JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第147号 11月号 2015年11月25日発行 ―目次―  トピックス 1. ソーシャルファーム実態調査報告会が開催されました 大村 美保(筑波大学人間系・助教) 2. 障害者の権利に関する日韓セッション報告  田丸 敬一朗(DPI 日本会議) 3.「持続可能な開発目標採択国連サミットならびに関連会合報告会」に参加して             伊藤 弥生(元青年海外協力隊・理学療法士)                         インフォメーション 1.アジア太平洋障害者センターによる報告書のご紹介 2.国際障害者デー 国連本部でのイベント情報 3.国連障害者の権利条約批准国情報 イベント情報 1.青年海外協力隊を題材とした映画『クロスロード』 ご案内(11月28日~) 2.青年海外協力隊発足50周年企画展関連セミナー ご案内 (12月5日) 3.あなたの選ぶネピアが、子どもたちを守るトイレになる               -nepia千のトイレプロジェクト-(12月14日) 4.映画「みんなの学校」上映会&トーク(12月16日) ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ トピックス  1.ソーシャルファーム実態調査報告会が開催されました                         大村 美保(筑波大学人間系・助教)  ソーシャルファーム実態調査報告会が10月21日(水)戸山サンライズで開催されました。日本障害者リハビリテーション協会の主催で、2003年から継続実施しています。今回はソーシャルファームに関する法律をもつフィンランドの現地調査報告でした。  炭谷茂氏(ソーシャルファームジャパン理事長)からはフィンランドのソーシャルファーム制度について社会保障の充実した福祉国家としての特色も含めた説明がありました。ソーシャルファームは長期失業者、障害や仕事に就くことが困難な長期疾病者に就業機会を提供するもので、ソーシャルファーム法(2003年制定)に基づきます。対象者割合30%以上、労働契約に基づく通常の給与の支払いを要件として国に登録し、ソーシャルファームの名称使用、設立に要する費用(調査費やコンサルタント費など)のための資金援助、対象者を雇用する企業全般に適用される有期限の給与援助が受けられます。つまりソーシャルファームは、対象者と対象者でない労働者がともに雇用される登録企業に有期限の資金援助が付くものといえるでしょう。実際の活動範囲は職業訓練から支援付就労・雇用までの広範に渡り、他の社会的雇用の諸制度との政策的関係は必ずしも明確ではないようです。炭谷氏は、ソーシャルファームの今日的な必要性・緊急性の高さを指摘しつつ、日本の社会構造や文化、既存の制度等を踏まえた「日本型ソーシャルファーム」の展開を目指す際の、従事者や経営方針、現行制度との関係等の基本的な構成要素に言及しました。  桑山和子氏(NPO法人ぬくもり福祉会たんぽぽ会長)からは、PosiVire株式会社、Titry協会、Työhönvalmennus Valma Ltd.の3ヶ所について写真や持ち帰った実際の製品により具体的で臨場感ある報告がありました。日本でもよく見られる清掃・調理・看護補助といった労働集約型産業での工夫例や、独自のデザインやコンセプトで付加価値を付けた製品を輸出産業として展開する様々な例は非常に興味深いものでした。  質疑応答では報告者に対して多くの質問・意見が寄せられ、関心の高さが窺えました。  2.障害者の権利に関する日韓セッション報告                            田丸 敬一朗(DPI 日本会議)  日本は、2014年1月国連障害者の権利に関する条約を批准し、締約国の義務として2016年2月を目途に、ジュネーブにある国連・障害者権利委員会に政府報告書を提出するための準備を行っています。2019年ごろに予定されている同権利委員会での「建設的対話」に向けて、障害者団体からの意見表明を行う必要があることから、JDFは、日本と近い制度体系を持ち、2014年に建設的対話を行った韓国の経験を学び、今後の連携を深めるため、キム・ヒョンシク国連障害者権利委員会委員、韓国・障害者権利条約NGO報告書連帯のイ・ソック運営副代表、キム・ミヨン運営委員を招き、10月22日、23日に情報の共有・交換のための日韓セッションを行いました。  22日の公開シンポジウムは、権利条約推進議員連盟所属議員や政府報告書の政策に関する所管となる外務省も招いて、約100名の参加者で実施しました。  キム・ヒョンシク氏からは、権利委員会の概要、現在の審査状況、審査の際にはどこに注目が集まるのか等をご説明いただきました。特に、国内モニタリングの仕組みの整備、政府内にフォーカルポイントを設置し省庁間の連携を促すことが必要であること等をポイントとして挙げられました。  また、オーストラリアでは、委員会の審査結果を翌日新聞で取り上げ、改善の取り組みを積極的に行っていること等も紹介されました。さいごに、「批准を通じて、日本を変化させていくのではなく、世界を変化させていく」という意識を持つ必要があると述べられました。  NGO連帯の動きについては、障害者団体だけでなく、多様な市民社会を巻き込み行なったこと、条文に合わせて、六つのワーキンググループに分けて報告の中身を検討したこと等、丁寧に作成のプロセスを説明いただきました。  さらに、報告書作成にあたって、他国の報告書、権利委員会が出している一般的意見に加え、IDA(国際障害同盟)が出しているパラレルレポート作成のガイドラインが役立ったこと等、情報提供もしていただきました。  10月23日のJDF加盟団体向けの学習会では、前日の話をさらに深める形で、まずキム・ヒョンシク氏から、権利委員会の委員構成、委員の選挙に際しての他国へのロビーング活動の内容、審査で議論が深まる条文について等の具体的な話を聞くことができました。  イソック氏、キムミヨン氏からは、NGO連帯の動きとして、パラレルレポート作成に向けた具体的なスケジュール、権利委員会の国別報告者への個別の働きかけ、連帯運営のための資金確保等の話をしていただきました。  NGO連帯で作成した六つのワーキンググループには、弁護士が入っていたこと、委員には弁護士が多いため、法律用語を使ったロビーングが有効となること、ロビーングの際には写真付きの委員のプロフィールを持ち、委員の関心分野も把握して行なったこと、SNSを活用し韓国内のメンバーとも連絡を取り、ロビーングで出た課題に即応可能な体制を作っていたこと等、今後の参考になる取り組みを紹介していただきました。  本セミナーを通じて、具体的かつ詳細に、今後取るべき活動が見えてきました。