<スライド1> 国の基幹統計と障害 (障害のある人とない人との比較を可能とする統計整備の動向) 勝又 幸子 (一社)ヒューネットアカデミー代表理事 JDF全国フォーラム 2021年12月7日(火) <スライド2> 「他の者との平等」の実現のために ・障害者基本計画の見直し議論では、繰り返し「統計の整備」の重要性が明記されてき ました。第4次計画(平成30年3月) (6)PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 条約第31条、第33条等の趣旨を踏まえ、「確かな根拠に基づく政策立案13」の実現に向け、次に掲げるところにより、必要なデータ収集及び統計の充実を図るとともに、障害者施策のPDCAサイクルを構築し、着実に実行する。また、当該サイクル等を通じて施策の不断の見直しを行っていく。 ・統計委員会(第4回国民生活・社会統計ワーキンググループ会合)にて内閣府政策統括官「障害者統計の充実について」報告(平成29年8月4日) ・第V期統計基本計画(令和2年6月閣議決定)「施策上のニーズ等を踏まえ、障害者統計の充実を図る」 <スライド3> 障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟 (略称:インクルーシブ雇用議連)2018年2月設立 この議連に対して、障害者雇用・就労にかかわる全国社会就労センター協議会(セルプ協)や中小企業家同友会障害者問題委員会等13の市民団体が設立前から密接に協力している。(松井亮輔) ・2019年度(令和元年度)予算概算要求に向けた提言〜障害者施策の基礎となる統計調査の整備の充実〜(2019年5月総務大臣他に提出) ・平成31年度(令和元年度)予算に内閣府で約2千万円を計上 ・「令和元年障害者統計の充実に関する調査研究事業」(委託先:株式会社野村総研) ・同事業報告書公表(令和2年3月)←この研究事業で国際基準の設問についてインターネット調査を基に検討した。 <スライド4> 公的統計調査に新しい障がいの設問を入れるプロセス 障害者基本計画 ・障害者政策委員会(統計の充実を繰り返し訴えた委員の働き) 統計基本計画 ・統計委員会(内閣府政策統括官による委員会での報告) 予算確保 ・インクルーシブ雇用議員連盟(バックに市民団体の働きかけ) <スライド5> 令和3年度:2つの基幹統計*に国際比較可能な障がいに関する設問が追加されました ・社会生活基本調査(令和3年10月実施)の変更が認められました(令和3年2月) ・国民生活基礎調査(令和4年以降実施分)の変更が認められました(令和3年7月) *国勢統計、国民経済計算その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計を「基幹統計」として位置付け、この基幹統計を中心として公的統計の体系的整備を図ることとしています。(総務省 統計制度より) https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm <スライド6> 「何のためにどんな設問が追加されたの?」 目的:「全体」のなかで、障がいのある人の状況を正しく理解するための統計的なデータを得る。 全体=障がいの有無にかかわらず、すべての人(全人口)を対象すること。 どんな設問: 国際比較が可能な、標準化された設問 <スライド7> 社会生活基本調査 https://www.e-stat.go.jp/statistics/00200533 政府統計コード:00200533 概要:社会生活基本調査は,統計法に基づく基幹統計調査として,生活時間の配分や余暇時間における主な活動(学習・自己啓発・訓練,ボランティア活動,スポーツ,趣味・娯楽及び旅行・行楽)を調査し,国民の社会生活の実態を明らかにするための基礎資料を得ることを目的として5年ごとに実施しています。 調査の結果は,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進,男女共同参画社会の形成など,国民の豊かな社会生活に関する各種行政施策に欠かすことのできない重要な資料となります。 統計分野(大分類):教育・文化・スポーツ・生活 統計分野(小分類):文化・スポーツ・生活 統計の種類:基幹統計 ホームページURL: http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.htm 担当機関名:総務省 課室:統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室 メールアドレス 電話番号:03-5273-1163 <スライド8> 社会生活基本調査(1) 「EU統一生活時間調査(HETUS)2018ガイドライン」 【統計委員会修正案】諮問第144、令和3年2月18日 7.慢性的な病気や長期的な健康問題 慢性的、長期的とは6か月以上続いているまたは続くと予想される状態をいいます。 慢性的な病気や健康問題 ある ない (ある ない にかかわらず、8欄に記入してください。) 注:「ある」が、障がいのある人 <スライド9> 社会生活基本調査(2) 「EU統一生活時間調査(HETUS)2018ガイドライン」 8.日常生活への支障の程度 ・心身の状態を原因とする支障に限定して記入してください。 ・もっともあてはまるものを記入してください。 日常生活に非常に支障がある。 →支障は6か月以上継続いている(こちらの回答が、障がいのある人) →支障は6か月以上継続していない 日常生活にある程度支障がある。 →支障は6か月以上継続いている(こちらの回答が、障がいのある人) →支障は6か月以上継続していない 日常生活に支障はない。 <スライド10> 国民生活基礎調査 https://www.e-stat.go.jp/statistics/00450061 政府統計コード:00450061 概要: 国民生活基礎調査は、全国の世帯及び世帯員を対象に、保健、医療、福祉、年金、所得等国民生活の基礎的事項を調査し、厚生労働行政の企画及び運営に必要な基礎資料を得ることを目的として、昭和61年を初年として3年ごとに大規模な調査を実施し、中間の各年は簡易な調査を実施しています。  国民生活基礎調査では、世帯数と世帯人員の状況、各種世帯の所得等の状況、世帯員の健康状況、介護の状況等の結果を提供しています。 統計分野(大分類):人口・世帯 統計分野(小分類):世帯 統計の種類:基幹統計 ホームページURL: http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html 担当機関名:厚生労働省 課室:世帯統計室 メールアドレス 電話番号:03-5253-1111 <スライド11> 国民生活基礎調査 ワシントングループの設問に準拠 【統計委員会修正案】諮問第152号令和3年7月30日 (ア)眼鏡をつかっても見えにくいといった苦労はありますか (イ)補聴器をつかっても聞こえにくいといった苦労はありますか (ウ)歩いたり階段を上るのが難しいといった苦労はありますか (エ)思い出したり集中したりするのが難しいといった苦労はありますか (オ)身体を洗ったり衣服を着るような身の回りのことをするのが難しいといった苦労がありますか (カ)通常の言語をつかってコミュニケーション(例えば人の話しを理解したり、人に話しを理解させるなど)が難しいといった苦労はありますか 1 苦労はありません 2 多少苦労します 3 とても苦労します 4 全く出来ません 参考:ワシントングループの集計方法としては、ひとつでも‘3’‘4’があると=障がいがあるとする。 <スライド12> 障害者割合%(20〜64才)(OECD2004年)日本は勝又推計(季刊社会保障研究Vol.44 No.2 p.141 表2) 障害者率 非欧州連合(8カ国)12.0 欧州連合(11カ国)15.3 OECD(19カ国)14.0 韓国 3.0 日本 4.4 イタリア 7.0 メキシコ 7.3 アメリカ 10.5 ベルギー 11.0 スペイン 11.5 オーストラリア 12.5 オーストリア 12.8 ポーランド 14.3 スイス 14.5 フランス 16.0 カナダ 16.0 ノルウェー 17.0 ドイツ 18.0 イギリス 18.2 デンマーク 18.5 オランダ 18.8 ポルトガル 19.0 スウェーデン 20.5 <スライド13> 「なぜ国際比較可能な‘設問’が必要か?」 ・国連障害者権利条約の政府レポートに国際比較できる障害統計を示すことが推奨されている。 ・これまで障害認定により限定されていた「障がい者」の範囲を実質みなおすことができる。 ・「障がい」があるというだけで、その他の人と区別されてきた状況を変え、共通の目標値(例えば、就業率など)を設定することが可能になる。 ・障がい+性別など、複合的な困難をかかえるグループを明らかにすることができる。等 <スライド14> 「設問」が入った、がゴールではない ・広報が重要:調査実施1年後に公表される調査結果に「障がい」のある者とそれ以外の者との比較を入れるよう働きかける必要。 ←内閣府政策統括官←障害者政策委員会 ・日本における障がい者の実態を明らかにするエビデンスの整備をすすめる必要。←公的統計調査の二次利用による分析とその公表 「二次利用」とは、収集した元のデータを再集計して分析すること。統計法により、厳格な利用手続きがあるので、研究者との連携が必要不可欠。 <スライド15> 参考文献リスト 注:以下すべてインターネットで直接入手 ・国際的な障害者統計の整備に関するワシントングループによる指標 北村弥生(長野 保健医療大学特任教授)令和3年(2021年)6月3日統計委員会(人口・社会統計部会) https://www.soumu.go.jp/main_content/000753629.pdf ・令和元年度障害者統計の充実にかかる調査研究事業報告書 令和2年(2020年)3月 株式会社野村総合研究所 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/r01toukei/pdf/cover.pdf ・「障害者統計の充実について」平成29年(2017年)8月4日(第4回国民生活・社会統計 ワーキンググループ会合)内閣府 政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(障害者 施策担当)https://www.soumu.go.jp/main_content/000501462.pdf ・国際比較からみた日本の障害者政策の位置づけ 季刊社会保障研究 Vol.44 No.2 勝又幸子 2008年https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/kikan/4402.htm