JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第207号 12月号 2020年12月28日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. 「日本キリスト教奉仕団」の設立経緯と「アジア研修交流事業」のご紹介 社会福祉法人 日本キリスト教奉仕団 アジア研修交流事業担当 渋沢 浩二 2. SDGsと新型コロナ:“障がい課題”を取り残さないために」を開催しました 公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 3. 【ご報告】タイの2つの地方自治体と協力協定を締結しました JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2.新刊書籍のご案内 イベント情報 1. JANNET研究会「とりのこさないセミナー 2020」 2021年1月16日(土) トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. 「日本キリスト教奉仕団」の設立経緯と「アジア研修交流事業」のご紹介 社会福祉法人 日本キリスト教奉仕団 アジア研修交流事業担当 渋沢 浩二   日本キリスト教奉仕団は以下のような経緯をたどって設立されました。 第2次大戦後の混乱期の日本において、1946年から1952年まで大量の支援物資(ララ物資)が北米の教会などから贈られてきました。その支援物資の配分を任されたのが世界教会奉仕団で、その役目を終えた1952年に設立されたのが日本国際基督教奉仕団でした。そして、これまでの物資配分に加えて様々な社会事業に取り組みました。やがて1958年に社会福祉法人日本キリスト教奉仕団と改名してからは、障がい者福祉に力を注いでいきました。 弊奉仕団の使命は、キリスト教精神(アガペ:神の愛)に基づき、人種、国籍、宗教の如何を問わず、障がい者を支援し、個人の尊厳を保持しながら社会で自立した生活を営めるように様々なサービスを提供することにあります。現在では、アガペセンター(神奈川県座間市)とアガペ東京センター(東京都板橋区、新宿区)に事業所を構え、就労支援や生活介護支援など多機能型の社会福祉事業を展開しています。 また、1980年からは公益事業として「アジア研修交流事業」に取り組んできました。この事業は、アジア地域の障がい者の福祉事業従事者を研修生として日本にお招きし、日本の障がい者福祉施設などを見学してもらいながら研修を行うものです。同時に、日本のアガペの職員がアジア地域を訪ねて研修参加者と交流するなど、相互交流も行っています。この事業は、かつての日本が戦争で多大な犠牲を強いたアジア諸国に対する償いの業として始まりました。これまでの40年間に、インド、中国、タイなど14の国や地域から83名の方が研修生として参加されました。そして、日本滞在を終えて母国に戻った研修生たちは、インクルーシブな地域社会を構築するために、障がい者福祉の分野で今も活躍されています。 今年は、2019年度から始まった「ミャンマー5か年計画」の2年目にあたり、昨年にはヤンゴン市にある「エデン障がい児センター」の職員を研修生としてお招きし、3週間の研修を行いました。研修生には、複数の福祉施設や工場を見学していただいた一方で、広島の原爆ドームや平和記念資料館を訪問し、戦争による悲劇と平和の尊さを学習していただきました。     2. SDGsと新型コロナ:“障がい課題”を取り残さないために」を開催しました      公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 2020年7月に公開されたUNDESAのSDGsレポートでは、子供や高齢者、障がい者(特に女性)、移民、難民などが新型コロナのパンデミックの影響によって最も大きな打撃を受けやすいとし、目標4(教育),目標8(雇用),目標10(不平等)において、障がい課題が取り残されやすい状況だと懸念をあらわしています。そこでこの度、JANNETが加盟している「みんなのSDGs」の企画でWebinarを開催しましたので報告します。 総合司会は池上清子氏(プラン・インターナショナル・ジャパン理事長/法務省難民審査参与員)で、「“障がい課題”を取り残さないために」というタイトルでSDGsの観点から新型コロナの現状と今後について、3名の演者を招いて考えました。 