JANNET障害分野NGO連絡会  メールマガジン 第95号 2011年6月28日発行 + 3月11日の東日本大地震で被災された皆様、そのご家族様へ心よりお見舞い申し上げます。 JANNETの会員で、被災地にて支援活動を開始した団体の状況をお知らせしています。 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet+ 目次 ++ トピックス 1.東日本大震災被災障害者支援活動報告会(6月5日) 2.WASインド会議 参加報告 3.国際開発学会「障害と開発」研究部会公開研究会 参加報告 ++ インフォメーション 1.田中 徹二氏 叙勲のお知らせ 2.アジア太平洋CBRネットワーク役員会報告 3.JANIC総会報告(6月17日) 4.前JANNET会長 山口 薫氏からのメッセージと第20回アジア知的障害会議のご案内 5.レポート紹介 『World report on disability』 6.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ イベント情報 1.JANNET研究会のご案内 2.2011年度第52回日本熱帯医学会大会、第26回日本国際保健医療学会学術大会合同大会のご案内 ++ トピック 1 東日本大震災被災障害者支援活動報告会 (6月5日)  JANNET事務局                                                          JANNET総会の後、開催した本報告会では、冒頭で社会福祉法人こころんの施設長熊田芳江さんから福島県の市民の様子、こころんの状況などを報告いただきました。こころんは2009年にJANNET国内研修で訪問した、精神障害者のための生活支援、就労支援を行っているNPO(当時)で、「こころや」という農産物の販売とカフェをオープンしています。こころんから福島原子力発電所までは70km離れているそうですが、風評被害、先の見えない不安に対する思いを率直に語ってくださいました。 その後、10団体から報告をしていただきました。発表順に、日本障害者リハビリテーション協会(日本障害フォーラム:JDFの支援本部の活動)、きょうされん、難民を助ける会、全日本ろうあ連盟、日本盲人会連合、日本作業療法士協会、日本理学療法士協会、日本キリスト教海外医療協力会、JOCVリハビリテーションネットワーク、日本財団でした。それぞれ組織的に、あるいは柔軟に活動が実施されていることがわかりました。 ++  トピック 2 WASインド会議 参加報告 きょうされん   斎藤 なを子 2011年6月5日から6日、インド、タミルナドゥ州ティルチラパリにおいて、ワーカビリティ・アジア(WAS※)2011年次会議が、8か国・地域から総勢80名(インド国外からは18名)の参加によりおこなわれました。南インドでは初の開催となります。 開会式では、主催団体ティルチラパリ視覚障害者リハビリテーション団体(ORBIT)代表パンディ氏の歓迎挨拶、WAS代表鈴木清覚氏の開会挨拶に続いて、アントニー・サミー氏(1963年ワーストラストを創設、元WI世界理事、元ILO専門官)の長年の障害者就労支援の功績を称え感謝の盾が贈呈されました。 元CBM(クリストファー・ブライデンミッション)南アジア代表のP・G・マイケル氏による「アジアにおける障害者・就労を通じての解放と尊厳」と題した基調講演では、関係機関が協力協同して2020年までにアジアでの障害者雇用を現在の5倍にする夢の実現にむけた各国リーダーの使命が強調されました。 「組織されたセクターでの障害者就労」「組織されていないセクターでの障害者就労」「自営」の3テーマによる分科会、各国(マレーシア・ネパール・香港・スリランカ・台湾・インド)からの就労支援実践報告がおこなわれ、藤井克徳氏による東日本大震災と障害のある人に関する特別報告は参加者の関心を集めました。活発な質疑や全体討論を通じ相互の交流が深められWAS組織の進展に結びつく重要な年次会議となりました。2012年次は台湾においてWI世界会議と併せて開催される予定です。 注) WAS:アジア地域において障害のある人たちに職業訓練・就業機会を提供し、就労を支援する事業体のネットワークで、ワーカビリティ・インターナショナル(WI)の地域組織 ++ トピック 3 国際開発学会「障害と開発」研究部会公開研究会 参加報告 アジア保健研修所(AHI)  清水香子 「障害と開発」研究部会は国際開発学会の1部会です。これまで東京で開催していた研究部会ですが、地方開催の第一回目として、2011年6月11日(土)、名古屋市内の日本福祉大学にて開催されました(共催:国際開発学会東海支部、日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター)。テーマはマレーシアにおけるCBRと東日本の被災地における「障害と開発の課題」でした。 