JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第140号 2015年3月26日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 全日本ろうあ連盟 理事 宮本 一郎  このJANNETメーマガジンの巻頭メッセージでは、第3回アジア太平洋CBR会議(以降「CBR会議」)にむけて136号から三人の方に本会議に期待することを書いていただきました。まずグーラム・ナビ・ニザマニ氏は、地域社会への所属意識と地域開発との関係とその重要性に関する再検討について、二ノ宮アキイエ氏は、国連主導の持続可能な開発目標(SDGs)の方向性を明示する存在としての期待、そして吉野幸代氏は女性障害者の社会参加と自立へ向けた議論と実践に対する期待を述べておられます。  2008年に「国連障害者権利条約」が施行されて以来、「アジア太平洋障害者10年計画」を含め、各地域・各国の政府・行政は、権利条約の理念を法律や制度に反映させ、障害当事者の参画を重視しつつあります。この障害当事者参加の進捗状況は、各国・各地域の経済やメディアなどによる差はありますが、以前より前進がみられます。  アジア太平洋地域の障害者・児の中には、なかなか表だって意見をのべる機会がなかったり、障害当事者自身が社会的不利を受けていることを気付いていない人が多くいます。家事に追われているから、外は危険だから、といった従来の固定概念により、女性障害者の社会参加や情報交換の機会をも奪われている状態です。また、保護者に障害に関する知識がないために、障害児の行動を抑制してしまう問題も解消されていません。だからこそ、障害当事者の参画、自助活動、障害者・児同士の情報交換の機会の提供を奨励できる取り組みについて、議論することが必要です。  そのためにも、国連・政府が障害当事者の参画機会を保障し、地域社会に密着した行動計画にも障害当事者が参画できるように整備していかなければなりません。また、政府行政主導により、障害者と市民との協同、そして、様々な障壁を解消していくために、CBR会議での議論検討がより進められていくことを期待します。 ++ 目次 +  トピックス 1.JANNET研究会参加報告 「ここまで来た、防災への障害のインクルージョン!  −国連防災世界会議直前、新しい世界防災の枠組みと開発的視点での課題−」 + インフォメーション 1.「国連防災世界会議」成果文書 2.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.2015(平成27)年度JANNET総会等開催のお知らせ 2.ワーカビリティ・アジア(WAsia)人材交流プログラム報告会 ご案内 ++ トピック 1 JANNET研究会参加報告 「ここまで来た、防災への障害のインクルージョン!  −国連防災世界会議直前、新しい世界防災の枠組みと開発的視点での課題−」 日本作業療法士協会 石本 馨  阪神淡路大震災から20年目の今年、第3回世界防災会議が3月に仙台で開催されます。この会議の目的はポスト2015年防災枠組(HFA2)の構築ですが、これに市民の声を反映させるべく組織されたのが、講師の堀内さんが事務局長を務める2015防災世界会議日本CSOネットワーク(JCC2015)です。堀内さんによると、2015年1月現在でのドラフト版では障害者を防災活動におけるステークホルダーとして明記し、特別な配慮の対象として見なすだけでなく、防災のアクセシビリティを評価する等、より積極的に役割を担うことを期待すること、そのために政府が各団体と連携すべきと明記されている、とのことです。HFA2がこのまま決定されれば、防災計画策定に障害者団体が積極的に関与でき、アクセシブルな防災が実現可能と思われます。  二人目の講師の可児さんは、アジア地域でインクルーシブな防災政策を提言する活動を行っているほか、障害当事者団体・国際NGO・国連を巻き込んだDiDRRN(Disability inclusive Disaster Risk Reduction Network)を立ち上げ、ポスト2015持続可能な開発の議論の中で、防災の視点から障害者の直接参加を呼びかける活動をしています。今回は地域全体の防災力を高めるために障害者が積極的に関与したベトナムの事例が紹介されました。村で小さくされている障害者が防災活動を通してエンパワーされ、同時に地域の組織化も図られて防災力が高められたとのことですが、防災活動での存在感を高めるために、可児さんの団体では事前準備からフォローアップまで障害者を戦略的にバックアップしていたことが特に印象に残りました。  可児さんは「全ての開発事業が各々の立場で防災に取り組み、また全ての開発事業に障害者が関わることが必要です。だからこそ、障害者が障害以外の分野で積極的にインクルージョンを語ることが重要です。」と話しました。本体会議と並行して行われる市民防災世界会議には「多様性と災害対応 〜障がい者・LGBT・ジェンダー・外国人の視点から〜」(3月16日開催予定)のセッションもあります。今回の会議に障害者団体がどこまで食い込み、インクルージョンの視点がHFA2に反映されるか注目しましょう。                                                                  ++ インフォメーション 1.「国連防災世界会議」成果文書  3月14日〜18日に仙台で開催された標記会議で採択された成果文書です。どうぞご参照ください。   ◆仙台防災枠組 2015-2030(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030) (英文) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071589.pdf (骨子) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071588.pdf ◆仙台宣言 (英文) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071587.pdf  (仮訳) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071586.pdf +   2.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )    新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。        153.マーシャル諸島               計:153の国と地域 (2015年3月24日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1. 2015(平成27)年度JANNET総会等開催のお知らせ  2015年度総会等の開催日時が決まりましたので、以下の通りご案内いたします。     日時:5月9日(土) 13:30〜14:15 【役員会】  14:30〜16:30 【総会】  16:45〜18:00 【交流会】  場所:戸山サンライズ 中研修室 ※総会では、最後の30分で第3回アジア太平洋CBR会議の概要と準備状況を報告します。 ※交流会では、団体・個人会員の皆様から可能な範囲で活動のご紹介をいただきます。 (各2分程度)  総会ほかの詳しいご案内、各参加申込書・総会委任状は後日、会員MLにてお送りいたします。  皆様、どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 + 2.ワーカビリティ・アジア(WAsia)人材交流プログラム報告会 ご案内  アジア地域の障害のある人の就労を支援する団体のネットワーク、ワーカビリティ・アジア(WAsia)が「人材交流プログラム」を実施し、4月に2週間、WAsiaの仲間であるタイのレデンプトリスト障害者財団から3人の研修員が、主に知的障害のある人の就労支援を学ぶことを目的に来日します。  プログラム最終日に「人材交流プログラム」報告会を開催します。 「タイで障害のある人は、どんな暮らしをしているんだろうか?」 「タイからきた研修員の目に、日本の現場はどんなふうに映ったんだろうか?」 「アジアの障害のある人の労働・雇用を推進するために、日本の私たちができることはなんだろうか?」などなど、タイの研修員と日本の参加者がダイレクトに意見交換しながら、アジアの状況を学ぶことを通じて日本の労働問題をも考え合うことができる貴重な機会です。 日時:4月24日(金) 13:30〜17:00 会場:戸山サンライズ 主催:ワーカビリティ・インターナショナル・ジャパン(WIJ)【事務局:きょうされん】 プログラム(予定): ◆タイの障害のある人の現状報告     *タイの障害のある人の状況(所得補償・福祉・教育等)・就労状況 ◆鴻沼福祉会見学の報告 ◆ウィズ町田見学の報告 ◆千川福祉会見学の報告 ◆レデンプトリスト障害者財団からの研修報告と問題提起 ◆フロアーとの意見交換 *テーマ案:アジアの障害のある人の労働・雇用を進めるために ※日タイ通訳がつきます。 ※報告会は無料ですが、事前申し込み(4月16日締切)が必要です。   *個人情報の取り扱いについて:「参加申し込み書」に記載いただいた内容については、報告会に必要な範囲内で使用いたします。また、報告会で撮影した写真は、報告書やホームページ等、団体活動に使用する場合がありますので、予めご了承ください。 お申し込み方法: 件名に「WAsia人材交流プログラム報告会参加申し込み」とご記入の上、本文に、1.お名前、2.ご所属、3.ご住所、4.Eメール、5.その他(手話通訳、要約筆記、車いすスペース、電子データ(可能な範囲で事前にお送りします)をご記入の上、center@selpjapan.net 宛にメールをお願いいたします。 お問い合わせ・お申し込み:WIJ事務局 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-13-1大橋御苑駅ビル別館2F日本セルプセンター事務局内 TEL:03-3355-8877 FAX:03-3355-7666 Email:center@selpjapan.net ++ 編集後記  東日本大震災から4年が経ち、防災についての世間の関心が改めて高まりました。今回のトピックは、防災への障害のインクルージョンという課題についてのJANNET研究会への参加報告でした。開発への障害のインクルージョンを考える際には、防災に関してもその視点が大切であるということに気づかされる内容でした。大きな災害の後、防災についての関心は一度高まりますが、月日が経つにつれ、それが薄れてしまいます。障害のインクルージョンという課題について、多くの視点から世間に議論を投げかけることの必要性を強く感じました。 広報啓発委員 古西 勇(日本理学療法士協会) ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/