JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第138号 2015年1月28日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 ―世界の「障害と開発」の方向性を示す画期的な国際会議― アジア太平洋障害者センター(APCD) 所長 二ノ宮 アキイエ 2015年は障害と開発にとって、重要な年です。国連主導のミレニアム開発目標(MDGs)が終わり、新たに持続可能な開発目標(SDGs)が始まります。また、アセアン10カ国の経済統合が始まります。先進国主体、政府主導、専門家中心の障害と開発は、障害当事者中心、住民の参加、地域開発とエンパワメント、さらにビジネスセクターの参加に変化しつつあります。このような変革期における東京での第3回アジア太平洋CBR会議は今後の障害と開発の方向性を示すモデルプロジェクトの発表機会です。 過去のアフリカ、南米のCBR会議は欧米の海外支援の成果発表の場になりがちでした。最近はアジア太平洋の価値観を尊重したCBR/CBID(コミュニティにおけるインクルーシブ開発)が世界保健機関(WHO)をはじめ、多くの国際団体から注目を受け始めています。特に、地域の人材、資金、知恵などを活用して自立的に発展していく手法が持続可能な開発のモデルとして期待されています。 現在は福祉国家政策の限界が示され、さらに世界的な高齢化社会の到来することが予想されています。また、自然災害、障害インクルーシブ・ビジネスなどの新しい分野がCBR/CBIDの実践対象になってきました。CBR/CBIDは海外や国家支援だけに頼るのでなく、地元の資源を見出し活用する手法なので、中国を始め多くのアジア太平洋諸国がこの手法に興味を持ち始めています。それらの国々はCBR/CBIDの実践モデルから学ぶため、第3回CBR会議に参加する意向を示し始めました。また、これまでの開発途上国の農村中心CBR/CBIDから都市貧困も対象になってきました。先進国における都市貧困とCBR/CBIDの成果発表は日本で開催される同会議が世界で始めてとなります。 アジア太平洋障害者センター(APCD)はCBR/CBID活動をタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーおよびベトナムでこの数年実践しています。地方行政、地域住民団体、ビジネスセクターなどと連携して、障害者団体を中心に多くの成果を出しています。アセアン事務局、タイと日本政府等はこの発表に興味を持っています。 今回の第3回アジア太平洋CBR会議が同地域だけでなく、アフリカ、南米、さらに世界の「障害と開発」の方向性を示す画期的な会議になると期待されています。 ++ 目次 +  トピックス 1.日本ポーテージ協会のCBR活動 2.「ふわりんクルージョン2015 in Akihabara」に参加して + インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.JANNET研究会「ここまで来た、防災への障害のインクルージョン!- 国連防災世界会議直前、新しい世界防災の枠組みと開発的視点での課題 -」(2月27日)開催案内 2.「アメリカから生中継/講義」(日本ASL協会、2月14日)のお知らせ 3.「第3回アジア太平洋CBR会議」参加&要旨登録開始 ++ トピック 1 日本ポーテージ協会のCBR活動 日本ポーテージ協会 谷島 邦雄 認定NPO法人日本ポーテージ協会は、「発達に遅れや偏りのある乳幼児を育てる親・家族がどこに住んでいても必要な支援が地元で受けられるようなシステムを構築すること」を目指して、日本国内への普及活動を行ってきました。1990年代からは、日本国内だけでなくアジア地域の発展途上の国・地域への普及についても活動を拡げ、三菱財団などからの助成を得て、これまでにカラチ(パキスタン)、大連・北京(中国)、台北(台湾)、ダッカ(バングラデシュ)、マニラ・ダバオ・セブ(フィリピン)、テヘラン(イラン)、チャンディガール(インド)、ソウル(韓国)、ジョグジャカルタ(インドネシア)、カトマンズ・バネパ(ネパール)において、とくにCBR活動のなかで活用できるように、ポーテージプログラム・ワークショップセミナーを開催してきました。 ネパールポーテージ協会との人材育成の協働事業については、その契機となったのは、1999年にネパールのカトマンズで開催された第14回アジア知的障害会議のプレカンファレンス・ワークショップにおいて、日本ポーテージ協会が、ポーテージプログラム・ワークショップセミナーを行ったことに遡ります。その後2001年にネパールポーテージ協会が組織され、ポーテージ活動が開始されました。今回のプロジェクトは、2012年9月にバネパで開催されたポーテージプログラム・ワークショップセミナーに引き続き、ネパールポーテージ協会によって作成された、「5カ年計画(2014年〜2018年)」の目標を実現するために、その第1年目として2014年3月25日から3日間「第1回ネパールポーテージ会議とポーテージプログラム研修セミナー」がバネパで開催されました。