JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第88号 2010年11月30日発行 ―目次― トピックス 1.地域に根ざしたインクルーシブな開発(CBID)への途 (2010年10月13日〜15日) 2.第4回APDF総会・会議バンコクで開催 (2010年10月17日、18日) 3.WBUAP中期総会日本で開催 (2010年10月29日〜11月1日) +++++ インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 (2010年11月29日現在) 2.CBRガイドライン開始 3.「JANNET英文ニュースレター No.13 2010」が完成しました。 +++++ イベント情報 1.第21回国際開発学会大会 (2010年12月4日、5日) 2.2010年内閣府障害者週間セミナー(2010年12月6日) 「発展途上国の障害者の状況を知っていますか?−日本の民間を中心とする支援活動の紹介」 3.スーダンカフェ 2010 〜見て知って食べて、まるごと味わうスーダン〜(2010年12月12日) +++++ トピック 1 地域に根ざしたインクルーシブな開発(CBID)への途 特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン・プログラム・オフィサー 平本 実  2010年11月13日から15日にかけてマレーシア・クアラルンプールにて開催されたアジア太平洋CBR会議にJANNET会員団体として参団した。 私の所属するワールド・ビジョンは国際NGOである。その活動は子どもを中心とした家族とコミュニテイを支える地域開発と緊急援助を柱としている。地域開発の活動は、地域の特異性、ニーズに合わせて行われる教育、保健、収入向上などのプロジェクトによって成り立っているが、それらの活動を横断する課題としてジェンダー、環境などと並んで障害も取り上げられている。 とはいえ、日本を含むワールド・ビジョン・スタッフの中でも「障害」というのは医療リハビリテーションや特別支援教育など専門的な知見や機材などを必要とする「特殊」なものというとらえられがちである。そのためにプロジェクトの形成、実施においても、書類作成時に配慮すべきチェック項目以上の取り組みになりにくいのが実情である。 当然のことながら、地域に根ざしたリハビリテーション(Community Based Rehabilitation=CBR)は、リハビリテーションという言葉が付いているがゆえに、障害に特化していないワールド・ビジョンのような開発NGOにとってさらに敷居の高いものになっていたといえよう。 今回の会議はそのCBR ガイドラインの改訂にともなって、歴史的位置付け、意味や内容、そしてこれからの進むべき方向をアジア太平洋地域の関係者と共に検討、共有をしようというものであった。 会議は、CBRの第1人者であるインドのマヤ・トーマス博士の講演で始まった。博士はCBRの歴史をふり返り、医療にのみ当てられていた焦点が包括的なものに広がっていったこと、そしてその目指すところが「地域に根ざしたインクルーシブな開発(Community Based Inclusive Development=CBID)」であることが、新しいガイドラインで明確に示されたと述べた。そしてCBRはCBIDという目的を達成するためのアプローチだと結んだ。 続いて講演を行ったCBRの創始者であるヘランダー博士は、医療モデルから社会モデルへと障害のパラダイムが変化する中でCBRも社会的に障害を負わされている人々への視座を持たないといけないと訴えた。 また、このCBRガイドラインの改訂作業に携わったWHOのチャパル博士は、今回、さまざまなステークホルダーとのコンサルテーションを繰り返した結果、CBRの目指すところは「地域に根ざしたインクルーシブな開発(Community Based Inclusive Development=CBID)」であることをガイドラインで示すことに至ったこと、そして日本とインドの事例を示しつつこの目的を達成する取り組みは先進国、途上国を問わず必要であることが説明された。 会議は、その後、CBIDに向けての具体的な実践例の報告が続いた。その中には当事者のエンパワメントが航空会社の障害を持つ乗客への対応を変えるにいたったILとも共通する事例の報告もあり、CBRの広がりを感じさせた。 今回の会議を通して示された「CBID実現のためのCBR」という道筋がWVJのような開発全般を担う団体にとってのもつ意味は大きい。医療モデルの枠の中に閉じ込められていた「障害」を開発(MDGs)の世界に広げ、すべての活動の中で実施可能、否、実施すべきものとしていくことになるからである。障害の開発へのメインストリーミング化が加速することを願ってやまない。同時に、ワールド・ビジョンとして何ができるか、何をすべきかを考えるという宿題をもらった会議であった。 +++++ トピック 2 第4回APDF総会・会議バンコクで開催 APDF事務局長 松井 亮輔  10月17日(日)〜18日(月)バンコクのアジア太平洋障害者センター(APCD)の協力を得て、その会議室を会場に第4回アジア太平洋障害フォーラム(APDF)の総会と会議が開催されました。同総会などがこのタイミングでひらかれたのは、10月19日(火)〜21日(木)にバンコクで開催される国連ESCAPの社会開発委員会において、2012年で最終年を迎える第2次アジア太平洋障害者の十年(2003年〜2012年)の後の取組について協議が行われることが決まっていたため、それにあわせて開催すれば、APDF関係者は両方の会議に参加できるからです。