JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第226号 7月号 2022年7月29日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 日本理学療法士協会のとりのこさない取組み 公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 〜会員団体の活動報告〜 2. コロナでも続けられた国際交流 ベルギーの精神医療改革を学ぶ きょうされん 佐藤 ふき 3. レバノンの障害者事情 名古屋学院大学 国際文化学部 教授 長田 こずえ インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 「リハ協カフェ」2周年記念シンポジウム【第1弾】 2022年8月26日(金) 2. 令和4年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業 「デイジー教科書・図書の最新利用方法の報告会」 2022年8月5日(金) トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 日本理学療法士協会のとりのこさない取組み 公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 公益社団法人 日本理学療法士協会(JPTA: Japanese Physical Therapy Association)は1966年に設立し、13万人以上の理学療法士会員で構成される国民の医療・保健・福祉の増進に寄与することを目的とした公益社団法人です。事業としては、健康と福祉の増進、障害と疾病の予防などとともに、国際協力や貢献に資する事業も実施しています。 とりのこさない取り組みに関連するものとしては、学校保健、特別支援学級での理学療法士のインクルーシブ教育推進にむけた取り組み、放課後デイサービスなどでの、障害児・者受け入れ促進、ハローワークにおける精神障がい者雇用トータルサポーター、発達障がい者雇用トータルサポーターなどでの就労支援の促進などがあります。訪問リハビリテーションでの理学療法士など配置の確保、地域での介護予防、サロンでの活動なども大切なインクルーシブの取り組みと言えます。 これまで様々な関係組織との連携、協力、協働をさせていただきながら国際的な事業を行ってきました。いくつか紹介しますと健康・医療戦略に基づくアジア健康構想、日ASEANスマートシティネットワーク、世界理学療法連盟(World Physiotherapy)、アジア理学療法士連盟(ACPT: Asian Confederation for Physical Therapy)、そしてアジアの国々の理学療法士協会と協力した本会独自の事業などがあります。多くの事業では様々なレベルにおいて、障がいのある人、その家族、理学療法士やリハビリテーションに関連する健康専門職などの人材育成に関連する活動を行っています。 障害分野NGO連絡会(JANNET: Japan NGO Network on Disabilities) では、同会の研究研修事業や広報啓発事業を通じ、グローバルフェスタでの点字・手話に興味をもっていただく諸活動、JANICでは研修会や勉強会の参加、みんなのSDGsではWebinarの企画支援などに参画させていただきました。また過去には、2015年に東京で開催された第3回アジア太平洋Community-Based Rehabilitation (CBR)会議の運営支援、ウランバートルで開催された第4回会議への参加など大変貴重な経験をさせていただきました。障がいを持つ人も持たない人も、すこやかでインクルーシブな社会生活を送れることを目指したかかわりにおいて、多くの人と人がつながる大変貴重な経験をいたしました。2020年からはみんなのSDGsをつうじて、経済界、医療界ふくむ広く他分野の方々との協働や、2022年には全日本ろうあ連盟さまの大会にも参加させていただき、パートナーシップワーキングの必要性を痛感したところです。 グローバリゼーションが進展する世の中において、これからも国内外での国際事業を企画・実行、連携・協働しながら、インクルーシブ社会を支え、推進する一員として活動してまいります。   〜会員団体の活動報告〜  2. コロナでも続けられた国際交流 ベルギーの精神医療改革を学ぶ      きょうされん 佐藤 ふき 2020年の年明けから新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がり、日本を飛び出して交流を続けてきた国際活動を今後どうしていけばいいのか…、いったん立ち止まざるを得ませんでした。その中で、(今では特別なことではなくなった)Zoomを使っての試行錯誤の国際交流がはじまりました。2020年度は、時差の少ないアジアの香港・タイと、そして2021年度はドイツ・ベルギーとの交流をすすめてきました。ここではベルギーとの交流を紹介します。 世界の2割の精神科病床が日本にあり、日本の病床の2割が精神科病床だと言われています。治療の必要は無いのに地域に暮らせる場やしくみがなく、「社会的入院」を継続せざるを得ないという人権侵害が日本では未だに続いています。一般病棟よりも医師は3分の1、看護師3分の2でよいとする「精神科特例」も実態として残っています。 日本同様に精神科病院の85%が民間立だったというベルギーで、どうやって病床を減らし精神障害のある人が地域で暮らせるシステムを作り上げてきたのかを学びたいと、きょうされん精神障害部会も一緒に実行委員会を立ち上げて企画を作ってきました。 コロナ前の2019年11月には、ベルギー保健省からベルナルド・ジェイコブさん(精神医療改革プロジェクトマネージャー・全国コーディネーター)を招聘しました。「共同創造の精神科医療改革 なぜベルギーは変わったのか? なぜ日本は変わらないのか?」と題し、政府主導で精神病床を減らし地域移行をすすめてきた改革の話を、大きな驚きをもって聞きました。 しかし、この改革で障害のある人やその家族の生活は実際にどう変わったのか?それとも変わらなかったのか?