JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第224号 5月号 2022年5月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 私たちが進める“ろうあ運動”について 一般財団法人 全日本ろうあ連盟 理事 嶋本 恭規 〜会員団体の活動報告〜 2. 知的障害・発達障害の当事者を中心とした協働のプラットホームとして 公益社団法人 日本発達障害連盟 顧問/明治学院大学 名誉教授 金子 健 3. 我が国のバリアフリー環境整備における当事者参加の現状と課題 日本女子大学 家政学部 住居学科 教授 佐藤 克志 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第12回「リハ協カフェ」 2022年6月23日(木) トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. 私たちが進める“ろうあ運動”について 一般財団法人 全日本ろうあ連盟 理事 嶋本 恭規   一般財団法人全日本ろうあ連盟(以下、連盟)は、47都道府県の加盟団体から成る全国組織であり、ろうあ者の人権を守り差別をなくす“ろうあ運動”を進めています。 戦後、差別が横行し、人権も認めてもらえなかった時代に、ろうあの有志たちが全国から1947年に群馬県伊香保温泉に集い、全国組織を結成しました。結成してから今年で75年を迎えます。この長い歴史の中で差別へのたたかいがいくつもありました。 1973年には、“条件付き”でろうあ者が運転免許を取得する事ができるようになり、また1979年には、当時の民法第11条にある準禁治産者から“聾者、?者、盲者”が削除され、ろうあ者も生活のために自動四輪車や二輪車を購入し、住宅ローンを借りてマイホーム購入が実現されるようになり、ろうあ者の生活の質が向上できるようになりました。さらに社会においてろう者ときこえる人が共存し共栄していくために、手話言語通訳者の養成に力を入れてきました。 現在、大きな話題となっている1948(昭和23)年から1996(平成8)年まで存在した旧優生保護法により、不良な子孫の出生を阻止し母体を保護すると言う理由で、強制不妊手術、中絶させられた仲間がたくさんいます。全国で厳しい裁判でのたたかいを強いられていますが、大阪や東京の高等裁判所では勝訴しました。しかし、国は高裁判決を不服として上告しました。私たちのたたかいはまだ終わっていません。今でも音声言語で話すことができない者を優生思想により能力、人として劣ると言った差別がまだあります。 2006年に国連が採択した障害者権利条約に手話は言語である事が定められています。この障害者権利条約に手話が言語であることを定めた経緯を説明します。2003年、ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)において、世界ろう連盟理事である高田英一氏が「言語」には音声言語と手話が含まれている事を提案しました。その結果、バンコク草案に盛り込まれました。このバンコク草案が国連での審議に反映された結果、障害者権利条約に「手話は言語である事」が明記されるようになりました。障害者権利条約の採択後、日本でも障害者基本法の言語に手話を含むと明記され、政府に手話言語法の制定を求める運動を行いました。 国連は2015年にSDGs(持続可能な開発目標)を採択しました。テーマが17あり、「誰一人取り残さない」というスローガンを掲げています。 今、連盟は2025年に向けて大きな挑戦をしています。それはきこえない人のためのオリンピックであるデフリンピックを日本で開催する事です。きこえない人のスポーツを盛りあげていくだけでなく、SDGsの取り組みの一環として、インクルーシブな社会に変えていく事です。まずはデフリンピックの存在を知ってもらい、それからきこえない人の事を知ってもらう、そして手話言語も知ってもらう、さらにきこえる人もきこえない人も共存共栄できる社会を共に作り上げていく、これらを理念として運動を推進しています。       〜会員団体の活動報告〜 2.知的障害・発達障害の当事者を中心とした協働のプラットホームとして      公益社団法人 日本発達障害連盟 顧問/明治学院大学 名誉教授 金子 健 公益社団法人日本発達障害連盟の前身である精神薄弱者福祉連盟は、1974年に発足しました。前年にフィリピンのマニラで開かれた第1回アジア知的障害会議に参加した日本の4団体が集まって、第2回のこの会議を東京で開催するために、一つの組織を作り上げたのです。それが今の構成団体である、全国の知的障害児・者施設をまとめている公益財団法人知的障害者福祉協会、学校関係者の全日本特別支援教育研究連盟、親の会の全国組織である全国手をつなぐ育成会連合会、そして研究者の団体である日本発達障害学会の4団体です。すなわち知的障害をはじめとする発達障害に関わる福祉、教育、医療など様々な立場の人々が連携・協力するプラットホームとして設立されたのです。 14の会員国(地域)持ち回りで隔年に開催されるこのアジア会議は、アジア各国に加え、欧米やユネスコからの参加もあり、第2回(1975年)を東京で、第16回(2003年)をつくば市で開催しました。この会議では、行政官や研究者の発表に並んで、障害当事者の体験発表や交流が行われるのが大きな特徴です。かつてはこの障害に関しては、専門家や支援者が前面に立つのが常でしたが、「nothing about us without us」という国連障害者権利条約の基本理念を反映して、当事者主体でインクルージョンを目指すようになってきました。 「誰も取り残さない」との理念もこの会議で熱く語られてきましたが、会議場を一歩出ると、道路には車がひしめき我先にとクラクションを鳴らしているという現実に接し、地域社会の意識改革が重要な課題であるとの認識を新たにしたものです。 昨年11月の第25回大会はフィリピン知的障害者協会の主催でしたが、COVID-19 のためにオンライン開催となりました。「Transforming Schools and Communities for Inclusion」をテーマに、各国の取り組みや研究の発表、シンポジウム、子どもたちのパフォーマンスが3日間にわたり、約1,000人が海を越えてオンラインでつながり実施されました。 国内では、構成団体の幅広い組織を生かして、政策提言や、「自閉症の療育」「子育て支援」「発達障害医学」に関するセミナーなどに取り組んできました。コロナの状況の中でオンライン実施が増えて、遠方からの参加が可能になった一方で、ケース相談や実技など実践的な内容が難しくなっています。ハイブリッドをどう効果的に取り入れていくかが課題です。 昨年12月の内閣府主催の障害者週間連続セミナーでは、その一コマを担当して、災害時のBCP(事業継続計画)などについて情報交換と協議を行いました。 