JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第141号 2015年5月7日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 「CBRとは」 国際視覚障害者交流・協力ネットワーク 青松 利明   世界の人口の約15%※が障害のある人であると言われています。また、障害のある人の80%が開発途上国に住んでいるとされています。障害のある子供達の就学の可能性は、他の子供達に比べてはるかに低く、62カ国において、障害のある人を対象としたリハビリテーションサービスがまったく利用できないとされています。障害のある人は失業する可能性が高く、障害のない人々に比べて所得が低い傾向にあります。  このような障害のある人の世界的な状況(特に開発途上国)を改善する手段として、(地域に根ざしたリハビリテーション)があります。1970年台後半からWHOの提唱により開始されたCBRは、最初は主に理学療法、福祉機器の提供など医学的介入やサービス提供が中心でした。しかし、技能訓練、所得創出など教育や経済に関わるプロジェクトも見られるようになり、国のレベルで取り扱われるケースも出てきています。  開発プロジェクトやプログラムの多くがトップダウン方式であるのに対し、CBRの考え方では、開発プロセスのすべてにおいて、地域社会の当事者が参加し関わることにより、インクルーシブで持続可能な仕組みを実現することにあります。また、当事者のエンパワメントの促進も重要な柱となります。  2004年、ILO、UNESCOおよびWHOは、CBRジョイント・ポジション・ペーパーを改訂し、CBRをすべての障害のある人々のリハビリテーション、貧困削減、機会均等化およびソーシャル・インクルージョンのための総合的な地域社会開発戦略の一つと定義し、障害のある人々自身とその家族、組織および地域社会、関連のある政府・非政府系の保健・教育・職業訓練・社会福祉およびその他のサービスとが一体となった取り組みによりCBRプログラムの実施を促進するとしています。  障害者の権利に関する条約も発効し、さらにいっそうCBRの取り組みを支えるようになるとともに、近年ではCBRの取り組みに関する研究も進み、一定の効果があるという評価もされています。 ※ WHO「2011障害に関する世界報告書」より 参考:CBRガイドライン日本語訳 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/un/CBR_guide/index.html 発行:世界保健機関(WHO) 発行年:2010年 日本語訳:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 監修:高嶺 豊 ++ 目次  トピックス 1.「第3回国連防災世界会議」報告 1-1.第3回国連防災世界会議報告 〜2015防災世界会議日本CSOネットワークの活動〜 1-2.障害者の参加と貢献:第3回国連防災世界会議 + インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.2015(平成27)年度JANNET総会、交流会開催のお知らせ 2.ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第16期生成果発表会 3.ラミチャネ・カマル氏 「Disability, Education and Employment in Developing Countries From Charity to Investment」出版記念セミナー  ++ トピックス ◆ 今回のトピックスでは、3月14日から18日に開催された「第3回国連防災世界会議」に関する報告を2件掲載します。 + トピック1-1 第3回国連防災世界会議報告 〜2015防災世界会議日本CSOネットワークの活動〜 堀内 葵 JCC2015事務局長 http://jcc2015.net/  2015年3月14日から18日にかけて、宮城県仙台市において「第3回国連防災世界会議」が開催されました。今後15年間に渡る国際的な防災枠組を策定することが主な目的です。国連加盟国のうち187カ国の代表を始め、国際機関、研究者、NGOを合わせて本体会議に6,500人以上、一般公開の関連イベントも含めると15万人以上が国内外から参加し、日本で開催された国連会議では過去最大級の規模となりました。  この会議に向けて、東日本大震災の教訓を日本の市民社会から発信し、世界各地の人びとと防災の知見を学び合うことを目的とした「2015防災世界会議日本CSOネットワーク(以下、JCC2015)」が2014年1月に結成され、準備会合への参加や提言書の発表、仙台市内でのイベント開催などの活動を行なってきました。  