星槎グループ本部長の 井上 一 氏は、「星槎の取り組みとこどもたちの変化〜中学高校大学の報告〜」と題し、発達障がいなどを持つ子も持たない子も一緒に教育を行う理念、学びの工夫、国際協力活動など積極的に行う星槎グループの概要と、今年2月以降、新型コロナの拡大による休講や、定例行事などが中止になった中での代替的な工夫や取り組みなどを紹介しました。SDGsへとつながる前提としての心と行動、そして違いの再認識の大切さについて示唆されました。 日本障害者リハビリテーション協会 副会長 松井 亮輔 氏は、「障害のある人の雇用・就労をめぐって」と題し、もともと障がい分野で比較可能な就労に関連する基礎的なデータが揃っていないこと、就業率のみならず、もともと平均的な収入が少ないこと、作業所のアンケート調査では、収益が減収し見通しが立たないことなど厳しい現状であることを紹介しました。また、超党派で設立された「障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟(インクルーシブ雇用議連)」とその議論をうけた検討会の開催なども紹介しました。 「ニューノーマル:様々な角度から障害者権利の実現を」と題しお話しいただいた最後の演者は、国連アジア太平洋経済社会委員会の 秋山 愛子 氏。障害者権利条約の批准状況、インドやタイでの障害者権利の取組や差別禁止の動き、ダイバーシティ&インクルージョン、まぜこぜ社会だからこそ可能となりうるイノベーションや経済的な効果から、国連アジア太平洋経済社会委員会が各国へ依頼する障がい分野の評価など、各種の取組みについても紹介されました。 後半はJANNET研修研究委員会の伊藤智典から演者へ、新型コロナ禍でのおける各種活動に共通する点、After コロナ、Withコロナ時代にむけたテクノロジーの可能性、日本の政策提言にむけたアクションなどをお伺いしました。総合司会の池上清子氏は、障がい課題はもともと取り残されやすいこと、各国の状況がインフォグラフィックのようなもので見える化されること、経済効果への波及と国内外の政治的な活動の必要性にふれ、約70名の参加を得たWebinarを終えることができました。         3.【ご報告】タイの2つの地方自治体と協力協定を締結しました      JANNET研修・研究委員 奥井 利幸   11月26日、野毛坂グローカルはタイの2つの地方自治体とコミュニティベースの統合型高齢者ケアモデルの構築・普及に関する協力協定を締結しました。 従来の国際協力といえば、日本のモデル・技術を「遅れた」途上国に移転することが主流でした。現地の経済社会状況に応じて適応させることはあっても、基本的には「技術移転」でした。 確かに科学技術においてはそのようなアプローチは有効です。しかし、コミュニティでの社会的資源の創出や活用においては、途上国が必ずしも遅れているとはいえず、むしろコミュニティの力が強いといえる場合も多くあります。 野毛坂グローカルでは従来より、「日本と途上国の学びあい」をかかげ、タイ国のブンイトー市とコミュニティベースの統合型高齢者ケアモデル構築に関する協力をしてきました。この「住民中心」の「統合型モデル」の取り組みは、第1回アジア長寿健康イノベーション賞、準大賞となるなど国内外から大きな注目をあびています。今後、この取り組みをタイ国内で水平展開しようと考えていますが、従来の国際協力であれば、政府をカウンターパートとしてトップダウンで普及していくのだと思います。 しかし、今回新たに考えた手法は、自治体と自治体をネットワーク化することでフラットな関係性をつくり普及する方法です。タイ国内の自治体が相互に情報交換や学びあうメカニズムを作ろうというアプローチです。その自治体同士の連携をスムーズにさせる、その仲人役を野毛坂グローカルが担いました。 今回その第一弾として、ブンイトー市とタップマー市との間を野毛坂グローカルが取り持つことにより3者で協力する枠組み構築に合意をしました。今後、この枠組み参加自治体を増やし、タイのだけでなく、日本の自治体や大学、NGOなどにも参加を呼びかけ、「学びあいの国際協力」をすすめていきます。 ぜひ、皆様のご協力をお願いします。    【調印者】 ブンイトー市ランサン ナンタカウォン市長 タップマー市プラサート ウォンスリー市長 野毛坂グローカル 奥井利幸   ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 182 (2020年12月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.