータで点字印刷する装置が、まだ開発されていなかった。
 そこで、私の所にあった岡崎式点字データタイプライター第1号機が使われることになった。
 ここにおいても、岡崎氏による点字データタイプライター1号機の存在価値は、点字の歴史において大きな意味を持つのである。
 今となっては、その機械は全く実用的価値はないが、それは、ちょうどエジソンの最初の蓄音機のようなものだと私は思っている。
 この点字の初期の実験を行なった貴重な機械は、附属盲学校の資料室にあるが、万一にも廃棄されないことを願っている。今の点字プリンターの普久の根源の一つである。
 このようなことについて、国がいかに研究費を出して来なかったかの記録でもある。

情報アラカルト
1. 商品紹介
 (1)水拭きだけで綺麗になるクロス「トレシー家中綺麗」は、超極細繊維を使った掃除用クロスです。クロスの細い繊維が汚れの中には入り込み、洗剤を使わなくても汚れがよく落ちます。クロスは独自の製品加工を施してあるので付着した菌の増殖を抑制します。
大きさは33センチ×49センチ、1050円です。電話で取り寄せる場合は、タケザワрO277−74−2811まで。
(2) 天然鉱石で温泉気分
ゲルマニウム温浴器「スリムトーン」は、浴槽に入れて使うと自宅で温泉気分を味わえる温浴器です。温浴器の本体を卵型ケースに入れて浴槽に入れると発汗を促がしたり水質を和らげたりする効果が期待できるといいます。他の入浴剤と併用しても問題ありません。1週間に一度の間隔でケースから本体を取り出して水洗いし天日で干します。使用期限は約1年、大きさは約13センチ×11センチ×4センチ、重さは480グラムです。
2940円です。送料と代引き手数料負担で取り寄せ可能、お問い合わせは、満天社06−6708−7744まで。
   2.花見情報
 予報によると今年の桜の開花は3月29日頃と云われています。皆さんも近くの公園や桜の名所といわれるところに出かけませんか?北部ブロックでは、4月2日午後に王子親水公園でお花見を予定しているそうです。他のブロックでも予定されているかも知れません。桜の香りやひらひら落ちる音が楽しめるでしょうか?

  ありがとうコーナー(省略)

事務局だより
1.和波たかよしさんの60歳バースデー・コンサートのチケットを抽選で5人の方に差し上げます。橋本宗明さんよりご提供がありました。日時は、4月1日(金)19時開演(サントリーホール)です。希望される方は、事務局の織田洋さん(電話03−3944−0736)まで連絡下さい。
2.練馬区中村橋の元東京電力前の歩道にあった膝の高さまでの円柱形の障害物が撤去されました。市村秀雄さんの要求を練馬区土木部長への撤去の要望が実りました。
3.5月頃から都営新宿線にも車内の点字シールが付きます。号車・ドア番号の点字表示は、これで都営地下鉄の全線につくことになります。シールの位置は、車内ドア合わせ目左側150センチの高さに付きます。交通局要請の成果です。
 4.東京メトロ丸の内線への可動式ホーム柵が設置されることが加藤厚実さんからの情報でわかりました。3年計画で設置だとのことです。毎年の東京メトロ本社要請など運動の成果です。

      日程情報
 3/16(水):障館相談、担当鈴木彰
 3/17(木):こだま活字版発行
 3/19(土):歌声サークル「ステッキーズ」レッスン
  同:東部ブロック会
 3/14の週:こだまテープ版発行
 3/20(日):東視協役員研修会 
 3/21(月):雑司が谷鈴木治療院運営委員会、東視協将来像委員会
 3/23(水):障館相談、担当織田洋
 3/24(木):街づくり委員会
 3/26(土):青年学生部例会
  同:ヒューマンアシスタント制度延長問題対策会議
  同:水泳サークル「かーなづーち」レッスン
 3/26・27(土日):全視協文化の集い 奈良
 3/27(日):教養講座「方言の豊さ面白さ」講師大原譲子
 3/28(月):南部ブロック会
 3/30(水):全視協自立支援法問題厚生労働省要請 
 3/31(木):こだま編集委員会
  同:東視協規約検討委員会
 4/1(金):雇用を進める会
 4/2(土):歌声サークル「ステッキーズ」レッスン
  同:北部ブロック花見
 4/9(土):こだま4月号点字版発行
 4/13(水):障館相談、担当山城完治
 4/14(木):こだま4月号活字版発行
 4/16(土):歌声サークル「ステッキーズ」レッスン
  同:東部ブロック会
 4/17(日):水泳サークル「かーなづーち」レッスン
  同:東視協役員会
 4/20(水):障館相談、担当鈴木彰
 4/24(日):教養講座「自立支援法の内容と障害者福祉のこれから」 講師中村尚子(立正大学講師)
 4/25(月):南部ブロック会
◇ 事務局作業:
3月17,19,24,26,31日 4月2、7、9、14、16、21、23日

編集後記
 やっと春らしい気温になってきました。春といえば花粉症。悩んでいる人も沢山いるのではありませんか。
 今年は私たちの生活に最も関係のある障害者自立支援法なるものが決められようとしています。政府は障害者施策にお金を出したくないため、サービスにお金の負担を私達に迫っています。大型開発は相変わらず止めないで、福祉ばかりを削ろうとしています。この法律が決まれば、私たちの生活は一層苦しくなるばかりです。皆さん!大いに勉強し、法律制定阻止を目指して闘いましょう。頑張るぞう・・・!!         以上