JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第214号 7月号 2021年7月30日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. ヘレン・ケラーとの「盟約」を日本ライトハウスの使命として 社会福祉法人 日本ライトハウス 理事 竹下 亘 2. 世界の職業リハビリテーションの収斂(しゅうれん)進化 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 副統括研究員 春名 由一郎 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第7回「リハ協カフェ」 2021年8月20日(金) 2. 第43回総合リハビリテーション研究大会 2021年10月2日(土) トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. ヘレン・ケラーとの「盟約」を日本ライトハウスの使命として 社会福祉法人 日本ライトハウス 理事 竹下 亘 当法人は、中途視覚障害の岩橋武夫が1922(大正11)年、大阪の自宅でエスペラントの教則本を点字出版した時を起点として、来年(2022年)、創業百周年を迎えます。 岩橋武夫は、手前味噌ながら日本の視覚障害者福祉事業のパイオニアであり、1935(昭和10)年、大阪に世界13番目の「ライト・ハウス」を開館。視覚障害者の支援事業に取り組むとともに、1937(昭和12)年と1948(昭和23)年には、ヘレン・ケラーを招請して、全国で講演活動を展開し、その結果、1949(昭和24)年、わが国初の身体障害者福祉法が成立しました。 また、岩橋は障害者福祉を進めるには、当事者団体と福祉施設が車の両輪になる必要があると考え、1948年に日本盲人会連合(現・日本視覚障害者団体連合)、1952年に日本盲人社会福祉施設協議会を発足させ、それぞれ初代会長に就任しました。 岩橋は1954年に56歳で早世しますが、ライトハウスはその後、点字出版(現点字情報技術センター)、点字図書館(現情報文化センター)に加え、日本初の職業・生活訓練センター(現・視覚障害リハビリテーションセンター)、盲導犬訓練所等を開設し、視覚障害者の福祉事業を総合的に展開してきました。 当法人にとって国際協力の基盤となっているのは、岩橋の国際性に加えて、1950年、訪米時にヘレン・ケラーから求められ、交わした盟約「私はアフリカと南アメリカを、あなたはアジアを守って下さい」にあります。そのため、岩橋は初のアジア盲人福祉会議(1950年、東京で開催)の実現に奔走しましたが、開催直前に病没し、その後は長男の岩橋英行が受け継いで、世界盲人福祉協議会の副会長として活躍。英行の没後は、生前夫を支えた妻の岩橋明子が世界盲人連合の専門委員としてアジアの視覚障害者のために活動しました。 しかし、1990年代以降、福祉制度の大幅な改革の中で、当法人は時流に乗らず、視覚障害福祉の専門性を貫いたため、慢性的な赤字経営に陥り、ここ20年来、茨の道を歩むことになりました。 それに伴って、アジア諸国との国際協力事業は縮小せざるを得ず、かろうじて2001年から2007年にカンボジア視覚障害者支援事業を行った後は、韓国シロアム視覚障害者福祉会との協力事業、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の視覚障害研修生の研修協力、そして、アジア・太平洋地域で視覚障害者福祉に貢献した視覚障害者等に毎年贈る岩橋武夫賞を続けているに過ぎません(2020年度、第39回は世界盲人連合アジア太平洋地域協議会・WBUAP会長の田畑美智子さんに贈呈しました)。 しかし、国際協力とは、持てるものが持たないものに与える関係ではなく、共に受けるものが大きい関係です。当法人も、ヘレン・ケラーと岩橋武夫が交わした盟約を受け継ぎ、予算や事業の規模に関わらず、法人の使命として、国際協力の灯火を掲げ続けたいと願っています。   2. 世界の職業リハビリテーションの収斂(しゅうれん)進化        独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 副統括研究員 春名 由一郎  ※去る2021年6月9日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第6回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 現在、世界各国が「すべての障害のある人の職業生活の実現」を目指す中、職業リハビリテーションのあり方が、国や歴史や文化にかかわらず、どんどんと似たものになってきています。それは、まるで、魚やイルカが異なる種から水中での生活に適応して流線型の形やヒレを有して似た形になる「収斂進化」を思い起こさせます。 最新の職業リハビリテーションの共通した特徴は、障害の種類・重度にかかわらず、すべての障害のある人を対象として、一人ひとりの強みを発揮できる仕事に就けるようにし、職場での合理的配慮を確保し、職業生活と日常生活を継続的に地域で支えていくものです。「仕事ができないから支援する」のではなく、「仕事をするための個別の支援ニーズを踏まえて支援する」ため、障害認定や、アセスメントや支援のあり方も各国で進化しています。 対象者も、就労支援の対象になりにくかった重度障害者を含めるだけでなく、慢性疾患等で職場や社会の理解や配慮が必要な人にも対象を広げています。その中では、障害者雇用率制度、障害者差別禁止法制・合理的配慮、福祉的就労、ソーシャルファーム、援助付き就業等が総合されています。発展するA Iやロボット等の活用も重要です。 また、「障害者は一般就業できない」「障害者雇用は企業の負担」という先入観が覆され、一般啓発、企業への支援、障害者支援に関わる専門職の再教育や人材育成、医療・福祉・教育・労働の連携等の制度やサービスの変革も進められています。 現在、我が国の障害者就労支援には政策的・実務的な検討課題が多くありますが、それらを世界各国で共通している大きな構造変化からシステマティックに捉えるため、2020年6月から「世界の職業リハビリテーション研究会」を実施しています。これまでの様子はホームページでご覧いただけます。  https://www.nivr.jeed.go.jp/research/advance/advance01.html ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報    (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html)    署名国・地域数164/ 締約国・地域数 184 (2021年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1. 第7回「リハ協カフェ」 2021年8月20日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、海外からの訪問者の報告会等を実施しておりましたが、本年度は、新型コロナウイルの影響で海外関連の報告会の実施は難しい状況にあります。