JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第196号 12月号 2019年12月27日発行 ―目 次―  トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1. こころとからだのリハビリテーション 一般社団法人 日本作業療法士協会 国際部 西本 敦子 2. アジア太平洋障害者連携フォーラム2019 in パキスタン 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 研修課係長  光岡 芳宏 3. 「『とり』のこさない セミナー2019」を開催しました JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 日本財団「CANPAN」が「非営利組織評価センター」へ イベント情報 1. 横浜市立大学エクステンション講座  地域指標を活用した住民参画型の持続可能な地域づくり〜米国からの学びと日本の挑戦〜 2020年1月16日(木) 2. 令和元年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業 「デイジー教科書事例報告会」 2020年3月8日(日) 3. 第3回CBR/CBID世界会議 2020年7月28日(火)-30日(木) トピックス 〜会員団体の活動紹介〜 1.  こころとからだのリハビリテーション 一般社団法人 日本作業療法士協会 国際部          西本 敦子 一般社団法人日本作業療法士協会は、作業療法士国家資格取得者からなる団体で1966年に結成し、1983年に厚生省(現 厚生労働省)より社会法人として認可され2012年に一般社団法人に移行しました。会員数は現在54,054名(平成28年9月)おり、日本国内の作業療法士の約68%が当協会に加入しています。 作業療法という言葉に馴染みがないかもしれませんが、リハビリテーションの1つで、病気やけが、もしくは生まれながらに障害がある人など、日常の生活に支援が必要な人が、障害と折り合いをつけながら生活の中での作業活動をとおして、こころとからだを元気にするリハビリテーションです。作業療法士は、対象となる方々に運動・精神機能といった基本的な能力、食事やトイレなど日常生活で行われる活動の維持や改善、就労や就学、地域活動への参加を図り、生活環境の調整や社会資源、諸制度の活用を促して、その人らしい生活の獲得をどうすれば実現できるかを医学的な知見に基づいて支援します。 当協会では、1. 作業療法の学術・技能の研鑽、2. 作業療法士の資格向上、3. 作業療法の普及と発展を掲げ、国内外に向けて意欲的な活動を行なっています。 具体的には、作業療法の学会・研修会等の開催(写真1)、作業療法の調査研究、刊行物の発行、災害時の現地への作業療法士の派遣など、また、JICAの青年海外協力隊やシニアボランティアに応募し途上国で活動をする作業療法士はこれまで300名ほどおり(写真2)、国際学会で研究発表やアジアや欧米など他国の作業療法士とも連携をし、国内だけではなく海外にも活躍の場を広げています。また、JANNETを通じて障害分野のNGO団体や障害当事者団体とも連携し、積極的に他関連分野の情報収集を行い、作業療法についての知見を発信しております。  障害をもちながら生活上で困っていることがありましたら、ぜひ身近の作業療法士にご相談ください。 2.  アジア太平洋障害者連携フォーラム2019 in パキスタン 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 研修課係長  光岡 芳宏            2019年10月21、22日の2日間、パキスタン国ラホール市にて、「アジア太平洋障害者連携フォーラム2019 in パキスタン〜『チャリティから投資へ』障害者課題解決に向けた新たな視点を導入する〜」(以下、「フォーラム」)が開催されました。フォーラムには、パキスタン国パンジャブ州知事など行政関係者、障害者団体、日本国大使館、国際協力機構(JICA)パキスタン事務所、AAR-Japanなど日本関係者を含め、延べ200名を超える参加がありました。 本フォーラムは、ダスキン愛の輪基金及びJICAの一部の研修修了生を対象としたフォローアップ事業の一環であり、日本で研修を終えた研修生が自国・地域でそれぞれの活動に取り組む中で生じている課題を解決するための事業です。今回はダスキン卒業生が設立した、自立生活センター(マイルストーン障害者協会)に事務局を委託しました。 フォーラム初日は3つのセッションが行われました。セッション1では、障害者団体の組織形態と資金確保について議論がされ、従来の慈善事業ベースではなく、投資や社会起業、障害者支援をサービスとして提供するビジネスモデルの提案がなされました。 セッション2は、女性障害者団体及び貧困・開発基金の代表らが登壇し、障害分野の課題解決には、様々な分野で活動する団体との連携や協働が不可欠であり、お互いの強みや協働のメリットを理解し、関係性を築くのかが問われているとの示唆がありました。 セッション3は、日本人がパキスタン地震で被害にあった女性障害者の働く場を作り、彼女らのエンパワメントを実現している先駆的なモデルが注目されました。フォーラム2日目には、パキスタンとアジア太平洋6か国地域(台湾、カンボジア、ネパール、ベトナム、タイ、ミャンマー)で活動する、約20の障害者団体から事業内容や活動成果についてスピーチがあり、国や障害種別を超えた障害者同士の交流が活発に行われました。 研修生たちが本フォーラムでの学びや出会いによって、それぞれの活動が一歩でも前進することを期待しています。     3. 「『とり』のこさない セミナー2019」を開催しました JANNET研修・研究委員 奥井 利幸 「『とり』のこさない セミナー2019」が2019年11月16日、戸山サンライズで実施されました。