ネパールポーテージ協会は地道な活動を続け、すでに国内25 郡44 カ所にポーテージプログラムの実践場所を広げてきました。開会式式典に副大統領や国会議員、地域の福祉・教育の行政担当者などが招かれ、その様子がテレビ・ニュースで放映されました。ポーテージプログラムの知名度が地元だけでなくネパール国内で一段と高まったと思われます。 + トピック 2 「ふわりんクルージョン2015 in Akihabara」に参加して 上野 悦子                                    1月17日と18日に東京・秋葉原で日本地域共生協議会、NPO法人ふわり、社会福祉法人むそうの共催によるふわりんクルージョン2015に登壇及び参加させていただきました。全体のテーマ「すべての人が輝く地域包括ケア〜多職種連携:みんなで手をつなごう〜」を軸として、多方面から話し合うという企画でした。紙面の都合上、ここでは主にCBRに関連した内容を報告します。  主催者の戸枝陽基さん(ふわり・むそうの理事長)は、制度に頼れない途上国の地域では障害のある人も幸せに暮らしているというCBRに以前から着目されてきましたが、今回はマヤ・トーマスさんを講師に招いて、第三回アジア太平洋CBR会議の広報を兼ねて、日本の地域包括ケアの取り組みとCBRがどう響きあうかを提示する機会を作られました。1日目の午前中、戸枝さんは国内トピックの進行の合間に、海外の2つのCBRの事例を紹介しました。午後はマヤ・トーマスさんの講演から始まり、それに続くCBRセッションでは、こころん(熊田芳江さん)、ハックの家(竹下敦子さん)、草の根ささえあいプロジェクト(渡辺ゆりかさん)、むそう(永田尚子さん)というCBIDの好事例実践者たちから活動報告があり、3人の利用者さんも登壇されました。コーディネーターの鈴木直也さん(NPO法人起業支援ネット副代表理事)からCBRを織物にたとえ、「糸」という中島みゆきの歌の歌詞に合わせて、シンポジストに縦糸と横糸が何かを紹介してください、という投げかけがあり、会場の関心を呼びました。  マヤ・トーマスさんは、途上国と日本の取り組みの共通点として、障害のある人と家族が自分を信頼し力をつけていくことの重要性、孤立を防ぐための関係性作り、(支援する)人材の質を上げること等を挙げました。  2日目の最後のまとめのセッションでは原田正樹さん(日本福祉大学教授・学長補佐)の進行で、各分科会の報告に加えて、CBRの視点が日本とどうつながるのか、について報告者に発言してもらい、マヤさんがコメントをする内容で進められました。報告者のひとり、冨田昌吾さん(寝屋川市民たすけあいの会)は、CBRは権利条約の理念をもとにする当事者中心の考え方なのに対し、日本の地域包括ケアはサービスのコーディネーションが中心なのではないかとCBRとの認識の相違点について発言されました。  全体的に日本の福祉実践者がCBRを引き寄せて考えてもらえるような企画が多く盛り込まれた刺激的な2日間でした。                                                                  ++ インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )    標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。              計:151の国と地域 (2015年1月26日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.JANNET研究会「ここまで来た、防災への障害のインクルージョン!- 国連防災世界会議直前、新しい世界防災の枠組みと開発的視点での課題 -」開催案内  前月号で第1報を掲載しましたJANNET研究会について詳しくご案内いたします。 ◆日時:2月27日(金) 18時〜21時 ◆会場:戸山サンライズ 2階大研修室A ■講師:掘内 葵氏(国際協力NGOセンター) 可児 さえ氏(マルティーザ・インターナショナル日本事務局代表) 主催:障害分野NGO連絡会(JANNET) 後援:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC )  3月14日〜18日開催の第3回国連防災世界会議を前に、CSO全体の動きはどこまできているのかについてJANICの堀内 葵さんに、そして、障害者が含まれる防災計画、準備の活動については、アジアで実践してきたNGOマルティーザ・インターナショナルの可児さえさんにお話しいただきます。可児さんには開発という視点での途上国での防災に関して、現在ベトナムで行っている障害インクルーシブなコミュニティ防災に関するプロジェクトについても語っていただきます。 ※詳しいご案内は下記ページ(JANNETホームページ)をご覧ください。   http://www.normanet.ne.jp/~jannet/kenkyukai/150227kenkyukai.html ◆お申込み:「参加申込書」(下記案内ページ内からダウンロード)に必要事項をご記入の上、メールまたはFAXで事務局・佐々木にお送りください。