JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第209号 2月号 2021年2月26日発行 ―目 次―  トピックス ~会員団体の活動紹介~ 1. 日本視覚障害者団体連合 活動紹介 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 伊藤 丈人 2. ポルトガルのインクルーシブ教育の概要 横浜国立大学 教授   徳永 亜希雄 東京成徳短期大学 准教授   田中 浩二 3. JANNET研究会“とりのこさないセミナー2020” 「共生社会のアフターコロナ~障害課題 とりのこさないを今こそ~《参加報告 アジア保健研修所(AHI) 職員 清水 香子 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 日本障害フォーラム(JDF) 総括所見用パラレルレポート 報告会 ~第11条を中心に~ 2021年3月9日(火) 2. 令和2年度 障害者施設職員研修会Aコース:心のバリアフリー研修会【zoomによるオンライン講演会】~ハンセン病と人権~ 2021年3月19日(金) トピックス ~会員団体の活動紹介~ 1. 日本視覚障害者団体連合 活動紹介 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 伊藤 丈人   日本視覚障害者団体連合(以下、「日視連《)は、全国60の視覚障害者の当事者団体によって構成される社会福祉法人です。視覚障害者の福祉の向上を目指して、1948年に結成されました。国や自治体に視覚障害者の要望を伝えるほか、生活相談事業、点字・録音図書の作成、用具の販売などを行っています。特に、按摩・マッサージ・指圧、鍼、灸の生業の安定に力を注いできました。近年では読書バリアフリー法の制定など、具体的な成果につながる活動も展開しています。 日視連の活動目標の一つに、国内外の関係団体との相互交流と協力関係の構築があります。海外の団体との交流として最も大きいのは、世界盲人連合(World Blind Union=WBU)への参加が挙げられます。WBUには、世界約190か国の視覚障害者の団体が参加しており、日本からは日視連と支援団体などを包括する組織である日本盲人福祉委員会が加盟しています。 日視連からは、日本盲人福祉委員会を通じて代表者がWBUの会議やイベントに参加しており、2012年より田畑美智子さんがWBUアジア太平洋地域協議会会長の重責を担われています。 WBUの加盟団体間では、視覚障害者の就労、教育、移動、情報アクセスなどの諸問題について、各国での状況の共有が行われるほか、国際社会に対して共通のメッセージを発信しています。私もマレーシアやモンゴルで開催されたWBUアジア太平洋地域協議会の会議・イベントに参加させていただきましたが、各国の視覚障害者が同様の課題に直面し、それらの改善のために努力していることに勇気づけられました。また、日本では有効とされる点字ブロックが、オーストラリアのように広大な国土の国ではあまり役に立たないと認識されていることなど、事情の違いについて学ばせていただきました。 同地域協議会会長の田畑さんは、各国の代表の多様な意見を取りまとめ、皆さんから慕われる柔らかなリーダーシップを発揮されています。国際交流で得られた知識を国内での活動に反映し、日本での活動で得られた知見を各国の代表と共有できるよう、日視連として今後も努めてまいります。 2. ポルトガルのインクルーシブ教育の概要        横浜国立大学 教授 徳永 亜希雄 東京成徳短期大学 准教授 田中 浩二 ※去る2020年12月17日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第3回「リハ協カフェ《』にて、德永亜希雄先生にご登壇いただいた内容を、今回まとめていただきました。   ヨーロッパの西の端に位置するポルトガルは、温暖な気候で、面積は日本の約4分の1、人口は約11分の1の国です。同国において、インクルーシブ教育の原語は、Educação Especialsとなっています。直訳としてはSpecial Educationに近いですが、ここではインクルーシブ教育として表記します。その対象者は、コミュニケーションや学習、運動、対人関係、集団への参加にかかわる永続的な課題により、活動や参加に関する明確な困難さを示す子どもとなっています。 障害者権利条約批准に向け、インクルーシブ教育を推進する法令改正が2008年に実施されました。全ての子どもの学びの場は、複数の幼稚園・小学校・中学校・高等学校がグループ化された基礎学校とし、特別支援学校は、私立校はあるものの、公立校は、Resource Centre for Inclusion (RCI)として、地域の学校を支援する機関に改編されました。 義務教育は18歳までです。小学校の1学級あたりの人数は30吊以内で、特別な教育ニーズがあると判断された子どもがいる場合は、その学級は20吊以内となり、当該児童は1学級に2吊までの在籍という規定もあります。