最初に、石本馨氏(日本福祉大学助教、作業療法士・社会福祉士)から「CBRワーカーの職能形成について Enabling Occupationの視点から」という内容の研究報告があり、CBRワーカーが必要とされる多様な役割、とくに当事者の参加を支え励まし、地域とのつながりをつくり、次の経験に生かしていく力の育成の必要性について述べられました。 その後、菅沼良平氏(社会福祉法人AJU自立の家・わだちコンピュータハウス職員)より、AJU自立の家が行っている被災地での支援活動とその課題について聞きながら、障害や支援活動に関わる参加者とともに議論を深めていきました。 特に、菅沼氏より被災者が避難所から仮設へと移っていくにつれ、より「埋没」していく可能性のある障害者のニーズをどのように対応していくかが大きな課題としてあげられました。その課題に対し、被災者自身が仮設のデザインや設計なども含め、復興・自立のプロセスに関わり意見を言うこと、そこに障害者とその家族も関わっていること、そうした経験を日常から積み重ねていることが必須であることが確認されました。その点からも、石本氏の発表で触れられていた、日常のCBRプログラムにおける人材育成やとりくみの重要性が確認された会となったと思います。 後半の被災地での報告では、参加者からも様々な支援活動の経験の共有があり、今後の復興に向けて、被災者が現在直面する多くの課題を考え、議論する機会になりました。 ++ インフォメーション 1.田中 徹二氏 叙勲のお知らせ 日本点字図書館理事長ならびにJANNET副会長として活躍されている田中 徹二氏が、東日本大震災の影響で2ヶ月遅れの発表となった春の叙勲において社会の様々な分野で功績を上げた人に贈られる旭日小綬章を受賞されました。謹んでお喜び申し上げます。 ++ 2.アジア太平洋CBRネットワーク役員会報告 5月30日、31日にバンコクで開催された役員会に出席したので概要を報告します。 今回の主な議題は、規約改正案、CBR AP ネットワークと事務局であるAPCD(アジア太平洋障害者センター)との覚書(MOU)、今年11月にフィリピンで開催される第二回アジア太平洋CBR会議プログラムについて、グローバルCBRネットワーク構想について等でした。 参加したのは役員では8人中6人、事務局(APCD)から5人でした。 規約改正のポイントは、役員のうちSecretaryを廃止し、代わりにSecretary General(事務局長)を設置すること、事務局長にはAPCDの所長が就任することと、役員会機能を高めるため、役員選出を2011年11月のRegional Council(総会)にて行うことで、議論の結果、了解されました。また今年のRegional Council(総会)で第二回アジア太平洋CBR会議の準備状況が紹介され、それについて意見交換を行いました。 またフィリピンでの会議の直前に開かれる、CBRグローバルネットワーク構想会議に出席する役員2名を選出し、会長(マレーシア)と副会長の一人(パキスタン)が出席することにしました。 また年会費額については、途上国の草の根の組織は10ドル、途上国の加盟組織は50ドル、先進国の加盟組織は100ドル、国際NGOは300ドルと決まりました。  役員会での議論は、ひとつひとつ丁寧に行われました。国の違い、所属する組織の違いを超えて納得する結果を得るには時間がかかるプロセスが大事であると実感しました。 上野 悦子 ++ 3.JANIC総会報告(6月17日) JANNETが正会員になっているJANIC(国際協力NGOセンター)の総会と東日本震災後支援活動報告会が17日の午後開催され、参加しました。 総会では平成22年度の事業報告案・決算案が承認され、平成23年度事業計画案・予算案の報告を聞き意見交換が行われました。また2011年-2012年の新役員体制が決まり、これまで常連役員からかなり新しいメンバーへと交代しました。 また震災後、ODAが減額になったことを受けて、途上国支援に歯止めがかからないことを望むことを提言していることが報告されました。 総会後の被災地支援の活動報告は、山形にある国際協力NGOの連絡会(IVY)の安達さん、シャプラニール事務局長筒井さん、およびセイブザチルドレン事務局次長の定松さんの3人から行われました。それぞれ地元に近い組織として地域の力を大事にする活動、バングラデシュでの地域社会開発支援の延長で東北(いわき市)を支援、そして国際NGOとして規模を重視する活動の違いを理解する機会になりました。 事務局  ++ 4.前JANNET会長 山口 薫氏からのメッセージと第20回アジア知的障害会議のご案内 6月5日のJANNET総会で前JANNET会長 山口 薫氏がお元気な姿を見せてくださり、標記会議に関するメッセージとご案内をいただきました。 1973年以来隔年でアジア知的障害会議がアジアのどこかの国で開催されていますが、今年は8月21日〜26日韓国チェジュ島で第20回会議が開催されます。