アジア太平洋障害者十年 最近の動きと将来の展望 国連アジア太平洋経済社会委員会(通称ESCAPエスキャップ)  社会開発部 障害担当官 秋山愛子 (画像:インチョン戦略ロゴ、持続可能な開発目標SDGsロゴ、ESCAPロゴ) <スライド2> ESCAP : アジア太平洋の「議会」 図表 英文の国連組織図。    国連経済社会理事会→地域委員会→アジア太平洋経済社会委員会 という位置づけ <スライド3> ESCAP : 62 の加盟国 図表 ESCAP地域の地図。日本を含むアジア太平洋地域が示されている。 <スライド4> ESCAP: 障害インクルーシブ開発と権利発展の唯一の担い手 (1993-2002, 2003-2012, 2013-2022) 図表 英文の年表 ・世界  国連・障害者の十年(1983-1992) ・アジア太平洋  アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)  アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)  アジア太平洋障害者の十年(2013-2022) ・アフリカ  アフリカ障害者の十年(2000-2009)  アフリカ障害者の十年(2010-2019) ・西アジア  アラブ障害者の十年(2001-2013) <スライド5> インチョン戦略:指標によるモニタリングを重視 図表 ピラミッドでインチョン戦略の構成を示す。    底辺から、「62の指標」、「27のターゲット」、「10の目標」 <スライド6> インチョン戦略の内容(例) 目標1 貧困を削減し、労働および雇用の見通しを改善すること ターゲット 1.A:障害者の極度の貧困を削減する。 ターゲット 1.B:就労可能であり、かつそれを望む就労年齢の障害者の仕事および雇用を増大させる。 ターゲット 1.C:政府が助成する職業訓練およびその他の雇用支援制度に対する障害者の参加を増大させる。 進捗状況を確認するための指標 1.1 世界銀行が更新する数値であり、総人口と比較して、国際的な貧困線である1日1.25米ドル未満(PPP)で生活する障害者の割合 1.2 雇用総人口に対して、雇用されている障害者の割合 1.3 政府が助成する職業訓練およびその他の就労支援制度に参加する人のうち、障害者の割合 <スライド7> インチョン戦略の内容(例) 目標3 物理的環境、公共交通機関、知識、情報およびコミュニケーションへのアクセスを高める ターゲット 3.A: 国の首都において、公に開かれた物理的環境のアクセシビリティを増大させる: ターゲット 3.B公共交通機関のアクセシビリティおよび利便性を高める ターゲット 3.C情報およびコミュニケーション・サービスのアクセシビリティおよび利便性を高める ターゲット 3.D適切な支援機器または支援製品を必要としながらそれを持たない障害者の割合を半減させる。 進捗状況を確認するための指標 3.1 国の首都において、アクセシブルな政府機関の建築物の割合 3.2 アクセシブルな国際空港、港湾および主要交通拠点の割合 3.3 公のテレビニュース番組に毎日字幕および手話通訳が付与されている割合 3.4 国際的に認められたアクセシビリティ基準を満たす、 アクセシブルかつ利用可能な公的文書およびウェブサイトの割合 3.5 支援機器または支援製品を必要とし、それを所有する障害者の割合 <スライド8> ESCAP 2017年障害ベースラインデータ 「アジア太平洋障害者の十年中間年アンケート」 ・アンケート実施期間:2016年10月〜2017年4月 ・35か国からの回答 60パーセント 小地域ごとの回答状況 東および北東アジア 回答数6、回答率86% 北および中央アジア 回答数5、回答率56% 太平洋 回答数8、回答率38% 南および南西アジア 回答数7、回答率70% 東南アジア 回答数9、回答率82% 合計 回答数35、回答率60% <スライド9> 政府が主体の行動が眼目の30指標のうちどれだけ提出されたか 図表 国ごとの回答状況のグラフ 上位より、韓国27、香港25、タイ25、ジョージア24、モンゴル24、ナウル21、 ロシア20、インドネシア19、シンガポール19、マカオ18、ミクロネシア連邦18、 キルギス17、カンボジア16、バヌアツ16、中国15、東ティモール15、トルコ15、 ブータン13、インド13、日本13、マレーシア13、ニューカレドニア13、パキスタン13、 サモア12、アルメニア11、フィリピン11、トンガ10、パラオ7、ブルネイ7、 バングラデシュ6、アフガニスタン5、アゼルバイジャン5、フィジー3、イラン2、ヴェトナム2 <スライド10> データでわかる格差 貧困と雇用 貧困率の比較(グラフ:パーセント) ジョージア 3.9 インドネシア 4.3 モンゴル 5.3 タイ 5.9 マカオ 10.0 香港 15.0 韓国 20.6 雇用率も低い 職種が限られている(グラフ:パーセント) 東ティモール 障害者59.2、全人口44.5 トンガ 障害者55.9、全人口53.1 ミクロネシア連邦 障害者52.0、全人口49.5 サモア 障害者54.9、全人口63.0 