それらを確かめるべく、2022年度に2つのオンラインフォーラムを企画しました。1回目にはベルギーと日本から障害のある人を、2回目は両国から障害のある人の家族を招聘しました。 開催にあたっては、各フォーラムの前に2回ずつの事前うちあわせをもつなど、Zoomをフル活用することができました。7月末にはその報告書が完成します。 ベルギーでは政府主導で精神医療改革がすすめられてきたこと、精神科病院は退院を躊躇するぐらい居心地がいいこと、病床を削減し精神障害のある人を地域で支えるモバイルチームが支援の中心になっていること、ピアワーカーが地域でも病院でも活躍していること、当事者が参加していない団体の会議は信用にかかわること、などなど目から鱗が落ちるような様々な話を聞くことができました。改めて日本の精神医療改革にむけてあきらめず尽力したいという声が、アンケートからもたくさん聞こえてきました。 オンラインであっても志を同じくする人たちと心通う交流ができること、遠く離れていても事前うちあわせなどていねいな準備ができること、コロナ禍の制約の多い中でもたくさんの発見と喜びがありました。コロナの感染が終息し、実際に会える日を楽しみに、日本でできることを続けていきたいと思います。   3.レバノンの障害者事情 名古屋学院大学 国際文化学部 教授 長田 こずえ ※去る2022年6月23日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第12回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 レバノンは、昔は金融と観光などのサービス業の中東の中心地であり、教育レベルの高い、英語とフランス語を駆使する優れたグローバル人材を誇る、小粒ながら経済的には比較的豊かな恵まれた山国でした。美しい、欧米的な観光大国でもありました。レバノンの人口は約680万人(2020年)ですが、そのうち4人に1人はシリアやパレスチナからの難民です。多くのレバノン人は欧米に移民して暮らしています。キリスト教住民は4割と公式には言われていますが、実態は、イスラム教シーア派3割、イスラム教スンニー派3割、キリスト教3〜4割くらいの割合で3つが共存している多文化共生社会です。内戦、シリアの影響と難民流入、政府のガバナンス麻痺の問題、経済崩壊とレバノンポンドの下落など、経済社会問題を抱えており、2020年春、筆者がベイルートを訪れたときには、以前は「中東のパリ」と呼ばれていたベイルートの面影は私の目にもかなり色あせていました。ここ10年の間に目覚ましい繁栄を遂げたドバイ、アンマンなどと比較すると魅力がなく、中東のパリのイメージには程遠いものでした。しかし、レバノンの民主主義的な市民社会の力強さはしぶとく生き延びています。民主主義が規制されている湾岸諸国などとは雰囲気が違い、自由で欧米的な小国である。障害者の当事者団体も活発で、車いすデモや政治活動は頻繁に行われ、無気力なレバノン政府とは反対に市民社会の強さを見せつけられました。 * 内戦、テロ、戦争と戦争障害者の課題‐特に、レバノン、シリア、パレスチナ、イラクなど。戦争障害者は身体障害だけではなく、トラウマや精神障害も含む * 上記と並行した難民、貧困、障害のサイクル‐貧富の差を含む貧困課題。レバノンのような貧困国においては、障害課題は優先順位が低い。豊かな湾岸諸国以外においては、障害の原因としての貧困と栄養失調など、開発課題のチャレンジ * 障害とジェンダーの問題‐特に母子や障害を持った女性に対する偏見や差別の問題。障害者女性に対するセクハラや嫌がらせ、暴力などを含む。戦争障害者となった中途障害の若い男性が愛国者、英雄としてもてはやされるのに対して、女性障害者や先天的障害者の優先度は低く片隅に追いやられている * バリアーの問題‐バリアフリー/ユニバーサルデザインやインフラの不備、差別など社会的バリアー、法的バリアー、手話や点字など情報のバリアーなど、あらゆるバリアーの総合的アクセス課題 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報    (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html)    署名国・地域数164/ 締約国・地域数 185 (2022年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.「リハ協カフェ」2周年記念シンポジウム【第1弾】 2022年8月26日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、コロナ禍における海外の障害関連の報告会として、2020年8月より隔月で、オンラインによる「リハ協カフェ」を開催してまいりました。 開催から2周年を迎え、国際協力の次世代育成を踏まえたシンポジウムを障害分野NGO連絡会(JANNET)とともに企画いたしました。 現在、障害分野での国際交流の最前線で活動されている方々から、活動に至るいきさつやきっかけなど、その人の生きざまをお話しいただくことで、障害分野および国際協力に関心を持つ若い世代が、今後の障害分野における国際協力に、積極的に参加していくことの一助となることを願って実施いたします。 第1弾は、ラオスで駐在されている峯島昂佑さま(難民を助ける会[AAR Japan])と、アジアの視覚障害者と繋がられている田畑美智子さま(日本視覚障害者団体連合)からお話しをお伺いいたします。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。     日時:2022年8月26日(金)13:00〜14:35(予定) 会場:オンライン配信(zoom)・アーカイブ視聴(YouTube)9/1(木)〜9/16(金) 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 共催:障害分野NGO連絡会(JANNET) 対象:高校生・大学生・一般(国際交流や障害分野に興味のある方なら、どなたでも。) 料金:学生・リハ協会員・JANNET会員 無料(寄付は受け付けております。) 