JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第221号 2月号 2022年2月28日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. コロナ下での視覚障害者の組織活動の紹介 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 伊藤 丈人 2. 第9回「リハ協カフェ」に参加して 目白大学 保健医療学部作業療法学科 助教 廣瀬 里穂 3. レバノンの障害者事情 名古屋学院大学 国際文化学部 教授 長田 こずえ インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第11回「リハ協カフェ」 2022年4月22日(金) トピックス 〜会員団体の活動報告〜 1. コロナ下での視覚障害者の組織活動の紹介 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 伊藤 丈人   コロナ感染拡大以降、視覚障害者は他の皆さんと同じように、またその障害特性上特殊な部分を含んだ、厳しさを感じることとなりました。「3密回避」は、触れることや直接的対話を大切にしてきた視覚障害者にとって、重い課題として伸し掛かってきます。 そんな視覚障害者の組織活動も、オンライン開催を中心としたものにシフトしていきました。ウェブ会議システムの導入については、高齢者を中心にパソコンもスマホも使えないという人たちからの反発もありました。そこでイベント開催時には、事前にテストアクセスの機会を設けるなどの工夫が必要でした。 それでも、オンラインのメリットも広く認識されるようになってきました。全国どこにいても参加できることは、移動に伴うコストの軽減に繋がりました。移動弱者としての視覚障害者にとって、これは大きなメリットです。 オンライン開催の好事例として、日本盲人福祉委員会※主催で、昨年9月24日、25日の両日実施されたWBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)の第15回マッサージセミナーについてご紹介します。 同セミナーは、アジア太平洋地域のマッサージ関係者が一堂に会する2年に1度の祭典です。 これまでは、手と手を触れあいながら行う技術交流を重視しており、オンライン開催には異論もあったとのことです。結果としては、2日間で17ヵ国・地域から延べ688人が集い、10のカントリーレポート、15の研究発表等が行われ、大きな成果を残すことができました。 各国において集合視聴をしたため、通常より多くの人が視聴できた、盲学校の授業で生徒たちが最新情報に触れることができた、という嬉しい報告が寄せられたとのことです。 セミナー開催にご尽力くださった日本盲人福祉委員会をはじめとする方々に、心より感謝を申し上げたいと思います。このように、オンライン開催の可能性を感じつつ、ポストコロナのあり方を模索しているというのが、視覚障害者の組織活動の現在地なのかもしれません。 ※日本盲人福祉委員会:日本視覚障害者団体連合等の視覚障害関連組織で構成され、WBUに日本代表として参加しています。国際交流、被災地支援等の分野で大きな成果を残しています。   2. 第9回「リハ協カフェ」に参加して      目白大学 保健医療学部作業療法学科 助教 廣瀬 里穂 ※去る2021年12月24日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第9回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 2021年12月24日(金)開催の第9回「リハ協カフェ」に発表者として参加しました。第24回Rehabilitation International世界会議(2021年9月7日〜9日)がデンマークで現地とオンラインのハイブリットで開催され、そこで報告した内容を改めて発表させて頂く機会を得ました。 例年は開催地で様々な国の専門職や当事者の方と交流ができ、また現地の施設見学ツアーが開催される予定でしたが、今回は残念ながら開催地に行くことが叶いませんでした。 リハ協カフェ当日は、長野保健医療大学特任教授、北村弥生先生の「自治体における障害者手帳所持者を対象にした調査結果〜生活のしづらさ等に関する調査のプレ調査として〜」、筆者は「生活環境を多職種で共有した自宅復帰の支援〜急性期病院でクライアントの活動と環境に焦点をあてて〜」を発表しました。 RI世界会議では、事例から多職種連携において作業療法士に求められている役割を中心に発表しましたが、3分間のポスターでは話すことのできなかった、筆者所属の大学におけるチーム医療の実践と臨床実習を経験した学生の多職種連携の認識に関する調査を加えて発表させて頂きました。 北村先生の発表では、障害者の防災の意識を高めるために、また障害を抱え自宅復帰した患者に対し、リハビリテーション専門職はその後の生活を考え、避難方法や防災について確認する必要性があると感じ、新たな視点を頂きとても勉強になる内容でした。 当日、参加者の皆さんからご意見や質問、感想を頂き、もっと視点を広げていかなければ行けないと感じ、とても良い経験をすることが出来ました。このような貴重な発表の機会を頂き、心より感謝申し上げます。依然としてCOVID-19の影響がありますが、引き続き、カンファレンスが開催できること、また海外の医療職や研究者と交流できる機会があること願っております。次回こそは、開催地で発表できるよう、研究を続けていきたいと思います。 3. レバノンの障害者事情 名古屋学院大学 国際文化学部 教授 長田 こずえ レバノンは、昔は金融と観光などのサービス業の中東の中心地であり、教育レベルの高い、英語とフランス語を駆使する優れたグローバル人材を誇る、小粒ながら経済的には比較的豊かな恵まれた山国であり、また美しい、欧米的な観光大国でもありました。 