これからも当事者の声を大切にしながら、共生社会の実現に向けて国内外の様々な人々と連携して取り組みを進めていきます。 3.我が国のバリアフリー環境整備における当事者参加の現状と課題 日本女子大学 家政学部 住居学科 教授 佐藤 克志 ※去る2022年4月22日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第11回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 国際委員会主催の「リハ協カフェ」への話題提供ということでしたが、ここ数年は国際活動ができていませんでしたので、日本のバリアフリー・ユニバーサルデザイン環境整備について当事者参加の視点からの話しをさせて頂きました。私のこれまでの国際活動、主にJICA短期専門家としてのミッションは「バリアフリー環境整備に関して我が国の状況を伝える」ことでしたので、その元ネタの話しをしたことになります。 当日は、「日本のバリアフリー環境推進の政策的枠組み」「バリアフリー基本構想策定/改定の際の当事者参加の事例」「施設整備における当事者参加の事例(国立競技場、成田空港、地方自治体による公共施設整備)」について紹介し、最後に紹介事例に関わった経験から「施設整備における当事者参加の課題」についての私見を述べさせてもらいました。 我が国のバリアフリー・ユニバーサルデザインの物的環境整備は世界的に見てもトップレベルにあると思っていますが、今なお多くの障害者からは、ユニバーサルデザインの推進が不十分であるとの指摘が強いことも事実です。その理由としては@制度や事業、プロジェクト等の計画・設計から運用/使用の各段階における当事者参加が希薄、A指摘意見等が反映されない、B過去の経験が継承されていない、等があると思っています。 その課題解決のために、大規模プロジェクトではバリアフリー・ユニバーサルデザインを重要案件として位置づけ、設計から施工・運用までのプロセス全体に渡り当事者参加型で進めることを条件とすること、そのための時間的、予算的措置を講じることが重要になります。但し、その方法を一般の公共施設で実践するのは、時間的・人的資源から見て難しいとも思っています。過去の参加型プロジェクトでの実績を「設計参考情報/教訓集」として共有することが、当事者参加型で進められた大規模プロジェクトの経験継承となり、同じ間違い、同じ議論を繰り返さない「スパイラルアップ」が実践できると強く思っています。 いずれにしましても、計画・設計段階からの障害当事者のプロセス参加は施設整備者と対等な立場で議論できる格好の機会です。それを有意義なものとするために参加者は図面資料を読み、問題指摘ができる素養が求められます。それによって施設管理者、整備者との間に信頼関係ができ、また新たな機会創出につながります。「参加」が目的化してしまうことは避けなければならないと考えています。 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 185 (2022年5月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第12回「リハ協カフェ」 2022年6月23日(木) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、海外からの訪問者の報告会等を実施しておりましたが、新型コロナウイルスの影響で、いまだに海外関連の報告会の実施は難しい状況にあります。そのため、「リハ協カフェ」として、リモートによる報告会を企画し、2020年8月より隔月で開催してまいりました。今回は、第12回目の開催です。 第12回は、長田 こずえ先生(名古屋学院大学 国際文化学部 教授)より「中東の経済破綻国レバノンに暮らす障害を持つ人々のパワー 2020年春のフィールド調査より」、木村伸也先生(愛知医科大学 名誉教授、同 看護学部非常勤講師)より「医療リハビリテーションから連携を考える」についてご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。     日時:2022年6月23日(木)13:30〜15:15 場所:リモート開催(Zoom) 参加費:無料 ※情報保障あり 【プログラム】 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1 「中東の経済破綻国レバノンに暮らす障害を持つ人々のパワー 2020年春のフィールド調査より」 発表者:長田 こずえ先生 (名古屋学院大学 国際文化学部 教授) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2 「医療リハビリテーションから連携を考える」 発表者:木村 伸也先生 (愛知医科大学 名誉教授、同 看護学部非常勤講師) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。    【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 URL: https://www.jsrpd.jp/cafe12/ 申込受付:6月22日(水)15:00まで ※情報保障が必要な方は、6月16日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。      【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 本年2月号以降の「トピックス」では、「会員団体の活動報告」として、コロナ下の活動実態等についてご紹介いただいております。 今世の中では、社会経済活動の活性化が目指され、感染対策をしながらもいかに日常を取り戻すかが問われています。 そんな中、第24回夏季デフリンピックに出場中の日本選手団で感染者が相次ぎ、「感染源は各競技会場の可能性もある」との判断から、退会途中で全選手の出場を取りやめたというニュースが飛び込んできました。 https://www.jfd.or.jp/sc/brazil2021/ 「私たちはまだコロナ下を生きているのだ」という厳然とした事実を突きつけられる思いです。 選手の皆さんのお気持ちを考えると、本当に残念でなりません。 「トピックス」で全日本ろうあ連盟の嶋本理事が言及されている日本でのデフリンピック開催が実現され、選手の皆さんが思う存分躍動されることを願わずにはいられません。 今月も最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。 (伊藤 丈人/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上