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~北の国から~(4)

1997年6月15日発行 みみっと5号に掲載

瀬谷 和彦


 再度発音の話で恐縮ですが、「類推を呼ぶ発音の仕方」というのを教わりました。「類推」とは相手に何といってるのか考えさせ、その話の前後からその言葉を当てさせることと私は理解しました。特に「が」行の発音でよく使うのだそうです。例えば、「講義(こうぎ)」という言葉がありますが、正常な発音の人は誰も「kougi」とは発音しません。大抵は「kougji」か「kouηi」と発音し、後者が「類推」を呼ぶ発音だそうです。「η」は鼻にかけて発音します。日本人は後者の発音をよくするのだそうです。本当に耳というのは便利にできているのですね。「こうじ」や「こうに」と間違えないのですね。 新人歌手と発声学を習ったベテラン歌手の差というものも例えば、「わたしが」の発音ではっきりわかるのだそうです。新人歌手は「wata∫iga」と発音しますが、ベテランの歌手は「wata∫iηa」と発音するそうです。

 もう一つおもしろいのは東京の人か田舎(?)の人かをアクセントの入れ方で判別できる言葉があるのだそうです。それは「渋谷(しぶや)」です。田舎(?)の人は「 ̄--」と発音するのですが、東京の人は「_ _-」か「---」だそうです。それでもう、その人が東京で暮らしている人かそうでないかがはっきりわかるのだそうですね。いやー、まいりましたね。

 さて、本題に入りますが、もう皆さんは去る5月14日に国会の参議院で放送法の一部改正案が全会一致で可決されたことをご存じと思います。これは全国の放送局が新規電波を使うための文字放送免許がなくても文字多重放送による字幕放送を行うことができるようにするものです。これで、仙台でも水戸黄門や星の金貨(もう終わってしまったね)などを文字を通して聞くことができるようになります。役員の方々には早速、各民間放送局を訪ねて積極的な文字放送を行うよう陳情し、文字放送計画についての難聴者側の窓口を我が会にするよう確約してください。

 しかし、これで文字放送に関する問題がすべて解決したわけではありません。わが国ではまだテレビと文字放送デコーダーが別々になっているのがほとんどであり、内蔵型はあってもかなり高価で福祉給付でも購入が難しい状況です。ましてや障害程度の軽い難聴者は自費でデコーダーを買わなければならず、聴こえの不自由な人たちへの情報の保障がなされているとはいえません。

 アメリカでは字幕放送用デコーダーのテレビへの内蔵が義務づけられており、日本からの輸出品は皆内蔵型になってます。真の意味でテレビが私たち聴こえの不自由な人たちのものになるためにはまだまだやらなければならないことがたくさんありますね。
 手話通訳放送も同様です。現在の手話通訳放送はテレビの画面の左下に小さく映し出しています。しかし、手話を必要とする人たちには大変申し訳ないのですが、この画面は手話を理解できない人たちにとっては単なる邪魔な映像に過ぎません。逆の立場に置き換えれば、補聴器を使っている人が訳の分からない歌やラジオ(その人にとっては単なる雑音に過ぎない)を長時間聞かされるのと同じようなものです。私個人としては手話通訳放送も文字放送と同様に専用電波を設け、手話を必要とする人たちが自由にその映像を映し出せるようにすべきだと思うのです。文字放送が可能な時代ですから手話放送も間違いなく可能なことと思います。あるいは必要ならば、手話と文字放送を両方出せれば完璧でしょう。しかし、私にはどうしてもわからないことがあります。盲ろうの人たちには一体どうすればよいのでしょう?誰かよい案をお持ちの方は是非教えてください。

セコイヤのトピックス
遺伝的な感覚神経聴覚消失の原因が明らかになる
-細胞間結合(ギャップ結合)を司る遺伝子の異常か-

 これはネイチャー5月号に掲載された論文でロンドン大学のクイーン・メアリー・アンド・ウェストフィールド・カレッジという長い名前の大学を中心とした研究グループの成果である。過去には聴覚を含む複数の症状を伴う病態の解明はあったものの聴覚だけというのは今回が始めてであり、画期的なものである。 一般に細胞間の結合には4つのタイプがあり、その内の一つにギャップ結合というのがある。これは他のタイプと異なり、細胞間の興奮の伝導や栄養物の交換を行う重要なものであり、この結合を司る蛋白質をコネキシン(Cx)と呼ぶ。Cxは身体全体に存在しているが、様々な種類があり、その分子量にあわせて番号で分けられている。例えば心臓ではCx37、40、43、45、46、肝臓ではCx32といったようにである。 今回の研究対象である蝸牛神経細胞のギャップ結合は主としてCx26が司っている。この研究グループは聴覚消失の現れる家系を調べたところCx26の異常が認められ、これが重度の聴覚消失とよく相関していることを発見し、さらに染色体でもCx26の部位に異常があることを突き止めた。 心臓の方でもCx43の異常で心臓奇形や左右の心筋が一固まりになるような恐ろしい病気を引き起こすことが最近知られるようになったようにギャップ結合に関する研究はかなり進んできています。先天性の全ろうの原因が今、明らかにされるとは科学の進歩も相当早いですね。それでは、また次号をお楽しみに。次号は人工内耳かな?



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