開会式でアジアでの優れた活動3つに「星槎賞(Star Raft Awards)」が贈呈されますが今回の授賞の1つは日本の「若竹ミュージカル」の活動です。私(山口薫)が20年以上前に学芸大教授時代6年間附属知的障害特別支援学校の校長をしていた頃の教え子たち(今、30歳から40歳くらい)が中心になり、その親たちや先生たちが応援出演、学大の音楽部の学生がオーケストラを引き受けてくれ、「サウンド・オブ・ミュージック」に始まり、「屋根の上のバイオリン弾き」は大成功で全国から公演依頼が来ている程すばらしい活動を続けています。授賞に合わせてその活動の記録映画(監督は金聖雄さん)を会議の中で上映し、その後、主役の知的障害の人を中心に親や先生約30名が挨拶と演技を披露します。 「星槎賞」の選考委員長の私としても大変嬉しく思っていますが、このことをお知らせすると共にアジア会議にも多くの方に参加していただきたいと願っています。 山口薫 日 時: 2011年8月21日(日)〜26日(金) 場 所: 韓国 済州(チェジュ)島 主 催: アジア知的障害連盟 お問い合わせ: 社団法人 日本発達障害福祉連盟 (下記HPをご参照ください。) http://www.gtid.net/jp/news/20101018100538/ ++ 5.レポート紹介 『World report on disability』 WHOと世界銀行が協同で作成した、初の障害に関する世界レポートが発表されました。 下記ホームページにてPDF版のご高覧、ハードカバーコピーのご購入ができます。 http://www.who.int/disabilities/world_report/2011/en/index.html The first ever World report on disability, produced jointly by WHO and the World Bank, suggests that more than a billion people in the world today experience disability. People with disabilities have generally poorer health, lower education achievements, fewer economic opportunities and higher rates of poverty than people without disabilities. ++ 6.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 1. アルジェリア 2. アルゼンチン 3. オーストラリア 4. オーストリア 5. アゼルバイジャン共和国 6. バングラディシュ 7. ベルギー 8. ボリビア 9. ボスニア・ヘルツェゴビナ 10. ブラジル 11. ブルキナファソ 12. カナダ 13. チリ 14. 中国 15. クック諸島 16. コスタリカ 17. クロアチア 18. キューバ 19. チェコ共和国 20. デンマーク 21. ドミニカ共和国 22. エクアドル 23. エジプト 24. エルサルバドル 25. フランス 26. ガボン 27. ドイツ 28. グアテマラ 29. ギニア 30. ハイチ 31. ホンジュラス 32. ハンガリー 33. インド 34. イラン 35. イタリア 36. ジャマイカ 37. ヨルダン 38. ケニア 39. ラオス 40. ラトビア 41. レソト 42. マラウイ 43. モルディブ 44. マリ共和国 45. モーリシャス 46. メキシコ 47. モンゴル 48. モンテネグロ 49. モロッコ 50. ナミビア 51. ネパール 52. ニュージーランド 53. ニカラグア 54. ニジェール共和国 55. オマーン 56. パナマ 57. パラグアイ 58. ペルー 59. フィリピン 60. ポルトガル 61. カタール 62. 韓国 63. ルワンダ 64. サンマリノ共和国 65. サウジアラビア 66. セルビア 67. セイシェル共和国 68. スロバキア 69. スロベニア 70. 南アフリカ 71. スペイン 72. スーダン 73. スウェーデン 74. シリア 75. タイ 76. チュニジア 77. トルクメニスタン 78. トルコ 79. ウガンダ 80. ウクライナ 81. イギリス 82. タンザニア連合共和国 83. ウルグアイ 84. バヌアツ共和国 85. イエメン 86. ザンビア 87. アラブ首長国連邦 88 エチオピア 89. マレーシア 90. リトアニア 91. アルメニア 92. ナイジェリア 93. モルドバ共和国 94. シエラレオネ共和国 95. セネガル 96. セントビンセント及びグレナディーン諸島 97. 