このたび採択された「仙台防災枠組2015-2030」では、「自然災害、人為的要因による災害、および関連する環境的・技術的・生物学的災害とリスクを取り扱う」ことや、市民社会やボランティアを含む社会の構成員すべてが防災に関わることの重要性が明記されました(※)。2014年11月にジュネーブで開催された政府間準備会合にJCC2015が出席し、他のNGOと共に提言してきた内容が一部反映された、と言えます。また、国連防災世界会議においても、原発災害を取り上げたさまざまなセッションでJCC2015メンバーが原発災害への対応の重要性について公式に発言しました。国連の記者会見でも「技術的災害」の対象に原発災害が含まれることが明示されるなど、世界が取り組むべき課題として扱われたことは大きな成果です。 ※ http://www.wcdrr.org/uploads/Sendai_Framework_for_Disaster_Risk_Reduction_2015-2030.pdf  これに関連して、JCC2015有志メンバーはブックレット『福島10の教訓〜原発災害から人びとを守るために〜』を日本語・英語・中国語・韓国語の4言語で発行し、国連防災世界会議の参加者に配付しました。仙台市内で開催した「市民防災世界会議」や、海外からの参加者と共に福島県飯舘村や浪江町、宮城県石巻市や女川町など東日本大震災の被災地を回るツアーの実施と合わせて、具体的な情報共有を促進することができました。  「仙台防災枠組」は今年9月に採択される「ポスト2015年開発目標(SDGs)」と気候変動枠組条約を先取りするかたちで合意された国際的な政治目標という点で極めて重要です。ジェンダーや年齢、障害、文化などの観点から政策と実践に一貫性を持たせることも明記され、今後、日本国内においてもどのように実行に移していくのか、国際協力NGOも国連防災世界会議に参加した人々とともに考えていく必要があります。 + トピック 1-2 障害者の参加と貢献:第3回国連防災世界会議 野村 美佐子 日本障害者リハビリテーション協会     東日本大震災地である仙台で、3月14日から18日にかけて第3回国連防災世界会議が開催されました。この会議に向けて、DINFでは、昨年の4月に、「障害者も参加する防災:知識を通じて固定観念を変えよう」というテーマで開催されたアジア太平洋地域会議(仙台)をきっかけにして、インクルーシブな防災の促進を目的に障害当事者、国連、国際NGOなどの関係者で構成するDiDRR (Disability inclusive Disaster Risk Reduction)グループの活動に注目をして情報提供を行ってきました。今までの経過を踏まえ、本会議について報告をします。  主催者のISDR(国際連合国際防災戦略)事務局から、200人という多くの障害者が参加したことが発表されましたが、そのための物理的および情報のアクセシビリティにおける支援はとても重要でした。日本財団によるISDRへの資金提供により、英語と日本語による字幕(政府間のいわゆる本体会議のみ)、国際手話と日本手話、さらにスクリーンリーダーやDAISY※1プレーヤーでもアクセス可能なDAISY形式やワード形式での資料提供、障害のある本体会議スピーカーの招聘等が行われたほか、会場における車いす利用者への支援、視覚障害者や盲ろう者のためのKGS株式会社による携帯点字端末機の貸し出し、シナノケンシ株式会社によるPTP1※2の貸し出し、仙台市が提供したiPaDの貸し出し等が行われました。このような大きな国連の国際会議でのアクセシビリティの配慮は初めてのことだそうで、ISDR、日本財団、日本政府、仙台市実行委員会、関連企業、そして実際のアクセス支援をコーディネートした支援技術開発機構によって実現しました。  上記支援により、インクルーシブな防災をテーマにしたワーキングセッションなどで、当事者による事例発表などがありました。またDiDRRグループの努力が実り、今回の会議で採択された成果文書である「仙台防災枠組2015-2030」には、ユニバーサルデザインや障害の視点が含まれました。  閉会式においては、ISDRのワルストロム氏が、障害者の積極的な参加が目立ったこと、また今までの会議の中で最もアクセシブルな会議であり、アクセシビリティの標準が設定されたと評価しました。本防災会議からつながっていくポスト2015開発アジェンダの実施プロセスには、さらに多くの障害者が役割をもって参加することが期待されます。 