JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第213号 6月号 2021年6月30日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. 南太平洋医療隊の団体活動の紹介 南太平洋医療隊 代表 河村 康二 2. 国連国際障害統計に関するワシントン・グループ WG-SS Enhanced 長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生 3. 2021年度第1回 NGO-JICA協議会 の報告 JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」2021年募集 イベント情報 1. 第7回「リハ協カフェ」 2021年8月20日(金) トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. 南太平洋医療隊の団体活動の紹介 南太平洋医療隊 代表 河村 康二     南太平洋医療隊(NGO)は全ての人に平等で質の高い歯科医療を提供したいという考えから、1998年に開業医、歯科衛生士、大学職員の医療従事者により設立されました。主に南太平洋地域の発展途上国において、ボランティア活動を通して、医療システムの構築や人材育成等を現地で行い、相手国の歯科医療の向上に寄与し、世界の歯科医療の発展に貢献することを考えています。また、これらの活動成果を日本国内にフィードバックできればと思います。 歯科疾患の多くは、予防中心の診療システムで防ぐことが可能です。日本の国民皆保険制度は主に病を患ってからの受診が前提で、治療費が高価になることもあります。予防を目的とした受診には保険が適用されないケースが多いため、発展途上国では、患者の金銭的負担が増えない様に、予防を含む、安価で質の高い医療制度を整えることが大切です。 南太平洋医療隊は、比較的政情が安定し、親日的な国であるトンガ王国で活動を始めました。私たちの様な小さな団体では人口の多い国よりも、むし歯や生活習慣病の悩みを持っている小規模なトンガ王国で集中的に活動を行うことが発展途上国の医療制度のモデル構築に役立つと考えたからです。トンガ王国の全国民を対象にinclusiveな計画を実施するには、歯科医療が行き届かず、支援が必要な方への配慮が不可欠であり、JANNETのCBRの考えに賛同し、会員になりました。 (主な活動) 活動当初、トンガ王国では歯科医療は行き届かず、肥満、糖尿病等の生活習慣病も多く見受けられました。そこで南太平洋医療隊とトンガ保健省バイオラ病院歯科室はマリマリプログラム(トンガ語で笑顔の意)を立ち上げました。始めに医療隊スタッフの指導のもとトンガ人歯科スタッフが幼稚園、小学校を訪問し、定期的な歯磨き指導、講話、フッ化物洗口を実施したところ、 数年後にむし歯が減少しました。成果を受けてトンガ保健省は歯科スタッフを倍増し、予防歯科の部署を発足させました。 歯周病と糖尿病には相関関係があり、歯科の視点から生活習慣病を改善する為の歯科ユニットを2台確保し、糖尿病センターと連携して糖尿病の患者の定期受診システムを構築しました。また学校や地域保健センター等には姿見、身長体重計を配置して、身体測定を促しました。    また、本島のすべての障がい者デイサービス施設で歯磨きと手洗いに関する保健指導、口腔ケア物品購入のための資金確保の方法を提案しました。歯科スタッフは週1回施設に出向き、途切れのない口腔ケアが実現しました。歯科室に来院できない方のために、訪問診療のシステムを構築、新生児科とも連携し,低出生体重児や口唇口蓋裂児の哺乳指導も行ってきました。 この間、トンガ保健省は日本政府のODA予算で国立バイオラ病院を新築、歯科室もリニューアルしました。医療隊がトンガ人歯科スタッフに小児の診療、障がい者や寝たきりの人の診療を指導した結果、トンガ人歯科スタッフは治療が行き届かなかった人々の診療、口腔ケアができるようになりました。また、医療隊の見守りのもと、トンガ人歯科スタッフが、歯科診療に恐怖心のある障がい者のため、オーラルヘルスウィークを開き、診療疑似体験を行いました。現在、バイオラ病院のスタッフは自立してプログラムを推進しています。 治療への恐怖心のバリアを取り除き、幼い頃から口腔を清潔に保つため、歯科医院に来院できれば治療に至らずに済みます。このシステムを発展途上国の当事者が他の国に波及できればと考えています。2021年5月現在、トンガ王国はCOVID-19の流行を受けてロックダウン下のため、現地での活動はできませんが、プログラムに必要かつ現地での調達が難しい物資のDonationは引き続き行っています。   2. 国連国際障害統計に関するワシントン・グループ WG-SS Enhanced        長野保健医療大学 特任教授 北村 弥生 ※去る2021年4月27日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第5回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 本稿では、国連障害統計のワシントン・グループの成果のうち、特に、WG-SS Enhancedを紹介します。 1.2001年から2016年までの主な成果 ワシントン・グループは、2001年に、国連のシティ・グループ(インフォーマルな組織)として立ち上げられました。