JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第160号 12月号 2016年12月27日発行 ―目 次―  トピックス 1.国際セミナー報告 障害のある人が地域社会を変えていく活動から学んだこと                    渡邊 雅行(日本CBRネットワーク 代表)  2.「誰一人取り残さない地域社会づくり研修プログラム開発事業《の概要 上野 悦子(日本障害者リハビリテーション協会)         3.「誰一人取り残さない地域社会づくり研修プログラム開発事業《振り返りの会に参加して 長谷川 雅子(一般財団法人CSOネットワーク プログラム・オフィサー) インフォメーション 1. Disability Rights Promotion International創設者Bengt Lindqvist氏死去 2. 第28回世界ろう連盟アジア地域事務局代表者会議開催される 3.国際障害者デー:潘基文国連事務総長メッセージ 4. 特集「アジアの女性障害者*複合差別と権利擁護*《が発行 5.IGES SDGs Briefing Note No.2: SDGsに関する最新動向とIGESの取り組み 6. 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の決定 7.Accessibility for All: Good Practices of Accessibility in Asia and the Pacific to Promote Disability-Inclusive Development 8.First Meeting of the Task Force on the Mainstreaming of the Rights of Persons with Disabilities in the ASEAN Community 9.2030 Agenda demands meaningful participation from persons with disabilities 10. 国連障害者の権利条約批准国情報 イベント情報 1. 2017年JIA交流会 2.JIAチャリティホームパーティ 3.RI総会・会議報告会  4. JANNET研究会「カンボジアの村人たちはどうして障害に取り組んだのか?《 5. 組織基盤強化フォーラム ”参加”によるNPO/NGOの組織基盤強化 6.JICA関西ロビー展「マレーシアの障害者が作るバティック《展 7.企画展「生きる。暮らす。守る《-つながる世界の命と健康- 8.2017 Global Platform for Disaster Risk Reduction   トピックス 1.国際セミナー報告 障害のある人が地域社会を変えていく活動から学んだこと                     渡邊 雅行(日本CBRネットワーク 代表)   2016年11月12日(土)に戸山サンライズにおいて、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催で国際セミナー「エンパワーされた障害のある人が地域を変える!*Community Based Rehabilitation*《が開催されました。講師は、国際NGOクリストファー・ブラインデン・ミッション(CBM)のBarney McGlade氏(バーニーさん)とErly Ocasiones氏(アーリーさん)というお二人の障害当事者でした。お二人ともフィリピンで活動されており、CBMの活動方針等の団体説明、自分自身をエンパワーする障害のある人の地域社会へのプラスの変化、インクルーシブな災害管理について講演しました。  国際セミナーには、障害のある人、その障害も身体、視覚、聴覚とさまざまで、JICAやダスキンの研修生、また、国際協力、障害者福祉、地域開発、リハビリテーション関係者など多様な背景をもつ人々、およそ50吊が参加しました。  今回、国際セミナーでは、前半はバーニーさん、アーリーさんの講演、そして、講演内容についての質問や議論を深めるために3グループに分かれて自己紹介、感想、質問を述べ意見交換を行いました。グループワークの間、バーニーさん、アーリーさんがグループから出された質問への回答やコメントをくださり、講演の中身を深めることができました。  私は今回、グループワークのコーディネーターを務めさせていただきました。視覚や聴覚に障害のある方、また、言語や文化、また経験や専門が異なる方と場を共有するという貴重な経験でした。他の人の考えを聞くこと、自分の考えをもつこと、が大切なこと、そして、逐次通訳、要約筆記などの支援がグループワークの間に行われていたのですが、情報が伝わっているかどうかを確認しながら行うことの難しさを感じました。CBRは、地域社会にねざしたインクルーシブな開発(CBID)という、誰もが有する人権に焦点があてられ望ましい方向性が打ち出されています。日本も障害のある人を取り巻く地域社会が少しずつ変わっているように思いますが、さまざまな場面で生活や社会参加に制約をもたされている人がいます。真のインクルーシブな地域社会を築いていくために、障害分野は大きなインパクトを与えられるということを学びました。 2.「誰一人取り残さない地域社会づくり研修プログラム開発事業《の概要 上野 悦子(日本障害者リハビリテーション協会)         貧困や孤立は途上国固有の問題とはもはやいえず、また地方の衰退を何とかしようとさまざまな取り組みが行われています。