本セミナーは「誰も取り残さない国際協力」を実現するために、今まで障害分野に興味のあまりなかった人も含めて多様な方々の参加を期待して実施したものです。「楽しく実施、楽しく参加」ということで、「『とり』のこさない」と「鳥」をかけて、鳥の指示棒を使ってのプレゼンテーションが行われました。 セミナーは西本敦子さんの司会で、まずはJANNETの清水直治会長の挨拶で開始され、ついで国連広報センターの千葉潔氏から持続可能な開発目標(SDGs)の本質をわかりやすくお話いただきました。つまり、SDGsの17の開発目標の一番目は「貧困をなくそう」であり、それを実現するために飢餓をなくす、健康と福祉を、教育をなど、その他の開発目標がつながってくるなどストンと理解できるものでした。SDGsの基本精神は「誰一人取り残さない」ですが、まさにこのセミナーの本題「障害者も障害者でない人も取り残さない」と一致することが確認できたお話でした。 続いて合澤栄美氏から株式会社ミライロの取り組みの話しをしていただきました。ミライロは「障害者でもできる」から「障害者だからできる」ソーシャルビジネスを展開している会社です。インクルーシブな社会をつくるためには、民間企業のアクションが重要とのヴィジョンをもとに民間企業がインクルージョンをすすめることを「ビジネスとして」助言しています。例えば、和歌山にあるアミューズメントパークのアドベンチャーワールドを顧客として、ミライロの契約障害者が調査を行い、コンサルティングや従業員教育を行った結果、90%の従業員が障害のあるお客様を受け入れる自信がなかったのが、80%の従業員が自信があるに変わったそうです。それにより企業価値の向上、社会的責任だけではなくビジネスの展開につながった例は非常に印象的でした。 パネルディスカッションでは、AAR Japanの野際紗綾子氏、日本視覚障害者団体連合の田畑美智子氏、全日本ろうあ連盟の荒井康善氏からそれぞれの立場で「取り残されない」意味や活動のお話をいただきました。 今回のセミナーの参加者はNGO関係者だけでなく、大学関係者、学生、社会人など多岐にわたり、アンケートでも「ビジネスでインクルーシブを実現すること」「様々な視点で障害を考えることができたこと」などが印象的だったとの声があり、「取り残さない」を切り口に裾野を広げることができたことは意義があったと思われます。来年にむけてさらに良いものにしていきたいと思います。     ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数163/ 締約国・地域数 181 (2019年12月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en   2. 日本財団「CANPAN」が「非営利組織評価センター」へ 日本財団CANPANとして知られているNGO/NPOのためのサイトは皆さまご存知の方も多いと思います。 このほど担当の山田さんから、CANPANセンターは解散し、新たに「非営利組織評価センター」として引き続き情報提供を続けていくというお知らせがありました。これからもセミナーなどは開催を続けるとのことです。 https://jcne.or.jp/                イベント情報 1.横浜市立大学エクステンション講座 地域指標を活用した住民参画型の持続可能な地域づくり 〜米国からの学びと日本の挑戦〜 2020年1月16日(木) 本講座では、米国を中心に指標を活用した地域づくりを推進している“コミュニティ・インディケーター・コンソーシアム”によるウェブサイトを活用した参画型プログラムを紹介し日本における同種の取り組みの可能性を議論します。 開催日時:令和2年1月16日(木)14:30〜16:30 会場:横浜市立大学 金沢八景キャンパス(横浜市金沢区瀬戸22-2) アクセス:https://www.yokohama-cu.ac.jp/access/hakkei_campusmap.html 京浜急行「金沢八景駅」下車徒歩5分 シーサイドライン「金沢八景駅」下車徒歩5分 同時通訳付き 受講対象:一般・学生 受講料:2,300円(横浜市立大学卒業生は割引になりますのでお申し出ください) 定員:100名 プログラム: 1. 開会挨拶:横浜市立大学大学院社会文化研究科 影山摩子弥 教授 2. 趣旨説明:持続可能な地域づくりのための参加の仕組み 一般財団法人CSOネットワーク 事務局長代行 長谷川雅子 3. 基調講演:コミュニティ・インディケーター・コンソーシアム 事務局長 Chantal Stevens 氏 「目標・指標の可視化による参加型の地域づくり」 4. 事例報告:ローカルSDGs「5goals for 黒部」の取り組み 社会福祉法人黒部市社会福祉協議会総務課課長補佐 小柴徳明 氏 パートナーシップで進める 地域づくり テキサス州「CAN」の取り組み コミュニティ・アドバンスメント・ネットワーク事務局長 Raul Alvarez氏  5.パネルディスカッション:聞き手 :一般財団法人 CSOネットワーク 常務理事 今田 克司  申し込み・お問い合わせ:以下のウェブサイト、もしくはお電話(045‐787‐8930)、FAX( 045-701-4338)にてお申し込み、お問い合わせ下さい  https://www.yokohama-cu.ac.jp/ext/lib/20200116chiikisdgs.html 企画監修:影山摩子弥(横浜市立大学大学院都市社会文化研究科教授) 主催:横浜市立大学地域貢献センター、一般財団法人CSOネットワーク 助成:独立行政法人 国際交流基金 日米センター(CGP) 後援:横浜市政策局 <海外ゲストプロフィール> Ms. Chantal Stevens (シャンタル・スティーブンス) コミュニティ・インディケーター・コンソーシアム(Community Indicator Consortium:CIC)事務局長 コミュニティ・インディケーター・コンソーシアムに設立時より関わり、2005年〜2008年及び2012年理事。