インドネシア 障害者46.9、全人口60.5 アルメニア 障害者32.2、全人口52.7 ジョージア 障害者35.4、全人口57.1 トルコ 障害者20.1、全人口43.7 韓国 障害者34.8、全人口60.9 ブータン 障害者33.7、全人口64.4 キルギス 障害者29.1、全人口63.7 モンゴル 障害者24.8、全人口60.0 香港 障害者13.7、全人口59.1 タイ 障害者25.7、全人口75.1 ロシア 障害者11.9、全人口65.3 パラオ 障害者19.5、全人口76.1 <スライド11> データでわかる格差 政治参加 障害のある議員の率 男性:0.4%, 女性:0.1% 投票所はバリアフリーというが.... (図表:首都におけるアクセシブルな投票所の率) マカオ 100% モンゴル 100% ナウル 100% ニューカレドニア 100% 韓国 100% シンガポール 100% タイ 100% インド 99.9% 香港 94.2% バヌアツ 90.9% ロシア 52.2% ジョージア 36.6% キルギス 35.1% ブータン 14.3% インドネシア 12.5% サモア 0.6% ミクロネシア連邦 0.0% トルコ 0.0% <スライド12> データでわかる格差 建造物へのアクセス 公共建造物へのアクセス バリアフリーというが.... (図表:アクセシブルな政府の建物の比率) アルメニア 100.0% 香港 100.0% ニューカレドニア 100.0% ロシア 100.0% シンガポール 100.0% タイ 86.4% ナウル 79.45% インドネシア 76.9% 韓国 72.9% インド 72.7% バヌアツ 30.5% モンゴル 27.9% ミクロネシア連邦 25.0% トンガ 25.0% トルコ 0.0% (グラフ:アクセシブルな国際空港の比率) ジョージア、キルギス、マカオ、マレーシア、ミクロネシア連邦、 モンゴル、ナウル、ニューカレドニア、フィリピン、 シンガポール、タイ、バヌアツが100%。 インド、カンボジアが90%台。 ブータン、トルコが80%。 韓国、ロシアが70%台。 <スライド13> データでわかる格差 情報分野のアクセス (グラフ:アジア太平洋における、アクセシブルなニュース番組の比率(サービス別)) 字幕 82% 手話 8% 字幕・手話両方 10% (図表:アクセシブルな公的ウェブサイトの比率) ナウル 100% ロシア 100% 香港 99.4% 韓国 97.0% モンゴル 36.0% タイ 5.0% ニューカレドニア 4.1% 中国 3.4% インド 0.0% <スライド14> データでわかる格差 ・22カ国がパーソナルアシスタント、ピアカウンセリングなどの自立生活のサポートシステムを持っている。 ・障害のある幼児の最低3分の1が早期介入サービスをまったく受けていない。 ・障害児の中学校就学率は小学校の就学率の52.7パーセント。 <スライド15> データからみえる障害者法制度の概要 43の締約国 →15か国が障害メインストリーミングの法律保有 →11か国が障害に特化した行動計画を採択 →障害者差別禁止法は7つの国に 障害者権利条約の批准状況(2012-2017) 2012年 27か国 54% 2013年 32か国 64% 2014年 34か国 68% 2015年 37か国 74% 2016年 42か国 84% 2012年 43か国 86% <スライド16> アジア太平洋域内の障害者の人口比率(57カ国) (グラフ:パーセント) ニュージーランド 24.0 ジョージア 18.3 オーストラリア 18.3 ※WHOの推計値(世界)15.3 ソロモン諸島 14.0 パプアニューギニア 13.4 バヌアツ 12.0 マーシャル諸島 11.7 ミクロネシア連邦 11.0 モルディブ 10.9 バングラデシュ 9.1 スリランカ 8.7 インドネシア 8.6 ロシア 8.6 北朝鮮 8.2 香港 8.1 グアム 7.9 ベトナム 7.8 トンガ 7.6 トルコ 6.9 アルメニア 6.6 アメリカ領サモア 6.5 中国 6.3 日本 6.2 北マリアナ諸島 5.5 ナウル 5.1 ※ESCAP推計値(アジア太平洋地域)5.0 韓国 4.8 ニウエ 4.8 ミャンマー 4.6 キリバス 4.1 モンゴル 4.1 カンボジア 3.4 ブータン 3.4 東ティモール 3.2 シンガポール 3.0 カザフスタン 3.0 ラオス 2.8 アフガニスタン 2.7 ニューカレドニア 2.7 タイ 2.6 パキスタン 2.5 パラオ 2.3 インド 2.2 フランス領ポリネシア 2.2 サモア 2.2 タジキスタン 2.1 キルギス 2.0 ツバル 1.9 ネパール 1.9 クック諸島 1.7 マカオ 1.7 フィリピン 1.6 マレーシア 1.4 フィジー 1.4 イラン 1.4 ウズベキスタン 1.3 ブルネイ 1.1 <スライド17> 障害者人口の情報源 国勢調査(28): アメリカ領サモア、ブータン、北朝鮮、ジョージア、グアム、インド、インドネシア、 イラン、ラオス、マレーシア、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、モンゴル、 