JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第195号 11月号 2019年11月29日発行 ―目 次―  トピックス 1. 国際リハ協会(RI)の最近の動き −世界障害開発基金などを中心にー 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 副会長 松井 亮輔 2. オランダ・ソーシャルファーム実態調査報告会 目白大学 名誉教授 矢島 卓郎 3. 国際リハビリテーション研究会 学術集会報告 国際リハビリテーション研究会 知脇 希 〜会員団体の活動紹介〜 今月号はお休みします。 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2. 新刊紹介 3. マヤ・トーマスさんの最新論文の日本語訳のご紹介 4. 「国連障害者のインクルージョン戦略:障害者の権利を実現するぞ」 イベント情報 1. 障害者週間セミナー(DAISY図書) 「マルチメディアDAISY教科書等を利用した学習の推進及びマルチメディアDAISY図書の製作を通じた障害者の社会参加」について 〜2015年国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進に向けて〜 2019年12月5日(木)  2. JDF全国フォーラム「障害者権利条約の完全実施をめざして」     〜2020年の審査・勧告でどう変わる、私たちの暮らし〜 2019年12月5日(木) 3. 第3回CBR/CBID世界会議 2020年7月28日(火)-30日(木) トピックス 1. 国際リハ協会(RI)の最近の動き −世界障害開発基金などを中心にー 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会          副会長  松井 亮輔 日本からは、リハ協および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が加盟する国際リハビリテーション協会(以下、RI。本部ニューヨーク)は2022年に創立100周年を迎えることから、その活動の活性化を図ることを意図して、2016年にRI世界障害開発基金およびアフリカ基金を創設しました。その基金は、中国のRI加盟団体である中国障害者連合会を通じての中国政府からの寄付金500万ドルをもとに、アフリカおよびそれ以外の地域における障害関連プロジェクトを支援するためのものです。 助成対象となる分野は、リハビリテーション、権利擁護、教育、雇用、福祉機器、アクセシビリティ、データ収集および研究など。同基金の審査委員会の委員は、RI会長、事務局長、財務担当役員および各地域担当副会長から構成されます。 これまでの3年間に全体で18のプロジェクトを支援しています。これらのプロジェクトは、RI加盟団体単独か、あるいはRI加盟団体が他の団体と共同で企画・実施するもので、基金からの助成期間は原則として1年、助成の限度額は20万ドルとなっています。2019年9月には第4回目の助成プロジェクトの公募(応募期間は、2019年9月1日〜10月15日)が行われ、現在その審査が行われています。 同基金の助成対象となったプロジェクトの実施状況や成果のモニタリングおよびフォローアップは、これまでのところ主として香港のRI加盟団体に所属する障害分野の専門家によって実施されていますが、日本の関係者の協力が期待されています。実施済みのプロジェクトの成果を含む、詳細については、近日中にRIのウェブサイト(www.riglobal.org )で公開されることになっています。 なお、すでに実施されたプロジェクトで、リハ協もかかわったのは、今年6月にマカオで開催されたRIアジア太平洋地域会議(6月26日〜28日)に併せ、アジア太平洋地域の障害者を対象に実施された「アクセシブルICTおよびウェブベースの職業技能に関するワークショップ」(6月23日〜25日)です。DAISYにかかる研修を担当しました。          2.  オランダ・ソーシャルファーム実態調査報告会 目白大学 名誉教授          矢島 卓郎   2019 年 11 月 4 日(月・祝)に戸山サンライズで、(公財)日本障害者リハビリテーション協会の主催、埼玉県民共済の助成による、オランダのソーシャルファームの実態に関する調査報告会が開催されました。日本型ソーシャルファームの推進に向けた視察は、今回が6ヵ国目になります。 同協会理事長で恩賜財団済生会理事長、ソーシャルファームジャパン理事長の炭谷茂氏が、オランダの経済発展におけるソーシャルファームの位置づけと役割と展望、同協会参与の寺島彰氏がオランダの社会保障制度改革と障害者関連制度、同協会参事野村美佐子氏がソーシャルファームの実際について、資料や写真を使って次のように報告されました。 オランダは人口1700万人の資源のない農業国で、多宗教、多民族の国民からなるダイバーシティ社会(包摂社会)という特徴を持っています。現在は、付加価値の高い農業、貿易、情報産業の発展により「オランダ病」から「オランダの奇跡」といわれる経済成長をとげ、経済と福祉がうまく調整・調和した国になりました。 特に、経営者と労働者の協調で賃金が決まり、また、労働形態の多様化でワークシェアなどが普及し、少ない労働時間で多くの成果を上げています。更に、地域で助け合う「マントルケア」が活発で、それがソーシャルファームの素地になっています。 オランダの障害者は、180万人で全人口の約10%です。最近の障害者福祉施策で、給付主体から就労重視に転換しました。