地域開発指標の草分け、サステナブル・シアトル前事務局長、キング・カウンティ全域をカバーする地域フォーラムの外部マネージャー及びマネジメントアナリスト等歴任。地域指標と公的関与が、行政と市民社会の連携の鍵と主張するリーダーの一人である。ワシントン大学海事(Marine Affairs)修士。 CICのウェブサイト:https://communityindicators.net Mr. Raul Alvarez(ラウル・アルバレズ) コミュニティ・アドバンスメント・ネットワーク(Community Advancement Network:CAN)事務局長 2015年より、コミュニティ・アドバンスメント・ネットワーク事務局長。2000年より6年間オースティン市の市議会議員としてコミュニティ・アドバンスメント・ネットワークの運営委員を務め、2004年に委員長、2015年より現職。2008-2010オースティンコミュニティカレッジ理事。2007年よりオースティン独立学区(公立学校を運営するための行政から独立した法的組織)の運営にも携わっている。スタンフォード大学産業技術学士、テキサス大学地域コミュニティ計画修士。 CANのウェブサイト: http://canatx.org/dashboard/ 2.令和元年度 音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究事業 「デイジー教科書事例報告会」 2020年3月8日(日) 本報告会では、デイジー教科書提供事業についてその取り組みと現状についての報告を行い、読みの困難 のある児童生徒へのデイジー教科書を活用した ICT 支援の実践、導入について、眼科医としての診療実績に基づく読みの困難を持つ子どもへの支援の実例、デイジー利用者の視点、支援団体・製作団体などそれぞれの立場から有効な事例をご報告していただき、そこから得られた成果や課題を学び、今後のデイジー教科書のあり方と普及について考えます。 日時:3月8日(日)13:30〜17:00 会場:戸山サンライズ(東京都新宿区戸山1-22-1) 2階大研修室 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参加費:無料 定員:140名(定員になり次第締切)情報保障:要約筆記付き プログラム: 12:30-13:30 デイジー教科書、機器展示 13:30 開会挨拶:福母 淳治(日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:00 デイジー教科書の利用申請状況報告:西澤 達夫(日本障害者リハビリテーション協会 参与)  14:00-14:45 学習障害の疑いのある子どもたちへの診療、支援:松久 充子(さくら眼科 院長) 14:45-15:00 (休憩) 15:00-15:45 デイジー教科書利用経験者からの提言、小学生時代の支援:小林 明史(長野県の高校生)、池田 明朗(長野県上田市立丸子中央小学校教諭) 15:45-16:30 デイジー教科書製作の進化と新たな活用方法の提案:鈴木 昌和(特定非営利活動法人サイエンス・アクセシビリティ・ネット) 16:30-17:00 質疑応答 17:00  閉会 申込先: https://kokucheese.com/event/index/587794/ お問い合わせ:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 情報センター TEL:03-5273-0796 / FAX:03-5273-0615 E-mail: daisy_c@dinf.ne.jp         3.第3回CBR/CBID世界会議 2020年7月28日(火)-30日(木) 日時:2020年7月28日(火)―7月30日(木) 場所:ウガンダ テーマ:「誰も取り残さないー障害者のコミュニティでの人権実現のため地方から世界までの 多分野連携」 発表要旨の申し込みは2020年1月31日まで。 ※なお、第一回CBR世界会議は2009年にインドで開催、第2回CBR世界会議は2016年にマレーシアで開催されました。 https://cbrglobalnetwork.org/ 編集後記 障害者権利条約の締約国数が、181となりました。 国連のウェブサイトで他の主要な人権条約の締約国数を見てみると、子どもの権利条約(1989年採択)が196、女性差別撤廃条約(1979年)が189、人種差別撤廃条約(1965年)が182ですが、21世紀に入ってから採択された障害者権利条約(2006年)が、それらに次ぐ数となっているのは、特筆すべきです。 今や障害分野は、人種、女性、子どもなどと並ぶ代表的な人権分野として、世界で認知されていると言えると思います。 一方で障害者権利条約についての国内での認知度はまだまだです。少し前のデータになりますが、「障害者に関する世論調査(平成29(2017)年度)」によれば、権利条約を知らないと答えた人が77.9%にのぼります。 来年2020年は、権利条約の日本の初審査が国連で行われます。権利条約は、障害者団体を含む市民社会が参加して作られた条約として知られています。SDGsと併せて、この条約の実施や啓発をNGOの力で進め、「誰も取り残さない」社会を引き続き目指していきたいと思います。 本年もこのメルマガをお読みいただきありがとうございました。 2020年もよろしくお願いいたします。 (原田 潔/JANNET広報啓発委員)JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上