JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第150号 2月号 2016年2月26日発行 ―目 次―  トピックス 1.2030年持続可能な発展目標:日本と世界の変革へ向けて  仲佐 保(国立国際医療研究センター 国際医療協力局) 2.共に学び、未来を創る~ハンセン病快復村14年間の活動から見えたこと                            菅野 真子(JIA広報部) 3. ハンセン病の歴史を語る人類遺産世界会議 開催報告 戸引(とびき) 理(あや)(公益財団法人笹川記念保健協力財団  ハンセン病対策事業部)                    インフォメーション 1. JANNET第1回あり方検討会を開催しました                2. JANNETアカウンタビリティーセルフチェック実施予定 3. JICA研究所 刊行物「How Can Community Participation Improve Educational Outcomes? Experimental Evidence from a School-Based Management Project in Burkina Faso」 4. タイでの官民連携による障害者の自立支援プロジェクト 5. Disability-inclusive humanitarian action 6. Disability at a Glance 2015 7. 第13回ポスト2015に関する外務省・NGO定期的意見交換会 議事録 8. 2月19日(権利条約国内発効日)、イエローにライトアップ! 9. JANNET事務局、2月の団体訪問 10. 国連障害者の権利条約批准国情報 イベント情報 1.JANNET 第2回あり方検討会開催 2.公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減:アジアの現場から」 3.仙台防災未来フォーラム2016 “Build Back Better”東日本大震災の経験からより強い世界へ 4.持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に  5.市民の伊勢志摩サミット 6.9th session of the Conference of States Parties to the CRPD トピックス 1.2030年持続可能な発展目標:日本と世界の変革へ向けて  仲佐 保(国立国際医療研究センター 国際医療協力局) 2016年1月15日に、国連大学ウ・タント国際会議場において、2030年持続可能な発展目標=SDGs(Sustainable Development Goals)「日本と世界の変革へ向けて」というタイトルで一般公開シンポジウムが開催されました。環境研究総合推進費S-11と2015年以降の世界の開発課題のあり方(ポストMDGs(国連ミレニアム開発目標))に関しての様々な意見を集約し、日本政府に提言することを目的として活動をしてきたBeyond MDGs Japanの共催での開催です。  2015年9月の国連総会の時に採択された“Transforming our World: the 2030 Agenda for Sustainable Development ”を受けてのシンポジウムであり、途上国が中心の対象であったMDGsから、日本を含む先進国も対象となった目標に対してどのように取り組むに関して、二つのパネルディスカッション「何が変わったのか?何が変わるのか?」と「SDGs実施へ向けて日本はどうすればよいのだろうか?」を通じて議論されました。 SDGsには、MDGsに取り上げられた貧困と飢餓(SDG 1・2)、教育(SDG 4)、保健医療(SDG 3)、ジェンダー(SDG 5)、水と衛生(SDG 6)、実現のためのネットワーク(SDG 17)のほか、エネルギー(SDG 7)、雇用(SDG 8)、インフラと産業化(SDG 9)、各国間・国内の不平等(SDG 10)、都市と居住(SDG 11)、生産と消費(SDG 12)、環境系の課題としての気候変動(SDG 13)、海洋資源(SDG 14)、陸域生態系と生物多様性(SDG 15)、平和構築(SDG 16)の17目標という広範囲の目標が設定されており、今後15年間世界がこの目標に取り組んでいくことになります。その理念としての、「誰一人として取り残さない(Leave no one behind)」ことがあげられていること、障害者自体はSDGs自体の目標になっていないが、「Disability」という言葉が文書の中にも何回でてきており、障害者も考慮したものといえます。SDGs達成に向けた日本への処方箋という冊子も配られ、日本では、17ある目標のどこに対して対応していくかの議論も行われました。この中では、「2030年までに、年齢や障害者男女等の区別なく、同一労働同一賃金を達成する」「開発途上国において各国の個別の事情を踏まえつつ、インクルーシブ教育や障害を持つ児童・生徒の教育の充実に関する支援を実施する」という処方箋なども記されています。 