JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第201号 6月号 2020年6月30日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. すべての人々の健康といのちがまもられる世界をめざして 公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS) 小池 宏美 2. 「新型コロナで取り残されそうな人」オンラインイベントを実施して JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 3. ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問報告 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 田畑 美智子 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」2020年募集 3.  講演「『児童発達支援ガイドライン』に沿ったポーテージプログラムの活用   ー福祉と教育の連携を目指してー」と意見交換会   トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. すべての人々の健康といのちがまもられる世界をめざして 公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS) 小池 宏美 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)は、日本がアジアの人々に対して犯した戦争への深い反省に立ち、和解と平和の実現を願って1960年に設立されました。「医療を通じて愛を世界へ」のテーマの下、困難の中にある人々の健康といのちをまもり、人々と苦悩・喜びを分ちあうことを使命としています。 そのため、三つの活動をしています。一つ目は、ワーカー派遣です。クリスチャンの医師や看護師など保健医療従事者(ワーカー)を、アジア、アフリカの国々に派遣しています。派遣の任期終了後も派遣先団体や地域の人々によって活動が引き継がれていくことを目標としています。2019年度はバングラデシュとタンザニアにワーカーを派遣しました。 二つ目は、奨学金支援です。保健医療サービスを受けにくい地域で、貧しい人々や弱い立場におかれた人々のために働きたいと願う保健医療従事者を、奨学金で支援しています。研修の機会を提供することで、その地域の保健医療従事者を育成し、保健医療レベルの向上に協力しています。2019年度は7ヵ国の54人を支援しました。 三つ目は、現地の希望に沿った支援、協働プロジェクトです。現地の人々や団体と話し合って活動の目標と内容を決め、協力して保健医療活動をおこなっています。2019年度はカンボジアで5年間おこなっていた学校教育のプロジェクトが終了し、現地団体に活動が引き継がれました。2020年度はケニアでの療育事業のプロジェクト、タンザニアでの母子保健のプロジェクトが継続されます。  JOCSは、弱く貧しくされた存在の人々、周りから顧みられない存在の人々の一人ひとりとしっかり向き合っていきたいと思っています。国や宗教の違いをこえて共に生きる働きを通じて、「平和を実現するもの」であり続けたい、と願っています。 2.「新型コロナで取り残されそうな人」オンラインイベントを実施して    JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 「新型コロナで取り残されそうな人」というオンラインイベントが5月1日にzoomを利用して行われ、学生や市民など170名もの人が参加しました。その報告をさせてください。 新型コロナウィルス感染症の蔓延で、経済的にも精神的も多くの人が困難な状況におかれています。このセミナーでは、外国人、地域、障害者、若者といった「取り残されがちな人」という視点で話題提供をいただき、参加者がなにか「気づく」のが目的でした。そのうちのお一人の話題提供者として、盲ろうの福田暁子さんにお話をいただきました。 そのためには様々なチャレンジがありましたが、最もチャレンジングなのは福田さんへのオンラインでの情報保障でした。 耳が聞こえないので発声が聞こえません。目が見えないので、発話者や会場の雰囲気もわかりません。  実は福田さんにとって一番やりやすいのは触手話です。ところが、三密自粛の時代に「触」はできるだけ避けたい。今回は、福田さんのご理解を得て、要約筆記をメッセンジャーで送り、福田さんは点字リーダーで読み取っていただくことになりました。 本来は、主催者が「プロの」要約筆記者を用意することが必要ですが、予算はありませんでした。私が個人的に支払うのでも良いのですが、この取組を他のすべてのオンラインイベントでもできる「モデル」、つまり「主催者の工夫だけで」盲ろうの人の参加を可能」とした実績とするには、ポケットマネーで支出はできるだけ避けたいところです。そのため、今回はボランティアを募り、要約筆記を行うことにしました。7名のボランティアが福田さんの指導のもとに事前に(オンラインで)打ち合わせ・練習を行いました。 他の話題提供者には、ボランティアの要約筆記者がいるとの事情を説明して、「とにかくゆっくり」とお願いしていましたが、慣れていないせいもあり、またインターネットの環境がわるく、スムーズな運営にはいたりませんでした。 話者だけでなく、参加者の皆さんもリズムがつかめず、ストレスも高かったと思います。 ただ、「自分たちが今感じているストレスを、逆の意味で感じている人がいることを気づいた」などの多くの肯定的なアンケート結果もあり、主催者としてとても勇気づけられるものでした。 セミナーの様子はyoutubeで公開しています。 