参加者は、全体で約60名でした。 今回の総会の主な目的は、役員の改選と次期総会がひらかれる2012年までの行動計画などを決めることでした。役員の選挙では、現会長のAlam氏(バングラデシュ)が再選されるとともに、わたしが事務局長に留任すること、および事務局を引き続いて日本障害者リハビリテーション協会に置くことなどが決まりました。 その後行われたESCAP社会開発委員会で、障害者権利条約の履行をテーマとする新十年の実施を来年5月に開催されるESCAP総会に提案することが決まったことから、現在の十年の政策ガイドラインであるびわこミレニアム・フレームワーク(BMF)およびBMFプラスファイブにかわる新たな戦略づくりがESCAPではじまることになりました。APDFとしても他の関係団体と連携しながら、そのプロセスに積極的に関わることが、きわめて重要と思われます。 総会後の会議では、「第2次アジア太平洋障害者の十年の終了およびその後に向けて、APDFが地域的、世界的にどのような貢献ができるか」などについてパネルディスカッションが行われ、最後に「APDFバンコク声明2010」が提案され、採択されました。同声明は、新十年の効果的な履行とモニタリングをするうえで留意すべき重要事項について、ESCAP社会開発委員会への提言として取りまとめられたものです。 +++++ トピック 3 WBUAP中期総会日本で開催 WBUAP会長 指田 忠司  去る10月29日(金)から11月一日(月)まで、千葉市のホテルと、東京墨田区の施設を会場に、WBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)の中期総会が開かれた。日本でこの種の会議が開かれるのは、1991年以来で約20年ぶり。WBUAPの19ヶ国・地域の代表約130人の他、カナダ、デンマーク、イギリスなど、22ヶ国・地域から講演者や発表者が参加。国内参加者とスタッフを合せると、参加者は約250人に上った。  今回の総会テーマは「障害者権利条約の批准と視覚障害者施策の充実を目指して ― 平等な就業機会と生存権の保障 ―」というもので、このテーマに沿って記念講演や分科会、シンポジウムが企画された。WBUAP地域での開発問題については、デンマーク盲人協会との協力で進められてきたモンゴルとラオスにおける能力開発プロジェクトの成果が分科会で報告された。全体会では、理事会や委員会の報告の他、WBUAPの定款の改正や、行動計画の見直しなどについても審議され、今後の組織的活動の基盤整備への基礎固めが行われた。そして31日午後の全体会では、今回の総会のまとめとして「千葉宣言」賀採択された。その骨子は次のとおりである。 @障害者権利条約の書名、批准、実施及び監視について各国にタイムリーな働きかけを行うこと。 A失業と経済的非活動が、視覚障害者の社会からの排除をもたらす原因であることを認識し、各国において就業機会の拡大に取り組むこと。 B青年フォーラムでの議論を踏まえ、地域内における青年の問題に就いて情報交換を進めるために、メーリング・リストを立ち上げること。 C女性フォーラムの熱意あふれる議論を踏まえ、視覚障害女性の地位向上のため、各国において工程表を策定するよう働きかけるとともに、女性差別撤廃条約とリンクする形で展開すること。 Dデンマーク盲人協会など、地域各国における権利保障の促進を通じた当事者団体の強化支援に感謝するとともに、将来に向けて連携を更に強めること。 ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約国情報 ( 関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 1. アルジェリア 2. アルゼンチン 3. オーストラリア 4. オーストリア 5. アゼルバイジャン共和国  6. バングラディシュ 7. ベルギー 8. ボリビア 9. ボスニア・ヘルツェゴビナ 10. ブラジル 11. ブルキナファソ 12. カナダ 13. チリ 14. 中国 15. クック諸島 16. コスタリカ 17. クロアチア 18. キューバ 19. チェコ共和国 20. デンマーク 21. ドミニカ共和国 22. エクアドル 23. エジプト 24. エルサルバドル 25. フランス 26. ガボン 27. ドイツ 28. グアテマラ 29. ギニア 30. ハイチ 31. ホンジュラス 32. ハンガリー 33. インド 34. イラン 35. イタリア 36. ジャマイカ 37. ヨルダン 38. ケニア 39. ラオス 40. ラドビア 41. レソト 42. マラウイ 43. モルディブ 44. マリ共和国 45. モーリシャス 46. メキシコ 47. モンゴル 48. モンテネグロ 49. モロッコ 50. ナミビア 51. ネパール 52. ニュージーランド 53. ニカラグア 54. ニジェール共和国 55. オマーン 56. パナマ 57. パラグアイ 58. ペルー 59. フィリピン 60. ポルドガル 61. カタール 62. 韓国 63. ルワンダ 64. サンマリノ共和国 65. サウジアラビア 66. セルビア 67. セイチェル共和国 68. スロバキア 69. スロベニア 70. 南アフリカ 71. スペイン 72. スーダン 73. スウェーデン 74. シリア 75. タイ 76. チュニジア 77. トルクメニスタン 78. トルコ 79. ウガンダ 80. ウクライナ 81. イギリス 82. タンザニア連合共和国 83. ウルグアイ 84. バヌアツ共和国 85. イエメン 86. ザンビア 87. アラブ首長国連邦  88.エチオピア 89.