JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第202号 7月号 2020年7月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. きょうされんの活動紹介 きょうされん 安川 雄二 2. 「SDGsと新型コロナ」 オンライン・セミナー第1回 開催報告 公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 3. ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問報告A 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 田畑 美智子 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 月刊誌 「新ノーマライゼーション」のご紹介 3. 「DINF」サイトにCBR/CBIDコーナー開設      トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. きょうされんの活動紹介 きょうされん  安川 雄二 きょうされんは、1977年に障害のある人たちの願いをもとに、16カ所の共同作業所によって結成されました。現在は、就労系事業をはじめ、グループホームや相談支援事業所など、障害のある人が生きていく上で関わるすべての事業を対象としており、約1,870カ所の会員(加盟事業所)により構成されています。 当会は結成以来、「わたしたちのめざすもの」を軸に、会員間の交流、学習、要請運動などを通して、小規模作業所問題の解決をはじめ、障害のある人たちのゆたかな地域生活を支える制度づくり、地域づくりをめざしてとりくんできました。 国会請願行動や政策提言、要望活動などをくりかえし、政党の枠を越え、政策を通して手をつなぎ、障害のある人たちの施策拡充に努めてきました。 また、障害分野のみならず社会保障分野の関係団体と手を結び、大集会や学習会などにも活動の範囲をひろげています。 2014年度からは「あたりまえに働き えらべるくらしを〜障害者権利条約を地域のすみずみに〜」を新たな結集軸のスローガンとして掲げました。障害者権利条約に基づいた法整備がなされ、障害のある人たちへの理解が社会に広く浸透し根付くことで、障害のある人たちが安心して地域生活を送れることをめざし活動を続けています。 2.  「SDGsと新型コロナ」 オンライン・セミナー第1回 開催報告   公益社団法人 日本理学療法士協会 国際事業課課長 伊藤 智典 140名をこえる参加者をえて、みんなのSDGs主催オンライン・セミナー、SDGsと新型コロナ「それどころじゃない!」vs「いまだからこそ!」を2020年7月3日が成功裏に開催されました。 総合司会を明石秀親氏(みんなの SDGs 事務局長/国立国際医療研究センター)、佐藤寛氏(アジア経済研究所)をモデレーターとし、「コロナ下でのSDGsへの取り組みの現状」について、講師からのプレゼンテーションののち、チャット機能を活用した質疑とディスカッションを交えて開催しました。 スピーカーは4名で、まず朝日新聞の北郷美由紀氏より、「コロナ下で新聞読者のSDGs関心は薄れているのか?」、続いて大阪市立大学大学院の五石敬路氏は「コロナ下のSDGsと地方自治体」、星槎大学の西原智昭氏からは、「マルチ視点の必要な森林保全と感染症」、最後に一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーンの和田征樹氏からは、「コロナ下のSDGsと企業のサプライチェーン」について15分間、それぞれの立場からお話しいただきました。 講義後のディスカッションではSDGsの活用を念頭に、「それどころじゃない!」と「いまだからこそ!」の両方の意見がだされました。「それどころじゃない!」の側として、自治体職員はいま、新型コロナに対する対応で多忙を極めていることから、SDGsの活用方法まで考えている余裕はないのではないかという意見がだされました。一方で「いまだからこそ!」の側としては、新型コロナが蔓延する前から多国間協調としてSDGsがあり、今後10年のアクションに向けてチェックとしても利活用できるのではないか、自らのアクションが考えやすくなってきたのではないかなどの意見がありました。 初めてオンラインで開催となった今回のセミナーでは、関連するステークホルダーのアクションにむけた課題の見える化、包括的で多分野協働・パートナーシップなどがキーとしてあげられました。次回以降は各論についてより深く掘り下げていく予定です。多くの方のご参加をお待ちしております。 3.  ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問報告A    社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合  田畑 美智子 〜2019年12月15日から21日まで、田畑美智子さんがAAR Japanの「障害者支援プロジェクト」の現地視察としてラオスに行かれました。その際のご様子を、連載でご報告いただきます。〜 【ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問その3:視覚障害の受益者】   視覚障害の受益者が帰り道の近くに住んでいると聞き、それはどうしてもお会いしたいと、ちょっと無理をお願いしました。 比較的大きな家で、経営手腕を発揮しているマネージャーの女性がまず現れました。 その後、ご家族と思われる人に後ろから支えられながら出てきた女性。 思い切って色々質問してみました。 先天の全盲で、既に大きくなった娘がいる世代ですので、残念ながら、当然教育は受けていません。 きのこ栽培には、積極的に取り組んでいただいているそうです。 多分、今から点字やパソコンの研修は難しいでしょう。 そこで、日常生活に関する質問をしてみました。 日常生活訓練をしたら生活改善につながらないか…と思ったのです。 料理はされますか? ―ご飯を炊くのと焼き物はできます。 火は危なくないですか? ―炭でおこすのは音が無いから難しいけれど、薪からなら起こせます。 他の家事はいかがですか? ―後は、食後の洗い物と洗濯。 訓練を受けていない筈ですが、とてもスキルの高い方でした。   ちょっと歩行のことも。 白杖に触れてもらって、これを使って歩いている、と話したところ ―私は使う機会がありませんでした。 居住部分と作業部分の間の壁に紐でも渡せば歩きやすくなるのではないでしょうか? と考えましたが、既に一度提案されているようでした。   話をQOLに変えてみました。 ラジオは聞きますか? ―歌を聴くのが大好きです! 歌う方は如何ですか? ―歌うのも好きですよ。 ちょっと歌っていただけませんか? ―どうしよう、歌詞を全部覚えていないので… と言いつつ、一生懸命に歌詞をを思い出してくださったようで、そのうち1曲フルに歌声を披露してくれました。 普段は女性が電話を掛けても出てくれないのに、酔った時だけ愛しいと電話を掛けてくる男性を謳った、切ないような愉快なような曲。 プロジェクト関係者みんなで丸く囲んで手拍子をしていると、近所の人たちも、何が起こっている?と集まってきます。 歌が終わってみんなから大きな拍手を受け、女性は嬉しそうに、でも照れていました。   不便なことは多いでしょうが、穏やかに幸せに暮らしておられるのかなぁと。 視覚障害のことで困ったことがあれば、AARを通じて私にでも関係者にでもお知らせください… と言って車に乗りました。 中々同じ視覚障害のある人に会うチャンスが無いのでは? 私が出向いて、何か気持ちが軽くなったりしないかなぁ… とても深い印象を残した30分でした。   【ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問その4:受益者と家族の討論会】   現地三日目、 村の一つでの討論会を拝見することができました。 受益者と家族が集まって、経験を話し合うものです。 公民館のようなものは無さそうで、受益者の一人の家族が場所を提供してくれました。 写真のように、庭先をお借りし、ブルーシートを広げて車座になります。 プロジェクトの車で迎えに来てもらった家族もあれば、自力で集まった家族もいました。 少しでも自力で集まるようになれば、今後他の活動に広がった時に続けられるのですけどね。 今回集まったのは、肢体か知的の障害のある受益者と家族です。 改善されたことを聞くと、やはり貧しい人が多く、生活改善直結なコメントが多く出ました。 きのこ栽培の収入が無ければ、一月食べ物の目途が立たなかったのでありがたかった、とか。 困ることは、やはりまず労働力。 家族で協力して生産活動をするのですが、キーとなる人の体調がすぐれない事例が複数出てきました。 養殖で餌やりがちょっとできなかったらナマズが共食いしてしまった、などという事例も。 労働力不足の解消には、やはり受益者間で協力する、という意見が出てきました。 順番を決めて、例えば今日はAさん宅、明日はBさん宅、というようにみんなで回って作業をするイメージで、以前も実施していたようです。 他のグループでは、当初より少し近場に資材の調達先を見つけ、グループ討議で共有した事例もあるそうです。 三人寄れば文殊の知恵、ですよ!   ブルーシートがすっかり日向になってしまい、お昼も近いことから、三々五々皆さん帰途に着きました。   