レバノンの人口は約680万人(2020年)ですが、そのうち4人に1人はシリアやパレスチナからの難民です。多くのレバノン人は欧米に移民して暮らしています。キリスト教住民は4割と公式には言われていますが、実態は、イスラム教シーア派3割、イスラム教スンニー派3割、キリスト教3〜4割くらいの割合で3つが共存している多文化共生社会です。 内戦、シリアの影響と難民流入、政府のガバナンス麻痺の問題、経済崩壊とレバノンポンドの下落など、経済社会問題を抱えており、2020年春、筆者がベイルートを訪れたときには、以前は「中東のパリ」と呼ばれていたベイルートの面影は私の目にもかなり色あせていました。レバノンの銀座ストリートといわれたハムラ地域はアラブの一般的な低所得国の街のイメージで、ここ10年の間に目覚ましい繁栄を遂げたドバイ、アンマンなどと比較すると魅力がなく、中東のパリのイメージは程遠いものでした。 しかし、レバノンの民主主義的な市民社会の力強さはしぶとく生き延びています。民主主義が規制されている湾岸諸国などとは雰囲気が違い、自由で欧米的な小国であります。障害者の当事者団体も活発で、車いすデモや政治活動は頻繁に行われ、無気力なレバノン政府とは反対に市民社会の強さを見せつけられました。  ●内戦、テロ、戦争と戦争障害者の課題―特に、レバノン、シリア、パレスチナ、イラクなど。戦争障害者は身体障害だけではなく、トラウマや精神障害も含む。 ●上記と並行した難民、貧困、障害のサイクル―貧富の差を含む貧困課題。レバノンのような貧困国においては、障害課題は優先順位が低い。豊かな湾岸諸国以外においては、障害の原因としての貧困と栄養失調など、開発課題のチャレンジ。 ●障害とジェンダーの問題―特に母子や障害を持った女性に対する偏見や差別の問題。障害者女性に対するセクハラや嫌がらせ、暴力などを含む。戦争障害者となった中途障害の若い男性が愛国者、英雄としてもてはやされるのに対して、女性障害者や先天的障害者の優先度は低く片隅に追いやられている。 ●バリアーの問題―バリアフリー/ユニバーサルデザインやインフラの不備、差別など社会的バリアー、法的バリアー、手話や点字など情報のバリアーなど、あらゆるバリアーの総合的アクセス課題。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 184 (2022年2月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第11回「リハ協カフェ」 2022年4月22日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、海外からの訪問者の報告会等を実施しておりましたが、新型コロナウイルスの影響で、いまだに海外関連の報告会の実施は難しい状況にあります。そのため、「リハ協カフェ」として、リモートによる報告会を企画し、2020年8月より隔月で開催してまいりました。今回は、第11回目の開催です。 第11回は、佐藤 克志先生(日本女子大学 家政学部 住居学科 教授)より「我が国のバリアフリー環境整備における当事者参加の現状と課題」、林 早苗氏(公益財団法人 笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ 研究員)より「地域におけるケア:ベトナムと韓国の取組」についてご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。     日時:2022年4月22日(金)13:30〜15:15 場所:リモート開催(Zoom) 参加費:無料 ※情報保障あり 【プログラム】 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1 「我が国のバリアフリー環境整備における当事者参加の現状と課題」 発表者:佐藤 克志先生(日本女子大学 家政学部 住居学科 教授) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2 「地域におけるケア:ベトナムと韓国の取組」 発表者:林 早苗氏(公益財団法人 笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ 研究員) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 URL: https://www.jsrpd.jp/cafe11/ 申込受付:4月21日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、4月15日(金)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 今月号も読み応えのある記事でした。 日本視覚障害者団体連合の伊藤様は、コロナ渦でW B U A Pのオンライン開催に参加され、人との触れ合いや直接の対話が難しい中、国内外でのご活動に前向きに取り組まれ大変興味深く感じました。 また、目白大学の廣瀬様からR I世界会議のご報告など、国内の急性期病院におけるクライエントの自宅復帰を他職種で支援するあり方について、同じ作業療法士としてクライエントの希望にどのように応えたら良いか、チーム医療について改めて考えました。 名古屋学院大学の長田様からはレバノンに直接行かれての現地の様子や障害者団体の活動について貴重なご報告でした。 皆様とまた直接対話できる日が待ち遠しいです。 (西本 敦子/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/