障害者のきょうだいに関する(意識・実態)調査報告(概要)
1997年 (平成9年)



[調査の目的]

 ・障害者のきょうだいが抱えている問題を明らかにし、親の方達や行政機関等に、その問題の解決に協力していただくとともに、私達自身が様々な問題を解決していくための資料とする。


[調査の概要]

 ・全国から回答を得たが(回収率12%、全部で333回答)、首都圏がその46%であった。
 ・主として、知的障害(自閉症、精神障害も一部含む)を持つ人のきょうだいを対象にした。


[回答者とそのきょうだい(障害者)の概要]

 @回答者について
  ・性別 男性 39%、女性 56%
  ・年齢 10代〜70代(20代〜40代の合計で73%になる)
   (自閉症者のきょうだいは、10代と20代で87%と若い人が多い。)
  ・結婚 未婚 47%、既婚 46%

 A回答者のきょうだい(障害者)について
  ・性別 男性 55%、女性 35%(男女比 6:4)
  ・年齢 10代〜70代(20代〜40代の合計は73%で、回答者と同じ)
  ・障害の内容とその割合(身体障害を除く)
   知的障害 約60%、自閉症 約10%、精神障害約10% (以上重複を含む)
  ・障害の程度
   最重度 10%、重度 43%、中度 23%、軽度13%
  ・結婚 未婚 86%、既婚 3%
  ・主な生活の場
   自宅 47%、入所施設 38%、グループホーム3%
  ・主な活動の場
   作業所等 35%、入所施設 33%、学校7%、会社等 6%、無職 5%


[調査結果の概要]

1 障害を持つきょうだいの行動に対しての感じ方

 知的障害者のきょうだいは比較的おおらかに受けとめているが、自閉症者や精神障害者は、困った行動が多く、そのきょうだいは「辛いこと」が多い傾向にある。


2 良かった事と辛かった事

@ 良かったことの主なことは、「自分白身の成長」という言葉で現せよう。

A 辛かったことの主なことは、「他人からされた事」と「家族の事」に分けられる。
 家族(親)の対応の仕方がそのままきょうだいの辛さの程度になっているようである。家庭生活の中心は実質的には母親の傾向が強いが、障害児に直接関わることが多いのも一般的には母親である。母親1人では家族全体のことを考えるゆとりがなくなってしまうのも当然である。そこを支えることが出来るのは父親であろう。父親は母親を支える役目を是非果たして欲しい。夫婦2人が力を合わせて、家族全体が「普通の家族」に少しでも近づくような努力と工夫を望みたい。
 しかし、親も余裕がなかったのだろうと思うと、親が余裕を持てるような社会の仕組みを早く作る必要を感じる。又、障害者のいたずらに対する親の対応の仕方や、いたずらを防ぐ手段も欲しいことである。

B 「知的障害」「自閉症」「精神障害」を比べると、「良かったこと」は、ほぼ同じであるが、「辛かったこと」は、自閉症者のきょうだいに特に多くあるようにみえる。「親が充分にかまってくれなかった」事は特に他の障害より多く感じているようである。精神障害者のきょうだいも、単独な知的障害者のきょうだいと比べると「辛いこと」が多いようである。

C 「良かったこと」と「辛かったこと」の回答数を比べると、「良かったこと」の方が「辛かったこと」の約2倍ある。これは、きょうだい達が前向きに生きようとしている姿勢を表していると言えるのではないだろうか。


3 結婚について

@ 全体的には、既婚者の割合や結婚の形態など、「障害者のきょうだい」ということで、特に普通の人と違うことは少ないと言うことが分かりほっとした。
   ただし、これはあくまでこのアンケートに回答した人についてのことなので、一般論として結論付けることにはならないだろう。

A 少数ながら大きな問題があった人もいる。しかし、その原因は不明である。「障害者のきょうだい」と言うことで問題になったというコメントはなかった。違う原因であれば良いと思う。

