JDC技術委員会のEPUBに関する取り組み 有限会社サイパック 工藤智行 ■ JDC技術委員会 ・2020年3月から活動開始、委員会をほぼ毎週実施 ・日本語EPUB書籍のレイアウト・読みあげを、利用者の要求に応じて切り替えるための仕様制定等の活動 ■ JDC技術委員会の重点テーマ ・ナビゲーション ・分かち書き ・縦組・横組切り替え ・ルビ ■ ナビゲーションとは何か ・本文を音声読み上げできればアクセシブルという大きな誤解 ・ナビゲーションは読み上げ位置の移動を中心とした操作 ・ナビゲーションは音声を中心とした読書で必須となる ・主としてリーディングシステム側の機能 ・スクリーンリーダ等の音声UIを通じて操作できなければならない ・ナビゲーション機能が不十分だと音声を中心とした読書が困難 ■ 具体的なナビゲーション操作 ・前回読み終えた場所からの再生 ・目次やインデックスから目的の場所への移動 ・しおりの場所に移動 ・前の章、次の章、前の節、次の節等への移動 ・次ページ、前ページ、指定ページへの移動 ・次段落、前段落、現在の段落の頭への移動 ・フレーズ単位での前後移動 ・5秒/10秒/30秒/一分といった時間単位での前後移動 ■ 高度なナビゲーション操作 ・表の読み上げ 縦方向、横方向、表見出しの読み上げ ・現在の読み上げ位置の音声での把握 現在の章、節等の名前、何ページ中何ページ、全体の音声の再生時間でのパーセンテージ ■ ルビ ・親文字とルビの二度読み問題 ・ルビが無いと読めない ・ルビがあると読めない ・総ルビで読みたい ・底本通りのルビ表示で読みたい ・ルビの表示・非表示の切り替えが重要 ・ルビの文字色、文字サイズ、フォント、親文字との距離 ・ルビを利用した正しい読み上げ それでは話(はなし)にならない ■ 読み以外のルビ ・行間注:「小田信長」に対して「1534?82」 ・義訓:生命(いのち)、牛乳(ミルク) ・親文字を読まず、ルビだけ読む方法だと情報が欠落する ・ルビが読みを示すものか、そうでないかをを明示する必要がある ■ ルビに関する書誌情報 ・総ルビ表示が可能 ・パラルビ表示が可能 ・底本通りのルビ表示が可能 ■ 分かち書き ・分かち書きでないと読みにくい ・分かち書きされていると読みにくい ■ 分かち書きの実現方法 ・のタグで分かち書きの場所を明示してリーディングシステム側で動的に切り替えられるようにする ・分かち書きを空白文字で表現している場合は表示を切り替えられない ・日本語の構文解析による分かち書き ■ 分かち書きの書誌情報 ・分かち書きされていない表示が可能であることを明記 ・著者・編集者・出版社の意図通りの分かち書きの表示が可能であることを明記 ■ 縦組横組切り替え ・縦組だと読みにくい ・横組だと読みにくい ・利用者のニーズに応じ縦組・横組の表示切り替え機能が重要 ・縦組用と横組用のスタイルシートを両方組み込む(Alternate Style Tags 1.2で定義) ■ 縦組横組に関する書誌情報 ・書誌情報にて縦組可・横組可を明示する ・「下図の」「左図の」といった文中の記載をどうするか ・底本が縦組・横組のどちらを前提としているかを書誌情報に記載し、利用者に提示できるようにする ■ ボーンアクセシブル ルビ・分かち書き・縦組横組切り替えについては、1つのEPUBで利用者のニーズに応じ表示を切り替え可能なしくみ 健常者も障害者も同じEPUBを使って読書ができるボーンアクセシブルな電子出版を実現すべく仕様策定 ■ JDCの取り組み ・EPUBの文書構造を生かした音声読み上げによる読書の利点 フラットテキストに対するEPUBのナビゲーションを含むアクセシビリティ面の優位性の文書化 ・EPUBリーディングシステムに要求されるアクセシビリティ関連機能の文書化 ナビゲーション機能、ルビ・分かち書き・縦組横組関連の表示切り替え等 ・ルビ・分かち書き・縦組横組関連の書誌情報がONIX、Schema.orgの世界的な仕様となるよう活動中 Schema.org:EPUB内部の書誌情報 ONIX:EPUB外部の書誌情報 ■ 資料 ◆ JDCにて作成した仕様 JDC技術委員会のホームページで公開中 ・ルビ表示要求仕様(和文) ・ルビ発見要求仕様(和文と英文) ・ルビ発見機構仕様(和文と英文) ・分かち書き発見要求仕様(和文と英文) ・分かち書き発見機構仕様(和文と英文) ・縦横切替え発見要求仕様(和文と英文) ・縦横切替え発見機構仕様(和文と英文) ◆ JDCで作成中の文書 JDC技術委員会のWiKiで作成作業中(コメント歓迎) ・EPUBの文書構造を生かした音声読み上げによる読書の利点 ・フラットテキストは情報アクセシビリティの最適解か?支援技術を阻害しないDRMを! ・ルビを含む電子化文書の音声合成による読み上げ: ユーザ要求 ・ルビを含む文書の音声合成による読み上げ: 実装方式 ・アクセシビリティの観点でのrbタグの必要性について ◆ JDCからの働きかけでW3CのPublishing WG等で作成中の文書 ・Alternate Style Tags 1.2 縦組横組切り替え ・EPUB 3 Text-to-Speech Enhancements 1.0 EPUB本体から切り離されたSSML, PLSの仕様