日本障害者リハビリテーション協会では、国連のSDGsのテーマを念頭においた「誰一人取り残さない《地域社会づくり研修プログラム開発を、日本財団のご助成により実施しています。国内の3箇所(松本、吊古屋、富山県入善町)で研修とそれに関する一連の活動を行いました。地域課題の分析から始まり、キーパースンの発掘、ワークショップ用事例作成を行い、研修では「できることもちよりワークショップ《(草の根ささえあいプロジェクトが7年間かけて開発・実施)を実施しました。今後は、地域でのネットワーク構築とそれに関するサポートが行われる予定です。12月4日に、3箇所で実施された一連のプロジェクト、ワークショップ実施の成果についてご発表いただく「振り返りの会《を開催しました。研修講師をはじめ参加者かららも活発なコメントをいただきました。詳細は報告書にまとめますので、ご関心のある方は事務局までお問い合わせください。 3.「誰一人取り残さない地域社会づくり研修プログラム開発事業《 振り返りの会に参加して 長谷川 雅子(一般財団法人CSOネットワーク プログラム・オフィサー)  12月4日(日)、東京都港区の日本財団にて開催された、日本障害者リハビリテーション協会主催による「誰一人取り残さない地域社会づくり 研修プログラム開発事業《振り返りの会に参加させていただきました。 昨年、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の「誰一人取り残さない《というテーマは、CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)の目的とされるCBID(Community-based Inclusive Development: 地域に根ざした共生社会の実現)をわかりやすく表現したものと捉えることができます。今回の「振り返りの会《では、障害の分野におけるCBR*CBIDへの長年の取り組みを踏まえ、更に、SDGsの「誰一人取り残さない《を日本の地域社会の中で実践するために、日本障害者リハビリテーション協会が開発中の研修プログラムについて、今年度試験的に実施された事例を中心にご紹介がなされました。 冒頭、上智大学の大塚晃教授より、プログラムへの期待とともに「地域づくりを、障害から発し、障害を越えて《進めることの難しさが指摘された後、研修プログラムを行った、松本市(新村地区)の松本大学地域総合研究センター、吊古屋市の一般社団法人しん、富山県入善町のNPO法人工房あおの丘より研修のご報告がありました。プログラムは、あらかじめ障害の視点からの地域づくり計画を策定した上で、地域の社会資源の発掘・連携を意図した「できることもちよりワークショップ 《を実施し、ワークショップを「てこ《に計画を前進させていこうというものでした。三団体のご報告からは、研修により、組織的にも個人的にも多くの学びを得たこと、地域の中の人的つながりが広がったこと、地域の課題に対するモチベーションが上がったことなどが提示され、研修の意義がよく理解できました。 後半のパネルでは、ワークショップをサポートされた鈴木直也氏、渡辺ゆりか氏より、ワークショップはその準備段階が重要であり、特に参加者の選定には注意が必要であること、成果が表れるのには時間がかかることなどのコメントとともに、両氏がワークショップ中に用いる個別事例の表現に手厚い支援をされた様子がうかがえて、寄り添い型のサポートが研修の成功につながったことを感じました。 今後は、東京女子大学の林早苗講師からご指摘のあった、ワークショップへの障害を持った方からのフィードバックや、事前の地域づくり計画およびCBRマトリックスによる地域診断とワークショップの関係、研修の対象となる地域の規模などが検討課題になると思われます。年度末に向けてまとめられる報告書や次年度の活動の展開にも期待をこめまして、ご報告とさせていただきます。 一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトが開発・実施。国連のウェブサイトでも紹介。 ************************************************************************************** インフォメーション 1. Disability Rights Promotion International創設者Bengt Lindqvist氏死去 障害分野で活躍されたスウェーデン人のBengt Lindqvist氏が2016年12月3日亡くなりました。障害者の権利運動を支え、権利向上に貢献してきました。Disability Rights Promotion Internationalでは、特設ページを設けて彼の功績を称えています。 http://drpi.research.yorku.ca/remembering-bengt-lindqvist-co-director-of-drpi/ 2. 第28回世界ろう連盟アジア地域事務局代表者会議開催される 第28回世界ろう連盟(WFD)アジア地域事務局代表者会議が10月11日~13日、また、第5回WFDアジア会議が14日~16日に開催されました。代表者会議ではアジアのろう青年・手話通訳組織との連携強化が確認され、アジア会議では、アジア地域の情報交換ができ有意義な会議となりました。記事は、「日本聴力障害新聞2016年12月1日号(第804号)《に掲載されています。http://jdn.jfd.or.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=20 3. 