JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第220号 1月号 2022年1月31日発行 ―目 次―  トピックス 1. 新たな5年へ 〜JANNET中期計画開始のお知らせ〜 特定非営利活動法人 難民を助ける会[AAR Japan]支援事業部マネージャー/ JANNET次期中期計画策定委員会 委員長 野際 紗綾子 2. 障害者手帳の等級と国連国際統計ワシントン・グループの短い質問群との関係 長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生 3. 「発達障害児向けデジタル図書製作による在宅重度障害者の社会参加を支援するシンポジウム」開催 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与 寺島 彰 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. JANNET研究会「とりのこさないカフェ」―さまざまな「とりのこさない」活動― 2022年2月19日(土) 2.第10回「リハ協カフェ」 2022年2月25日(金) トピックス 1. 新たな5年へ 〜JANNET中期計画開始のお知らせ〜 特定非営利活動法人 難民を助ける会[AAR Japan]支援事業部マネージャー/ JANNET次期中期計画策定委員会 委員長 野際 紗綾子   2022年1月。今、私たちはどこにいて、これからどこを目指していくのでしょうか。 1981年を国連が国際障害者年と定めてから40年が過ぎ、2006年に障害者権利条約が採択されてから15年が過ぎました。 アジア太平洋地域では、2013年から2022年までの政策ガイドラインとなる(アジア太平洋地域における障害者の権利を実現させるための)インチョン戦略が最終年を迎えました。 「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を誓っている持続可能な開発目標(SDGs)の目標年(2030年)も、じわじわと近づいてきています。 そうした大きな流れの中で、JANNETでは、一昨年より中期計画策定委員会を立ち上げ協議を進めてまいりましたが、このたび2021年から2025年までの中期計画が施行されることとなりました。 同計画の理念「障害がある人も誰も取り残さないインクルーシブな社会の実現に寄与する」は、JANNETの規約第2条の理念「障害者を取り残さない」を受け継いでいます。 また「2025年までに、日本の民間団体による障害分野の国際協力を一層推進させる」ことを目標とし、同目標を達成する上での5年間のJANNETの活動の方向性や成果が記載されています。 成果は全部で3つあります。 1.日本の民間団体による海外での障害分野の事業が増える 2.障害分野についての理解が進み、障害分野における国際協力を推進する環境が整備される 3.JANNETの組織としての力が強化される これらの成果や指標に関連する20の活動には、勉強会・研究会や関連団体間の意見交換会の開催も含まれ、詳細は最後に転載いたします。 一つひとつの活動は、JANNETの加盟団体や個人の皆さまとともに、企画委員会、研修研究委員会、広報啓発委員会のいずれかが企画、運営する予定です。 各委員会から会員の皆様にご意見をお聞きし、ご参加を呼び掛けていくと思いますので、ご協力いただけましたら幸いです。そして、「障害がある人も誰も取り残さないインクルーシブな社会」を、一緒に実現していくことができましたら、とても心強く、ありがたく思っています。   【JANNET中期計画(2021-2025)】 理念:障害がある人も誰も取り残さないインクルーシブ社会の実現に寄与する 目標:2025年までに、日本の民間団体による障害分野の国際協力を一層推進させる 成果1.日本の民間団体による海外での障害分野の事業が増える 指標 ・障害分野で事業実績のない団体・個人が障害分野に関心を持つ ・障害がある人を取り残さない方針が明記される事業が増加する ・障害分野に関連する活動が海外で増加する ・国内外でのネットワーキング・交流が進む 活動 ・国際協力団体に障害インクルーシブの理念や実践を説明する報告会・研究会を開催する ・アジア太平洋CBIDネットワーク会議に参加する ・CBRマトリックス使用マニュアル作成のための会議を開催し、「CBRマトリックス使用マニュアル」を開発・出版する 成果2.障害分野についての理解が進み、障害分野における国際協力を推進する環境が整備される 指標 ・国際協力団体の障害インクルーシブに関する理解が向上する ・「障害インクルーシブ開発白書」を出版する ・「障害がある人を取り残さない国際協力ガイドライン」を策定する ・「障害インクルーシブ開発の好事例集」を発行する ・政策提言文書等を発表し、JANNETが障害分野のアドボカシー団体であると認識される 活動 ・国際協力団体にJANNETについて説明する ・国際協力団体に障害インクルーシブの理念や実践を説明する ・「障害インクルーシブ開発白書」出版会議を開催する ・「障害がある人を取り残さない国際協力ガイドライン」を策定するための会議を開催する ・障害インクルーシブ開発の好事例を収集し、事例集を作成する ・第5回アジア太平洋CBR/CBID会議に参加する  ・日本政府や国際機関へ政策提言を行う 成果3.JANNETの組織としての力が強化される 指標 ・JANNETの会員が増える、2023年の30周年イベントで内外から参加を得る ・JANNETホームページアクセス数と問い合わせが増加する ・トピックスへの新規執筆者が増える ・パンフレットを用いた紹介数が増える ・勉強会参加者が増える ・研究会参加者が増える ・JANNET会員団体間の交流が増加し、他団体との協力体制が強化される ・次年度事業計画をモニタリング結果に基づいて策定する ・事業評価報告書を作成する ・活動・事業に必要な財源が安定して得られる 活動 ・啓発活動としてJANNETへ勧誘したい団体を訪問する ・JANNETホームページ(日・英)を更新する ・会員向けメールマガジンを毎月発行する ・パンフレットを更新する ・勉強会を開催する ・研究会を開催する ・会員団体間の意見交換会を開催する ・関連のイベントや研究会に参加する(グローバルフェスタ、JANIC、NGOと企業の連携推進ネットワーク、みんなのSDGs、SDGs市民社会ネットワーク等) ・年間事業モニタリングや事業評価を実施する ・関連イベントを通じたファンドレイジングを実施する 【JANNET中期計画(2021-2025)の施行にあたって】 1.