そして、条約の実施、パラレルレポート作成に向けて、まずは多様な関係者が参加できる連携を行っていく必要があると感じました。 3.「持続可能な開発目標採択国連サミットならびに関連会合報告会」に参加して                         伊藤 弥生(元青年海外協力隊・理学療法士)  10月24日に開催されたBeyond MDGs JAPAN主催の勉強会シリーズ第3弾 ―国連創設70周年 国連デー記念―「持続可能な開発目標(SDGs)採択国連サミットならびに関連会合報告会」に参加しました。ニューヨークでのSDGs採択国連サミットや関連会合に出席された5名の方々、国際協力NGOセンターの堀内葵氏、「環境・持続社会」研究センターの古沢広祐氏、日本大学大学院の池上清子氏、明治大学情報コミュニケーション学部の髙橋華生子氏、そして、国立国際医療研究センターの村上仁氏より報告があり、約40名の方が参加されておりました。SDGsはこれまで開発分野で進められてきたMDGsと環境分野で進められてきたアジェンダ21の2つの流れが統合され、各国の政府による議論を基に17のゴールと169のターゲットで構成された形で採択されました。しかし、具体的な方策やモニタリングのための指標についてはまだ決まっておらず、法的拘束力を持たない政治的目標を国家政策にどう反映していくかは各国のこれからの課題です。SDGsでは途上国だけでなく先進国もアクターとなるため、日本は途上国への支援だけでなく国内の実施体制も構築していかなくてはいけません。誰一人取り残さない(Leave No One Behind)世界の実現のためには市民セクター、政府セクター、民間セクター、学術セクターが連携して様々な課題に取り組む必要があります。報告会ではSDGsの普及活動の一つとしてNGOと国連機関が共同で作成した子供向けのガイドブック『私たちが目指す世界』の日本語版も紹介されました。現在、「SDGs」と表記されることの多い2030年までの新しい開発目標ですが、今後は“The Global Goals”という名称で普及される見込みとのことでした。市民一人一人が関心を持ち、理想と現実のギャップが少しでも埋まる社会となるよう願います。                                                                ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ インフォメーション 1.アジア太平洋障害者センターによる報告書のご紹介   「Third Country Training Programme Knowledge Creation Forum on Community-based Inclusive Development 2015 (Capacity-building of Persons with Autism and their Parents)」  のサマリーレポートがアジア太平洋障害者センターより発行されました。          http://apcdfoundation.org/?q=system/files/TCTP%202015_Readable%20PDF_small.pdf   2.国際障害者デー(International Day of Persons with Disabilities, 3 December 2015)国連本部でのイベント情報   国際障害者デーに際して国連は、障害と持続的開発についてのパネルディスカッションや映画上映、展示などを予定しています。  また、世界中の国々にも、この日を記念するイベントの実施を推進しています。          http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1637#unhq 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )   新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。   160.サントメ・プリンシペ       計:160の国と地域  (2015年11月25日現在)  国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ イベント情報 1.青年海外協力隊を題材とした映画『クロスロード』 ご案内  ◆日時:2015年11月28日から 全国で上映  ◆詳細: http://www.jica.go.jp/topics/2015/20151102_01.html       http://crossroads.toeiad.co.jp/ 2.青年海外協力隊発足50周年企画展関連セミナー ご案内 「自分の経験から想いをカタチに-経験を価値にする-」 ◆日時:2015年12月5日(土) 14時~15時30分 ◆会場:JICA市ヶ谷ビル 2階 国際会議場 ◆参加費:無料 ◆申込・詳細: http://www.jica.go.jp/hiroba/event/2015/151205_01.html 3.あなたの選ぶネピアが、子どもたちを守るトイレになる               -nepia千のトイレプロジェクト-  ◆日時:2015年12月14日(月) 19時~20時10分  ◆会場:JICA市ヶ谷ビル 6階 セミナールーム600  ◆参加費:無料  ◆申込・詳細: http://www.jica.go.jp/hiroba/event/2015/151214_01.html 4. 映画「みんなの学校」上映会&トーク  ◆日時:2015年12月16日(水) 18時30分~20時30分  ◆会場:JICA市ヶ谷ビル 2階 国際会議場  ◆参加費:無料  ◆申込・詳細: http://www.jica.go.jp/hiroba/event/2015/151216_01.html +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 編集後記   朝夕の寒さを気にすることが多くなりましたが、皆さま、いかがお過ごしでしょうか? 21世紀に入り、15年が過ぎようとしています。5の倍数ということで一つの区切りのように感じられます。今号のメルマガでは、トピックスなどを通して、他国の制度や経験から学び、連携し、国際社会の合意形成を強固なものにすることが21世紀の未来においてさらに重要となることを再認識させていただいたように思います。皆さま、風邪など引かれませんよう、お身体に気を付けて、年末をお過ごしください。                         公益社団法人 日本理学療法士協会 古西 勇 JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/