JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第229号 10月号 2022年10月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 近年における全国手をつなぐ育成会連合会のうごき 一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事兼事務局長 又村 あおい 〜会員団体の活動報告〜 2. コロナ禍から始まった視覚障害者を取り巻くリモート支援 社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター 施設長 伊吾田 伸也 3. リハ協カフェ2周年記念シンポジウム第1弾 登壇報告 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan) プログラム・コーディネーター 峯島 昂佑 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 「国際リハビリテーション研究会 第6回学術大会」 2022年11月13日(日) 2. 「インクルーシブ社会を目指して 〜ソーシャルインクルージョンとSDGsのまちづくり〜」 2022年11月16日(水) トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 近年における全国手をつなぐ育成会連合会のうごき 一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事兼事務局長 又村 あおい (一社)全国手をつなぐ育成会連合会は、1952年に設立された知的障害・発達障害のある人と家族、支援者で構成される団体(以下「全育連」という。)です。全育連の近年のうごきをお知らせいたします。 (海外協力) 全育連はインクルージョン・インターナショナル(国際育成会連盟)の正会員(日本支部)という位置付けでもあり、国際育成会連盟の一員として、総会や世界大会などへ参加しています。また、アジアにおいては「アジア知的障害会議」という国際会議にも参加しています。こうした国際活動に関しては、全育連に「国際育成会」という組織を置いて取組みを進めています。 (啓発活動) 知的障害や発達障害のある人が地域で当たり前に暮らすためには、地域住民を含めた地域全体の理解が欠かせません。そのため、全育連では積極的に啓発活動を展開しています。具体的には、全国に「啓発キャラバン隊」を立ち上げ、親しみやすい疑似体験を通じて知的・発達障害への理解を広めています。こうした啓発活動に関しては、全育連に「啓発キャラバン・Web推進委員会」という組織を置いて取組みを進めています。 特に、令和6年上半期には障害者差別解消法の改正が施行され、障害ゆえに社会生活上の困りごとを抱えている人に対する合理的配慮の提供が全面的に義務化されます。しかし、障害の特性に応じた配慮を提供するためには、基本的な障害特性の理解が必須です。そのため、外形的に障害ゆえの困りごとが分かりにくい知的・発達障害に関しては、より積極的な啓発活動が重要となります。 (内外の関係団体との連携) 障害者運動を展開するためには団体間の連携が重要となりますが、障害特性も異なることから、目に見える連携を取ることは難しい面もあります。そこで、全育連が事務局となり、障害の垣根を越えて連携しやすい領域である「文化芸術」を軸としたネットワーク組織を立ち上げています。「障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク」と呼ばれるこの組織は、障害者の文化芸術活動を広めていくという共通目的の下、身体・知的・精神の3障害を横断した組織になっています。 (コロナ禍における対応や工夫) 新型コロナの影響を受け、全育連でも各種行事の開催に大きな影響が出ました。以前のような大規模集合型行事は開催が難しくなり、一時期は活動が大きく停滞してしまいました。しかし、急速に発展したオンライン会議システムを活用することで、全国の育成会組織とつながることができました。 また、従来以上にホームページやSNSによる情報発信を増やしたほか、全育連のユーチューブ公式チャンネルも開設しています。 全育連ホームページ http://zen-iku.jp/ 全育連公式ユーチューブチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC5ku3sanVaM1u6hM4MLCKVA (その他の主な取組み) 全育連では、新たな取組みとして「障害があることを理由に各種保険に加入できない(加入しにくい)」という会員からの声を受けて、「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念に基づき、障害のある人でも加入しやすく工夫した保険商品の取扱いを開始しました。会員向けの福利厚生事業となるため、育成会への入会が条件となりますが、ご関心のある方は全育連東京事務所(03-5358-9274)までお問い合わせください。       