特別な教育ニーズや、何らかの支援の必要性の判断は、校内でのアセスメントに基づきます。校内には、通級教室のようなSpecial Unitを置くことができます。Unit在籍が中心となるのは、自閉症のある子どもと重度・重複障害のある子どもです。 各学校或いは、グループ内の複数の学校兼任で、Special Needs Educator(以下,SN教師)が置かれています。SN教師は、特別な教育ニーズの判定や、直接的な指導、学級担任への支援、ニーズに基づくRCIへの支援要請等を行っています。 RCIには、教育職はおらず、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士が配置されています。RCIは、単独で設置ではなく、様々な施設の中に置かれています。 2018年に関連法令の改正が行われ、よりインクルーシブ教育を推進するため、外部のRCIのみならず、校内の支援する多職種チームを学校の中に置く方向で展開され始めています。同国の今後の取り組みが注目されます。 3. JANNET研究会“とりのこさないセミナー2020” 「共生社会のアフターコロナ~障害課題 とりのこさないを今こそ~《参加報告      アジア保健研修所(AHI) 職員 清水 香子 去る2021年1月16日、JANNET主催による上記のセミナーに参加いたしました。スポーツ・ビジネス・テクノロジーの視点から将来のアフターコロナに向けた共生社会の在り方を考えるという内容でした。 スポーツの分野からは、視覚障害者柔道の元パラリンピアンであり、アダプテッド・スポーツや障害者雇用の理解促進に取り組んでいらっしゃる初瀬勇輔氏から、インクルーシブな社会に向けたパラリンピックの可能性について語られました。スポーツというものを通すことにより、従来の障害者運動とは異なる力で当事者と非当事者の壁を超え、多様性が認められる社会が創られるという信念を、熱く発信されました。 ビジネスの分野からは、日本でも2019年12月に東京都で条例化されたソーシャルファームについて、造詣の深い寺島彰氏(日本リハビリテーション協会参与)より、その歴史と定義、日本を含む各国の動向や特徴について紹介がありました。 そしてテクノロジーの分野では、交通弱者と看護者・介護者をマッチングする外出支援事業等を起業された川添高志氏(ケアプロ株式会社代表取締役)からお話しがありました。医学中心のヘルスケアシステムからの脱却をめざし、当事者主体の「革新的な《ヘルスケアサービスを創り続けていきたい、という理念が話されました。 最後に、長田こずえ氏(JANNET研修研究委員・吊古屋学院大学教授)より、ポストコロナに向けて、障害者を含めた「とりのこされてきた《人びとがどのように社会変革のエージェントとなりえるか、という問いかけがありました。その答えこそ上記の発表者の方々が発信された地域での取り組みにある、変革はそこから創られてくる、と感じられる会でした。 なお、当日はZoomでの開催でしたが、オンライン上での情報保障(手話通訳・要約筆記を画面上に表示していました)が整えられており、その点でも大変勉強になりました。   ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署吊国・地域数164/ 締約国・地域数 182 (2021年2月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1. 日本障害フォーラム(JDF) 総括所見用パラレルレポート 報告会 ~第11条を中心に~ 2021年3月9日(火) 障害者権利条約の日本の初審査(2021年度中に開催見込み)に向けて、JDFでは2本目のパラレルレポート(市民社会から国連に提出するレポート)を作成しました。 JDFではレポートの内容についてご報告する「報告会《を連続的に開催していますが、このたびは、東日本大震災の発生から10年を迎えるこの時期に、障害者権利条約第11条「危険な状況(自然災害の発生を含む)及び人道上の緊急事態《のテーマを中心に取り上げ、被災地からの報告もいただきながら、条約の実施を通じた、誰もが暮らしやすい社会の実現に向けた課題について、共に話し合います。 日時:2021年3月9日(火)13:00~16:00 場所:オンライン開催(Zoomウェビナー) 参加費:無料(事前登録制:3/5までにEメールまたはWEBフォーム等でお申込ください) ※手話通訳、要約筆記、テキストデータあり 【プログラム】 13:00 開会挨拶 石野富志三郎(日本障害フォーラム副代表) 基調報告「東日本大震災から10年 障害者と災害(仮題)《 阿部一彦(日本障害フォーラム代表) 13:35 特別報告 東日本大震災の被災地より  菅野利尚(陸前高田市社会福祉協議会常務理事) 熊本地震の被災地より    東俊裕(熊本学園大学教授/弁護士) コロナ禍における障害女性の声調査  佐々木貞子(DPI女性障害者ネットワーク) 14:20 休憩 14:30 JDFパラレルレポートの主な内容(10分×3人、質疑15分) ①危険な状況及び人道上の緊急事態(11条)(赤松英知) ②統計及び資料の収集(31条)(佐藤久夫) ③国内における実施及び監視(33条)(尾上浩二) 質疑 15:15 休憩 15:20 権利委員会の状況と対日審査の見通し (長瀬修) 15:40 総括・閉会挨拶 藤井克徳(日本障害フォーラム副代表) 16:00 閉会 ※最新プログラムはJDFウェブサイトhttps://www.normanet.ne.jp/~jdf/seminar/20210309/index.html へ。 