午後は、討論会に集まった受益者のお宅を戸別訪問。 庭に、きのこ栽培・資材保管用の小屋を建てた人が随分いました。 家より新しく建てているので、家よりきれいな小屋もありました。 養殖用の池はコンクリート固めで、プロジェクトで支援していました。 村の中では立派な家もあれば、高床式の一部屋とトイレくらい?と思われる家もありました。 お邪魔したらご家族の体調が芳しくなく…という訪問先もありました。 どこに行っても、鶏やアヒルが床下を歩き回り、子犬や子猫が足元を横切る、にぎやかな家ばかりでした。   視覚障碍者の私にとっては、何処に行ってもとにかく足元が不安定で、歩くのに非常に苦労しました。 介助の方無しには一歩も進めません。 農村部の困難に就いては言葉でよく聞いていたけれど、実際にお邪魔して身をもって体感しました。 市場に作物を持って行くのも一つや二つの苦労ではないでしょう。 でも、実際、世界各地のこうした農村部に障害のある人も大勢暮らしているのですから、少しでも暮らしやすく、そして地域社会の一員となっていけるよう、私たちも考えていくのだと思います。     …次号「ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問 その5」に続く。   ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数163/ 締約国・地域数 182 (2020年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2. 月刊誌 「新ノーマライゼーション」のご紹介 本誌は、1981年の国際障害者年に「障害者の福祉」として誕生、1995年に「ノーマライゼーション 障害者の福祉」としてリニューアルし、約20年間、障害のある人に関わる内外の幅広い情報を発信してきました。2018年4月に休刊をしましたが、2019年10月、「新ノーマライゼーション」としてスタートしました。 国や地方自治体の障害者施策に関する情報や動き、障害のある人の活躍や生活、暮らしの中の工夫、障害のある人に関する各地のユニークな活動や地域の企業、NPOなどの取り組み、海外の動きなど、さまざまな情報が掲載されています。 2020年5月号では『ネパールにおける教育事業とCBR−東京ヘレン・ケラー協会の国際協力−』として、JANNET正会員である「社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会」の福山博さまが、2020年6月号には『知的・発達障害者にやさしい地域創り〜カンボジアの住民活動〜』を、同じく正会員である「公益社団法人 日本発達障害連盟」の沼田ちよこさまがご寄稿されています。 購買のお申し込みとお問い合わせは、こちらまで。 お問い合わせ:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 総務部 総務課 TEL:03-5273-0894  Email:soumu@dinf.ne.jp 3. 「DINF」サイトにCBR/CBIDコーナー開設 障害保健福祉研究情報システム「DINF」(日本障害者リハビリテーション協会)では、独自の視点で世界の多様化する障害問題の「今」をお伝えしています。 この度、サイト内の『世界の動き』に「CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)・CBID(地域に根ざしたインクルーシブ開発)」が開設され、CBR/CBIDに関するWHOの文献や論文、CBRの国際会議やセミナー報告書等を一同に見られるようにしています。今後WHOのCBR マニュアル等も掲載する予定です。ご関心のある方はご利用ください。 URL:https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/cbr.html 編集後記 新型コロナウイルスの感染者が再び増加しています。 普段健康な人も含めて多くの人が感染症の恐怖を感じ、また外出制限や自粛が求められる中、さまざまな不自由を体験しています。自分の命や生活のあり方についての感受性が、否応なしに高まっている時期です。 危機的な状況の中で、障害のある人が「選別」の対象とされるおそれが高まる一方、新たな「生活様式」や社会のあり方を、障害者の側から提案し、より多くの理解が得られる機会も増えているのではないでしょうか。 どのようなメッセージを、いつ、だれが発表するのかが大切です。「それどころじゃない!」と「いまだからこそ!」についての問いかけは、障害分野から、今後とも続けていなければならないと感じています。 (原田 潔/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上