2. コロナ禍から始まった視覚障害者を取り巻くリモート支援      社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター 施設長 伊吾田 伸也 日本視覚障害者職能開発センターは、「働きたい」、「働きつづけたい」、「生きがいのある生活を送りたい」と願う視覚障害者を支援するため、PCを利用した事務職に挑戦する視覚障害者の職能開発訓練を中心とした社会福祉事業を行っています。 就労移行支援・就労継続支援B型・就労定着支援の3本の事業を柱として、公益事業として職能開発訓練事業・啓発事業を実施しています。 新型コロナウィルスの蔓延により、職場環境は大きく変わりました。視覚障害者の就労についても例外ではなく、テレワークを前提とした就職をされる方が増えています。 時代の変遷に合わせて当センターで行っている就労移行支援でも、リモートによる支援を取り入れ、PC訓練を中心にリモート支援を行っています。 これまで新型コロナウィルス感染症への対応として臨時的に要件緩和して認められたリモート支援でしたが、厚生労働省の就労系障害福祉サービスにおける在宅でのサービス利用にかかるガイドラインに従い、常時リモート支援を受け入れる体制をとっています。 令和3年度は就労移行支援で1,092回のリモート支援を実施しました。全体の支援回数が7,156回であったので1/7以上の割合を占めています。 就労移行支援では音声ソフトを活用したPC訓練が中心となっています。その為、訓練現場と自宅をZoomで接続し、訓練に参加する事が可能です。 訓練現場の訓練室には、部屋全体の音を集音するマイクスピーカーを設け、リモート先の発言も訓練室に流れるようになっています。一方的に受講するだけではなく、自宅から質問する事やグループ討論に参加する事も出来ます。トラブル等が起きた場合は、Zoomの機能を活用し、リモート先のパソコンを遠隔操作で解決しています。 視覚障害者の就労移行支援は地域格差が大きいと言われていますが、各地の支援者や自治体のご協力を賜り、東北・北陸・九州とリモート支援の輪が広がっています。 就労継続支援B型では1,504回のリモート支援を実施しました。全体の支援回数が7,156回であったので1/5弱の割合を占めています。主な作業がテープ起こしですが、リモート支援により、体調不良等で通所が難しくなったベテランの利用者も作業が可能となっています。 就労定着支援では令和3年度は、毎月リモートによるミーティングを開催し、情報交換や勉強会を実施してきました。また、訪問が難しい職場へはリモートによる支援を行っています。 働き方の変革に伴い、福祉制度では柔軟にリモート支援が取り入れられてきました。しかし、残念な事に労働側の支援制度である職能開発訓練や職場適応援助者(ジョブコーチ)では、リモート支援を実施しにくい状況が続いています。 コロナ禍から始まったリモート支援ですが、福祉側の制度では地域の壁を越えて支援が広がっています。もちろん現場では対面による支援の良さも実感しています。リモート支援と通所による支援を両方充実させながら、今後も事業を運営して参ります。 3.リハ協カフェ2周年記念シンポジウム第1弾 登壇報告 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan) プログラム・コーディネーター 峯島 昂佑 ※去る2022年8月26日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『「リハ協カフェシンポジウム」第1弾』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 8 月 26 日の「リハ協カフェシンポジウム」第 1 弾に参加し、障害分野に関わった経緯や勤務地での課題をお話ししました。 私は人道支援団体AAR Japanに所属しており、ラオスのビエンチャン事務所にプログラム・コーディネーターとして勤務しています。前職は国立病院機構や療育センターで理学療法士として働いていましたが、発展途上国での障がい者支援に興味を持ち、思い切って国際協力の世界に飛び込みました。AAR Japanでは主に難民支援や、地雷不発弾対策など、6つの分野に注力して支援活動を行っています。その中でも、私は自分の経験やスキルを活かして、障がい者・児への支援を中心に活動しています。 ラオスでは、「障がいインクルーシブな地域社会推進事業」を実施しています。ラオス北部の都市ウドムサイへ訪問し、収入手段を持っていない障がい者が生計を立てることができるようキノコ栽培などの支援活動を行うとともに、障がい啓発活動や公共施設のバリアフリー化整備などを行っています。私自身は、支援活動を現地スタッフと共に行っていく一方、ビエンチャン事務所の運営にも従事しています。また、理学療法士の資格を活かし、学校に行けない子どもたちや家から出ることが難しい障がい者の方などを対象に、身体の状態を調べ、補助具を提供する専門機関などにつなげる活動もしています。 シンポジウムでは、ラオスで活動している中で気づいたことや、役に立った意外な技術や知識など、私の経験を元にお話ししました。障がい分野において途上過程にあるラオスでは、特に地方部において多くの課題があります。