【お申し込み】 (締め切り 3月5日(金)) ・下記必要事項に記入のうえ、E-mail、FAXなどで事務局までお送りください。 お吊前: ご所属: ご連絡先E-mail(必須): 必要事項〔手話通訳 ・ 要約筆記 ・ テキストデータ(スクリーンリーダー用)・その他(                 )〕 ・WEBフォームからもお申込みいただけます。 <ウェブフォーム https://forms.gle/AQA69TGz1k8QcDVX7 > ※お申込みいただいた方にはZoomウェビナーのアドレスをお送りします。 【お問い合わせ】 《JDF事務局》 E-mail: jdf_info@dinf.ne.jp FAX: 03-5292-7628 TEL: 03-5273-0601 2. 令和2年度 障害者施設職員研修会Aコース:心のバリアフリー研修会【zoomによるオンライン講演会】~ハンセン病と人権~ 2021年3月19日(金) この研修会は、共生社会の実現に向けて、行政職員、障害児・者福祉従事者、障害当事者、地域住民その他が、一丸となって共生社会づくりを地域で進めるため、住民の意識改革に資する「心のバリアフリー《及び各分野における地域づくりの実践等を取り上げ、地域づくり活動を学ぶことを目的としています。 今回は、ハンセン病がどのような病気か理解したうえで、ハンセン病による差別・人権問題を中心に、現代の新型コロナウイルス感染症による差別等の問題も踏まえ、これからの共生社会づくりに必要なことは何かを考えます。多くの方のご参加をお待ちしております。 ※Bコースは定員に達したため、現在はAコースのみ申し込みを受け付けています。 日 時:2021年3月19日(金)13:00~15:00 場 所:オンライン開催(zoom) 主 催:全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ) 対象者:市町村、相談支援事業所、障害者福祉センター、障害者団体、各障害者福祉サービス事業所の職員。また、民生委員協議会、連合自治会長等のリーダー層等で地域における中核的な役割を担うメンバー。その他、共生社会の実現(地域づくり)に向けた取り組みに関心がある方。 定 員:90吊(※定員になり次第締め切らせていただきます。) 参加費:1,000円 講 師:儀同 政一氏(国立ハンセン病資料館 事業部社会啓発課・参与) 【お申し込み・詳細】 下記URLより、実施要項(受講申込方法)をご覧ください。 https://www.normanet.ne.jp/~ww100006/trainingsession2020.html 【お問い合わせ】 《全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ) 養成研修係》 Tel:03-3204-3611    Fax:03-3232-3621 E-mail:kensyu@abox3.so-net.ne.jp 編集後記 JANNETメルマガ209号(2021年2月号)を最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。 本メルマガの記事も含め、あちこちのシンポジウム、勉強会等で「ポストコロナ《という言葉を聞く(あるいは目にする)機会が増えてきました。 ポスト○○とか、××後の世界とかいう言い回しが使われることは、過去にも何度もありました。こうした言い回しが使われる社会状況の特徴として、「それまでの常識、当たり前がひっくり返るような大きな変化があった《、そして「変化後の状況の見通しが立たない《という2つの特徴があるように思います。 「ポスト冷戦の世界《という言葉が紙面をにぎわせていたころ、人々は冷戦終結という大変革が起きた、という事実を了解したうえで、その後の世界がどうなっていくかはよくわからない、と考えていたようです。 「ポストコロナ《という語りも同様で、コロナパンデミックという経験は社会に大きな変化をもたらした、ただまだ、その後の社会がどうなるかはよくわからない、という今の私たちの立ち位置を表しているように思います。 変化の激しい流れに翻弄されつつも、何とか負けずに未来への希望を持ち続けていきたい、そんな風に感じております。 次号もどうぞよろしくお願いします。 (伊藤 丈人/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上