欧州連合 EU 98. ルーマニア 99. トーゴ共和国 100.コロンビア 101. ベリーズ (2011年6月21日現在) 国連 批准国リスト(英語):http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1. JANNET研究会のご案内 今年度の研究会では、昨年発表された、CBRガイドラインを共通のテーマに取り上げます。1回目は、概要です。今後の予定では、10月29日(土)に「日本の地域福祉(社会福祉法人むそう)を例にCBIDで読み解く」研究会も予定しています。 日 時:7月22日(金)午後6時−8時 場 所:戸山サンライズ2階 中研修室 テーマ:CBRガイドラインの概要(作成までと今後についても含む) 手話通訳をご用意します。 お問い合わせ:JANNET事務局 電話:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 E-mail:sasaki.yuka@dinf.ne.jp ++ 2. 2011年度第52回日本熱帯医学会大会、第26回日本国際保健医療学会学術大会合同大会のご案内 日 時:平成23年11月4日(金)〜6日(日) 会 場:東京大学本郷キャンパス 安田講堂ほか 〒113-0033東京都文京区本郷7-3-1 (会場案内:http://www.ghtm.m.u-tokyo.ac.jp/pg44.html) テーマ:世界の動きと日本からの発信  Lifting Japan's Voice in Global Health and Tropical Medicine 参加費:一般 8,000円、大学院生、留学生他 4,000円、大学生、専門学校生他 2,000円 (上記は事前登録した、非会員を対象とした参加費となります。その他詳細は下記HPでご確認ください。) http://www.ghtm.m.u-tokyo.ac.jp/photo.html 事前登録:下記HP上からご登録願います。 http://www.ghtm.m.u-tokyo.ac.jp/diary/2008-08.html 演題登録:平成23年6月30日(木)〜7月31日(日)(詳細は下記HPでご確認ください。) http://www.ghtm.m.u-tokyo.ac.jp/diary/2008-07.html 事務局:東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室 専用メールアドレス:ghtm2011@m.u-tokyo.ac.jp TEL:03-5841-3479 FAX:03-5841-3422  大会HP:http://www.ghtm.m.u-tokyo.ac.jp/index.html なお上記プログラム開催中に、日本国際保健医療学会学生部会総会ユースフォーラム2011が以下の日程で同会場にて開催されます。 日 時:平成23年11月5日(土)〜6日(日) 会 場:東京大学本郷キャンパス 安田講堂ほか 〒113-0033東京都文京区本郷7-3-1 テーマ:学際的挑戦 〜グローバルヘルスと日本の貢献〜 詳細に付きましては以下のHPをご参照ください。 http://www.jaih-s.net(現在、調整中) ++ <事務局からのお知らせ> 6月5日の総会において、事務局長が片石修三から上野悦子に交代するという発表がありました。 今後も気を引き締めて皆様とともにJANNETを発展させていく所存です。 よろしくお願いします。  上野 悦子 ++ 編集後記  震災の被害に対し、海外から様々な支援が寄せられています。日頃の国際間の課題などに関わらず、多くの人から寄せられる支援には心からの感謝を覚えます。 一方、被災地の支援活動の現場では、国際支援を実感する場面は案外少ないように思います。国内の支援の力がそれだけ強いということなのでしょうか。 5日に開かれた震災支援活動報告会で、難民を助ける会から、国際支援の現場で用いられる、支援団体間の「調整会議」の手法が、国内でももっとあってよいと指摘されていましたが、このような点は学ぶべきといつも思います。 同じ国内の支援でも、他県から支援に入った団体が、よく「外人部隊」と譬えられることがあります。自分たちの地域は自分たちで守るという、地域住民の心意気があってのことでしょう。 内と外からの支援のあり方については、いつも考えさせられますが、最終的には、地域の復興・再生にどうつながるかが、鍵になるのだと思います。 原田 潔 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。 団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 [JANNET事務局直通]TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/