そのため、「リハ協カフェ」として、リモートによる報告会を企画し、2020年8月より隔月で開催してまいりました。開催より1年を迎える今回は、第7回目の開催です。 第7回は、河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長・RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)グローバル委員長)、木 憲司氏(和洋大学 家政学部 家政福祉学科 准教授)にご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 日時:2021年8月20日(金)13:30〜15:15 場所:リモート開催(Zoom) 参加費:無料 ※情報保障あり 【プログラム】 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1「RI/ICTAのグローバルな仕事:ISAからSDGsまで」 河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長・RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)グローバル委員長) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(サビ児管)に求められていること」(仮) 木 憲司氏(和洋大学 家政学部 家政福祉学科 准教授) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://kokucheese.com/event/index/611047/ 申込受付:8月19日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、8月13日(金)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 2. 第43回総合リハビリテーション研究大会 2021年10月2日(土) 昨年度は開催が延期された本大会では、本年は「コロナ危機」をテーマに、障害者権利条約などに基づく国際的な動向も踏まえながら、障害当事者の方々の暮らし方へのインパクト、ならびに、リハビリテーション分野の専門職の方々による対応などについて話し合います。 ポストコロナに向けて、障害当事者の方々のニーズにより適切にこたえ得る、総合リハビリテーションのあり方について、次に繋がる一定の方向性が見いだせることを願っています。 『第43回総合リハビリテーション研究大会 コロナ危機下での障害のある人−総合リハビリテーションの視点から−』 日時:2021年10月2日(土) 9:30〜17:00 会場:オンライン開催(Zoomウェビナー) 参加費:1,500 円 ※手話通訳、要約筆記、テキストデータ(視覚障害・読字障害等のある方) あり 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 生涯学習:日本作業療法士協会生涯教育制度ポイント      日本言語聴覚士協会生涯学習ポイント 【プログラム (順不同・敬称略)】 第1部 9:30〜09:40 主催者あいさつ  (公財)日本障害者リハビリテーション協会会長 炭谷 茂 9:40〜10:00 本大会の経緯と趣旨について  実行委員長 松井 亮輔 日本障害者リハビリテーション協会副会長 10:00〜10:50 《基調講演》国連における新型コロナウイルスと障害者に関する対応など 伊東 亜紀子 国連経済社会局 障害者権利条約事務局チーフ 11:00〜12:30 パネル1「コロナ危機と障害者:その暮らし方がどうかわったか」 パネリスト 篠原 三恵子 NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会 理事長 藤原 久美子 DPI女性障害者ネットワーク 代表 後藤 強   社会福祉法人ゆたか福祉会 理事・法人本部長 久松 三二  一般財団法人全日本ろうあ連盟 事務局長 家平 悟   障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 事務局次長 コーディネーター 藤井 克徳 NPO法人日本障害者協議会 代表 12:30〜13:30 昼休み 第2部 13:30〜15:00 パネル2「コロナ危機とリハビリテーション」 パネリスト 松矢 勝宏 東京学芸大学 名誉教授 丹羽 真一 福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座 特任教授 吉川 一義 金沢大学人間社会研究域学校教育系 教授 矢本 聡  東日本国際大学健康福祉学部 教授 高岡 徹  横浜市総合リハビリテーションセンター センター長 コーディネーター 大川 弥生 元(独)国立長寿医療研究センター生活機能賦活研究部長 15:00〜15:10 休憩 15:10〜16:25 パネル1・2のパネリストによる対話 共同コーディネーター 藤井 克徳  大川 弥生 16:30〜16:55 総合リハビリテーションのあり方に関する検討会 中間報告 伊藤 利之 横浜市リハビリテーション事業団 顧問 16:55〜17:00 閉会あいさつ 日本障害者リハビリテーション協会常務理事 君島 淳二 閉会 【申込方法】 お申込み方法などについては、こちらをご覧ください。 URL:https://www.normanet.ne.jp/~rehab/2021/43moushikomi.html 【お問い合わせ】 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 「第43回総合リハビリテーション研究大会事務局」 162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 TEL:03-5273-0601 FAX:03-5292-7630 Mail:rehab@dinf.ne.jp 編集後記 本日もJANNETメールマガジンを最後までお読みいただき、ありがとうございました。 今号の団体紹介で取り上げられた日本ライトハウスでは、その多岐にわたる事業の一つとして、視覚障害者への職業訓練を行っています。パソコン活用、電話交換、そして会計や簿記に関するトレーニングが実施されております。 2つ目のトピックスとして、「世界の職業リハビリテーションの収斂」を取り上げていますが、日本ライトハウスは職業リハビリテーションの分野でも実績と伝統を有する施設なのです。その意味でも、障害当事者である岩橋父子が残した功績の意義は計り知れません。 トピックス間の関連性に思いをはせつつ、今号の記事を味わわせていただきました。 次号以降も、どうぞよろしくお願いいたします。 (伊藤 丈人/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上