その目的は、国際比較可能な障害発生率を得るために国勢調査で使う指標の開発で、短い質問群(ショートセット、WG-SS)6問と拡張質問群(エクステンデッドセット,WG-ES)37問を確定しました。また、乳幼児にWG-SSとWG-ESを使うと、「障害」と分類されてしまうことも多いため、UNICEFと協力して子ども用モデュール(WG/UNICEF CFM: Child Functioning Module)を開発しました。 2.WG-SS Enhanced(WG-SS 強化版) 米国は、2010年、2014年、2018年のNational Health Interview SurveyでWG-ESを使用し、毎回、約16,000件のデータを得て解析を進めています。WG-SSだけでは障害発生率は9.5%(18歳以上)、6.6%(18〜64歳)でしたが、WG-ESすべてを使うと40%を超えました。そこで、障害の有無による就労、教育機会、プログラム参加などの差を示す(disaggregate)ために、適正な設問の組み合わせ案を検討してきました。その結果、WG-SS Enhancedを提案しました。WG-SS Enhancedは、WG-SSの6問に上肢2問、不安2問、憂鬱2問を加えた12問から成り、NHIS対象者の11.9%(18歳以上)、9.3%(18〜64歳)が該当しました。同様の解析は他の国のデータでは行われていないため国際標準にはなっていませんが、日本の人口ベースの全国調査でワシントン・グループの指標を使用する場合には、WG-SS Enhancedが第一の候補になると考えます。日本での事前調査では、WG-SSでは22.5%しか捕捉されない精神保健福祉手帳所持者をWG-SS Enhancedの不安と憂鬱の頻度の設問を加えることで57.5%を補足することが示されているからです。 3.今後のワシントン・グループの活動 ワシントン・グループがILOと共同開発した労働力モデュールは2020年に確定しました。さらに、インクルーシブ教育モデュール、心理社会的モデュール、環境モデュールを開発中です。開発された指標で得たデータの解析から得られる新しい知見に期待が持たれます。     3. 2021年度第1回 NGO-JICA協議会 の報告 JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 2021年6月3日に実施された2021年の第1回NGO-JICAの協議会に出席しましたので報告します。 本協議会は、NGOとJICAが情報を共有し、連携を行うために年に2回開催されるものです。一昨年まではJICAを会場として、1年に4回実施されていましたが、昨年度からはオンラインで年に2回実施されています。今回の参加者はNGO側が全国の115団体から156名、JICAからは萱島理事をはじめ56名、そしてオブザーバーとして外務省民間援助連携室などから5名と非常に多く、また多様な参加者で開催されました。オンライン開催ならではのメリットであると思います。 議事としては、外務省国際協力局民間援助連携室松田室長からの挨拶からはじまりました。同氏は公募で2021年4月に民間から着任された方であり、今後のNGOとの連携の核となられる方です。  その後、NGO-JICA協議会の実施要項の改訂に関する報告、栄養サミットにむけたJICAの取り組み、アジア諸国の民主化支援とJICAへの期待、JICA草の根技術協力制度改訂、PSEAH(性的搾取・虐待、性的 ハラスメントからの保護)・セーフガーディング・ジェンダ主流化、環境社会配慮ガイドライン改定、NGOとJICAの連携による責任ある外国人材受け入れの取り組みなどに関して、情報、意見交換が実施されました。 最後にJICAの萱島理事からは、コロナ禍で現地渡航が限られ、国内での活動の制限があるなかでNGOとJICAは連携し工夫して事業を実施していきたい。特に最近、途上国の課題と日本の課題はつながっていることを強く感じている、多文化共生との視点からも国内外の連携を強めていきたいとの発言がありました。 なお、前回の協議会で会議のPC文字通訳などの情報保障についての提言をJANNETから行いましたが、協議会事務局で検討はいただきましたが、今回に関しては技術的、会計的な課題から継続検討となっています。 インクルーシブや障害の視点をJICAや他のNGOにおいてより現実的な対策として取り入れていただくためにも、今後NGO-JICA協議会への参加だけでなく、事務局(正会員NGO)となることを検討してもよいかと思いました。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 182 (2021年6月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2. 「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」2021年募集 本ファンドでは、社会において重要な役割を果たすNPO/NGOが持続発展的に社会変革に取り組めるよう、SDGsの大きな目標である「貧困の解消」に向けて取り組むNPO/NGOを対象に、「海外助成」「国内助成」の2つのプログラムで、組織課題を明らかにする組織診断や、具体的な組織課題の解決、組織運営を改善するための組織基盤強化の取り組みに助成します。 組織の自立的な成長と自己変革に挑戦するNPO/NGOの皆様からの応募をお待ちしています。 