https://youtu.be/qDy4HOnNlsI?t=5917 また、「ソトコトオンライン」でも紹介いただいています。 https://sotokoto-online.jp/1518 3. ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問報告    社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合  田畑 美智子 〜2019年12月15日から21日まで、田畑美智子さんがAAR Japanの「障害者支援プロジェクト」の現地視察としてラオスに行かれました。その際のご様子を、連載でご報告いただきます。〜   【ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問 その1】   私としては初めて、AARJapan(難民を助ける会)がラオスで実施している障害者支援のプロジェクトの現場にお邪魔する機会をいただきました。 農村部で、なまずや食用蛙の養殖、きのこ栽培を実施し、収入を得ると同時に、地域社会への参加を進めようというものです。 現地での初日、サヤブリ県に車で5時間掛けて移動。 きれいに舗装されている道もあれば、工事現場のように物凄い埃で目の前が何も見えなくなる(私はこれをブラウンアウトと名付けました)ような道もあり、山道をくねくね登ったり下りたりする道もあり。 周囲は、街並みだったり、稲刈りが終わった茶色い田んぼだったり、遠くに山を見ながら続く森林だったり、ブラウンアウトの砂埃に茶褐色になった木々だったり。 中々バラエティ豊かな道中でした。 行きも帰りも立ち寄った食堂の汁麺もラープもとにかく美味で、最初から最後までカロリー摂取過多リスク大でした。   移動日に一人、聴覚障害の受益者を訪問しました。 界隈では比較的大きな家に住み、事業で得た現金も随分、大好きな服の購入に充てたそうです。 服の話をすると、心から満足そうでした。 着ている服以外にも、カラフルな服が何着も洗濯して干してありました。 好きなものに、自分で稼いだお金がつぎ込めるのは、確かにうれしいものです。 自分で買えるって、買ってもらうのとは全然違いますから。 ただ、得られた現金をすべて使ってしまっては、事業が1回で終わってしまうというのも、頭の痛いところ。 そして、ちょっと心配… 日本にいる我々だって、働いて得た収入すべてを好きなものに費やしてしまっては、暮らしが成り立たないわけで。 彼女に限らず、金銭管理の問題が度々上がりました。 学校に行っていないと足し算も引き算も厳しいのです。 彼女にはプロジェクトを通じてお友だちができて、お友だちと一緒に事業を続けると話してくれました。 というか、隣に座っていたお姉さんが教えてくれました。 よろしくお願いしますよ…と祈るような気持ちで家を後に。   【ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問その2:障害当事者との座談会】   現地二日目。   プロジェクトに関わる人たちと、エンパワメントに就いて考えたり、2つの県で実施しているプロジェクトの成果と課題を振り返ったり、今後に向けたアイデアを出し合ったりするディスカッションを開催しました。 場所は、サヤブリ郡中心地にある役所の一室を借りたラオス障害者協会(LDPA)の会議室。 直前に開催された国際障害者デーのイベントの跡が残る部屋でした。 実は、WBUの話を人前でするのは多少の経験がありますが、障害一般の概念を人前で語る機会はこれまで余りなく… 更に、参加者の経験や知識がどういうものか肌感覚で分かっていなかったので、ずっと手探りの5時間でした。 参加者の皆さんも、私との距離感がちょっと難しかったのではないかと心配です。 今振り返っても、どうだったのか、どうすればよかったのか… 個々の人たちの情報を、もっと私の方から伺った方が良かったのではないか、ということは、ありかと思います。 教訓。 何となく私自身の話をした後、障害のある人にとってのエンパワメント、という文脈の中で、参加者が経験を共有してくれました。 周囲の期待値の低さが続々… 兄弟で唯一、学校に行く必要なしと言われた男性が一言。 ―学校で頑張れ、と言って欲しかったー あぁ、そうですよね。 私個人としても、勉強については厳しく言われてきましたが、就職先での期待値の低さには何度も苦労しています。 悔しい経験を思い出し、不覚にも涙ぐんでしまいました。 ちなみにこの男性、期待値の低さを跳ね返して勉学に励み、IT関連の知見まで習得しています。 障害のある人とエンパワメントのモデルケースのような方でした。   プロジェクトの振り返りでは、外に出るようになった障碍者、家族の生活改善に寄与した障害者の話が色々出てきました。 他方、助力を担う家族の体調に問題があり労働力不足に悩む受益者、遠隔地なため資材の搬入に苦慮する受益者の姿も出てきました。 きのこ栽培には木くずなどの資材が必要ですし、養殖では相応の量の水が必要になるからです。 解決策は?と最後にプロジェクト推進に一番大切なものを尋ねると、何人かが、小さい組合を作って協力体制を築く、というアイデアを出してくれました。 このプロジェクトではいまだ自助グループ組成にいたっていませんが、いずれ、みんなの協力で生産活動を補完しあったり、そのうち地域のお祭りにみんなで参加したりできたらいいなぁと、現場を沢山見る前から妄想しております。   …次号「ラオスでの障害者支援プロジェクト訪問 その3」に続く。   ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数163/ 締約国・地域数 182 (2020年6月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」2020年募集 この度、NPO/NGOが持続発展的に社会変革に取り組めるよう、その組織基盤強化に助成する「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の2020年募集を開始いたしました。 