参考ウェブ:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/world/2015dp/2015dp.html ※1 DAISY:視覚障害者や読むことが困難な人々のためのデジタル録音図書の国際標準規格 ※2 PTP1(正式名称:プレクストークポケットPTP1):小型軽量デイジー録音再生機 http://www.plextalk.com/jp/products/ptp1/                                                                  ++ インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )    新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。        154.カザフスタン                  計:154の国と地域  (2015年5月6日現在)  国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.2015(平成27)年度JANNET総会、交流会開催のお知らせ 明後日開催の2015年度総会等の開催日時を改めてご案内いたします。    ◆日時:5月9日(土) 14:30〜16:30 (総会) 16:45〜18:00 (交流会) ◆場所:戸山サンライズ 中研修室 ※総会では、最後の30分で第3回アジア太平洋CBR会議の概要と準備状況を報告します。 ※交流会では、団体・個人会員の皆様から可能な範囲で活動のご紹介をいただきます。 (各2分程度) ご出席を予定されていて、まだご連絡いただいていない方は急ぎ事務局にお知らせください。 ご欠席の会員団体につきましては、事務局まで委任状をお送りくださいますようお願いいたします。委任状用紙をお持ちでない場合は、事務局までご連絡ください。すぐにお送りいたします。 ■問合せ先:事務局・佐々木 (e-mail: sasaki.yuka@dinf.ne.jp) 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 + 2.ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業 第16期生成果発表会  JANNET賛助団体のダスキン愛の輪基金およびリハ協・研修課がおこなっている標記育成事業の成果発表会のご案内です。研修生6名が、10ヶ月に渡った研修で学んだ内容等について発表します。 ◆日時:6月6日(土)13:30〜16:30 ◆場所:戸山サンライズ 大研修室 * プログラムの詳細、お申込は下記ウェブサイトにて。 【申込締切:6月1日(月)】    http://www.normanet.ne.jp/~duskin/infomation/2015/clipmail.html + 3.ラミチャネ・カマル氏 「Disability, Education and Employment in Developing Countries From Charity to Investment」出版記念セミナー 先日、MLでもお知らせしましたJICA研究所が主催するセミナーのご案内です。 団体会員、東京ヘレン・ケラー協会が支援し、ご本人もJANNETの個人会員でいらしたラミチャネ・カマルさん【筑波大学教育開発国際協力研究センター(CRICED)准教授(元JICA研究所研究員)】が執筆された標記書籍の発刊を記念したセミナーです。 カマルさんの基調講演に加え、有識者の方々のコメントも予定されています。 ◆日時 5月19日(火) 15:30-17:00 ◆場所 JICA研究所 2階 国際会議場 参加費:無料 使用言語:日本語 *セミナーの詳細、申込みは以下URL(JICA研究所ウェブサイト)にて。【申込締切:5月15日】 http://jica-ri.jica.go.jp/ja/announce/post_186.html ++ 編集後記   「第3回国連防災世界会議」には、過去の国連及び関連会合に比べて多くの障害当事者が出席し、介助者の同行や字幕など支援機器の提供も多くあり、国連や政府関係者がアクセシビリティについて学ぶよい機会になったと思います。また、障害者同士の国際会議での情報交換により、新たな発見も多くあったようです。  一方、会議会場内での車いすや視覚障害者の安全な移動の確保、手話通訳者や同行介助者の動線距離に配慮がなされていないという問題がありました。更に、手話通訳者の立ち位置について会議会場担当の国連関係者と交渉したにも関わらず、否定されたことも明らかになりました。  2008年5月に国連障害者権利条約が発効されて以来7年経ちますが、会議会場に関する国連の規定(Protocol)がまだ障害者のアクセシビリティを考慮していないままなのです。同様に 国連の他の規定も、障害者権利条約施行以前のままではないかと懸念します。  国連と障害者団体が一緒になって、会議会場に関する規定などをいち早く、障害者のアクセシビリティに配慮したものへ改善されることを望みます。 全日本ろうあ連盟 国際委員会 宮本 一郎 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/