社会保障制度改革には、2015年1月1日に施行された社会支援法、社会参加法の制定、ソーシャルインクルージョンの推進、地域ケアの推進などを地方自治体へ権限委譲があります。特に、社会参加法では、障害者の一般就労、最低賃金+15%の保障、「新しい保護雇用」の新設、就業能力の評価と給付の厳格化、地方自治体の実施責任、公・民で障害者ポストの設定などが特徴です。 オランダのソーシャルファームは、ソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)といわれ、現在、社会的企業組合に加盟している200社、「新しい保護雇用」を引き受ける「社会雇用事業所」100ヵ所が、それに該当します。キリスト教系などの中間組織がビジネス志向のもと、業種は豊富にあり、また、企業や地方自治体と連携して仕事を創出しており、今後大きく発展すると思われます。そこでは、役所や航空機の椅子の修理、掃除、種子の販売、発根培地の製造販売、レストラン、ケータリングなどをおこなっており、障害者が誇りを持って働いたり、訓練を受けたりしています。 また、農福連携事業は世界のパイオニアで、30年ほど前から全国農業ケア支援局の指導によりケアファームが創られ、現在は1400ヵ所あります。そこの入所や通所施設を利用する精神や知的などの障害者が、広大な牧草地で乳牛、山羊、羊など自然とふれあいながら乳・肉製品作りなどの酪農や有機野菜などの栽培という農業体験を通して、心身の回復につなげていました。 日本では、障害者の最低賃金と生活の保障、労使協調と経営力、企業連携、付加価値の高い仕事の創出の課題があります。今後、東京都のソーシャルファーム推進条例の提案も契機に、環境分野の仕事の多いソーシャルファームが農福連携事業も考慮し、日本型ソーシャルファームとして発展することが期待されます。               3.  国際リハビリテーション研究会 学術集会報告 国際リハビリテーション研究会 知脇 希             11月9日土曜日、聖心グローバルプラザで第3回学術大会「世界の多様性に貢献するリハビリテーション」を開催しました。会員からの報告に加え、養成課程における国際リハビリテーション教育、学生のミャンマー研修報告、外国人人材を対象とした専門日本語教育など多様な報告がありました。 今回のメインとなるクロージングシンポジウム「国際リハビリテーションにおける障害当事者とリハ専門職の協働の可能性」では、作業療法士1名、当事者2名のシンポジストからご意見を述べていただきました。 Bridges in Public Health の石本馨さんからは、ロールモデル、技術協力者となる当事者団体、リハビリテーション専門職、という協働の可能性が提示されました。笹川平和財団の林早苗さんからは、@アウトリーチ、A病院と社会との繋ぎ、B専門を極めるという形のご提案がありました。JICA北海道の石田由香里さんからは支援国盲学校校長が石田さんの能力を紹介し、石田さんが外国の当事者として支援国の問題を語るという分業例を提示していただき、外国(外部)の人間が指摘することが支援に繋がる例をご紹介いただきました。 リハビリテーション専門職は、病院において患者を直接治療する仕事が中心でした。しかし、障害当事者の生活や仕事の場を広げるためには、当事者、支援団体、専門家、住民、行政、政府と繋がることが大切で、その取り組みが一部の地域で実践されています。この繋がりのなかで外部者として、専門職として、つなぎ役や通訳者として活動できること感じるシンポジウムでした。また、当事者のお二人がイギリス留学を経験されていることも印象的でした。当事者自身が経験し、語る力を持ち、ロールモデルとなることが必要であることを感じました。 第4回学術大会「変化と深化 拡大する国際リハビリテーションの領域」は、2020年11月7日、福岡で開催されます。報告も広く募集しますので、是非お申込みください。         〜会員団体の活動紹介〜 今月号は、お休みします。 12月号は「一般社団法人 日本作業療法士協会」のご紹介予定です。お楽しみに!   ************************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数163/ 締約国・地域数 181 (2019年11月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.新刊紹介 『SDGsと日本 誰も取り残されないための人間の安全保障指標』 NPO法人「人間の安全保障」フォーラム(編) 高須幸雄(編著) 明石出版 SDGsの指標を、取り残されがちな人に焦点を当て、人間の安全保障の立場で指標を設定することで、課題を浮き彫りにさせた世界初の試みと言われています。ぜひご一読ください。    3. マヤ・トーマスさんの最新論文の日本語訳のご紹介 2019年7月にモンゴルで開かれた、第4回アジア太平洋CBID会議で講演された、論文「 CBR から CBID へ 「変われば変わるほど、変わらない」」の日本語訳が出来ましたのでご覧ください。 https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/cbr/cbr-cbid.pdf CBR/CBIDに関するさまざまな考え方について歴史的流れとともに、論点を整理して書かれています。      4. 「国連障害者のインクルージョン戦略:障害者の権利を実現するぞ」 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、「国連障害者のインクルージョン戦略:障害者の権利を実現するぞ」を開始するため、2019年12月3日の障害者の日にイベントを開催します。 