新刊書籍のご案内 この度、12月23日にソシム株式会社より『子どもの発達障害とソーシャルスキルトレーニングのコツがわかる本』(星槎大学共生科学部教授・西永 堅氏 著)が発刊されました。 著者の西永 堅氏は、JANNET正会員団体である日本ポーテージ協会の副会長でもあり、今年度からJANNET役員をお引き受けいただいております。 本書では、「発達障害の子どもの特徴」や「必要なスキル」、「応用行動分析」などを紹介したうえで、学校や家庭で実践できる「ソーシャルスキルトレーニングの考え方とコツ」を、1項目見開き2ページのレイアウトでまとめられております。 宜しければ、ぜひお手に取ってご覧ください。 イベント情報 1. JANNET研究会「とりのこさないセミナー 2020」 2021年1月16日(土) 新型コロナウィルスの感染拡大は、経済活動や東京パラリンピック競技大会の延期、国際協力事業や、障がいを持つ人々の医療・情報アクセスならびに雇用など、様々なところに影響を及ぼしています。しかし、JANNETはこれからも障害課題と国際協力分野での「とりのこさない」を実現するため歩み続けていくべく、このたびの研究会を企画しました。スポーツ、ビジネス、テクノロジーの視点から将来のアフターコロナにむけた共生社会の在り方を考えます。多くの方々のご参加をお待ちしております。 日時:2021年1月16日(土)14:00-16:30 開催形式:zoomウェビナーによるオンライン開催 参加費:無料(情報保障あり) テーマ:共生社会のアフターコロナ ―障害課題 とりのこさないを今こそ― 《プログラム(敬称略)》 14:00-14:05  開会挨拶 清水 直治 JANNET会長 14:05-14:20 「国際活動とアダプデッドスポーツ」(仮) 初瀬 勇輔さま(視覚障害者柔道選手/(株)ユニバーサルスタイル代表取締役) 14:20-14:35 「世界のソーシャルファーム」 寺島 彰さま(日本障害者リハビリテーション協会 参与) 14:35-14:50 「障がい者をとりのこさない外出支援の挑戦」 川添 高志さま(ケアプロ(株) 代表取締役社長) 14:50-15:30 パネル討論「障がいをとりのこさない共生社会の観点からアフターコロナの展望/可能性について検討」 15:30    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。      《申込方法》 以下のサイト、もしくは「お名前」・「ご所属」・「メールアドレス」・「ご連絡先お電話番号」・「情報保障のご希望など必要事項」を明記の上、FAXにて下記事務局までお申し込みください。 【申し込みURL】:https://kokucheese.com/event/index/606339/ 1月12日(火)までにお申し込みください。 手話通訳、要約筆記、点字資料など、必要な方はお申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。      《お問い合わせ》 障害分野NGO連絡会(JANNET)事務局(担当:村上・仁尾) 〒169-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者リハビリテーション協会内 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523 E-mail :kokusai@dinf.ne.jp           編集後記 2020年も終わろうとしています。 皆様にとって、どんな一年でしたでしょうか・・・ と問いたいところですが、やはり今年は、新型コロナウイルスの影響を抜きには、語れないのでしょう。 今号のメルマガにも、「SDGsと新型コロナ」のタイムリーな企画についてご報告しています。 新型コロナの感染拡大については、現在進行形であり、科学的・客観的なエビデンスは、まだ十分に得られていません。それゆえに、新型コロナと障害者の課題は、当事者の経験からは苦しいほどに明らかであっても、専門職の立場や、公共政策の立案者の立場からは、大胆に語りづらい部分があるようです。 障害課題を取り残さないために、というのは、とりもなおさず、障害者一人一人が取り残されないように、ということだと思います。そのためには、障害者の立場から、わがこととして、常に課題の発信を続けていく必要があると感じています。 今年一年の活動、大変お疲れ様でした。来年もよろしくお願いいたします。 (原田 潔/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上