助成対象:貧困の解消、または貧困と関連のある問題の解消に向けて取り組むNPO/NGO 助成事業:第三者の客観的な視点を取り入れた「組織診断」「組織基盤強化」の取り組みに助成 応募受付期間:2020年7月16日(金)〜7月30日(金)必着 ※2021年募集事業の応募要項・用紙・手引きなどの詳細は、下記パナソニックのウェブサイト  からダウンロードいただけます。 詳細URL:https://www.panasonic.com/jp/pnsf/npo_summary/2021_recruit.html お問い合わせ:Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs 事務局 ※ご相談・お問い合わせは月曜日から金曜日までの10時〜17時に、電話かメールでお願いします。現在、新型コロナウイルスの感染拡大抑制のため、在宅勤務をさせていただいております。 ●「海外助成」協働事務局 認定特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)(担当:上出・山田) 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18 アバコビル5F TEL:03-5292-2911 FAX:03-5292-2912 E-mail:pnsf-sdgs@janic.org ●「国内助成」協働事務局 特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド(担当:坂本・霜田) 〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-4-3 日本橋MIビル1階 TEL:03-5623-5055 FAX:03-5623-5057 E-mail:support-f@civilfund.org ●総合事務局(海外助成・国内助成) パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部  CSR・社会文化部(担当:東郷・細村) 〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル TEL:03-3574-5665 イベント情報 1. 第7回「リハ協カフェ」 2021年8月20日(金) 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、海外からの訪問者の報告会等を実施しておりましたが、本年度は、新型コロナウイルの影響で海外関連の報告会の実施は難しい状況にあります。そのため、「リハ協カフェ」として、リモートによる報告会を企画し、2020年8月より隔月で開催してまいりました。開催より1年を迎える今回は、第7回目の開催です。 第7回は、河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長・RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)グローバル委員長)、木 憲司氏(和洋大学 家政学部 家政福祉学科 准教授)にご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 日時:2021年8月20日(金)13:30〜15:15 場所:リモート開催(Zoom) 参加費:無料 ※情報保障あり 【プログラム】 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1「RI/ICTAのグローバルな仕事:ISAからSDGsまで」 河村 宏氏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 副理事長・RI技術・アクセス国際委員会(ICTA)グローバル委員長) 14:15-14:25 質疑応答 14:25-15:05 報告2「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(サビ児管)に求められていること」(仮) 木 憲司氏(和洋大学 家政学部 家政福祉学科 准教授) 15:05-15:15 質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://kokucheese.com/event/index/611047/ 申込受付:8月19日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、8月13日(金)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 編集後記 新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、はや1年半が過ぎました。まもなく2年になろうとしています。 対面せず、オンラインによる会議や研修会、授業等と言った新しい生活様式が確立してきました。 ICT技術を用い、対面を必要としない方法が加速しています。 しかし、聞こえない人にとって意思疎通する時、表情がとても重要になります。 相手の気持ちを分かりきれない、分かってもらえないもどかしさ。 そろそろ、限界に近づいてきています。 嬉しいニュースとしては今年7月からは公共インフラとして聴覚障害者も使う事ができる電話リレーサービスが始まります。 コロナに有効なワクチン接種がすべての人に行き渡り、通常行動できる日が戻ることを、1日も早く待ち望んでいます。 (嶋本 恭規/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上