この中期計画は、指定した5年間におけるJANNETの活動・事業等の方向性と求める成果について記載したものであり、JANNETの加盟団体・個人において、これらを基盤とする共通認識のもとで、JANNETの活動・事業等を企画・運営するものとする。 2.この中期計画に掲げた「活動」、「指標」に関連する活動・事業等は、JANNETの加盟団体・個人の意見を集約して、「企画委員会」、「研修研究委員会」、「広報啓発委員会」のいずれかが中核となって企画・運営するものとする。 3.この中期計画に掲げた「活動」、「指標」の達成を確認する数値目標等の入手手段については、別途定める。 4.この中期計画に掲げた「成果」を確認する指標の一つとして、SDGsの障害に関するインディケーター(指標)の改善を用いる。       2. 障害者手帳の等級と国連国際統計ワシントン・グループの短い質問群との関係      長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生 ※去る2021年12月24日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第9回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。   第24回RI会議(2021.9.7〜9)での発表についてご紹介します。表題の研究は、「現状の障害認定基準の課題の整理ならびに次期全国在宅障害児・者等実態調査の検討のための 調査研究(研究代表者:飛松好子)」の中で行いました。 51問から成る調査票に、ワシントン・グループの指標から短い質問群WG-SSの6項目、不安の頻度と程度についての2項目、憂うつの頻度と程度についての2項目の合計10項目を使い、障害者手帳の等級と対比させました。 注目されたのは、障害者手帳の等級とWG-SSの程度とが対応しない場合があったことです。例えば、視覚障害1級でも「見ることに苦労しない」と回答した者、聴覚障害2級であっても「聴くことに苦労しない」と回答した者がありました。上肢障害者では「身の回りのことをするのに苦労する」と回答したのは6.7%に留まりました(表)。障害があっても代替方法で目的を達成していれば「苦労しない」と回答したためと推測されます。ワシントン・グループの指標は国際比較のために開発されており、診断や各国のサービス基準とは異なることは大前提ですから、この結果は不自然ではありません。ただし、今後、国民生活基礎調査でWG-SSが使用され、雇用および教育について障害の有無による差が示された場合に、「障害有群」には障害者手帳所持者では等級が高くても漏れる場合があることを考慮に入れる必要があることに留意したいと考えます。 ※文献1. 令和2年度「障害認定基準および障害福祉データの今後のあり方に関する研究(研究代表者:飛松好子)」統括・分担報告書. 2021-03.(厚生労働科研成果データベース) 3. 「発達障害児向けデジタル図書製作による在宅重度障害者の社会参加を支援するシンポジウム」開催 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与 寺島 彰 2021年12月10日、表記のシンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、当協会が4年前から実施している「重度障害者が支援する発達障害児のためのマルチメディアDAISY図書製作プロジェクト」の報告をしました。プログラムは下のとおりです。 13:30 開会挨拶 君島 淳二(本協会 常務理事) マルチメディアデイジー図書とは 村上 博行(当協会 情報センター課長) 13:35 重度障害者が働ける社会に 誰も取り残さない(SDGs) 寺島 彰(当協会 参与) デイジー図書の製作に参加して(当事者の立場から)(事前録画) 佐藤 弘二(筋萎縮性側索硬化症(ALS):デイジー製作参加者) 小池 友洋(筋萎縮性側索硬化症(ALS):デイジー製作参加者) 鹿久保 芹菜(脊髄性筋萎縮症:デイジー製作参加者) 古関 祐一(脊髄性筋萎縮症:デイジー製作参加者) 尾崎 新(進行性筋ジストロフィー:デイジー製作参加者) 三好 亮太(頸椎損傷:デイジー製作参加者)     14:20 ICT技術を使用した障害者の社会参加について(支援団体の立場から) 堀込 真理子(社会福祉法人東京コロニー職能開発室所長、東京都障害者IT地域支援センター長・社会福祉士) 14:35 ALS患者の社会参加について(支援団体の立場から) 青木 良浩(一般社団法人日本ALS協会 理事・東京支部事務局長) 14:50 日本障害者リハビリテーション協会のデイジー製作の取り組みについて(デモを中心に) 西澤 達夫(当協会 参与)    本プロジェクトは、在宅の重度障害のある皆様にベッド上などで作業をしていただき、発達障害児のためのマルチメディアDAISY図書を製作していただくというプロジェクトです。 全国小中学校の通常学級在籍児童の2.4%(24万人)が発達障害のために読み書きに困難を抱えているといわれています。視力は正常でも文字を読むのが苦手なため学習についていくのに苦労します。しかし、耳で聞けば学習することができることも多いようです。 マルチメディアDAISY図書は音声と文字をシンクロさせることで、こういった児童も本を読むことを可能にします。 しかし、マルチメディアDAISY図書製作には時間と費用がかかるため図書製作が進んでいません。 そこで、重度障害のある皆様に製作を支援していただくとともに、重度障害の皆様に働く機会を提供することとしました。 働くことには、収入を得る、社会参加、自己実現等さまざまな意味があり、働くことは最高の社会参加だと考えられます。 参加者の皆様は、全身の障害のために手を使うことが困難であり、人工呼吸器をつけていたりするため、特殊なスイッチやソフトウェアを使ってベッド上や特殊な椅子に座ってパソコンを操作されています。 シンポジウム当日は参加していただいている重度障害の皆様から、発達障害児の役にたって嬉しい、やりがいがある、というようなありがたいビデオメッセージをいただきました。 