一般 1,500円(資料代として。このうち500円は、日本障害者リハビリテーション協会から障害分野NGO連絡会(JANNET)を通じて、ウクライナへの支援活動をしている団体へ寄付させていただきます。) 定員:100名 ※情報保障あり 【プログラム】 13:00-13:03 開会挨拶 松井 亮輔((公財)日本障害者リハビリテーション協会 副会長) 13:03-13:23 パネルディスカッション第1幕 テーマ「なぜこの国なの?なぜ障害分野なの?」 パネリスト 峯島 昂佑さま(難民を助ける会[AAR Japan])・田畑 美智子さま(日本視覚障害者団体連合) 13:23-13:43 なんでも聞いてみよう 〜質問コーナー〜 13:43-14:03 パネルディスカッション第2幕 テーマ「教えて!アジアの障害分野〜各国の課題〜」 14:03-14:23 なんでも聞いてみよう 〜質問コーナー〜 14:23-14:29 パネリストの皆様から皆さんへメッセージ 14:29-14:35 閉会挨拶 清水 直治(障害分野NGO連絡会(JANNET)会長) 14:35 閉会 ※進行  伊藤智典さま(日本理学療法士協会 事業部国際事業課課長)・清水香子さま(アジア保健研修所 職員) *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。    【申込方法】 以下のサイトにてお申し込みください。入金方法もこちらに記載しております。 URL: https://forms.gle/Nma6AUiWD3UaM3fPA 申込受付:2022年8月25日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、8月18日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。      【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 2.  令和4年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業   「デイジー教科書・図書の最新利用方法の報告会」 2022年8月5日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会は、平成20年度からボランティア団体等と協力して小中学校の発達障害など読みの困難がある児童生徒にデイジー教科書を製作・提供を行っています。当初80名だった利用者は、昨年度は約1万5千人を超えて急速に普及しつつありますが、普及率は6%程度に留まっています。 その中で、一昨年に文科省のGIGAスクール構想で一人一台の学習者用端末が実現しました。このICT環境を活用したデイジー教科書の再生システムを本協会で開発しました。端末のブラウザーだけでデイジー教科書の再生が可能になります。昨年度は教育委員会向けに限定しておりましが、今年度からは一般に公開し、どなたでも利用可能です。この新システムの申し込み方法・利用方法をわかりやすくご紹介します。 また、本協会におけるデイジー教科書以外の読み物、副読本等への取り組み等についてもご報告いたしますので、ご参加をお待ち申し上げております。 開催日時:2022年8月5日 (金) 13:30〜15:00 会場:オンライン開催(Zoomウェビナー)※参加登録された方には、ZoomのURLをお送りいたします。 参加費:無料 定員:300名 申込締切:2022年8月1日(月) 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報保障:希望に応じて要約筆記・手話通訳をご用意します。 申込先・お問い合わせ:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 情報センター TEL:03-5273-0796 / FAX:03-5273-0615 / e-mail: daisy_c@dinf.ne.jp 申込URL:https://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/20220805.html    【プログラム】 *内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 13:30 開会挨拶 君島 淳二(日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:10 デイジー教科書の利用申請状況報告、ブラウザー再生システム紹介 西澤 達夫(日本障害者リハビリテーション協会 参与) 14:10-14:20 今後のデイジー図書への取り組み「社会科副読本等のデイジー化のご案内」 村上 博行(日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長) 14:20-14:40 デイジー子どもゆめ文庫(児童書)のご紹介 山田 稔子(日本障害者リハビリテーション協会 情報センター) 14:40-15:00 質疑応答 15:00 閉会 司会:仁尾 志保(日本障害者リハビリテーション協会) 編集後記 今回は日本理学療法士協会(J P T A)の伊藤様より、J P T Aのとりのこさない取り組みであるインクルーシブ教育推進や世界やアジアでの健康と絡めた人材育成の事業、またJ A N N E Tでも、アジア太平洋C B R会議の参加など伊藤さん自身が身をもって、人と人とのつながりの大切さを立証されています。 また、きょうされんの佐藤様からは、ベルギーでの精神科医療の改革から障害のある人の生活について、オンラインフォーラムを開催されてもっと詳しく伺いたくなるご報告で興味が沸きました。 6月のリハ協カフェで長田様からのご報告は、戦争障がい、貧困、障害を持った女性の差別、目を背けたくなるような現実の中でレバノンの人々が強く生きている姿が思い浮かびました。 8月26日の「リハ協カフェ」2周年記念シンポジウム、楽しみにしています。 (西本 敦子/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上