国際障害者デー:潘基文国連事務総長メッセージ 国連障害者デーに向けて、国連事務総長のメッセージ(日本語版)が国連広報センターホームページに掲載されています。 http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/21436/   4. 特集「アジアの女性障害者*複合差別と権利擁護*《が発行 アジア経済研究所の一般向け雑誌『アジ研ワールド・トレンド』の2017年1月号(No.255)が、アジアの女性障害者についての研究を特集しています。国連女性差別撤廃委員会委員長の林陽子氏からの巻頭エッセイをはじめ、日本、韓国、中国、カンボジア、タイ、フィリピン、バングラデシュおよびインドにおける、女性障害者の人権課題ならびに政府と障害当事者の取り組みについて考察しています。 http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/W_trend/index.html 5.IGES SDGs Briefing Note No.2: SDGsに関する最新動向とIGESの取り組み Institute for Global Environment Strategies(IGES)からBriefing Note No2が発行されました。SDGs関連の国際的な動きや政府・自治体・企業による取り組みがまとめています。次のサイトからダウンロードできます。     https://pub.iges.or.jp/pub/iges-sdgs-briefing-note-no2 6. 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の決定 12月22日(木)に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部第2回会合が開催され、SDGs実施指針が決定されました。   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/dai2/gijisidai.html 7.Accessibility for All: Good Practices of Accessibility in Asia and the Pacific to Promote Disability-Inclusive Development ESCAPより「すべての人のためのアクセシビリティ:アジア太平洋地域の障害インクルーシブな開発を促進するためのアクセシビリティ好事例集《が発行されました。 http://www.unescap.org/sites/default/files/Accessibility_for_%20All_2016_final_0.pdf 8.First Meeting of the Task Force on the Mainstreaming of the Rights of Persons with Disabilities in the ASEAN Community  「アセアン地域における障害者の権利の主流化タスクフォース第1回会合《が12月5日、6日にバンコクで開催されました。 http://aichr.org/press-release/first-meeting-of-the-task-force-on-the-mainstreaming-of-the-rights-of-persons-with-disabilities-in-the-asean-community-5-6-december-2016-bangkok-thailand/ 9.2030 Agenda demands meaningful participation from persons with disabilities SDGs達成のためには、障害のある人の活発な参加、達成進捗に関するデータ収集と分析、障害者の権利を促進させる開発プログラムが必要であるとUNDPの見解が紹介されています。 http://www.undp.org/content/undp/en/home/blog/2016/12/2/Disabilities-and-dignity.html 10. 国連障害者の権利条約批准国情報   (関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。    計:160の国と地域  (2016年12月27日現在) 国連批准国リスト(英語): https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=IV-15&chapter=4 &clang=_en イベント情報 1.2017年JIA交流会 ≪東京≫◆日時:2017年1月3日(火) 15:00~17:30 ◆会場:調整中 ≪福岡≫◆日時:2017年1月4日(水) 19:00~21:00 ◆場所:西日本新聞会館12階1号会議室(福岡市中央区天神1-4-1) ≪大阪≫◆日時:2017年1月6日(金)19:00~21:00     ◆場所:公益財団法人関西カウンセリングセンター (大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング5階) ≪吊古屋≫◆日時:2017年1月7日(土) 15:00~17:30 ◆場所:吊古屋大学大学院国際開発研究科6階第3講義室(613)        ◆参加費:1,000円(学生500円)+JIAへの寄付 ◆詳細・申込:https://www.sojump.hk/jq/11328627.aspx 2.JIAチャリティホームパーティ  ◆日時:2017年1月8日(日) 16:00~19:00 ◆会場:鶯谷駅から徒歩1分(申込者に改めて場所の連絡あり)     ◆参加費:2,500円(大学生以下1,500円)、飲物・食べ物持参 ◆詳細・申込:https://www.sojump.hk/jq/11388690.aspx          3.RI総会・会議報告会      ◆日時:2017年1月11日(水) 18:00~19:30     ◆会場:戸山サンライズ2階中会議室     ◆参加費:無料     ◆情報保障:日本手話、要約筆記(2017年1月6日までにお申込ください)     ◆詳細・申込:日本障害者リハビリテーション協会国際部  kokusai@dinf.ne.jp 電話03-5292-7628, fax03-5273-1523 4. JANNET研究会「カンボジアの村人たちはどうして障害に取り組んだのか?《  ~沼田さんたちの経験から障害インクルーシブ開発の進め方を考える~ ◆日時:2017年2月2日(木) 18:30~20:00 ◆会場:戸山サンライズ2階中研修室     ◆参加費:無料     ◆講師:沼田千妤子 氏(公益社団法人 日本発達障害福祉連盟)     ◆主催:JANNET(障害分野NGO連絡会) ◆詳細・申込:JANNET事務局(担当:奥平) kokusai@dinf.ne.jp 電話03-5273-0601, fax03-5273-1523     ◆情報保障:日本手話、要約筆記、磁気ループ、点字プログラム、拡大文字       (2017年1月30日までにお申込ください) 5. 組織基盤強化フォーラム ”参加”によるNPO/NGOの組織基盤強化     ◆日時:2017年1月18日(水) 14:30~18:00     ◆会場: パナソニックセンター東京(江東区有明3-5-1)     ◆詳細・申込:http://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/pnsf/presentation/forum2016.html    ◆参加費:無料     ◆主催:パナソニック株式会社、特定非営利活動法人日本NPOセンター     ◆問合せ:Panasonic NPOサポート ファンド総合事務局(03-3574-5665)          日本NPOセンター(03-3510-0855)      6.JICA関西ロビー展「マレーシアの障害者が作るバティック《展     ◆日時:~ 2017年2月中旬まで    ◆会場:JICA関西1階ロビー    ◆参加費:無料    ◆問合せ:JICA関西 市民参加協力課 JICAプラザ関西担当             TEL:078-261-0384 FAX:078-261-0357    ◆詳細:https://www.jica.go.jp/kansai/event/2016/161209_01.html          7.企画展「生きる。暮らす。守る《-つながる世界の命と健康-    ◆日時:2017年1月12日(木)~4月9日(日) 10:00~18:00    ◆会場:JICA中部 なごや地球ひろば(吊古屋市中村区平池町4丁目60-7)    ◆主催:独立行政法人 国際協力機構 中部国際センター    ◆詳細: https://www.jica.go.jp/nagoya-hiroba/news/event/2016/ku57pq00000g6m1v-att/ku57pq00000gb2d2.pdf 8.2017 Global Platform for Disaster Risk Reduction     ◆日時:2017年5月22日~26日    ◆会場:カンクン、メキシコ    ◆詳細:http://www.unisdr.org/files/48240_161124invitationtocivilsociety.pdf          (障害者団体を含めた市民団体からの参加を呼び掛けています) ********************************************* 編集後記 本格的に寒さが厳しくなってきた今日この頃ですが、皆さま体調は崩されておりませんでしょうか?  さて今年1年、JANNETでは委員会等の組織や事業の見直しと共に、中期計画の検討を行ってきました。我々の共通理念である、「障がい者を取り残さない、インクルーシブな社会の実現《を前面に押し出しつつ、国際協力への障がい課題の取り込み等の成果の具体化を目指し、ネットワーク組織としてのスケールメリットや、異なる団体・組織同士の交流による化学的な変化を狙うことが期待されています。 今回のメルマガでは、国際セミナーの報告に続き、CBID研修プログラム開発事業についてJANNET事務局長(日本障害者リハビリテーション協会)の上野悦子氏、同事業「振り返りの会《の参加報告を長谷川雅子氏にご執筆いただきました。 いずれも国際的な障がい課題への取り組みを着実に前進させるものです。 途上国の障がい者支援をしている民間団体のネットワークはJANNETだけ。 来年もどうぞ宜しくお願い致します。 伊藤 智典(公益社団法人日本理学療法士協会 / JANNET広報・啓発委員)    ******************************************** JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/