国連本部はすでにこの戦略を開始しておりアジア太平洋でも開始するとのこと。イベントの様子は、ESCAPがYouTubeで紹介する予定です。      イベント情報 1. 障害者週間セミナー(DAISY図書) 「マルチメディアDAISY教科書等を利用した学習の推進及びマルチメディアDAISY図書の製作を通じた障害者の社会参加」について 〜2015年国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進に向けて〜 2019年12月5日(木) 日時:2019年12月5日(木) 11:50 〜 13:40 会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F) 参加費:無料 情報保障:手話、要約筆記 定員:100人 (定員になり次第締め切ります プログラム: デイジー図書の製作に参加して(当事者の立場から)          鹿久保芹菜(脊髄性筋萎縮症患者:デイジー製作参加者)   他 お申し込み:https://kokucheese.com/event/index/582348/ お問い合わせ:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 TEL: 03(5273)0601 FAX: 03(5273)1523 E-mail: soumu@dinf.ne.jp 2.JDF全国フォーラム「障害者権利条約の完全実施をめざして」     〜2020年の審査・勧告でどう変わる、私たちの暮らし〜 2019年12月5日(木) 本年の全国フォーラムでは、障害者権利委員会の前委員長であるテレジア・デゲナーさんをお招きし、委員会でのご経験や、条約に基づく障害の「人権モデル」の考え方等についてお話しいただくとともに、条約の実施を通じて、国内の法制度や身近な暮らしをどう変えていけるのか、共に話し合います。 日時:2019年12月5日(木)10:00〜16:40 場所:ベルサール東京日本橋 5階Room4+5(東京都中央区日本橋(日本橋駅直結)) 参加費:1,000円 (介助者等は無料。点字資料、手話通訳、要約筆記、ヒアリングループあり) 主催:日本障害フォーラム(JDF) プログラム: 10:00 主催者挨拶、来賓挨拶        10:10 基調講演            テレジア・デゲナー 前 国連・障害者権利委員会委員長        12:00 イエローリボンのご紹介        12:10 昼休み        13:10 JDF障害者権利条約「パラレルレポート」の作成と「建設的対話」に向けた取り組み        13:40 国連・障害者権利委員会の最新動向(仮題)            石川 准  障害者権利委員会副委員長/障害者政策委員会委員長        14:10 パネルディスカッション              各分野の取り組み・試み 〜私たちの暮らしを変えるために        パネリスト:(順不同・一部調整中)             日本弁護士連合会、滋賀県健康医療福祉部障害福祉課、キリン福祉財団、             全日本ろうあ連盟、全国精神保健福祉会連合会        16:40 閉会 お申し込み:下記URLよりお申し込みいただけます。URL:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSduMhJLCA_9NrlwZRKJ_iYxcSt_fldjxkqFqV-5pXp4zfWQ0A/viewform お問い合わせ:日本障害フォーラム事務局 TEL:03-5273-0601 FAX:03-5292-7630 E-mail jdf_info@dinf.ne.jp 3.第3回CBR/CBID世界会議 2020年7月28日(火)-30日(木) 日時:2020年7月28日(火)―7月30日(木) 場所:ウガンダ テーマ:「誰も取り残さないー障害者のコミュニティでの人権実現のため地方から世界までの 多分野連携」 発表要旨の申し込みは2020年1月31日までに延長されました。 ※なお、第一回CBR世界会議は2009年にインドで開催、第2回CBR世界会議は2016年にマレーシアで開催されました。 https://cbrglobalnetwork.org/ 編集後記 肌寒い季節になってきましたが、JANNETはいつでもホットです。11月16日に開催したとりのこさないセミナーについては来月号のメルマガで紹介予定です。 さて、今月のトピックスとして、国際リハ協会(RI)の最近の動き−世界障害開発基金などを中心に−として、日本障害者リハビリテーション協会副会長の松井亮輔氏に執筆いただきました。2022年がRIの100周年とのこと、25歳を超えたくらいのJANNETはまだまだ若さ溢れます! またオランダ・ソーシャルファーム実態調査の報告会として、目白大学名誉教授の矢島卓郎氏に執筆いただきました。エコの可能性を秘める農福連携事業、東京のサイトも視察してみたいと思います。つぎに国際リハビリテーション研究会の学術集会報告について、知脇希氏より執筆いただきました。グローバリゼーションによって、国外で働く日本人、日本で働く外国人材がますます増えていく中、国境を越えて障害インクルーシブ社会を目指す団体たちの集まり、JANNETの必要性が増していくものと思いました。 (伊藤 智典/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上