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報    (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html)    署名国・地域数164/ 締約国・地域数 184 (2022年1月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.JANNET研究会「とりのこさないカフェ」―さまざまな「とりのこさない」活動― 2022年2月19日(土) この度、JANNETの新たな試みとして、ゆるやかなオンラインイベント(とりのこさないカフェ)をシリーズ化して定期的に行うこととしました。このイベントでは、毎回異なるゲストをお招きし、それぞれのお立場から「とりのこさない活動」を紹介していただきたいと考えております。 初回である今回はオープニングイベントとして、学生の立場から川口夏芽さん(大阪府立大学 理学療法学部)、パラスポーツの立場から向井幸治さん(フライングディスク選手)・正木楓さん(車いす陸上競技選手)、現地ワーカーの立場から岩本直美さん(日本キリスト教海外医療協力会)にお話しいただきます。 肩ひじを張らず、お気軽にご参加ください。 日時:2022年2月19日(土)13:00〜14:30 会場:リモート開催(Zoom) 主催:障害分野NGO連絡会(JANNET) 参加費:無料 定員:100名 【プログラム】 13:00-13:05 開会挨拶  清水 直治(障害分野NGO連絡会(JANNET) 会長) 13:05-13:50 それぞれの立場からのお話し 【学生の立場から】川口 夏芽さん(大阪府立大学 理学療法学部) 【パラスポーツの立場から】向井 幸治さん(フライングディスク選手)・正木 楓さん(車いす陸上競技選手) 【現地ワーカーの立場から】岩本 直美さん(日本キリスト教海外医療協力会) 13:50-14:25クロストーク・意見交換  コメンテーター:金子 健(日本発達障害連盟 顧問) 14:25-15:30閉会挨拶  伊藤 智典(障害分野NGO連絡会(JANNET)研修・研究委員会 委員長) 15:30 閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.normanet.ne.jp/~jannet/houkoku/2022/20220219/ 申込受付:2月18日(金)15:00まで ※情報保障が必要な方は、2月10日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など情報保障の必要があれば、申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 2.第10回「リハ協カフェ」 2022年2月25日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、海外からの訪問者の報告会等を実施しておりましたが、新型コロナウイルスの影響で海外関連の報告会の実施は難しい状況にあります。そのため、「リハ協カフェ」として、リモートによる報告会を企画し、2020年8月より隔月で開催してまいりました。今回は、第10回目の開催です。 第10回は、佐野 竜平先生(法政大学 現代福祉学部 准教授)より「アジアの農林水産業に従事する障害者の暗黙知」、上野 悦子氏(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参与)より「CBRからCBIDへの変遷と事例紹介」についてご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。     日時:2022年2月25日(金)13:30〜15:15 場所:リモート開催(Zoom) 参加費:無料 ※情報保障あり 【プログラム】 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1「アジアの農林水産業に従事する障害者の暗黙知」 発表者:佐野 竜平氏(法政大学 現代福祉学部 准教授) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2「CBRからCBIDへの変遷と事例紹介」 発表者:上野 悦子氏(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参与) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会    *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。    【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/moushikomi/ 申込受付:2月24日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、2月18日(金)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。      【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 今月号で取り上げられたデジタル図書制作、ひいては情報アクセシビリティの観点から、テキストデータ作成について紹介したいと思います。 私が勤務する全国盲ろう者協会では、ワード(拡大文字)、テキスト、点字を筆頭に、発行物によってはPDF、DAISYなど複数のデータ形式で資料を提供しています。中でもテキストデータは、文書の体裁や装飾といった余分な情報を含みませんので、メール本文に貼り付けるなど様々な環境で利用できます。 資料は、最初にワードから作ることが多いのですが、自動で付く見出し番号やテキストボックス内に入力した文字は、テキスト形式で保存すると消えてしまうことをご存知でしょうか。 普段、何気なく使っている機能にも思わぬバリアがあります。伝えたい情報に様々な方がアクセスできるよう、データの作り方にも気を配りたいものです。 (小林 真悟/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上