2. 共に学び、未来を創る~ハンセン病快復村14年間の活動から見えたこと                             菅野 真子(JIA広報部) 『家-JIA-』は、中国のハンセン病快復村で地元の大学生が主体となり、“ワークキャンプ”と呼ばれる合宿型ボランティア活動を行うNPO団体です。 ハンセン病は感染病の一種で、発病すると感覚が麻痺し、時に体に変形を起こします。感染力は弱く薬を飲めばすぐ治癒しますが、変形が後遺症として残ることから“不治の病”と誤解されました。患者を含めた家族は差別され、患者は隔離生活を余儀なくされました。治癒後も多くの元患者が実家に帰れず、高齢となった元患者約2万人が今も全国600か所の元隔離村で生活していると言われています。 この活動は、JIA創設者である原田燎太郎を含む6人の日本人大学生が2002年に始めました。村に寝泊まりし、元患者である村人と共に生活する中で、村人と学生の関係に変化が生まれました。元患者としてひとくくりに見ていた村人を、名前を持つ“あなた”として見るようになった時、壮絶な人生を生き抜いた彼らの強さ、弱さ、優しさを直に感じるようになったのです。そして、元々村人を助けようと思っていた大学生たちは、逆に自分自身が村人に支えられていることに気付きました。 しかし、村人たちを訪れる中国人はいません。地元の大学生が村に来れば、人の流れが生まれ、村への差別もなくなるのではないか。そんな思いから、原田は中国人大学生を活動に巻き込み始めました。初めはハンセン病に警戒していた中国人も、村人の内面を感じると、村人が好きになります。キャンプ中に村人の話を聞いて沢山泣いたある中国人キャンパーは、言いました。「悲しい思い出に泣くんじゃなく、彼らの勇気とか、優しさに触れて泣くんだよ」。参加者は次第に増え、2004年に現在のNPO法人を設立しました。今では毎年約2000人の中国人大学生がワークキャンプに参加しています。 JIAは、異なる背景の人同士が理解し、成長し合う場です。参加した若者は、大学卒業後もワークキャンプでの学びを社会で活かしています。JIAは今後もこの活動を通して、次の世代を担う若者を育てていきたいと願っています。 【HP】: http://jiaworkcamp.org/jp/ 【JIA月報購読】:http://eepurl.com/AvrwD 3.ハンセン病の歴史を語る人類遺産世界会議 開催報告 戸引 理(公益財団法人笹川記念保健協力財団  ハンセン病対策事業部) 笹川記念保健協力財団では、1月28日~30日までの3日間にわたって、人類遺産世界会議を開催しました。1日目は、アニメーション映画監督の宮崎駿氏を迎えて、「全生園で出会ったこと」と題して特別講演をいただき、病気を病みながらも生き抜いてこられた方の尊厳ある人生から私たちの学ぶべき姿があることを伝えていただきました。午後には、当財団がオーストラリア・クイーンズランド大学のDr Jo Robertson氏と協力してリニューアルした「国際ハンセン病学会(ILA)のハンセン病の歴史ウェブサイト(leprosyhistory.org)」を紹介し、今後世界各地の歴史保存研究などに活用していただけるように訴えました。その後、セッションIとして、「ハンセン病の歴史を残す-世界の取り組み」をテーマに、マレーシアやフィリピン、中国、タイの博物館やアーカイブによる保存の取り組みについて紹介して頂きました。さらに、2日目にかけて、セッションIIとして、「保存する・学ぶ・伝える~主たるプレーヤーは誰か」をテーマに、ブラジルや韓国など9カ国の学者、政府機関、当事者家族のそれぞれの立場から発表していただき、保存活動に対して果たす異なる役割を学び、さまざまなプレーヤーが協力して行うことで保存活動の質と持続可能性を高めることについて確認し合いました。セッションIIIでは、「生きた証・創造力・作品:芸術、文芸、生活用具」として、厳しい隔離の中で当事者の方が作りだしてきた音楽や陶芸、絵画など多様な芸術作品を紹介し、これをどのように現代未来へと保存し伝えてゆくことができるか検討しました。最後に、セッションIVにて、「未来への遺産~実現の途をさぐる」と題して、エクアドル、フィリピン、スペインの方が、南米、アジア、ヨーロッパのそれぞれの地域レベルでネットワークを形成して保存活動を推進していくことの重要性を確認しました。3日目には、これまでの議論を踏まえて、17カ国30名の登壇者の皆がさらに連帯を深め、各地の保存活動の一層の進展を図っていくことを約した東京宣言を発表しました。3日間を通じて、のべ500名の方にお越しいただき、一般市民の皆様にも広くハンセン病問題の将来について考えていただく機会とすることができました。          ************************************************************************************** インフォメーション 1.JANNET第1回あり方検討会を開催しました   1月20日に役員や会員など19人が集まり、JANNETの強み、価値、役割、状況の変化に伴った機会、そして、弱みとそれに対する解決策について、3つのグループに分かれてグループワークを行いました。様々な意見が率直に語られ、JANNETへの思いが伝わるワークショップとなりました。これからも皆さまのお力添えでJANNETを盛り上げてくださるようお願いします。 第2回あり方検討会も3月23日(水)に予定しており、第一回を踏まえて活動計画など“JANNETの今後”について話し合えればと思っています。皆さまのご参加をお待ちしております。 2.JANNETアカウンタビリティーセルフチェック実施予定 JANNETでは、JANICの立会いのもと、3月2日にアカウンタビリティーセルフチェックを実施します。前回2011年10月に行われたセルフチェックでは、中長期計画の策定や、理念や使命の明文化などへの提案がありました。今回の結果については次号で詳しくお知らせします。 3.JICA研究所 刊行物「How Can Community Participation Improve Educational Outcomes? Experimental Evidence from a School-Based Management Project in Burkina Faso」 JICA研究所は、ブルキナファソで実施している地域住民参加による学校運営プロジェクトについて調査を行った結果、就学の増加、生徒の留年率や教師の欠席率の減少、小学校の卒業資格を重視する親の意識の変化が明らかとなり、住民の意識や知識が鍵となることが報告されています。 詳しくは http://jica-ri.jica.go.jp/publication/assets/JICA-RI_WP_No.112.pdf  をご覧ください。 4.タイでの官民連携による障害者の自立支援プロジェクト タイでは、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を用い、バリアフリーのカフェテラスや車いすリフト付き移動販売車が整備されました。また、山崎製パンの現地法人であるタイヤマザキは、CSRとして障がい者にパン製造、販売、そして、経営に関するノウハウを伝授し、障がい者の就労、自立生活を促進しました。詳しくはODAメールマガジン317号をご覧ください。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/mail/bn_317.html#section2 5.Disability-inclusive humanitarian action 紛争や自然災害において被害を最も受けやすいとされる障がい者。東日本大震災やハリケーンカトリーナでは障がい者の死亡率は健常者と比べて2倍から4倍と言われています。人道支援や緊急救援においても必要な支援やサービスを受けられていないのが現状です。仙台防災枠組み2015-2030では、減災・災害対応のすべての対策において障がい者の参画を呼び掛けており、5月23-24日にトルコで開催予定のWorld Humanitarian Summitはその進捗を確認する機会となっています。 https://www.un.org/development/desa/disabilities/issues/whs.html https://www.worldhumanitariansummit.org/ 6.Disability at a Glance 2015      ~Strengthening Employment Prospects For Persons With Disabilities In Asia and The Pacific~ アジア太平洋において、障がい者の雇用を阻む障壁と解決に焦点をあてた冊子がESCAPより発行されました。 http://www.unescap.org/sites/default/files/SDD%20Disability%20Glance%202015_Final.pdf 7.第13回ポスト2015に関する外務省・NGO定期的意見交換会 議事録 2015年12月24日にNGO約40名、国際機関3名、外務省・総務省・国土交通省7名が外務省に集まり、JANNETからは松井亮輔会長と事務局の上野が出席しました。この意見交換会ではSDGsの国内実施に向けた提案がNGO側から出され、各省からは現状や見解、展望が発表されました。     http://www.ugokuugokasu.jp/pdf/151225_p2015_MOFA-NGO_13.pdf 8.2月19日(権利条約国内発効日)、イエローにライトアップ!  国連・障害者権利条約は、日本では2014年2月19日に発効(条約として効力を持つこと)しました。この記念日に、東京臨海副都心や陸前高田市の「奇跡の一本松」が、イエローリボンのシンボルカラーである黄色にライトアップされました。 