●原子力基礎知識
・低レベル放射性廃棄物について
Q:原子力発電(原発)って「クリーンなエネルギー」というふうに宣伝しているけど、原発からでるゴミってなあに?
A:原発からは、放射性の毒が強いゴミがいっぱいでるのよ。普通、放射性の毒性のレベルによって、高レベル放射性廃棄物と、それ以外の低レベル放射性廃棄物に分けられます。
原子力発電は、ウラン鉱山を掘るところからはじまって、発電後のゴミのあとしまつまでたくさんの、しかも放射性のつよいゴミをだすの。こうしたゴミは、まわりのすべての生き物をきずつけるだけじゃなくて、長いものは数十万年後までという、人類のものさししでははかりきれない遠い未来まで、放射線を出しつづけるのよ。
Q:ほかのゴミとどこがちがうの?
A:自然界ではあらゆるものは循環していて、たとえば木の葉~落ち葉~くさって~種が芽をふき~成長してしげり~木の葉、というようにむだなく回っているわね。
でも、原発で出すゴミは自然界にはないものだから、自然の循環にもどすことはできないの。その上、前にもいったように強い放射性の毒が未来の生き物まできずつけるので、とじこめて、生き物が近づけないようにしなければならないわけ。
20万年前の地上には、このような旧人と呼ばれる人類の親戚がいた。
今から20万年後、人類はどんなすがたをしているだろう?
Wikipediaより 2009.9
Q:それで、「低レベル廃棄物ドラム缶」ってなあに?
A:それは右の写真のように、黄色いドラム缶につめて原発の敷地内につまれているものよ。100万kW級の原発の場合、1年に約1000本のドラム缶が出るそうで、2004年までを全部たすと下のグラフのようになるの。
Q:ドラム缶の中は?
A:原発などから出る放射能で汚れた液体をかためたものや、それをこす装置、それにぞうきんや作業服などを小さくかためて焼いたものなどいろいろ。それをドラム缶に入れてアスファルトやプラスチックなどで固めてあるの。
「低レベル」というんだからそんなにあぶなくはなさそうなんだけれど、実は非常に強い放射線をだす「高レベル」にくらべて低いというだけ。上の写真のドラム缶はそうでもないみたいだけど、なかには、もし人間の体内に入った場合、最大で何万人もの人に癌を発生させるだけの放射能が含まれているものもあるそうよ。
Q:そのドラム缶は今どうなっているの?
A:原発の敷地には限りがあるわね。どこかに移さねばということで、初めのころは海に捨てたこともあったけれど、これは住民の反対でやめたわ。
今は、一か所に集めてうめるための法律を作って、青森県六ケ所村の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」という所にうめているの。上の写真がその写真で300万本うめる計画なんですって。この施設は、地下に作ったコンクリート製のもので、ドラム缶を積み重ねるようにできているの。
うめ終って30年までは水もれを調べたりする計画だけれど、その後はほとんど何もせず、300年で規制をなくすそうよ。実はそれでもまだ放射能が残っているのに・・・・。
300年後って想像できる?
仮名手本忠臣蔵より、大星由良之助
今から300年前の日本ではこの歌舞伎のモデルになった赤穂浪士の討ち入り事件があった。300年後にはこの世の中はどうなっているだろう?
Q:大丈夫なの?それで?
A:まあ左の地図を見てちょうだい。ここはまわりに沼があり、地下水がとても多い場所で、そのうちドラム缶が腐って沼地や井戸が汚染されることはだれでもわかるでしょう。地震や近くの自衛隊とアメリカ軍の軍事基地(三沢基地)のことも心配だし。今そこで働いている人たちや、近くで暮らしている人たちも心配ね。ドラム缶の運搬や点検作業で放射線を浴びるし、うめた後でも放射線はもれ出るから。原発を続ける限り、こうした「生き物が近づけない場所」が、次々と広がってしまうわ。
Q:300年後の子供たちは、自分たちとは関係ない遠い先祖のこの施設を見たらどう思うかな?
・原発の燃料 ウランの採掘
■燃料ペレット
原子力発電に使われる燃料はウラン燃料といい、図1のようなペレットになっています。
ウラン燃料は小さくても大きなパワーをだすと書かれています。そして図2のように他の燃料とくらべられています。石炭と比べると7万分の一で同じパワーを出すと書かれています。
それではウラン燃料ペレットは石炭のようにそのまま土の中にうまっているのでしょうか?
そんなことはありえませんよね。
ではウランはどのようにして小さな燃料ペレットに作られてゆくのでしょうか。
■ウラン鉱石の掘り出し
燃料をつくる第一歩は、ウランのふくまれている鉱石がたくさんあるところをさがし、その鉱石をほりだすところからはじまります。
地表に近いところに鉱石があれば一番かんたんにほれます。しかし、そのほったあとを見てください。図3のように放射性物質をふくんだ残土がむき出しになって、雨にながされ風にふかれて環境汚染をひきおこしています。
ウランが地下ふかいところにある場合には図4のように坑道をほって鉱石をとりだします。
せまい坑道の中でウランやラジウムなどの放射性物質をすいこみながら仕事するわけですから、肺ガンになったり健康をわるくする人がふつうの人よりも何ばいも多くでます。
そして生活にこまったアメリカインディアンなど先住民に放射線の危険を知らせないではたらかせたために、がんや白血病がふえ、異常を持った赤ちゃんが多く産まれるようになったりしているのです。
■ウラン燃料ができるまで
ウラン燃料ができるまでの作業とその間にどれだけの放射性のゴミ(放射性廃棄物)がでてくるのか図1に示しました。
ウラン鉱石をほりだすときにも放射性物質で環境がよごれ、労働者が被ばくすることは前のところで説明しました。そのようにしてほりだした鉱石のなかにふくまれているウランは少しです。ほかのまざりものをのぞいてウランだけにしなければなりません。これを精錬といいます。
精錬した後には放射性物質をふくんだたくさんののこりカスがたまります。その量はあまりにも多いために、どこにももって行くところもなく、野ざらしにされています。雨がふると流されて川をよごしますし、風で飛ばされるとまわりの土地をよごします。
図2はアメリカにある精錬工場です。のこりカスのボタ山が見えますね。
日本でも岡山県の人形峠でウランがほられたことがあります。その時ほりだされた放射性物質をふくむ土が50年以上たった今も処理できずに残っています(図3)。
このようにウラン燃料は小さなペレットになるまでに、ものすごい量の放射性廃棄物をうみだし、
環境をよごし、人の健康に害をあたえるのです。
ですから、できあがった小さなペレットと石炭や石油とくらべるのは公正ではありません。放射性廃棄物もぜんぶふくめてくらべると図4のようになります。
これは単に量をくらべただけです。問題はウラン燃料をもやしたあとの使用済み燃料はとても強い放射線を長い間だしつづけますが、その間これをどこにおいておいたらよいかもわからないのです。
(トイレなきマンション参照)。