マレーシア 90.リトアニア 91.アルメニア 92.ナイジェリア 93.モルドバ共和国 94.セネガル 95. セントビンセント及びグレナディーン諸島 (2010年11月29日現在) 国連 批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 2.CBRガイドライン開始 ナイジェリアで行われていた、第4回CBRアフリカネットワーク会議において、発表が待たれていた、 CBRガイドラインが開始されました。 アジアでの同ガイドライン開始の会議は、 11月13日から15日までクアラルンプール(KL)にて行われました。 http://apcbrconvention.cbrnetworkmalaysia.org/ CBRガイドラインのURLはWHOの以下のサイトからご覧ください。 http://www.who.int/disabilities/cbr/en/ 3.JANNET英文ニュースレター NO.13 2010 JANNETが毎年作成している、英文ニュースレター(CD版)の2010年版が完成致しました。 12月初旬より会員の皆様へ送付手続きをさせていただく予定です。 今年のニュースレターの内容は、第一次アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)および第二次アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)に関してこれまでに民間で作成された文書をまとめたものです。アジア太平洋地域の障害者団体・支援団体が民間で行ってきた推進活動の資料集をご紹介します。 各団体の海外カウンターパートなどに配布を希望する方は、 下記3点をご記入の上、中井宛(nakai.stf@dinf.ne.jp)にご連絡ください。 ※大量枚数が必要な方は、事前にご相談ください。 1.「JANNET英文ニュースレター」配布希望 2.必要枚数 3.配布先団体名(予定で構いません。) +++++ イベント情報 1.第21回国際開発学会大会 ・日時 2010年12月4日(土)、5日(日) ・場所 早稲田大学早稲田キャンパス大学院アジア太平洋研究会 (19号館早稲田ビルディング http://www.waseda.jp/gsaps/)及び国際会議場) ・詳細 http://www.jasid.org/conference/index.html 2.2010年内閣府主催障害者週間セミナー 「発展途上国の障害者の状況を知っていますか? −日本の民間を中心とする支援活動の紹介」 ・日時 2010年12月6日(月) 18:00〜20:00 (受付17:30〜) ・場所 明治学院大学 (東京港区白金台1-2-37) ・お問合せ先:日本障害者リハビリテーション協会 国際部 上野 中井 Tel 03-5292-7628, Fax 03-5292-7630 3. スーダンカフェ 2010 〜見て知って食べて、まるごと味わうスーダン〜 「スーダンって、どんな国?」 私たちCAPEDS(キャペッズ)は、2007年からスーダン人留学生と共に、 視覚障害を持った現地の子どもや大学生の教育、スポーツをサポートしています。 ニュースからは見えない「等身大のスーダン」最新情報をお届けします。 ・日時:12月12日(日)12:30〜16:00(その後同会場で懇親会あり) ・場所: Social Energy Cafe ( http://bit.ly/9uPm2r ) 〒156-0052 東京都世田谷区経堂2-19-5(小田急線 経堂駅から徒歩5分) ・参加費:500円(12月3日までの事前予約/スーダンランチつき、資料代込み) ※当日参加は800円、料理なしの途中参加は500円となります  ※懇親会ではお飲み物代を実費でいただきます ・定員:25名様 ・お申し込み方法 ・ATND:http://atnd.org/events/10171 (右のボタンをぽちっとクリック!) ・メール:event@capeds.org (お名前、人数、ご所属をお知らせくださいませ) ・主催:NPO法人 スーダン障害者教育支援の会(CAPEDS/キャペッズ) http://www.capeds.org/ +++++ 編集後記 本文でも紹介しましたとおり、英文ニュースレターが無事発行されました。(ご担当の皆 さん、お疲れ様でした。)  今回は、第一次・第二次「アジア太平洋障害者の十年」の貴重な資料をまとめた内容で、 障害分野に携わる人にとって、永久保存版ともいえるものです! 私自身、第一次十年に各国持ち回りで開催された「キャンペーン会議」にはいくつか参加 させていただきましたが、読んでいて、懐かしい思いもこみあげてきます。  ところで、今回バンコクで開かれたAPDFの総会・会議には、私も事務局の一員として参加 しました。第一次十年の頃のような「キャンペーン」的な要素は薄れましたが、参加者一 同、真摯で活発な議論を交わし、今後の課題を確認しあうよい機会となったと思います。 現在では、各国のNGOも発言力を増し、サブリージョンでの活動も活発になるなど、十年 前とは地域の状況も変わってきています。ネットワーク組織の在り方も、自ずと変わって いくのだろうなと感じました。(原田 潔) +++++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。 団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 Email: eueno@dinf.ne.jp URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/