送付先は申込書内に記載しています。        http://www.normanet.ne.jp/~jannet/kenkyukai/150227kenkyukai.html ※情報保障をご用意いたします。必要な方は、参加申込書にご記入ください。 皆様の参加申込をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 + 2.「アメリカから生中継/講義」(日本ASL協会)参加者募集のお知らせ  世界唯一の聴覚障害者の総合大学であるギャロデット大学の講義中継への参加者募集のお知らせです。ASL(アメリカ手話)やアメリカのろうに関する様々な分野を学ぶ機会として開催されます。京都会場では、前日(2月13日)にASLについての事前講習会も実施されます。   ◆日時:2月14日(土) 午前9時30分〜12時30分 ◆会場:【東京】 日本ASL協会事務所     【京都】 全国手話研修センター ◆参加費:無料(どなたでもご参加いただけます。) ◆締切り:2月11日(水) ※ご希望の会場を、申込時にお知らせください。 ◆申込み方法:日本ASL協会事務局(下記連絡先)にお申込ください。              ※ただし定員を超えた場合は聴覚障害者の申込みが優先となります。 ■講義テーマおよび講師: 1.「アメリカにおけるろう教育」(仮題)  Dr. Amy Hile(ギャロデット大学教育学部 准教授) 2.「ギャロデット大学150年の歴史−アメリカ聾学校200年の歴史」(仮題) Mr. Michael Olson(ギャロデット大学歴史資料室暫定責任者/同資料室スペシャリスト) ※ASL(アメリカ手話)での講義です。(【京都会場のみ】アメリカ手話/日本手話の通訳付) ※日本語音声通訳をご希望の方は日本ASL協会(下記)にお問合せください。 ※プログラムの詳細は下記をご覧ください。 http://www.npojass.org/archives/12621 <ASL(アメリカ手話)を学ぼう> ‥‥ 京都会場のみ   日時:2月13日(金) 午後7時〜9時 会場:全国手話研修センター(京都) 対象:翌日(2月14日)の生中継講義に参加される方のみ 内容:翌日の講義で使われる単語を中心とした事前学習会 ◆お申込み/お問合せ:NPO法人 日本ASL協会   FAX: 03-3264-8977、E-mail: ryugaku@npojass.org             http://www.npojass.org + 3.「第3回アジア太平洋CBR会議」参加&要旨登録開始  既に一部の方にはご案内しておりますが、第3回アジア太平洋CBR会議を今年9月1日から3日まで、新宿京王プラザホテル(東京)にて開催することになり、ホームページ上でのオンラインにて参加登録及び発表希望者の要旨登録を開始しました!  ことしは3月に国連防災世界会議が仙台で開催され、9月には2016年以降の世界の持続的開発目標(SDGs)が国連総会で採択される大変大事な年に当たります。 また、日本政府が昨年障害者権利条約に批准したことも受け、地域レベルでの障害のある人を含むこれまで排除されてきた人たちの社会へのインクルージョンについて海外と国内の関係者が集い、意見交換を行う絶好の機会でもあります。  ぜひご参加をご検討ください。また広報へのご協力についてもどうぞよろしくお願いします。 ※詳細は、ホームページをご覧ください。http://www.apcbr2015.jp/jp/ (日本語) 第3回アジア太平洋CBR会議実行委員会 委員長 松井亮輔  事務局長 上野悦子   ◆お問い合わせのご連絡は下記の通りお願いいたします。◆ ■登録とお支払いについては、京王観光(株)CBR会議デスク 國分(コクブン)まで s-kokubun@keio-kanko.co.jp ■その他のご質問は、CBR会議事務局まで inquiry@apcbr2015.jp ++ 編集後記   我が国で「障害者の権利に関する条約」が批准されて先日1年が過ぎました。アジア太平洋地域を中心とした障害分野での交流、支援などの活動を行ってきた我々JANNETも、設立20周年の成人式をおえて国際会議を誘致するまでに成長したことにつきまして、皆様のご高配の賜物と心から感謝を申し上げますとともに、ますます身の引き締まる思いです。さて、2015年9月に開催される第三回アジア太平洋CBR会議開催に向けた準備の中では、各種のご協力やお手伝いいただける方々を募集しております。また、JANNET研究会ほかJANNETの委員会では、関連するトピックスを盛り込んだ事業を展開しているところです。皆さま方のご協力のもと、会議を成功裏に終わらせるべく精一杯つとめてまいりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。 伊藤 智典 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/