ミャンマー、ナウル、ネパール、ニウエ、北マリアナ諸島、パラオ、パキスタン、 フィリピン、サモア、スリランカ、ソロモン諸島、東ティモール、トルコ、バヌアツ、ベトナム 障害に特化した調査(15): アフガニスタン、オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国、クック諸島、フィジー、 香港、中国、日本、キリバス、モルディブ、ニュージーランド、パプアニューギニア、タイ、トンガ 障害者手帳保持者などの行政保有のデータ(14) アルメニア、アゼルバイジャン、ブルネイ、フランス領ポリネシア、カザフスタン、キルギス、 マカオ、ニューカレドニア、韓国、ロシア、シンガポール、タジキスタン、ツバル、ウズベキスタン <スライド18> 市民団体と国際機関、開発機関の活動の傾向 (グラフ:インチョン戦略各目標への資源の投入(割合)) 目標1 17.4 目標3 15.2 目標5 12.7 目標4 11.1 目標9 10.2 目標2 8.8 目標10 8.3 目標7 6.3 目標6 6.1 目標8 3.9 (グラフ:インチョン戦略各目標別イニシアチブの数) 目標2 1 目標7 2 目標9 4 目標8 5 目標6 5 目標10 6 目標5 6 目標3 6 目標4 9 目標1 13 <スライド19> いくつかの課題 ・障害インクルージョン、国際協力の意義をどの視点でみているか ・アクセシビリティの理解 ・障害差別の定義 ・権利条約はミニマムスタンダードであるという理解 ・障害統計(各機関の連携) <スライド20> 北京宣言と行動計画 ・2017年ハイレベル政府間会議の成果文書 ・今後の5年(2022年まで)のインチョン戦略の実践をサポートする補足文書 ・SDGsの障害インクルーシブな実践サポートと権利条約の国内実施を視野においている。  http://www.unescap.org/sites/default/files/pre-ods/APDDP4_5_E.pdf. <スライド21> 「北京宣言と行動計画」のアウトライン 宣言 ・前文 ・本文 行動計画 ・序文 ・目標 ・原則 ・障害の視点からのSDGSの実施推進 ・インチョン目標の達成 ・効果的な実施のしかた。 ・行動計画のモニタリング <スライド22> 行動計画の特徴 ○それぞれの行動アイテムを関連のSDGs,権利条約、仙台枠組みに関連づけている。 ○例:目標7障害と防災  SDGsの目標とターゲット:1.5, 9.1, 11.2, 11.5, 11.7, 13.1, 13.3     実施手段 11.b、および13.b  仙台防災枠組2015-2030 パラグラフ7, 19, 24, 30, 32, 33, 36;  障害者権利条約 第11条 <スライド23> 行動計画の内容(例) ・ユニバーサルデザインにもとづいたアクセス基準の設置 ・入札基準にアクセサビリティを導入 ・欠格条項の見直しも含めた条約と国内法の整合性をきちんとすすめる <スライド24> 行動計画の内容(例) ・政府のSDGs行動計画とその実施に障害の視点を反映させる ・障害者委員会の権能の強化と地方自治体レベルの設置 ・アジア太平洋障害者10年作業部会による行動計画の実施モニタリング <スライド25> 国連と障害に関する最近の動き ・個別化、具体化、関係者の拡大 ・障害インクルージョン ・Walk the talkの動き <スライド26> 図表 障害インクルーシブ開発:SDGsを強化するインチョン戦略 説明:インチョン戦略の10の目標と、SDGsの目標との対応関係を示す図 <スライド27> これからの展望 ・障害インクルーシブな開発 ・“Must”, not a “choice”(「選択」でなく「義務」である)  - 国際的義務  - 人道的義務  - 人口動態  - 経済発展 <スライド28> これからの展望 −ESCAP:  ・「持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム」 http://www.apfsd.net/、総会  ・ユニバーサルデザイン化計画  ・障害インクルーシブビジネス −障害と統計技術支援 −障害と防災技術支援 −国からの期待 −2022年の落としどころ −どのように各国の実践をモニタリングするのか?  ・作業部会(アジア太平洋障害者の十年「ワーキンググループ」)  ・その他の方法 <スライド29> 日本の市民社会に期待すること −日本のインチョンデータの分析とアドボカシー −障害インクルージョンの経済分析 −ESCAP活動に関わり、その情報を日本国内で発信する。  ・国際協力  ・国内の状況改善  ・2020年との関連付け <スライド30> 日本の市民社会に期待すること −日本の情報を海外に発信 −日本がすばらしいとされる分野  ・ユニバーサルデザイン  ・防災  ・ユニークなビジネス  ・ロールモデルとなる活動家や、起業家、個人のリーダー <スライド31> Thank you! (make the right real! 権利の実現! のロゴ) http://www.maketherightreal.net