本ファンドでは、新興国・途上国内で貧困の解消に向けて取り組むNGOを対象とした「海外助成」と、日本国内の貧困の解消に向けて取り組むNPOを対称にする「国内助成」の2つの助成プログラムで、第三者の多様で客観的な視点を取り入れた「組織診断」、「組織基盤強化」の取り組みに支援します。 なお、本年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、応募いただく事業への影響が予想されますが、個々の状況を鑑みながら、これまで通り助成事業の計画内容の変更や助成期間の延長など柔軟に対応して参ります。     助成対象:貧困の解消に向けて取り組むNPO/NGO 助成事業:第三者の客観的な視点を取り入れた「組織診断」「組織基盤強化」の取り組みに助成 応募受付期間:2020年7月16日(木)〜7月31日(金)必着 ※2020年募集事業の応募要項・用紙・手引きなどの詳細は、下記パナソニックのウェブサイトからダウンロードいただけます。 詳細URL:https://www.panasonic.com/jp/npo_summary.html お問い合わせ:Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs 事務局 ●「海外助成」協働事務局 認定特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)(担当:伊藤・塚原・上出) 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18 アバコビル5F TEL:03-5292-2911 E-mail:pnsf-sdgs@janic.org ●「国内助成」協働事務局 特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド(担当:坂本・霜田) 〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-4-3 日本橋MIビル1階 TEL:03-5623-5055 E-mail:support-f@civilfund.org ●総合事務局(海外助成・国内助成) パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部(担当:東郷・細村) 〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル TEL:03-3574-5665 3.講演「『児童発達支援ガイドライン』に沿ったポーテージプログラムの活用ー福祉と教育の連携を目指してー」と意見交換会    ポーテージプログラムは、本人の発達支援を行うとともに家族支援(ファミリーサポート)を行っていくもので、児童発達支援と重なるものです。(中略)ガイドラインにおいては、このポーテージの5領域を参考にアセスメントし、さらに具体的にサービスを提供していくこととしています。 講演の後に、ポーテージプログラムを活用いただいている全国の団体会員の3箇所から実践報告をいただきます。zoomを利用して、質疑応答や意見交換を行う双方向の会となります。事前に質問等がありましたら受け付けます。     【講演「『児童発達支援ガイドライン』に沿ったポーテージプログラムの活用ー福祉と教育の連携を目指してー」と意見交換会】 日時:2020年7月19日(日)13:00-15:30 場所:zoomでの開催 ※お申し込み後、参加費入金を確認して、zoomIDとパスワードを日本ポーテージ協会からメールでお知らせします。 参加費:個人会員・団体会員…1名1,000円        会員外参加…1名3,000円 定員:50名 演者:大塚 晃 氏(児童発達支援に関するガイドライン策定検討会座長・上智大学総合人間科学部教授・認定NPO法人日本ポーテージ協会理事) 〜ポーテージプログラムの活用報告(各15分)〜 @社会福祉法人富山市桜谷福祉会こども発達支援センター 恵光学園(富山県富山市) A社会福祉法人宗友福祉会 児童発達支援センター  天使園(愛媛県松山市) B特定非営利活動法人地域福祉創造協会ウインク障害児通所支援 たじりこころ園(大阪府泉南市) 申し込み先:下記の申し込みフォームからお申し込みください。 URL:https://japan-portage.org/jidouhattatsushien-kouen-2020     編集後記 COVID-19のパンデミックにより世界の感染者数が1000万人、死者が50万人に達するとニュースで報道されています。JANNETは有志で、WHOの公開資料「Disability considerations during the COVID-19 outbreak (仮訳タイトル:新型コロナウイルス COVID-19アウトブレイク中の障がいにおける懸念事項)」を和訳し、WEBサイトに掲載しました。ステークホルダーが適切なアクションを起こすことで、COVID-19により障がいを持つ人々、家族の潜在的リスクを軽減する内容について日本の皆様にもぜひ見ていただきたいと思います。 さておかげ様で201号を数えることになりました今回のJANNETメールマガジンですが、本会役員・委員として活動されている3名の方、JOCSの小池氏、野毛坂グローカルの奥井氏、日本視覚障碍者団体連合の田畑氏から、各団体の活動や最近の取り組みをご紹介いただきました。またインフォメーションもぜひご一読ください。  2020年は中期計画の評価を行う予定になっていますJANNET、これからもよろしくお願いします。 (伊藤 智典/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上