B 破談経験のある人が5名いたが、その原因はやはり不明で「障害者のきょうだいのため」と思われる記述はなかった。尚、全員今は結婚している。

C 離婚し、現在も独身の人も2名いるが、1名は明確にきょうだいのためではなく、もう1名もきょうだいのためという記述はなかった。

D 結婚したくないと言う人の原因も不明だが、コメントの中に「辛い思いをしてきた(20代女性)」というものもあれば、「きょうだいで一緒に暮らしていきたい(30代女性)」というものもあった。これらはきょうだいの影響と言えるだろう。

E きょうだいに障害者がいることを打ち明ける時期は、未婚者、既婚者とも約50%が「つきあい始め」又は「既知」となっている。きょうだいの事などはじめから話したりはしないのが普通だが、そこを常に意識しなければならないのが私達なのかもしれない。

F 打ち明け時期が「結婚後」の人も少数いたが、皆、障害のきょうだいが入所施設等にいる人だった。つい言いそぴれてしまったのだろうか。

G 「結婚に当たって心配なこと」で主なもの(結婚に当たっての心配事3本柱とでも言えるか)は、未婚者、既婚者とも「相手の理解」「相手の家族の理解」「きょうだいの世話」だった。前者2つは社会の「理解」が進むことを、3つ目は「障害者の生活の保障(世話をしてくれる所と経済的保証)」が進むことを望みたいと思う。
  「きょうだいの世話」については、現在でも1つの手段としては入所施設の利用などが可能だが、それを知らないで過度な不安を持ち、結婚に消極的になってしまうこともあるようだ。この点は、未婚のきょうだいにもっと知っていてもらった方がよいことだろう。尚、現在の入所施設は、必ずしも障害のきょうだいが豊かに暮らせる場ではない場合がある。そのために自宅生活者においては、「いつかは入所を…」と思っていてもなかなか割り切れないのが現状のようである。ぜひ安心して託せる場の拡充を求めるとともに、親がこのことを健常のきょうだいにきちんと伝えてくれるように望みたい。

H 検討会議の中でこんな話も出た。「恋愛は怖いところもある。きょうだいの事を打ち明けて、始めはいいと思ってつきあっていても、いざ本当に結婚となるとやはりちょっと‥と言われないかと心配」「見合いの場合は、仲人さんが始めに話していて、それでもいいということで始まるのだから、かえって安全かもしれない」「でも、結局こういう家庭環境を承知でいっしょになってくれるのだから、人間として間違いはないと言うことだね。」


4 日常の関わりについて(親亡き後と関連して)

@ 将来の関わりは、現在より少なくなるが「親に代わって」と言う気持ちがはつきり表れていると言える。日常的に関わる内容については、「現在」は少ない「経済的管理」や「職員と面会」が「将来」では重要な関わりになっているし、経済的負担の程度も、「現在」は「ほとんど無い」が最も多いのに対し、「将来」は「10万円以上」が最も多くなっていることからもそれがうかがえる。

A 独身のうちは「将来は自分が見る」と思っていても、結婚すると「なかなか見られない」に変わっていく事も表れている。特に、男性にはっきりしている。しかし、この独身者の気持ちについて見方を変えると、それだけ将来に縛られているとも言えるのではないだろうか。一方、女性は既婚者でも「将来は実家に戻って(離婚ではない)障害者と同居する」予定の人が多くいたことは意外だつたが、分かる気がする。

B 入所施設を利用していても、「保護者」として関わりを持ち続けることは、「日常の関わり」のデータからも確かである。最近は、私達のきょうだい会の会員が、保護者会の役員をすることが多くなってきた。

C 経済的負担の中で、「施設の利用料」を将来負担するつもりの人が多く見られた。公的な負担金の他に自己負担金もかかるようだが、障害基礎年金はそのような所に使うべきものである。自宅生活者の場合も、日常的にかかる経費をその年金から出せばいいはずだ。年金の使い方については、このように有効に使わない事がある一方、年金を搾取している事もあるようで、適切な使い方を家族に理解してもらう必要を感じる。