例えば、今でも怪我をした時には村の祈祷やおまじない、地域の伝統に沿った民間療法などが主流である地域があります。正しい障がい理解を啓発し、障がい者を取り巻く環境を少しずつ変えていくことも私たちの大きな役割です。地道な活動ですが、地域に根付く活動になるよう一歩ずつ事業を進めています。 まだまだお話ししたいことは沢山ありますが、参加者の方から多くご質問もいただき、私にとっても大変有意義なシンポジウムとなりました。またどこかで皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。     ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 185 (2022年10月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.「国際リハビリテーション研究会 第6回学術大会」 2022年11月13日(日) 海外ルーツの方は3つの壁(言葉の壁、制度の壁、文化の壁)に直面していると言われています。今学会では、海外ルーツの方々の健康課題に関する研究者、当事者、支援者をお招きしたシンポジウムやセッションを設け、患者さんたちの課題(ex.3つの壁)に気づくこと、そしてリハビリテーションに携わる者ができることややるべきことを考える機会にしたいと思います。 今回は「国際リハビリテーションの新たな可能性:内なる国際化への貢献を目指して」をメインテーマとし、日本に暮らす海外ルーツの方々の健康課題とリハビリテーションに焦点を当てます。研究会には海外活動を通して自身も異文化体験をした会員も在籍しています。参加される皆様が国内外で得た知見を共有し、リハビリテーション分野における新たな国際貢献の可能性を開くことを願っています。 《国際リハビリテーション研究会 第6回学術大会 国際リハビリテーションの新たな可能性内なる国際化への貢献を目指して》 日時:2022年11月13日(日) 10:00〜16:30 場所:国際デザインセンター セミナールーム(対面開催) (愛知県名古屋市中区栄3丁目18?1  ナディアパークデザインセンタービル 6階) 参加費:会員1,000円 非会員2,000円 学生1,000円(申込締切:11月11日(金)) 【詳細】 https://sites.google.com/view/jsirac/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0 【お申し込み】 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdllJswZcKL_mWWp9fCxCB7Io0jaEPFlx2tdwUkxvoxNi3iGw/viewform 【お問い合わせ】 国際リハビリテーション研究会事務局 jsir.office@int-rehabil.jp 2. 「インクルーシブ社会を目指して 〜ソーシャルインクルージョンとSDGsのまちづくり〜」 2022年11月16日(水) 新型コロナウイルス感染者への偏見や差別、児童虐待、引きこもり、子どもの貧困、8050 問題など、さまざまな社会的な課題が顕在化しています。これらの背景には著しい孤立や排除が根付いており、インクルーシブ社会の実現がより一層求められています。ソーシャルインクルージョンとSDGsのまちづくりをキーワードに、各団体の取り組みを通じて、インクルーシブ社会について一緒に考えていきます。 記念講演に東京都知事の小池 百合子氏が、基調報告に日本障害者リハビリテーション協会の炭谷 茂会長が登壇されます。 日時:令和4年11月16日(水)13:30 〜16:30 場所:ザ・プリンス パークタワー東京(コンベンションホール) (東京都港区芝公園 4-8-1:都営地下鉄大江戸線 赤羽橋駅から徒歩2分、都営地下鉄三田線 芝公園駅から徒歩3分) 参加費:無料 ◎事前予約制・先着順:受付締切 11月6日(日) (定員 200 名、定員となりましたら締切とさせていただきます) 主催:社会福祉法人 恩賜財団済生会 【お申込み・お問い合わせ】 事業部 総合戦略課 Tel.03-3454-3076 Mail.si_symposium@saiseikai.or.jp      編集後記 秋の訪れ、深まりは鼻で感じられる気がします。 近所を歩いているときにどこからともなく流れてくる金木犀の香り。 どこかのお宅で秋刀魚を焼いている匂い。 栗ご飯や松茸ご飯も、秋の香りの代表ですね。 特定のスーパーでは店頭で焼き芋を売っていたりしますし、コンビニのレジの近くでおでんの香りがすると、秋を感じてしまったりします。 銀杏並木ではギンナンの香り。これは踏んでしまうと、強烈な匂いだったりしますね。 大小さまざまなタスクに追われる日々ですが、(状況が許すならば)マスクを外し、秋の香りを探してみるのも、良きことかなと思ったりします。 今号も最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。 (伊藤 丈人/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/