「障害者権利条約で未来を切り拓く」 東京都手をつなぐ育成会本人部会ゆうあい会の松尾章司です。  ゆうあい会の目的は、障害を持った人達が主体性を持って共同で活動することです。今はコロナ禍のため、ゆうあい会の活動をなかなかやれませんが、それまでは私は月一回のゆうあい会活動の日をとても楽しみにしていました。  12月は障害者制度を考えるうえで大事な月です。私はなぜ12月という寒い時期に障害者週間があるのか、不思議に思ったことがありました。そのことを親の会活動をしている人に聞いたら、国連が国際障害者年は1981年と指定して、毎年12月3日に国際障害者の日とすることを宣言したということを話してくれました。  整理すると毎年12月3日〜9日は障害者週間、12月3日は「国際障害者デー」、12月9日は1975年に国連で「障害者の権利宣言」が採択された日です。いま障害者にとっていちばんの柱となっている、障害者権利条約が国連で採択されたのも2006年12月3日でした。障害者の間で広く知られている「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」(英語でNothing Us Without Us)という考え方が大事にされました。どの国も本当に障害者のためになる条約を作ろうと思っていたからです。日本は話し合いがうまくいくように協力しました。200人ぐらいの日本の障害者団体の人が、ニューヨークにある国連の本部まで行き、国連での話し合いの様子を聴きました。話し合いは5年近く続けられました。2006年12月13日に国連で障害者権利条約の全ての内容が決められました。2007年に条約に署名(サイン)しました。署名のあと、日本は障害者制度の改革に力を入れました。  ・2011年障害者基本法が改正され、共生社会の実現が明記されました。  ・2012年障害者総合支援法が作られました。  ・2013年障害者雇用促進法の内容が新しくされました。  このような改革が行われ2014年1月20日に日本は条約を締結しました。 障害者権利条約の中には「社会モデル」と呼ばれる考え方が反映されています。「社会モデル」とは「障害」は社会が作り出しているという考え方です。  障害者権利条約の第2条で、障害者に「合理的配慮」をしないことは差別になると決めています。「合理的配慮」とは障害者が困ることをなくしていくため周りの人や会社などがすべき無理のない配慮のことです。第5条では国が障害に基づくあらゆる差別を禁止し、「合理的配慮」がされるように手続きをとることも決めています。  ここから私自身のことを話したいと思います。 まず初めに役所で行う諸手続きについてです。 愛の手帳の更新や都営の無料乗車券の更新に行きました。 →更新とかに必要な書類が足りなく役所の担当者に「また来てね」と言われました。(二度手間になりました。)  きちんと確認しないで手続きに行く私自身も悪いところもありますが、更新の情報を私たちに解りやすく情報を伝えてほしいと思います。  2番目に住まいについてです 一人暮らしを始める前にグループホームに約3年入居しました。 親と離れて生活をしてみたかったし、自分らしく暮らしたい、自分一人でどの程度出来るかを挑戦してみたかったのです。 現在就業中の仕事についてですが、最初に親会社に入社して事務の仕事を約6年やりました。そして、退職し、そのあと子会社に転籍して現在約15年近くになりますが、事務と清掃を受け持っています。親会社も含め、トータル20年以上勤務を続けています。  グループホームに3年間住み、退所後に約5年間一人暮らしをしました。 住まいを決めるときには、区のサービスを利用せず自力で不動産屋に物件交渉しました。その時の経験談となりますが、1件目は最初は順調に行っていたが、最後に障害がある旨を伝えると、手のひらを返したように冷たい扱いをされてしまいました。  2件目は障害があることを隠して契約しました。 大家さんが良い人だったので不動産屋で一苦労したが、結果的に色々良い勉強になったと思います。  グループホームでの生活、一人暮らしをして感じたことは、私自身は障害が軽度で自分の障害が軽いから障害があると解ってもらえないことでした。  使える福祉サービスの種類ですが、紙でずらずらと一覧で書いてあっても解りません。今は父親が成年後見人(補助)ですが、いざ一人になった時に頼れる人、相談出来る人が居ません。今、自分が一番不安なことは少し前にも触れましたが、親亡き後の生活に不安があります。自分は兄弟も居なく、周りに頼れる人が殆ど居ません。気軽に相談出来る窓口があればいいと思います。  様々な障害の施策がありますが、どれも内容が難しく私も都の本人部会の活動などで勉強する機会がありますが、内容が非常に難しいので、障害の程度に関わらずもう少し解りやすい仕組みづくりをして頂きたいです。  最後に、私が住んでいる世田谷区では、障害理解の促進及び障害者の差別解消、手話言語などの情報コミュニケーション等に関する区独自の条例を作成するために、検討に入っています。令和5年(2023年)1月の条例施行の予定です。障害のある人もない人も、人権が認められ、その尊厳が重んじられる生活が保障される社会へ一歩一歩進んでいってほしいと思います。  ご清聴ありがとうございました。