D 日常的に関わる人で多いのは、自宅生活者では長女と長男の配偶者、施設入所者では長男と長女と配偶者という傾向である。現状としては、直接日常の世話は女性ががんばり、対外的な事では男性もがんばると言うことだろうか。


5 重要なことの決定

@ 「本人と親」と「親」が決めているのは、ほぼ同じ割合(約30%)で、「本人」のみは10%未満で、これは成人の障害者についてもほぼ同じである。意志を表現しにくい最重度の人の場合でも、その意志を聞く努力が欲しいと思う。
  しかし、家族だけにこれを求めるのは無理だろう。障害を持つ人の「自己決定」は、障害を持つ人の人権を尊重する基本であり、きょうだいにとっても互いに自立的に生きるために大切なものある。そしてこれは、小さい頃からの家庭と学校での積み重ねが不可欠と思う。

A 選択肢に「きょうだい」が無かったためもあるのだろうか、「きょうだい」の関与はほんど無いようである。これは私達としての課題であろう。


6 相続などについての悩み

・悩みのある人は少数だった。その内容は、「配偶者の理解」と、自分が「後見人」のような役割をどのようにすれば良いのかというような事だった。障害者に相続された財産等の管理する上での問題は今後の課題だろう。成年後見制度とそれをきちんと実施する機関の整備を望むものである。


7 行政などへの要望

@ 多い要望は「障害基礎年金(の充実)」、「入所施設(の増設や充実)」「通所施設や作業所(の増設や充実)」で、次いで「緊急一時保護(の充実)」「気軽な相談機関(の増設)」であった。

A 現在あるものを充実して欲しいというような結釆であったが、「ガイドヘルパー」や「レスパイトケア」等の要望がもっとあってもよいと思った。まだなじみが薄いためであろうか。「医療」については、将来その費用を負担することになるだろうという事は大きな不安である。今回の選択肢に入れなかった為にここでは形に表れなかったが、現在それを保証する制度がないので、ぜひ要望したいと思う。


[むすびに代えて]

T きょうだい達の多くは、何らかの悩みをかかえながらも、自分の置かれた状況を素直に自然に受け止め、積極的に生きようとしていることが表れている。

U 親がもっと家族らしく生活する工夫をして欲しいと感じた。その結果、きょうだいの悩みの多くが軽くなり、「障害者と共に」より積極的な生き方が出来そうだ。それには父親が母親を支える役割を果たして欲しい。しかし、家族だけでは出来ないことが多い。レスパイトケア等、家族を支えるシステムが必要である。

V 障害のきょうだいにいたずらをされた時等のきょうだいの関係について、親の心構えや対応の仕方を親にアドバイスしてくれる所も欲しいものである。

W 親がもっと状況を知り、きょうだいにその情報を正確に伝えて欲しいと感じた。私達きょうだい自身も同様である。「世話をかけない」と言われても何も分からず不安であったり、逆に過度の期待をされて苦しむ若い世代もいた。結婚についての姿勢にもつながることである。正しい判断をするためには、正確な情報が必要である。これらの事は私達自身の課題であると同時に、親の会にも望みたいことである。

X 当然の事だが、社会の理解が進み、地域住民が自分たちの問題として福祉をとらえ充実するように私達は努力をしなければいけないと思った。特に、自閉症と精神障害の人のきょうだいはまだ辛いことが多い事がアンケートに示されていた。そのためには、行政や地域と結びついた行動が求められている。

Y 障害のきょうだいを安心して託せる施設などの充実は不可欠である。あまりアンケートには表れなかったが、財産保全や自立生活を守るための「成年後見制度」の創設なども重要で、行政に求めることは多い。

Z 障害を持つ人が人間らしく生きることは、きょうだいの最も望むものである。そのためには、良い施設や制度とともに、彼らの自己決定権を保障することが大切であり、その力をつける教育(学校と家庭)をぜひ望みたい。

[ アンケートの結果を分析する中で、まだひとりで悩んでいるきょうだい達が多くいるのではないかと感じた。私達「きょうだいの会」の存在を広め、悩みに答えていきたいと思う。


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