http://www.normanet.ne.jp/~jdf/seminar/20160219/index.html 9.JANNET事務局、2月の団体訪問 今月はきょうされんを訪問し、国内での活動のほか、ワーカビリティ・アジア関連でタイの知的障がい者支援団体の職員を受け入れた研修について話を伺いました。貴重なお時間をどうもありがとうございました。 10.国連障害者の権利条約批准国情報   ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。    計:160の国と地域  (2016年2月26日現在)  国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 イベント情報 1.JANNET 第2回あり方検討会開催 ◆日時: 3月23日(水) ◆場所: 戸山サンライズ 2階 大会議室 ◆参加費: 無料 ◆主催: JANNET 障害分野NGO連絡会 ◆詳細・申込: JANNET事務局 高木 香苗 (takagi_stf@dinf.ne.jp)  2.公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減:アジアの現場から」 ◆日時: 3月3日(木) 14:00~17:00 ◆場所: 東京 JICA市ヶ谷ビル 2階国際会議室 ◆参加費: 無料 ◆言語: 日本語・英語(同時通訳あり) ◆主催: 国際協力機構(JICA) ◆詳細・申込: https://icnet.smartseminar.jp/public/seminar/view/109 3.仙台防災未来フォーラム2016 “Build Back Better”東日本大震災の経験からより強い世界へ ◆日時: 3月12日(土) 11:00~12:40 ◆場所: 仙台国際センター会議棟 白橿1 ◆主催: 国際協力機構(JICA) 共催:仙台市 ◆詳細: http://www.jica.go.jp/tohoku/event/2015/ku57pq00000eyw9g-att/ku57pq00000eywaf.pdf 4.持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に ◆日時: 4月16日(土) 14:00~17:30 ◆場所: 国連大学ウ・タント国際会議場 ◆参加費: 無料 ◆言語: 日本語・英語(同時通訳) ◆主催: 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、(公財)地球環境戦略研究機関    (IGES)、慶應義塾大学SFC研究所(予定)、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) ◆詳細・申込:http://www.iges.or.jp/jp/integrated-policy/20160416.html 5.市民の伊勢志摩サミット ◆日時: 5月23日(月)10:00~24日(火)15:30 ◆場所: 三重県四日市市内 ※開催内容によって場所が変わります。 ◆参加費: 無料 ◆主催: 2016年G7サミット市民社会プラットフォーム、 東海「市民サミット」ネットワーク  ◆詳細・問い合わせ: http://tokaicn.jimdo.com/ 6.9th session of the Conference of States Parties to the CRPD ◆日時: 6月14日(火)~16日(木) ◆場所: 国連本部 ◆詳細: https://www.un.org/development/desa/disabilities/conference-of-states-parties-to-the-convention-on-the-rights-of-persons-with-disabilities-2/9thsession.html 編集後記   今月号ではハンセン病に関する話題を2つご紹介いただきましたが、今年はらい予防法の廃止からちょうど20年になります。日本においても、まだ過去の話題ではありません。  もう1つ、今年は障害者権利条約が国連で採択されてから10年です。日本では国内発効からこの2月で丸2年。第1回政府報告がまもなく国連に提出されます。2月19日の発効日には、これを記念して東京臨海副都心と陸前高田市で「イエローライトアップ」がされた話題も紹介しました。リンク先にはいくつか写真も掲載されていますので、お時間があればぜひご覧ください。  障害者権利条約は、障害当事者が主体となることを基本としながらも、その実施には広く市民の理解が欠かせません。ライトアップのような取り組みを通じて、障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会の実現に向けて、進んでいければと思います。 原田 潔(日本障害者リハビリテーション協会) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/